ありふれた職業と選ばれた勇者で世界最強   作:わったさん

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ようやくハジメと再会を果たします。


Dear My Friend

清水「(何だよ、これは・・・何なんだよ、これは!!)」

 

ウルの町を襲う数万規模の魔物の大群の遥か後方で、即席の塹壕を堀り、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年、清水幸利は、目の前の惨状に体を震わせながら言葉を失った様に口をパクパクさせていた。ありえない光景、信じたくない現実に、内心で言葉にもなっていない悪態を繰り返す。そう、魔物の大群をけし掛けたのは紛れもなく行方不明になっていた愛子の生徒、清水幸利だった。とある男との偶然の末に交わした契約により、ウルの町を愛子達ごと壊滅させようと企んだのだ。しかし、容易に捻り潰せると思っていた町や人は、全く予想しなかった凄絶な迎撃により未だ無傷であり、それどころか現在進行形で清水にとっての地獄絵図が生み出されていた。

 

ハジメ「ソラソラァ!!」

シア「うおおおおおってなもんです!!」

 

ドゥルルルルルルルルル!!!・・・そんな独特の音を戦場に響かせながら、無数の閃光が殺意をたっぷりと乗せて空を疾駆する。迷宮で手に入れた素材を錬成して作り上げたあらゆる武器”ミサイル”・”ガトリング”・”ロケット”等々をシアと協力して魔物の軍勢に思う存分打ち込み魔物の死体を次々と積み上げるハジメ。

 

ティオ「灰となれ・・・!」

 

シアの左に陣取るのはティオだ。その突き出された両手の先からは周囲の空気すら焦がしながら黒い極光が放たれる。あの竜化状態で放たれたブレスだ。殲滅の黒き炎は射線上の一切を刹那の間に消滅させ大群の後方にまで貫通した。ティオは、そのまま腕を水平に薙ぎ払っていき、それに合わせて真横へ移動する黒い砲撃は触れるものの一切を消滅させていく。砲撃が止んだ後には、抉れた大地以外何も残ってはいない。代わりに、その一撃で相当消耗したのだろう。ティオは肩で息をし体をフラつかせた。しかし、すぐさま指にはまった指輪に一つキスを落とすと再びスっと背筋を伸ばす。ハジメから受け取った魔晶石の指輪にストックされた魔力を取り出したのだ。ブレスの一撃によりティオが担当する範囲の魔物の先陣はあらかた消滅し、多少の余裕が出来たティオは、魔力消費の比較的少ない魔法を行使する。

 

ティオ「吹き荒べ頂きの風 燃え盛れ紅蓮の奔流”嵐焔風塵”」

 

少しでも魔力消費を抑えるため、敢えて詠唱し集中力を高める。そうして解き放たれた魔法は火炎の竜巻だ。直径数十メートルの渦巻く炎が魔物の群へと爆進し、周囲の魔物達をまとめて巻き上げた。宙へと放り出され足掻くすべを持たない魔物達は、そのまま火炎に自ら飛び込むように巻き込まれていく。そして、紅蓮の竜巻から放り出された時にはただの灰燼に変わり果て灰色の雪のように舞い散るのだった。そのまま全てを灰燼と帰す竜巻は、存分に戦場を蹂躙していく。

 

ユエ「フゥウウウウウウ・・・・。」

 

ハジメの右に陣取るユエの殲滅力は更に飛び抜けていた。ハジメ達が攻撃を開始しても、瞑目したまま静かに呼吸を整え佇むユエ。右側の攻撃が薄いと悟った魔物達が、破壊の嵐から逃れるように集まり、右翼から攻め込もうと流れ出す。既に進軍にすら影響が出そうなほど密集して突進して来る魔物達。そして、遂に彼我の距離が五百メートルを切ったその瞬間、ユエは、スっと目を開きおもむろに右手を掲げた。そして、一言、囁くように、されど世界へ宣言するように力強く魔法名を唱えた。

 

ユエ「”壊劫えこう”」

 

それは神代魔法”重力魔法”を発動させるトリガーだ。魔法に関しては天性の才能を持つ吸血姫を以てして、魔力の練り上げとイメージの固定に長い”タメ”を必要とし即時発動は未だ困難な魔法。ユエの詠唱と同時に迫る魔物の頭上に、対黒竜戦で見たのと同じ渦巻く闇色の球体が出現する。薄く薄く引き伸ばされていく球体は魔物達の頭上で四方五百メートルの正四角形を形作る。そして、太陽の光を遮る闇色の天井は、一瞬の間のあと眼下の魔物達目掛けて一気に落下し大地ごと魔物が消滅した結果だけを残す。この圧倒的戦果に町の至るところから歓声が上がる。町の重鎮や護衛騎士達は、初めて見るハジメ達の力に呑まれてしまったかのように呆然としたままだ。生徒達は、改めてその力を目の当たりにし、自分達との”差”を痛感して複雑な表情になっている。ただ守られる側として町の人々と同じ場所から、無能と見下していたクラスメイトの背中を見つめているのだ。いつしか光輝に言われた”お前等全員無能だ!!”・・・その言葉を思い出しながら。愛子は、ただひたすらハジメ達の無事を祈っていた。戦闘から数十分後、遂にティオが倒れた。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのだ。

 

ティオ「むぅ、妾はここまでのようじゃ・・・もう、火球一つ出せん・・・すまぬ」

 

うつ伏せに倒れながら、顔だけをハジメの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。

 

ハジメ「十分だ。変態にしてはやるじゃねぇの。後は、任せてそのまま寝てろ」

ティオ「・・・ご主人様が優しい・・・罵ってくれるかと思ったのじゃが・・・いや、でもアメの後にはムチが・・・期待しても?」

ハジメ「良いから寝ろ。でなきゃ一生寝かすぞ。」

 

ハジメの罵倒にゾクゾクと身を震わせるティオ。とても満足げな表情をしている。ハジメは、その様子に嫌なものを見たと舌打ちしながら、魔物の群れに視線を戻す。状況としては魔物の数は一万を割り八千から九千と言ったところか。最初の大群を思えば、壊滅状態と言っていいほどの被害のはずだ。しかし、魔物達は依然、猪突猛進を繰り返している。正確には、一部の魔物がそう命令を出しているようだ。だとするとやる事は一つ、リーダー格の魔物を優先的に仕留める事だ。清水幸利がこの事件の犯人であり、例えチート持ちだったとしてもこれほどの大群をティオにしたように洗脳支配出来るものなのだろうかという点は、ハジメ自身疑問に思っていたことであり、各種族のリーダー格のみを洗脳し、その配下の魔物はそのリーダーに従わせるという方法と取っているようであれば一応説明も付く。

 

ハジメ「(武器の残弾もほぼ無し・・・こっからはひたすら白兵戦だな)ユエ、魔力残量は?」

ユエ「・・・ん、残り魔晶石二個分くらい・・・重力魔法の消費が予想以上。要練習」

ハジメ「いやいや、一人で二万以上殺っただろ?十分だ。残りはピンポイントで殺る。援護を頼む」

ユエ「んっ」

ハジメ「シア、魔物の違いは分かるか?」

シア「はい。操られていた時のティオさんみたいな魔物とへっぴり腰の魔物ですよね?」

ハジメ「へっぴり・・・うん、まぁ、そうだ。おそらく、ティオモドキの魔物が洗脳されている群れのリーダーだ。それだけ殺れば他は逃げるだろう」

シア「なるほど、私の方も残弾が心許ないですし、直接殺るんですね!」

ハジメ「・・・あ、ああ。何ていうかお前逞しくなったなぁ。」

シア「当然です。お二人の傍にいるためですから」

 

にぱっと笑みを見せるシアに、苦笑いしつつもどこか優しげな笑みを返すハジメ。だが、次の瞬間にはグッと表情を引き締めてメツェライを”宝物庫”にしまうと、シュラークを抜いた。同時に、シアもオルカンを置き、背中のドリュッケンに手をかける。リーダー格と思われる魔物はおよそ百体。おそらく、突撃させて即行で殺されては、配下の魔物の統率を失うと思い、大半を後方に下げておいたのだろう。メツェライとオルカン、そしてティオの魔法による攻撃が無くなってチャンスと思ったのか、魔物達が息を吹き返すように突進を始める。ハジメとシアの突撃を援護するため、ユエが魔法を発動した。

 

ユエ「”雷龍”」

 

即座に立ち込めた天の暗雲から激しくスパークする雷の龍が落雷の咆哮を上げながら出現し、前線を右から左へと蹂躙する。大口を開けた黄金色の龍に、自ら飛び込むように滅却されていく魔物の群れを見て、後続の魔物が再び二の足を踏んだ。その隙に、ハジメとシアが一気に群れへと突撃する。ハジメは、”縮地”で大地を疾走しながらシュラークを連射した。その眼には、群れの隙間から僅かに見えるリーダー格の魔物の姿が捉えられており、撃ち放たれた死の閃光は、その僅かな隙間を縫うようにして目標に到達、急所を容赦なく爆散させる。前線の魔物には目もくれず、何故か背後のリーダー格ばかりが次々と爆ぜる奇怪さに、周囲の魔物が浮き足立った。と、不意に一体の魔物の頭上に影が差す。咄嗟に、天を仰ぎ見た魔物の眼には、ウサミミをなびかせ巨大な戦鎚を肩に担いだ少女が文字通り空から降ってくる光景が飛び込んできた。その少女、シアは、魔物の頭を踏み台に、ウサギらしくぴょんぴょんと群れの頭上を飛び越えていき、最後に踏み台にした魔物の頭を圧殺させる勢いで踏み込むと、自身の体重を重力魔法により軽くして一気に天高く舞い上がった。そして、天頂まで上がると空中でくるりと反転し、今度は体重を一気に数倍まで引き上げ猛烈な勢いで落下する。目標地点は、もちろんリーダー格が数体で固まっている場所だ。自由落下の速度をドリュッケンの引き金を引き激発の反動を利用して更に加速させ、最大限の身体強化をも加えて一撃の威力を最高にまで引き上げる。そして、全く勢いを減じることなく破壊の権化ともいうべき鉄槌を振り下ろした。

 

シア「りゃぁああああ!!!」

 

可愛らしい雄叫びと共に繰り出されたその一撃は、さながら隕石の如く。直撃を受けたブルタール型の魔物のリーダー格は、頭から真っ直ぐ地面へと圧殺され、凄絶な衝撃に肉と血を爆ぜさせた。血肉は衝撃により吹き飛んだ大量の土石に紛れて肥料のごとく地へと還る。見た目華奢な少女が、自分の数倍の巨躯を誇る魔物をピンポン玉のように軽々と吹き飛ばす。シアは、回転運動から流れるように体勢を戻し、吹き飛んだブルタール達の隙間から見えた目標のリーダー格を潰そうと踏み込みの体勢に入った。と、その瞬間、右後方より新手が高速で接近する音をウサミミが捉える。シアは、慌てずドリュッケンを最適のタイミングで体ごと回転させ迎撃しようとした。が、その新手、黒い体毛に四つの紅玉のような眼を持った狼型の魔物は、それを予期していたように寸前で急激に減速すると、見事にシアの一撃を躱してみせた。黒い四目の狼は、シアではなくドリュッケンに飛びかかり、その強靭な顎と全体重で地に押し付けるようにして封じたのである。意表を突かれた事と、一瞬であれ動きを封じられたこともあり、完璧なタイミングでシアの後方から同じ魔物が鋭い牙の並ぶ顎門を開いて眼前まで迫る。その鋭い牙がシアを血濡れにさせるかというその瞬間、何かがシアと四目狼の間に割り込んだ。それは、縦六十センチ横四十センチ、中心部分にラウンドシールドの様なものが取り付けられている金属製の十字架だった。その十字架が魔物の顎門に挟まりシアに喰いつくのを阻止しているのだ。ギリギリと音を立て、魔物が必死に突如飛び込んできた異物を噛み砕こうと力を入れるが、薄く紅色に発光する十字架はビクともしない。そして次の瞬間、轟音と共に魔物の下顎が爆ぜて吹き飛んだ。

 

「グゥルァアア!!!」

 

悲鳴を上げてのたうち回る魔物の頭上にスっと音もなく移動した十字架は、再度轟音と共に弾丸を吐き出し魔物の頭部を粉砕する。更に発砲音が聞こえたと思うと、シアのドリュッケンを握る手が軽くなった。シアが、相棒を一時的に封じていた四目狼を振り返ると、そちらも腹部と頭部を空中に浮遊する二つの十字架に撃ち抜かれ崩れ落ちていた。

 

ハジメ〝シア、油断するな。魔物の中に、明らかに動きの違うやつがいる。洗脳支配されているわけでも、どこかの魔物の配下というわけでもなさそうだ。クロスビットを三機付けておく。右の二十七体を殺れ。前線は、ユエが後五分は持たせてくれる〟

シア〝了解です! それと、助かりました。有難うございます!〟

ハジメ〝おう、気をつけてな〟

シア「・・・ふふ、最近、ハジメさんの態度がドンドン軟化していますぅ。既成事実まで後一歩ですね!」

 

シアは、通信が切れた事を確認すると、まるで自分を守るように周囲を浮遊する〝クロスビット〟に頬を綻ばせて、そんな独り言を呟いた。そして、気合を入れ直してドリュッケンを構え、先程の毛色の違う魔物に注意しながらリーダー格の殲滅に乗り出した。

 

ハジメ「ふぅ、相変わらず、どっか危なかっしいんだよな、アイツ・・・。(ドンナーが無い分やはり攻撃力が半減するな・・・ま、それならそれでやるしか無いんだが。)」

 

そんな事を呟きながら、猛烈な勢いで魔物を駆逐していくハジメ。ハジメの周囲にも四機の十字架が浮遊している。”クロスビット”ハジメがそう呼んだ浮遊する十字架は、無人偵察機と同じ原理で動く攻撃特化タイプだ。内部にライフル弾や散弾が装填されており、感応石が七つ取り付けられた腕輪で操作する。また、表面を覆う鉱石には生成魔法により”金剛”を付与しており、感応石の魔力に反応して強固なシールドにもなる。所持してないドンナーの代わりにハジメはシュラークを片手に、クロスビットを併用して、隙のない攻撃を繰り広げ堅実に敵を減らしていく。既にリーダー格の魔物を四十体近く屠り、全開の”威圧”により逃亡する魔物も出始めている。と、ハジメの視界の端に戦場から離れた遠方の崖付近で逃げ出す魔物に向かって何やら喚いている人影が見えた。

 

清水「クソ!クソ!どいつもこいつも使えない!!!!」

 

黒いローブの男、清水は、逃げ出す魔物に癇癪を起こす子供のように喚くと、王宮より譲り受けたアーティファクトの杖をかざして何かを唱え始めた。もちろんそのまま詠唱の完了を待ってやる義理などないので、ハジメは片手間でシュラークを発砲し、その杖を半ばから吹き飛ばす。群れの陰に隠れてハジメに決定的な隙が出来るのを辛抱強く窺っていた黒い四目の狼型魔物が一斉に飛び出して来た。やはり、周囲の魔物とは比べ物にならないポテンシャルと連携能力を持っているが、今の遥かに成長したハジメの敵ではなく、時間をかけながらもクロスビット・シュラークを使いこなしものの二分で殲滅されることになった。ハジメは、クロスビットを飛ばして怒涛の勢いで残りのリーダー格を仕留めにかかる。離れた場所にいるシアに付けたクロスビットからの情報では、向こうもあと数体で終わるようだ。町に向かって突進していた前線の魔物も、ユエの雷龍が全く寄せ付けていないようだ。それから約二分の内に、ハジメは確認していた限りの洗脳を受けた魔物の駆逐に成功した。そして、それを確認すると、スゥーと大きく息を吸い魔力放射を併用して天地に轟けとばかりに咆哮を上げる。

 

ハジメ「カァアアアアアアアアアアア!!!」

 

戦場を特大の咆哮と魔力が波動となって駆け巡る。その圧倒的な威圧は、何より魔物達の精神に衝撃となって襲いかかり多大な本能的恐怖を感じさせ必死の逃亡を図り始めた。魔物の群れという名の水流は、まるで川中の岩と同じようにハジメを避けて左右に分かれながら逃亡していく。その様子を、鋭い眼で確認していたハジメは、どさくさに紛れて、黒い狼にまたがり逃亡を計る清水の姿を発見した。ハジメは、魔力駆動二輪を取り出すと一気に加速し瞬く間に清水に追いつく。後ろからキィイイイ! という耳慣れぬ音に振り返った清水が、異世界に存在しないはずのバイクを見てギョッとした表情をしつつ必死に手足を動かして逃げながら謎の呪文を詠唱する。

 

清水「ブツブツブツブツ(我は汝を召喚する・・・ああ、神よ。天の王よりいただいた力を込めて汝に命ず。アドナイ・・・エル・・・エロヒム・・・エロヒ・・・エヘイエー・・・アシェル・・・エハイエー・・・ツァバオト・・・エリオン・・・イヤー・・・テトラグラマトン・・・シャダイ!!至高の主なる神の名において汝を浄め、全力を込めて汝に命ず。我が命令の通りに成し遂げよ。我が求めに応じて可視の姿となり、従順として我に語れ・・・!!)・・・・グペッ!?」

 

黒魔術に近い呪文を唱えながら必死に走る清水の後頭部を、二輪の勢いそのままに義手で殴りつけるハジメ。清水は、顔面から地面にダイブし、シャチホコのような姿勢で数メートルほど地を滑って停止した。

 

ハジメ「さて、先生はどうする気だろうな? こいつの事も・・・場合によっては俺の事も・・・」

清水「ヒ・・・ヒヒヒ!勝ったつもりかよ・・・これで・・・。」

ハジメ「あ?」

清水「終わりなんだよ!!お前等全員!!!」

 

ハジメは、そんな事を独りごちながら清水に義手から出したワイヤーを括り付けようとした瞬間に目が覚める清水。負け惜しみの戯言とハジメを受け取り、無視して清水をワイヤーで括り付けようとした瞬間に異変が起きる。清水が唱えた呪文に応えるように、ハジメ達の手によって魔物が殆ど蹂躙された戦場の中心に巨大な魔法陣が形成される。巨大な咆哮と共に出現したその正体・・・体表がどす黒い赤で彩られた体長100mクラスの巨人族の魔物”ギガンテス”が召喚される。目撃した誰もが圧巻する巨体に流石のハジメも狼狽を隠せずにいた。その隙に清水は再び逃げ出し姿を暗そうとするが、ハジメは瞬時に清水の前に立ち、シュラークを鈍器に頭を強く打ち気絶させる。

 

ハジメ「ちっ!・・・ここに来てあんな強力な魔物を保険に隠し持ってやがったか・・・こいつ。」

シア〝ハジメさん!!あの巨大な魔物の下から魔法陣が現れてます!!数万匹以上の魔物を次々と召喚して来てます!!〟

ハジメ「何!?」

 

シアから念話が聞こえ思わしくない状況を聞かされるハジメ。シアの言う通り、ギガンテスが召喚したであろう数万匹以上の剣と盾を装備したスカルモンスターが数万匹単位で一挙に召喚されていた。既に連戦で体力を消耗していたシアとユエにとって、敵方の途方もないこの戦力は致命的であった。

 

ハジメ〝俺が戻るまでなんとか持ちこたえろ!!やばそうだったら直ぐに逃げろ!!〟

シア〝はい!!〟

 

気絶させた清水をワイヤーで拘束した後、ハジメは直ぐにシアが戦っている戦場へと急いで戻る。その間にシアはただ一人、雪崩のように襲い来るスカルモンスターをドリュッケンで迎撃するも圧倒的な物量、そして自身の体力の消耗で徐々に追いつめられていく。そんなシアに対し、ギガンテスは両目から破壊光線を発射、スカルモンスターごとシアを簡単に吹き飛ばし大ダメージを与える。

 

シア「グ・・・う・・・。まずいです・・・。」

ユエ「シア・・・!」

 

遠目でシアの状況を見ていたユエ。新たに現れたスカルモンスターの襲撃を防ぐのに精一杯で持ち場を離れるわけにもいかず、その様子をただ見ているだけしかなく、ギリっと歯ぎしりをする。今はハジメが護衛にと付けたクロスビットのシールドのおかげでスカルモンスターの攻撃を防いでくれているがそれも時間の問題であった。

 

ユエ「(ハジメ・・・急いで!シアが・・・!)」

 

圧倒的な物量攻撃で遂に最後のクロスビットがスカルモンスターの手により破壊され、完全に丸腰状態となってしまったシア。ギガンテスの攻撃によりまだ動けずに倒れ伏していたシアに対しスカルモンスターが止めの剣を振りかざす。両目を瞑り”ハジメさん・・・すみません!”と謝罪しながら覚悟を決めた瞬間、謎のビーム光弾がシアに襲い来るスカルモンスターを消滅させる。トライドロンによる援護射撃だ。運転席のドアと後部座席のドアが開いた瞬間、格闘戦士型の少年と大和撫子よろしくの剣士型の少女が群がるスカルモンスターを全て排除する。その様子を遠くで見ていたユエは驚愕する。

 

ユエ「車・・・!?ハジメ以外に作れる錬成師と言ったら・・・まさか・・・!」

シア「・・・凄い・・・あんな一瞬であの数の魔物を・・・!」

香織「天恵よ、彼の者に今一度力を・・・焦天。」

 

後部座席から降りてきた神官の白い魔法衣を着込んだ少女の回復魔法により、それまでのシアの負傷が嘘のように全快する。最後にトライドロンから降りたイケメンの少年はトライドロンを宝物庫に仕舞い込み、シアの様子を伺う。

 

光輝「君、大丈夫?」

シア「は・・・はい・・・助かったです。・・・あなた達・・・まさか・・・。」

 

光輝はシアに対しハジメの愛銃”ドンナー”を見せる。シアはそれだけでハッと気づき、全てを理解した。そう、彼等こそがハジメがいつも自分達に言い聞かせていた同じ異世界からやってきたクラスメートであり友達の天之河光輝・坂上龍太郎・八重樫雫・白崎香織の4人であった。

 

光輝「ハジメはいるか?」

シア「今こっちに向かってきているはずです。そろそろ・・・。」

ハジメ「シア!・・・無事・・・・か・・・・。」

 

シアが言い終わった瞬間、バイクに跨りハジメが現場に到着する。懐かしき4人の親友がこの場に居合わせた事で、いつも鋭い眼光で周囲を威圧していたハジメの表情が打って変って柔らかな表情となり目を丸くする。しかしここは戦場である事は全員先刻承知であり、今は再会を喜び合ってる場合では無かった。特に香織はハジメとの再会を誰よりも喜んでいたが、今はそのあふれ出る気持ちを必死に抑える。ハジメはバイクを仕舞い込み、柔らかな表情を再びいつもの厳しい表情へと変え、光輝に近づき始める。光輝はハジメのドンナーをハジメの元へ返し、受け取ったハジメは光輝と共に互いに頷き合う。そして・・・目の前にいる数万匹以上の魔物とそれを率いるギガンテスを睨み構え、一同も同様に戦闘態勢を整える。

 

光輝「雫。」

雫「兵法第一の型・・・円陣!!」

 

新たな天職”軍師”の能力を行使する雫。軍師の主な力、それは戦闘における補助がメインとなり一定範囲内の味方に戦闘補助を授ける。その技の一つ”円陣体形”は全員に金剛・そして自動回復の補助効果を授け、耐久戦に持ち込める能力であった。

 

光輝「雫は左手、龍太郎は右手の敵の殲滅に当たってくれ。香織は後方で待機。」

ハジメ「シア、お前も白崎と後方で待機だ。もし撃ち漏らした敵が居たらそいつは任せる。」

シア「了解です!」

ハジメ「俺と天・・・光輝は・・・目の前でふんぞり返ってるデク野郎をぶちのめす。」

光輝「皆、周りは任せる!」

龍太郎「おうよ!」

香織「任せて。」

雫「あなた達二人の邪魔は、絶対にさせない。」

 

周囲のスカルモンスターを雫達に任せた光輝。ギガンテスの目の前に二人だけになったハジメと光輝は数か月ぶりの再会に言葉をほんの少しだけかわし始める。

 

光輝「俺達を信じて、君の愛銃をイルワさんに預けたんだってな。・・・恩に切るよ。」

ハジメ「お前等なら、ここまで辿り着く事はある程度予想していたからな・・・当然だろ。・・・積もる話もあるが・・・今は・・・。」

光輝「あぁ・・・あのデカブツを仕留める事が先決だな・・・。まだ戦える?それともどっかで休む?」

ハジメ「っへ・・・誰にモノ言ってんだ?・・・行くぜ!!!」

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ギガンテスの振り降ろす右手のハンマーパンチを軽々避ける二人。そのままギガンテスの右手を橋代わりにギガンテスの頭部まで縮地で一直線に駆け上がる。その右腕に向けて目から破壊光線を放つも、金剛によって防御力の上がった光輝は剣を盾にそのまま光線を受け止めながら構わず突き進む。後ろに控えていたハジメは光輝の肩を踏み台に上空へ舞い上がり、ドンナー・シュラークを使ったガン=カタでギガンテスの頭部を攻撃する。突然の衝撃に怯んだギガンテス。その隙を当然見逃すはずも無く、光輝が技を放つ。

 

光輝「万翔羽ばたき、天へと至れ・・・天翔閃!!」

「ウギャアアアアアア・・・!!!」

 

ギガンテスの両目を飛ぶ斬撃で全て潰す光輝。ギガンテスは当然悲鳴を上げながら両目を左手で覆い始める。間髪入れずに畳み掛ける二人は両耳の位置に立ち、一斉に攻撃を仕掛ける。右耳に立つ光輝は右耳に剣を突き刺し、蓄えた魔力を 注ぎ込んで内部から爆発させる”光爆”を発動し右鼓膜を破壊、更に左耳に立つハジメは手榴弾を左耳に流し込み左鼓膜を破壊、両耳の鼓膜を破壊する事でギガンテスの視覚と聴覚を完全に奪い取る。そして、地上では数万匹いたスカルモンスターは雫・龍太郎の手によりほぼ壊滅状態に追いやり、ギガンテスに対し攻撃を仕掛ける余裕が出来た。雫の指示により、龍太郎を右足のアキレス腱破壊に向かわせ、雫は左足のアキレス腱を狙う。

 

雫「雷の悉く駆け抜け、風の悉く悪を無慈悲に断絶せよ・・・紫電一閃!」

 

光輝の手により疾風迅雷刀から更に進化した武器”天雷旋風刀”の固有能力を使用する雫。刀を鞘に納刀後、電撃を刀に纏わせ抜刀術の構えに入る雫はそこから刀の持ち手を逆手に取る。電撃は刀のみならず両足に溜め込まれ、詠唱が終わった瞬間に雫は完全に姿を消し、独楽のように回転しながら抜刀した瞬間に鎌鼬を起こさせる。鎌鼬・雷撃の二弾攻撃に寄る抜刀術により巨大なギガンテスのアキレス腱をいとも簡単に斬り落としバランスを崩させる。

 

龍太郎「地獄の炎よ!思う存分猛り怒り我に集約せよ!!・・・剛烈焔皇拳(ごうれつえんおうけん)!」

 

光輝の手により煉獄炎龍拳から更に進化した“轟火灼熱拳”の固有能力を行使する龍太郎。両拳に黒い炎が混じったエネルギーを溜め込み、そのままギガンテスの右足に突進する形で近づき右拳と左拳を同時に出す形で撃ち込み燃え上がらせる。こちらもギガンテスのアキレス腱を焼切る形で完全に斬り落とすのであった。その様子を後方で見ていたシアは驚きを隠せずにいた。

 

シア「凄い・・・あんなでかい化物を確実に追い込んでます・・・。」

香織「あの二人ならあれぐらいなら当然だよ。・・・光輝君もね。」

シア「!・・・漏れた敵がここに・・・!下がって下さい!」

香織「あ・・・あの数なら私の魔法で一網打尽にした方が手っ取り早いね。」

シア「え?」

香織「”壊劫えこう”」

 

ユエ同様に重力魔法のトリガーを唱える香織は片手をスカルモンスターにかざす。その瞬間、目の前に襲い来る複数のスカルモンスターが急に宙を浮き始めそのまま薄らと黒い球体状にまとまり始める。手を開いた片手をギュッと握り締めた瞬間、周囲の重力がそのまま中心に圧縮されスカルモンスターを押しつぶす形で一網打尽に相当する事に成功する。ユエに勝るとも劣らない魔法攻撃にシアは呆気にとられてしまう。

 

シア「(今のは重力魔法・・・私達以外にも神代魔法を習得してたなんて・・・。)」

 

香織達が後方を陣取ってる最中、両足を駄目にされたせいでギガンテスは完全に動けなくなり、そのまま跪く形で沈黙する。最後の仕上げと言わんばかりにハジメは残った火器兵器(ロケットランチャー)をギガンテスの顔に打ち込みながらその場から縮地で脱出する。

 

ハジメ「止めだ!!決めろ勇者!!」

光輝「天よ・・・地よ・・・火よ・・・水よ・・・森羅万象を司る4大元素よ・・・我の元に集い、悪しき者へ穿ち滅ぼせ・・・!」

 

”フォースメタリカルソード”から更に進化させた”スプリームソード”4大元素を刀身に集結させ、必殺の一撃を放つ準備を完了させた光輝。虹色に輝く刀身から火・水・土・風の魔法陣を銀色の頭の四方に出現させ、4大元素の攻撃が魔法陣から継続的に放出させギガンテスを拘束する。そして、上空から止めの一撃を振り下ろす光輝は最後の必殺技名を言い放つ。

 

光輝「光よ!!闇よ!!・・・最後の理を持って邪悪に鉄槌を下し平和を斬り開け!!・・・天覇六英剣!!!」

 

止めの一撃をギガンテスの脳天に打ち下ろす光輝。最後の悪あがきか、ギガンテスは野性の勘で上空に右拳を打ち込み光輝の一撃を食い止める。しばらく拮抗するも、光輝の咆哮が後押しする様に剣戟が押し込まれ、とうとうギガンテスの右手ごと斬り裂かれ始める。そのまま脳天へと斬撃は移され地上へと着地した時にはギガンテスは真っ二つに引き裂かれ消滅した後であった。それと同時にギガンテスの配下にあったスカルモンスターは消滅、戦いは完全に幕を下ろしたのだった。全てが終わったと確信したウルの街の住民は喜びの声を上げ、愛子先生は安堵し、そして生徒達も住民たち同様に喜びの声を上げる。全てが終わり、広場の一か所に合流し始める雫達。そして最後に光輝とハジメが下らない話を駄弁りながら雫達の元へ両隣りで歩み寄る。

 

ハジメ「んだよ・・・何か言いたい事でもあんのか?」

光輝「あぁ・・・山ほどあるね。・・・まず一つ目、なんだこの似合わないタイは?その恰好も・・・金持ちのお嬢様に仕える執事か!」

ハジメ「ほっとけ余計なお世話だ。オルクスの住処で服のサイズが合うのはこれしかなかったんだよ。」

光輝「それにその眼帯・・・中二病全開じゃん。」

ハジメ「るせぇ、これもワケがあんだよ。引っ張んな馬鹿!!」

光輝「じゃあお前の武器名・・・設計図で見たけど・・・ドンナーだっけか?大方他の武器もドイツ語で統一してるだろ?」

ハジメ「む・・・それは・・・!」

光輝「昔っからドイツ語はお洒落でかっこいい単語の発音だって、俺の家でアニメ見ながらぼやいてたからなぁ~・・・中二病患者にはピシャリだろうね。まさかこの異世界に来ても中二病を発症しまくるとは思わなんだけど。」

ハジメ「うるせぇ!!人のネーミングセンスにケチつけんじゃねぇよ!お前こそなんだその武器とさっきの技名は!?天覇六英剣って・・・テイルズの秘奥義かってんだ!武器だって特撮ドラマに出てくるみたいにカラフルなもん使いやがって!ガキんちょの玩具か!」

光輝「必殺技はしょうがないだろ!こういう仕様なんだから俺のせいじゃないよ!この武器だって元は君のだっての!・・・まぁ、魔改造したのは俺だけどね。」

ハジメ「・・・ッヘ!」

光輝「・・・ッフ!」

パァン!!!!

 

互いにからかい罵り合いながらも両隣りで歩きながら馬鹿にしたように笑った瞬間、小気味の良いハイタッチを互いにかわすハジメと光輝。その姿を見て雫はある種の感激を覚えながら二人を見つめながら迎え入れる。

 

雫「全く・・・数か月も待たせるんだから・・・。お帰りなさい・・・南雲君。」

ハジメ「おぉ八重樫・・・ただいま・・・。」

龍太郎「モヤシ野郎がしばらく見ない間にタフガイヘ変わったなハジメ。」

ハジメ「お前のゴリマッチョぶりは相も変わらずだな龍太郎・・・それと白崎・・・。」

香織「ハジメく~ん!」

ハジメ「ん?あそこか・・・。」

光輝「ほら、とっとと行ってハグの一つでもしてきなよ。」

ハジメ「うお!おい押すなよ・・・。」

 

ハジメのケツを思い切り叩き、向かってくる香織の前に無理矢理押し出す光輝。ハジメが苦情を立てる前に香織がハジメの胸元にダイブし思いきり泣きじゃくる。

 

香織「ハジメぐん・・・生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて・・・ひっく・・・ゴメンねっ・・・ぐすっ!!」

ハジメ「・・・何つーか、心配かけたようだな。・・・あのオルクスの住処でお前等を待って無くて悪かったよ。まぁ、この通り・・・しっかり生きてっから・・・謝る必要はないし・・・その、何だ・・・泣かないでくれ・・・。」

 

そう言って香織を見るハジメの眼差しは、いつか見た「守ってくれ」と言った時と同じ香織を気遣う優しさが宿っていた。あぁ・・・あの時のハジメのままだと確信した香織はあの夜でかわした約束で胸がいっぱいになり香織は再びハジメの胸に蹲る。胸元に縋り付いて泣く香織に、どうしたものかと両手をホールドアップしたまま途方に暮れるハジメは立ちながら頭をポリポリとかく。光輝はその様子を見ながら雫と龍太郎の元へ合流しその様子をじれったく見守りながらボソボソと悪態を突く。

 

雫「(私の親友が泣いているのよ!抱きしめてあげてよぉ!意気地なし!)」

龍太郎「(ここに来てなに照れくさい仕草かましてんだよ腰抜け!)」

光輝「(見た目が変わっても中身はふにゃちんのままだからね。)」

ハジメ「聞こえてんぞてめぇらぁ!」

シア「(ムムム・・・あの子が白崎香織さん・・・ハジメさんのお話通り・・・完全にホの字です!・・・油断なりません!)」

ユエ「(恐らくあの女が白崎香織・・・この泥棒猫!)」

 

その様子をシア同様に遠目で見ていたユエは嫉妬の炎を密かに燃やす。一刻も早くハジメの元に向かいこの状況を断固阻止したかったが自身の体力と魔力が残りわずかと言う事もあり、遠くにいるハジメ達の所へ向かう余裕は無かった。

 

ハジメ「やっべ・・・忘れるところだった。ちょっと回収に行ってくる。」

光輝「回収?」

ハジメ「この魔物の軍勢を率いてきた張本人だ。クラスメートの一人・・・清水が今回の主犯だ。」




さぁ、清水の運命やいかに

ハジメに気のある園部優花はウルの町での騒動以降、ハジメ達の仲間として付いて行く

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