清水「・・・。」
光輝「まさか彼がこの騒動の主犯だったのか・・・。」
気絶させた清水を連れてきたハジメ。今回の犯人が自分達のクラスメートと知り、驚愕する愛子と優花たち。未だ白目を向いて倒れている清水に、愛子が歩み寄り愛子は悲しそうに表情を歪めつつ、清水の目を覚まそうと揺り動かし拘束を解き始める。デビッド達が、危険だと止めようとするが愛子は首を振って拒否する。拘束も同様だ。それでは、きちんと清水と対話できないからと。愛子はあくまで先生と生徒として話をするつもりなのだろう。やがて、愛子の呼びかけに清水の意識が覚醒し始めた。ボーっとした目で周囲を見渡し、自分の置かれている状況を理解したのか、ハッとなって上体を起こす。咄嗟に、距離を取ろうして立ち上がりかけたのだが、まだ後頭部へのダメージが残っているのか、ふらついて尻餅をつき、そのままズリズリと後退りした。警戒心と卑屈さ、苛立ちがない交ぜになった表情で、目をギョロギョロと動かしている。
愛子「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません・・・先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか・・・どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」
清水「なぜ?そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって・・・勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに・・・気付きもしないで、モブ扱いしやがって・・・ホント、馬鹿ばっかりだ・・・だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが・・・。」
反省どころか、周囲への罵倒と不満を口にする清水に、玉井や園部など生徒達が憤りをあらわにして次々と反論する。その勢いに押されたのか、ますます顔を俯かせ、だんまりを決め込む清水。
愛子「そう、沢山不満があったのですね・・・でも、清水君。みんなを見返そうというのなら、なおさら、先生にはわかりません。どうして、町を襲おうとしたのですか?もし、あのまま町が襲われて・・・多くの人々が亡くなっていたら・・・多くの魔物を従えるだけならともかく、それでは君の価値を示せません。」
清水「・・・示せるさ・・・魔人族になら」
愛子「なっ!?」
清水の口から飛び出したまさかの言葉に愛子のみならず、ハジメ達と光輝を除いたその場の全員が驚愕を表にする。清水は、その様子に満足気な表情となり、聞き取りにくさは相変わらずだが、先程までよりは力の篭った声で話し始めた。
清水「魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな・・・その魔人族は、俺との話を望んだ。そして、わかってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと・・・魔人族側と契約したんだよ」
愛子「契約・・・ですか?それは、どのような?」
清水「・・・畑山先生・・・あんたを殺す事だよ」
愛子「・・・え?」
清水「何だよ、その間抜け面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか?ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ・・・豊穣の女神・・・あんたを町の住人ごと殺せば、俺は魔人族側の勇者として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし・・・だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに!・・・何だよ!何なんだよっ!何で、六万の軍勢が負けるんだよ!奥何で異世界にあんな兵器があるんだよっ!お前は、お前は一体何なんだよっ!」
最初は嘲笑するように、生徒から放たれた殺すという言葉に呆然とする愛子を見ていた清水だったが、話している内に興奮してきたのか、ハジメの方に視線を転じ喚き立て始めた。その眼は、陰鬱さや卑屈さ以上に、思い通りにいかない現実への苛立ちと、邪魔したハジメへの憎しみ、そして、その力への嫉妬などがない交ぜになってドロドロとヘドロのように濁っており狂気を宿していた。ハジメはその様子をただボーっとした態度で聞いていた矢先、清水がその次に憎しみの目を向けたのはその隣にいた光輝だった。
清水「それに・・・お前もだよ!!勇者!!お前さえ邪魔しにこなきゃ奥の手のギガンテスでこいつら全員を皆殺しに出来たんだ!!!お前は良いよなぁ!!何の努力も無しに最初から勇者に選ばれて周りからチヤホヤされて・・・何でお前ばっかり・・・俺が・・・俺が先に勇者になれれば・・・特別に選ばれれば・・・お前なんかよりもっと活躍できたのに!!」
光輝「(勇者になれれば・・・ね・・・。)」
光輝はハジメ同様に清水の発言に特に何も感慨も沸かずに適当に聞いていた。愛子は一つ深呼吸をすると激昂しながらも立ち向かう勇気はないようでその場を動かない清水の片手を握り、静かに語りかけた。
愛子「清水君。落ち着いて下さい」
清水「な、なんだよっ! 離せよっ!」
愛子「清水君・・・君の気持ちはよく分かりました。特別でありたい。そう思う君の気持ちは間違ってなどいません。人として自然な望みです。そして、君ならきっと特別になれます。だって、方法は間違えたけれど、これだけの事が実際にできるのですから・・・でも、魔人族側には行ってはいけません。君の話してくれたその魔人族の方は、そんな君の思いを利用したのです。そんな人に、先生は大事な生徒を預けるつもりは一切ありません・・・清水君。もう一度やり直しましょう?みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?」
清水は、愛子の話しを黙って聞きながら、何時しか肩を震わせていた。生徒達も護衛隊の騎士達も香織達も、清水が愛子の言葉に心を震わせ泣いているのだと思った。実は、クラス一涙脆いと評判の園部優花が、既に涙ぐんで二人の様子を見つめている。だがその様子を見たハジメは不審な眼で光輝を見て、それに気づいた光輝は同様に首を傾げる。肩を震わせ項垂れる清水の頭を優しい表情で撫でようと身を乗り出した愛子に対して、清水は突然、握られていた手を逆に握り返しグッと引き寄せ、愛子の首に腕を回してキツく締め上げたのだ。思わず呻き声を上げる愛子を後ろから羽交い絞めにし、何処に隠していたのか十センチ程の針を取り出すと、それを愛子の首筋に突きつけた。
清水「動くなぁ!ぶっ刺すぞぉ!」
裏返ったヒステリックな声でそう叫ぶ清水。その表情は、ピクピクと痙攣しているように引き攣り、眼はハジメに向けていた時と同じ狂気を宿している。愛子が、苦しそうに自分の喉に食い込む清水の腕を掴んでいるが引き離せないようだ。周囲の者達が、清水の警告を受けて飛び出しそうな体を必死に押し止める。清水の様子から、やると言ったら本気で殺るということが分かったからだ。みな、口々に心配そうな悔しそうな声音で愛子の名を呼び、清水を罵倒する。
清水「いいかぁ、この針は北の山脈の魔物から採った毒針だっ!刺せば数分も持たずに苦しんで死ぬぞ!わかったら、全員武器を捨てて手を上げろ!おい、厨二野郎にエセ勇者!特にお前等は俺の作戦を台無しにしやがったんだ!!銃と剣を全部こっちに寄越せ!それと他の兵器もだ!」
ハジメ「いや、お前、殺されたくなかったらって・・・そもそも、先生殺さないと魔人族側行けないんだから、どっちにしろ殺すんだろ?じゃあ、渡し損じゃねぇか・・・なぁ光輝?」
光輝「っというか言ってる事が支離滅裂だよね。人質取ったり虐殺しようとしたり・・・勇者ってなんだっけ?まず清水の中の勇者設定どうなってるの?」
清水「うるさい、うるさい、うるさい!いいから黙って全部渡しやがれ!お前らみたいな馬鹿どもは俺の言うこと聞いてればいいんだよぉ!そ、そうだ、へへ・・・厨二野郎の奴隷も貰ってやるよ。そいつに持ってこさせろ!」
愛子「・・・し、清水君・・・どうか、話を・・・大丈夫・・・ですから・・・。」
狂態を晒す清水に愛子は苦しそうにしながらも、なお言葉を投げかけるが、その声を聞いた瞬間、清水はピタリと笑いを止めて更に愛子を締め上げた。
清水「うっさいよ!!いい人ぶりやがって、この偽善者が!!お前は黙って、ここから脱出するための道具になっていればいいんだ!!」
ハジメは溜息をつき、銃を渡す際にワイヤーを飛ばして愛子を引きはがし纏雷でもしてやろうと考えつつ、清水を刺激しないようにゆっくりとドンナー・シュラークに手を伸ばした。同様に光輝は雫に眼でチラリと合図を出し、パーティの中で一番俊敏性の高い彼女に愛子先生を救出させようと考えていた。雫は光輝の目線を察し、後ろで清水に気づかれないように刀に手を置く。清水の手を引き裂いてでも愛子先生を助ける気でいた。
シア「ッ!?ダメです!避けて!」
龍太郎「っち!」
そう叫びながら、シアは一瞬で完了した全力の身体強化で縮地並みの高速移動をし、愛子に飛びかかった。同じく龍太郎自身も気功を身体全体に纏わせ気の鎧を構築した後でシアと共に飛びかかる。突然の事態に、清水が咄嗟に針を愛子に突き刺そうとする。シアが無理やり愛子を引き剥がし何かから庇うように身を捻る。そのシアの前に立った龍太郎は高速で発射したであろう水のレーザーを硬化した腕で弾きコースを変える。そのコースは丁度愛子の頭を通過するコースであった。水流は清水の胸を貫通し、ハジメは水のレーザーを打ち込んだ方向から犯人を探しドンナーで撃つも、大型の鳥のような魔物に乗り込み現場から逃げてしまう。そして、シアの方は、愛子を抱きしめ突進の勢いそのままに肩から地面にダイブし地を滑った。シアは愛子を抱え、呼びかけるが愛子は顔を真っ青にし苦しむ。
光輝「先生!」
シア「毒針が掠っています!早く治療を!」
香織「私が!」
雫「お願い!」
シア「さっきはありがとうございます。助かりました。」
龍太郎「ん!?お・・・おぉ・・・。」
光属性の中級回復魔法”万天”を愛子にかけ、毒を直ぐに浄化する香織。香織の魔法が効いた愛子は元気を取り戻す。シアは自分と愛子を庇ってくれた龍太郎に感謝し、龍太郎は頬をポリポリ掻きながら照れる。一方で清水の胸には弾丸サイズの穴がポッカリと空いていた。出血が激しく、大きな血溜まりが出来ている・・・おそらく、もって数分だろう。その様子が目に入った愛子は清水の傍へ即座に駆け寄る。
愛子「清水君!ああ、こんな・・・ひどい!」
清水「し、死にだくない・・・だ、だずけ・・・こんなはずじゃ・・・ウソだ・・・ありえない・・・!」
愛子「香織さん!回復魔法を!お願いします!」
香織「は・・・はい!」
光輝「香織、待て。」
香織を遮り、光輝は愛子に近づく。清水が苦しみ悶える姿を見ながら光輝は愛子に対し至極単純な質問を始める。
光輝「助けるんですか?・・・先生を殺そうとした奴ですよ。」
愛子「確かに、そうかもしれません。いえ、きっとそうなのでしょう。でも、私が・・・そういう先生でありたいのです。何があっても生徒の味方、そう誓って先生になったのです。もっと清水君と十分に話し合えば・・・きっと彼も分かってくれます。」
光輝「・・・先生の考えは分かりました。・・・清水、俺の仲間なら君の傷を治せる・・・。」
清水「本当・・・か!?だったら・・・」
光輝「でもその前に一つだけ聞かせて欲しい・・・。・・・治ったら先生の言う通りに改心する?」
清水「す・・・するよぉ・・・。もう・・・こんなバカはやらない・・・何でも言う通りにするよぉ・・・・だからぁ・・・。」
光輝「・・・。」
清水「・・・う。」
光輝は清水の瞳をじっとみつめ清水の真意を確かめ始める。清水はキョロキョロと挙動不審になり、その結果・・・改心するという言葉が嘘偽りだったと判断、神速の速さで清水の首を斬り落とす。愛子を始め、園部を含む生徒達が驚きどよめく。そんな中、ハジメを含んだ香織とユエ達は光輝が取った行動に対し黙って静観する。
愛子「どうし・・て・・・。さっき分かりましたって・・・。」
光輝「賛同するとは言ってません。それに清水は嘘をついてました・・・今日と同じことを彼はまた繰り返す・・・そうなる前に殺しました。そもそも・・・この町だってハジメ達が居なかったら先生を含めて皆殺しにされてるところだったんですよ・・・そんな奴を野放しにしておく気も無いし教会も黙ってはいない。特に教会は親愛なる”エヒト様”の御意志の下で魔人族を根絶やしにしようと考えている・・・いくら召喚した異世界の人間といえど、魔人族に加担している清水を生かそうとは考えないでしょう。・・・違いますか?」
愛子「だからって殺す事なんて!王宮で預かってもらって、一緒に日本に帰れば、もしかしたら・・・可能性はいくらだって!」
光輝「それは・・・檜山に対しても同じことを言うんですか?」
愛子「!」
光輝「先生が生徒全員の味方でありたいのは分かります。だからと言って親友を傷つけ殺そうとした奴にまでそんな可能性を与えるなんて・・・俺は我慢なりません。日本に帰ったとしてもこれはれっきとした殺人未遂です・・・遺族だって黙っていないでしょう。その遺族に対して同じように先生は檜山を庇って、やり直すチャンスを与えろとか言うんですか?今回の清水に対しても同様ですよ。この騒動で死者が出たら・・・清水が改心する可能性を考えて許してくれというんですか?大切な者を奪われた者達に向かって・・・。」
愛子「それ・・・は・・・・。」
光輝「俺の死んだじいちゃんは弁護士でした。その敏腕振りで様々な人々を話し合いで救って来ましたが・・・その弁護に納得のいかない人間に殺されました。・・・言葉一つで何でも解決できるほど・・・人間は単純に出来てないんですよ・・・だから戦争がある。・・・俺達の世界でも・・・ここでも・・・。」
愛子「・・・。」
光輝「理想論を掲げるのは大いに結構ですけど・・・そのせいで殺される人間の身にもなってもらいたいものですね。性根が腐ってる奴は・・・何処まで行っても腐ってるんですよ。・・・そんな連中に言葉は要らない。」
愛子に対し情け容赦ない現実めいた言葉を叩きつける光輝。神殿騎士の護衛隊長であるデビッドが光輝に対して苦情を言おうとする前に、その言い方に腹が立った園部が愛子ちゃん護衛隊を代表して光輝に噛み付き始める。だが光輝の言い分に頭のどこかで納得していた彼女は途端に強い口調が弱くなってしまう。
優花「天之川・・・あんたそんな言い方・・・!愛ちゃ・・・愛子先生がどんな気持ちで清水に・・・!!」
光輝「・・・。」
優花「そりゃ・・・あんたの言い分は正しいよ・・・。・・・・正しいけど・・・。でも・・・・。」
光輝「・・・園部達がここに来たのだって、自分達で考えて何かしらの結論を出したからなんでしょ?何かしらの決意を固めたからなんでしょ?・・・何が正しくて間違ってるかなんて誰にも分からない。俺だってこの考えが正しいかなんて分からないよ。・・・だったらせめて、自分達が信じた事をやってくしかないんじゃないの?・・・お互いに。」
優花「・・・。」
光輝の言葉にとうとう優花は黙りこくってしまう。話しはこれで一旦区切る事となった。ウルの町にて騎士達と共にモンスターの死骸処理などの後始末、そしてフューレンのギルドへの言伝役に今回の騒動について報告する為、ハジメと光輝達はその日一日残る事となる。次の日に救出したウィルを引き連れフューレンに戻る事にした。お互いに初めて会う仲間達と色々と情報交換や自己紹介等をしたかったが、今日の戦いと後始末でほぼ一日が潰れてしまったため明日以降に後回しにするのであった。後始末を終え、簡単に夕食を済ませた一同はウルの町の宿屋で休み入る。一同がそれぞれの部屋に入り休みに入ったその夜、自室で休憩していた光輝の部屋にハジメが入ってくる。
ハジメ「俺だ光輝・・・ちょっと良いか?」
光輝「ん?どうしたの?」
宿屋のベランダに向かい始める二人。その時、夜食として持ち込んだサンドイッチと飲み物を手にした香織がハジメの部屋に向かおうと通路を歩いていた姿を偶々見かけ、二人の後ろをそっと付いて行き始める。
香織「(なんだろう・・・二人してどこ行くのかな?ちょっと気になるかも・・・。)」
ユエ「・・・あ。」
香織「ん?・・・あ。」
同じく戦闘で疲れた体を癒す為に飲み損ねたハジメの血を補給しようと部屋に向かおうとしたユエとこれまた偶然のタイミングでかち合う香織。ちなみにシアとティオは緊張から解き放たれた疲れから早々と寝静まっていた。ユエは手に持った香織の物から食べ物の臭いを嗅ぎつけ、ハジメの部屋にて二人で語らいながら夜食を食べる様を容易に想像する。ユエは香織にほんのちょっぴりと鎌をかけてみる。
ユエ「香織だっけ・・・それ、なに?」
香織「・・・別にぃ?何もぉ?」
ユエ「・・・逢引?」
香織「ち・・・ちがうもん!ちょっとハジメ君と二人で話を!・・・あ・・・。」
ユエ「泥棒猫め・・・。」
香織「む!そっちに言われたくないもん!」
ユエ「んん~・・・・。・・・今は止めておこう・・・二人が行っちゃう。」
香織「うん、そうだね・・・。」
一先ずの決着を置いておいて、ハジメと光輝の事が気になり追いかける二人。その先にはベランダに続くドアがあり、その先には既に何故か雫・優花・龍太郎がそこにいた。二人は二階のベランダに入った三人の会話を聞くために聞き耳を立てていた。
雫「?・・・香織。」
香織「三人ともなんで・・・?」
優花「別に・・・南雲と話をと思ったけど・・・先客がいたからね。」
雫「私は光輝だけどね。」
龍太郎「俺は暇だったからただの付き添い。」
香織「(雫ちゃんと龍太郎君はともかくとして、優花ちゃんはハジメ君と話?・・・・何故?何故!?何故ぇ!!?・・・何かある・・・間違いない!)」
ユエ「(この子からも・・・泥棒猫の匂いがぷんぷんする・・・。)」
ベランダの外で仲間がいる事も知らない一方ベランダで話を始める光輝とハジメ。ハジメはどこか気まずそうな感じで光輝に話しかける。メッセージを残したとはいえ、光輝達を待たずにオルクスの住処を出て行ってしまった事から、怒らせてしまったのではないかと気にしていた。
ハジメ「なぁ・・・光輝・・・。今の俺の姿・・・・。」
光輝「その姿・・・眼帯や義手・・・。・・・奈落の階層で負った怪我なのか?」
ハジメ「え?あぁ・・・まぁな。」
光輝「ユエと会うまで・・・ずっと独りだけで戦ってたんだよな・・・劇的にそういう姿に変貌したのも・・・それが原因だろ。・・・悪い、もっと早く助けに行きたかったよ。」
ハジメ「止せよ・・・確かにこうなったが、別にお前等のせいってわけじゃない・・・ちゃんとこうして俺を助けに来てくれたしな。それに俺を落としたのは・・・。」
光輝「檜山には、君を奈落に落とした事をゲロさせた。奴には相応の処遇をメルドさんが与えたよ。今は監禁されている。・・・多分君は納得しないだろうが・・・。」
ハジメ「そうか・・・まぁ今となっちゃあいつの事は別にどうだって良い。お前等以外のクラスメートの事に今更興味も沸かねぇしな・・・。」
まずはハジメに対し、奈落での出来事を話して謝罪する光輝。続いて清水についてハジメと光輝はお互いに話しを始める。ハジメが最初に聞いた質問・・・何故清水を殺したのか?
ハジメ「あのまま放っておいても、奴は死んだはずだ。何故殺した?」
光輝「先生に話した通りだよ・・・同じことを繰り返す前に殺す必要があったからだよ。」
ハジメ「そりゃ殺す理由ってよりかは助けない理由だろ?本当は・・・何でだ?」
光輝「・・・。」
ハジメ「・・・先生の為なんだろ?」
早い話が、愛子が清水の死に責任を感じないように意識を逸らしたのだとハジメは結論付ける。清水の言葉・・・自分が出会った魔人族の目的は、豊穣の女神である愛子の殺害であると。それは取りも直さず、愛子を殺すために清水を利用したということだ。最後のあの攻撃も、愛子を殺すために清水の体ごと貫いたのだ。その事を愛子が知れば彼女は酷く自分を責めたてる・・・自分のせいで清水が死んだ・・・その事実に彼女は心が折れるだろうと言う事を光輝は見越した上での殺害だとハジメは推測する。
光輝「それもあるし・・・本当の事を言うとな・・・人殺しを体験する良いきっかけにもなったからだ。」
ハジメ「・・・そうか。」
光輝「残酷な物良いかもしれないけど・・・そういうのがまかり通るのがこの世界だ。それに、先生の理想論に半分不信感を抱いてたのも本当だしな。先生の言い分を受け入れるって事は、檜山も許せって事になる・・・そんなの、受け入れられるわけがない。」
ハジメ「・・・先生の事なんだけど。俺が言うのも変だが・・・あんまり否定してやんないでくれ。」
光輝「・・・。」
ハジメ「俺も最初は、自分の依頼を優先してこの町の事を見捨てようとしたしな。・・・でも、後になって先生に言われたよ・・・大切な人以外の一切を切り捨てるその生き方はとても”寂しい事”・・・ってな。この言葉に・・・今も考えさせられている。奈落に堕ちて・・・生きる為に、帰る為に変わったが・・・変えちゃいけないものまで変えちまった・・・自分で今そんな気になってる。俺の良さを理解して、友達になってくれた連中が居たのにだ・・・。・・・先生の理想は幻想だ。ただ、世界が変わっても俺達の先生であろうとしてくれている事は本当に嬉しく思う・・・だから出来れば、折れないで欲しいと願っている・・・。」
そう・・・愛子先生は元来ハジメが持っていた他者を思い遣る気持ちを忘れないで欲しい気持ちを変わらず持っていたのだ。どんなに変わっても・・・それだけは捨てないで欲しいと願っていた。ハジメは奈落に堕ちる前の自分を友達として接してくれた光輝達の思い出を思い返し、今回のウルの町の魔物討伐に繰り出したと言う。かつて自分が持っていた優しさを忘れない為に。
光輝「・・・愛子先生の事であぁ言ったけど・・・もう半分は・・・俺、本当は嬉しいんだ。」
ハジメ「嬉しい?」
光輝「普通こんな人殺しが当たり前の世界に転移されたら、自分を保てずに壊れるだろ?それでも愛子先生は、全くブレずに清水に対しても優しい気持ちで接してなんとかやり直させようと尽力した。自分が殺されそうになっても・・・君の言うように俺達の先生であってくれた・・・あの人はやっぱり、俺達にとってかけがえのない頼れる先生だなって。」
ハジメ「・・・そうだな。」
光輝「だけど俺は、清水を殺した事に関してだけは間違った事をしたとは思ってない。幾ら先生に理想と信念があったとしても、この世界は人の命が酷く軽い。現に先生みたいな人格者に対しても、魔人族に誘惑された清水は反省するどころか簡単に命を奪おうとした。清水に限った話だけでなく、この先はもっと酷い奴が現れてもおかしくない。そんな連中に大切な仲間を殺されるぐらいなら、俺は今後も迷いなく相手を殺す。」
ハジメ「あぁ、その点はもっともだ。敵は殺す・・・それだけは変える気は俺も無い。そうでなきゃこの世界から無事に生きて故郷へ帰れないからな。さっき言ってた人殺しの体験は・・・間違っていない。俺が保障する。」
光輝「あぁ、ありがとう。・・・ついでになったけど、改めて言わせてくれ。・・・これからは、俺達もハジメ達と一緒に神代魔法を習得しに向かいたい。同行を、認めてくれるか?」
ハジメ「・・・ッヘ。今更改まってんじゃねぇよ・・・こちらこそ・・・よろしく頼む。」
ハジメと光輝は改めて仲間として共に同行する事を誓い合い、固く握手を結ぶ。二人の会話を聞き、最初に軽い気持ちで盗み聞きしていた一同の内、優花は途端に顔をしかめ二人の考えに対し自分自身良く考えさせられていた。優花は冷たい光輝の態度に対し最初は噛み付いたものの、光輝の深い考えを知り自分を見つめ直し始めていた。そして・・・同じようにベランダでの会話を一階の自室で聞いていた者が居た。愛子先生である。
愛子「・・・グス・・・ウゥ・・・(馬鹿!!泣くな・・・泣くな!!!)」
愛子は自分の甘さに打ちひしがれていた。自分がもっと現実を受け入れる強さと覚悟を持っていれば、光輝が清水を殺す事も無かったかもしれない。守るはずの対象である生徒にいつの間にか自分が守られている事に・・・愛子は恵まれた生徒の嬉しさと自分の情けなさから涙するも、そんな下らない事をする暇があるならもっと生徒の為に自分に出来る事を考えろと必死に自分に言い聞かせ涙を堪える。愛子同様に、優花自身も頭の中で自問自答を繰り返していた。
優花「(天之川は・・・ちゃんと先生の理想を理解していた・・・その上で先生を守る為に現実に向き合った。南雲もそう・・・ちゃんと現実を受け入れている。・・・それに比べて・・・私はどうなの?南雲の死を受け入れずに、ずっとこのままじゃいけないと思って自分なりに考えて動いていたつもりだった・・・でも、愛ちゃん先生を護るつもりで結成したつもりが、結局は先生に寄り添って依存してただけなんじゃないの?本当に愛ちゃん先生を護る気であるのなら、清水を真っ先に殺すべきだったのは私じゃないの?肝心な事を人に押し付けて・・・何やってんだ・・・私・・・。・・・これじゃあ、天之川に怒鳴られた時の無能な自分から脱出出来てない・・・南雲に助けて貰ったのに・・・無駄にしちゃう・・・)・・・私・・・部屋戻るよ。」
香織「うん・・・じゃあ私も。・・・龍太郎君、夜食に作ったサンドイッチあるけど少し食べる?」
龍太郎「ん?良いのか?じゃあ、貰うぜ。(食ったら・・・鍛錬でもしとくか。あいつ等だけに、良い恰好させられるかってんだ。)」
ユエ「フゥ・・・私も戻って休む。(ハジメの血は明日までお預けにしよう・・・。・・・それにしても・・・あの光輝って子・・・中々に見所のある子かも・・・ハジメの親友をやってるだけの事はある。)」
雫「・・・。」
優花と愛子とは対照的に、ハジメとの会話を聞くまでも無く香織・雫・龍太郎の三人は光輝の考えと行動自体に疑いは無かった。その為、光輝が清水を殺した時も黙って静観していた。ただ今はのんびりと軽い感覚でお喋りする空気でない事を悟り、大人しく部屋に戻り始める。ユエは光輝の考えとハジメとの友情を改めて知り、彼女の中で光輝に対する評価がかなり上がる事となった。各々の想いを胸に、一同はそれぞれが部屋に戻り始める。そんな中、雫だけは自分の部屋に戻らず光輝の部屋に入り彼を待つように椅子に座り始める。ハジメとの話を終えた光輝は自分の部屋に入った瞬間、雫が居た事に驚く。椅子に座っていた雫は光輝にそっと近づき、光輝の両頬を両手で優しく触りながら語りかける。
光輝「・・・どうしたの?」
雫「ちょっと言いたい事があってね。光輝・・・あんただけに・・・辛い思いは絶対にさせない。」
光輝「・・・え?なんだよ急に。」
雫「この世界から生きて皆で帰る為なら・・・私だって喜んで自分の手を汚す。・・・でも、ひとつだけお願い。」
光輝「?」
雫「どんなに手を汚しても・・・その心だけは・・・光輝のままでいて。・・・お願い。」
それは雫の純粋な願いだった。この先自分達が帰る為なら沢山の命を踏み台にする覚悟。勿論雫達もそれを光輝やハジメだけにさせる気は毛頭ない。ただ・・・雫が願った事は一つだけ・・・この世界に帰るその時が訪れた時に、光輝自身が光輝自身であって欲しい・・・ただそれだけだった・・・。光輝は雫同様に雫の片方の頬を右手で触る。
光輝「・・・甘い世界じゃない事は分かってるつもりでも・・・それでも、人殺しをした後は・・・凄く嫌な気分に陥る・・・あぁ、他人を犠牲に生きたんだって。心がどす黒くなった感じになったよ・・・。」
雫「・・・。」
光輝「雫の言う俺のままっていうのは分からないけど・・・でも・・・今以上に酷くならないようにはするよ。」
雫「馬鹿ね・・・。」
光輝を小ばかにするように笑い、そのまま何の躊躇も無く光輝とキスを交す雫。自分の想いを伝えるように深く長いキスの後で、顔を赤らめた雫は光輝に・・・自分が心から好意を抱いた恋人に対してハッキリと断言する。
雫「特撮やアニメが大好きで、変な所で凝り性で・・・それでいて仲間想いで正義感が強くて、どこかいつも悩んでばかりだけど、自分で懸命に考えて前に進もうとしてる・・・それが、私の知ってる大好きな天之川光輝よ。」
光輝「・・・あぁ!」
さぁ次はいよいよ修羅場かなぁ?
ハジメに気のある園部優花はウルの町での騒動以降、ハジメ達の仲間として付いて行く
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賛成
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反対