ありふれた職業と選ばれた勇者で世界最強   作:わったさん

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続いてはあの幼女とのご対面!


少女との出会い

その夜、個室の部屋にそれぞれ入り全員は各々の時間を久しぶりに過ごし始めていた。ハジメは今回の戦いで消耗した武器の数々のメンテナンス作業を自室にて行っていた所にユエが入ってくる。ハジメニウムが足りないと訳の分からない事を言いながら椅子で作業するハジメの後ろから首に巻き付き首にキスし始めるユエ。ハジメはいつもの事と割り切り構わず作業を続けていた。

 

ユエ「明日の買い物は私とティオがしておく。その代りシアを連れて楽しませてあげて。」

ハジメ「あぁ。・・・お前さっきと違ってやけに冷静になったな。」

ユエ「あの女を放っておくことは危険だから・・・女のカンが警告している・・・香織は何かをしでかす!」

ハジメ「なんじゃそりゃ・・・。」

ユエ「だから・・・それ終わったら沢山愛して?」

ハジメ「はいよ・・・。」

 

ユエとの甘々な時間がようやく始まる・・・ユエは振り向きざまのハジメの顔の両頬を両手で優しく触りながらキスを交そうとする・・・しかし・・・。

 

香織「お邪魔しまーす。」

ハジメ・ユエ「!!」

ハジメ「し・・・白崎・・・お前・・・ノックしたか?」

香織「したよ?コンコーンって・・・あれ?本当にお邪魔だった?」

ユエ「分かってるなら消えて・・・。」

香織「ん~・・・ま、気のせいか!」

ユエ「気のせいじゃない。消・え・て。」

香織「は~い、じゃあユエはハジメ君から少し離れようか。お菓子食べられないから・・・ね?」

 

ユエのボソリと喋る苦情に物ともせず香織は空気を読まずに夜食に持ってきたクッキーと紅茶を持ち込み始め、一緒に食べようと誘うのだった。打って変って不機嫌になったユエは香織の手によってハジメから無理矢理引きはがされ椅子に座らされる。

 

ユエ「(香織・・・意外と力強い・・・)」

香織「どう?美味しい?」

ハジメ「お?・・・おぉ・・・美味しいよ。」

香織「本当?良かったぁ////」

ユエ「ボリ!ボリ!・・・シナモンが強すぎ・・・これじゃ後味が悪い。」

香織「・・・っち!・・・紅茶もどうぞ。」

ハジメ「おぉ・・・。」

香織「どう?美味しい?」

ハジメ「あぁ・・・美味しいよ。」

香織「本当?やったぁ////」

ユエ「ズズ!不味くも無いし特に美味くも無い・・・どっちつかずのどうしようもない紅茶・・・。」

ハジメ「(小姑かお前は!!!)」

香織「・・・っち!そっかぁ~そんなに不味いなら身体壊しちゃうかもだから、ユエは早く自分の部屋に戻って休んだ方がいいよ?っていうか休んで。」

ユエ「先に居たの私・・・紅茶とクッキー食べ終わったんなら消・え・て。」

 

異様に笑顔な香織と異様に冷静なユエ、両者の間に火花が飛び散り無言の冷戦が幕を開ける。このギスギスした空気に流石にハジメも二人のやり取りに内心ゲンナリしてしまい、若干縮こまりながらクッキーと紅茶を貪り続ける。そして、またしてもコンコンと扉の音が聞こえお客が入ってきた。

 

光輝「おぉ!ハジメ!まだ起きてたか!」

ハジメ「お、光輝か。(よかった・・・これで多少は空気も変わる・・・。)」

光輝「なになに?また二人してハジメを巡って仲良くお喧嘩中?」

香織・ユエ「仲良くは余計!」

光輝「あいあい・・・ハジメ、君にプレゼントを用意した。」

ハジメ「あ?何だよ?」

 

光輝がプレゼントと称したモノ。それは、ハジメ用の義手と義眼であった。以前オルクス大迷宮にて発見した特殊鉱石”ナノジウム鉱石”を利用して錬成したものだと光輝は説明する。魔力を込める事で強度・材質を素粒子レベルで自在に変化させる性質を利用し、見た目をコーティングした普通の左腕と右眼球を用意したものだと説明する。更に左腕と右眼球には微弱だが魔法を半永久的に定着させる作用を施されており、これにより人間の視神経・腕の神経へナノジウム鉱石がチューブの様に変化し神経へ絡み取り魔法を伝えることで、腕を自在に動かしたり見えるようになると言う。

 

ハジメ「マジか・・・!」

光輝「論より証拠だ。付けてみて。」

 

左腕と右目を付け替えてみるハジメ。その見た目は、無くなった腕と目が復活したのかと見まごう如きの作りであった。神経に絡みつく違和感が最初はあったものの、それも次第に無くなり違和感が無くなったとハジメは言う。左眼を隠し右目が見える事を確認し、左腕もグーパーを繰り返し動く事を確認する。そして最後に鏡で自分の姿を再確認しながら自分の姿に感動する。

 

ハジメ「・・・。」

光輝「どう?まだ違和感あるか?」

ハジメ「・・・サンキュ。(過ぎた友達を持ったもんだ・・・マジで・・・。)」

香織「ハジメ君に腕と目が・・・。・・・ハハ・・・凄い!!凄いよ光輝君!!」

ユエ「私からも言わせて・・・ありがとう。」

光輝「良いんだよ。これぐらいは当然だ・・・(奈落に落ちた君を助けられなかった君に対するせめてもの償いだ・・・。)あ、クッキーだ。俺も食べて良い?」

香織「良いよ、食べて食べて。」

ガチャ!!

龍太郎「よぉ!ハジメェ!遊びに来たぜぇ・・・ってあぁ!」

ハジメ「なんだよ、皆しておそろいか。」

雫「どうしたの?・・・あぁ!!南雲君・・・腕と目が・・・!」

ユエ「ハジメさん!?」

ティオ「何と!?ご主人様に手と目が生えておる!」

香織「あはは・・・もっとくクッキー作っておけばよかった・・・。」

 

結局その夜は全員がハジメの部屋に入り、楽しくお喋りしながら夜の時間を全員で過ごすのであった。そして翌日、ハジメはユエと約束どおり観光区へとデートへ行く事となった。ティオとユエは買出しに、香織は放っておくとユエと香織に何をするか分からない為、龍太郎は香織を連れて自分達の分の食料買出しと息抜きの散歩のために別行動で市街地へ買出しに出かけることにした。そして・・・

 

雫「ふぅ~・・・久々にゆったりした時間を過ごせそうね。」

光輝「あぁ・・・ハジメとも再会出来たし一安心だ。・・・どこ行く?」

雫「光輝と一緒なら、どこでも良いわよ。」

 

ハジメとシアがデートしている間、光輝と雫も同様にデートにしゃれ込んでいた。自然に恋人つなぎをしながら市街地を歩きまったりする。市場でお菓子を食べ他愛の無い話をしながら歩き、大道芸を見たりサーカスを鑑賞したりするなど、二人は少しばかりの平和な時間を充分に噛み締めていた。そして・・・誰も居ない広場の隅に座り、二人は飲み物を飲みながら休憩に入る。

 

光輝「ハァ~・・・かなり息抜けた~・・・。」

雫「そうねぇ~・・・。・・・良い天気・・・昨日までの戦いが・・・嘘みたい・・・。」

光輝「・・・戦争とかが今も行われているのが・・・本当嘘みたいに感じるよな・・・。」

雫「・・・。・・・ねぇ・・・光輝・・・。」

光輝「ん?」

雫「・・・帰れなかったら・・・どうする?」

光輝「え・・・?」

雫「・・・神代魔法の力を持ってしても、私達のいた世界に帰れなかったとしたら・・・この世界で私達は生きてかなくちゃいけなくなる・・・そうなったら・・・。」

光輝「なるようにしかならないよ・・・。たらればの話をしても仕方が無い・・・仮に帰れなかった場合はその時はその時でまた考えるさ・・・ここには知り合いも家族もいるわけじゃないし不安も多いかもだけど・・・ちゃんと俺達のことを尊重してくれる人たちもきっと居るはずだ・・・人種に関係なくね・・・シアやユエにティオさん・・・キャサリンさんやメルド団長みたいに・・・きっと居る。もっと前向きにいこう、帰れなかったら俺達の世界にある物や建物なんか俺とハジメで作るからさ。」

雫「・・・フフ!二人なら本当に出来ちゃいそうね・・・。」

光輝「まずはサイド7を作ろう!ガンダム・ガンキャノン・ガンタンクを揃えて・・・ユニコーンガンダムも作れば・・・。」

雫「もうガンダムネタは良いから・・・。普通の町にしてちょうだい・・・。」

光輝「あ、そう?それじゃあギルドを作ろう!俺がリーダーでハジメが副リーダー・・・龍太郎は力持ちだからそうだなぁ~・・・」

雫「(フフ・・・本当・・・あなたと一緒なら退屈しそうに無いわね・・・。)」

 

明るく話す光輝を見ながら顔を赤く染め微笑する雫。この先帰る方法が見つからなかったとしても、愛する彼と一緒にいつまでも生きていこう・・・再度認識して光輝をいつまでも見つめ続けていた。一通りの話を再び終えて市街地をまた歩き始める。路地裏を気まぐれに歩いていた二人・・・その先には下水の中に入ろうとする何者かが居た。

 

光輝「ん?・・・シア!」

シア「!・・・あぁ!光輝さん達!ハジメさん!二人ですよ!」

ハジメ「やっぱお前らか・・・ちょっと付き合え。」

雫「どうしたの?」

 

気配感知で二人が近づいていたことを予め感じていたハジメは二人にも手伝って貰うべく下水に入ることとなった。ハジメの話では気配感知で下水に弱っている子供を感知したという事であった。愛子に言われた”寂しい生き方”をしないという言葉を胸に行動した結果だとハジメは言うが、三人はハジメのツンデレ発言に若干ニヤニヤしながら先へ進む。少し進んだその先にはなんと、下水に流されてやってきた子供であった。早速ハジメは地面に手をついて錬成を使い、格子をせり上げさせて子供を引っ掛ける。”じゃあ私が!!”と下水の中に入ろうとするシアを引き止め、代わりに入った光輝は子供を救助しお姫様抱っこをしながら下水から上がってくる。

 

雫「三、四歳の女の子みたいね・・・それにこの耳のヒレ・・・」

シア「この子、海人族の子ですね・・・どうしてこんな所に・・・」

ハジメ「まぁ、まともな理由じゃないのは確かだな・・・。」

光輝「とにかくここを出よう。どこかこの子を休める場所を探さないと・・・。」

 

海人族は、亜人族としてはかなり特殊な地位にある種族であり、西大陸の果【グリューエン大砂漠】を超えた先の海、その沖合にある【海上の町エリセン】で生活している。彼等はその種族の特性を生かして大陸に出回る海産物の八割を採って送り出しているのだ。そのため、亜人族でありながらハイリヒ王国から公に保護されている種族なのである。差別しておきながら使えるから保護するという何とも矛盾した話である。そんな保護されているはずの海人族、それも子供が内陸にある大都市の下水を流れているなどありえない事だ。犯罪臭がぷんぷんしているとハジメを含む3人は推測する。路地裏から再び出てきた4人はこっそりと一目につかないように移動し、誰も居ない空き家へと移動する。何も無い空き家だったため光輝は宝物庫から新品の毛布と野宿に使っていた簡易ベッドを用意し子供を寝かせる。

 

???「・・・ん」

雫「あ・・・気がついた・・・」

ハジメ「光輝、錬成で浴槽を作っててくれ。」

光輝「分かった。」

 

海人族の幼女の鼻がピクピクと動いたかと思うと、パチクリと目を開いた。そして、その大きく真ん丸な瞳でジーとハジメを見つめ始める。ハジメも何となく目が合ったまま逸らさずジーと見つめ返した。そして海人族の幼女のお腹がクゥーと可愛らしい音を立てる。再び鼻をピクピクと動かし、ハジメから視線を逸らすとその目が未だに持っていたシアの露店の包みをロックオンした。シアが”これ?”と首を傾げながら、串焼きの入った包み右に左にと動かすと、まるで磁石のように幼女の視線も左右に揺れる。どうやら、相当空腹のようだ。シアが包から串焼きを取り出そうとするのを制止してハジメは幼女に話しかける。

 

ハジメ「お前・・・名前は?」

ミュウ「ミュウ・・・。」

ハジメ「そうか。俺はハジメで、うさ耳のそっちはシア。・・・ポニーテールの女は八重樫雫、今浴槽を作ってる男は天之川光輝だ。それでミュウ。あの串焼きが食べたいならまずは体の汚れを落とせ・・・。」

光輝「ハジメ、準備ができたぞ。」

ハジメ「よし・・・今から簡単だがお風呂を用意する。八重樫とシアはミュウの身体を入念に洗ってくれ。後で石鹸とタオルを渡す。」

雫「分かったわ。」

 

ハジメは、光輝が作った簡易の浴槽に”宝物庫”から綺麗な水を取り出し浴槽に貯め、更にフラム鉱石を利用した温石で水温を調整し即席のお風呂を作った。ハジメはまず下水によってばい菌だらけになってしまったミュウの身体をまずは綺麗に落とし始めることにした。シアと雫に薬やタオル、石鹸等を渡した後、ミュウの世話を二人に任せて自らは光輝と二人でミュウの衣服を買いに袋小路を出て行った。店でミュウ用の服を買った後、何かを思い出したかのように一度ギルドに寄り、ある依頼書を手にとってミュウの所へ帰り始める。二人はミュウについて話をしていた。

 

光輝「・・・あの子・・・どう思う・・・。」

ハジメ「何とも言えねぇよ・・・事情をミュウから聞かない事にはな・・・。」

光輝「・・・実は・・・昨日ちらっと見ただけだが、フューレンの支部に張り出されたギルドの依頼に気になる内容を思い出していた・・・それがこれだ。」

ハジメ「・・・裏オークション?」

 

ギルドの依頼書をハジメに見せる光輝。・・・それは、裏で秘密裏に取引されている多種族の裏オークションの現場を押さえるというものであった。オークションの元締めは通称”フリートホーフ”が牛耳っているという噂だけでその実態はまだ抑えられていない。ギルドも公的機関ではないため流石に踏み込み調査に乗り出せずに居るが、もしもこの噂が真実なのであれば、フューレンの沽券に関わるという事もあり公的機関が協力捜査という名目でこの依頼を出したという経緯があったそうだ。しかしこの依頼を受けた冒険者は誰一人帰って来なかったという。

 

ハジメ「成る程・・・そんな闇商売が明るみに出ればフューレンの評判ががた落ちになるから、早めに身内で片付けたいと・・・藁を掴む思いでギルドにも依頼を出してまぁ・・・ご苦労なこって。」

光輝「あぁ・・・ま、あの子が本当にそのオークションの競りに出されているかどうかは、ハジメの言う様にあの子から話を聞かない事には分からないけどね。」

ハジメ「・・・だな。・・・ほぼほぼお前の予想通りだろうが・・・」

 

ミュウの身辺について推測ながら把握する二人。果たしてミュウの行く末はどうなるのだろうか?




ミュウちゃんかわいい♡

ハジメに気のある園部優花はウルの町での騒動以降、ハジメ達の仲間として付いて行く

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