ありふれた職業と選ばれた勇者で世界最強   作:わったさん

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いよいよ最初の強敵と出くわす!


無能の失態

現在、ハジメ達はオルクス大迷宮の正面入口がある広場に集まっていた。メルドの指示に従い、ハジメ達はメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。迷宮の中は外の賑やかさとは無縁だった。縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、オルクス大迷宮はこの巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

メルド「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

光輝「はい!(よし・・・ハジメに教えて貰ったやり方で・・・雫!龍太郎!良いな!)」

龍太郎「(おぅ!)」

雫「(任せて!)」

光輝「後衛は威力を抑えた魔法攻撃を頼む!魔石の回収を忘れるな!」

恵里「はい!」

鈴「分かったよぉ!」

 

後衛に指示をした光輝は雫達にアイコンタクトを取り、ハジメから予め聞いたラットマンの情報を元に三人で連携を取り攻めたてる。ラットマンはボディビルダー体型の肉弾戦メインのモンスターであるが、動きは単調であり真っ直ぐにしか飛び込んでこない。故に闘牛士のように横へ移動しながら攻撃を加えれば簡単に攻撃を当てられる。そしてラットマンには弱点も存在する。余分な脂肪が特に無い胸に少し突き刺すだけで心臓を簡単に貫けると言う弱点だ。光輝達はラットマンに対する攻略法を実戦し、多数のラットマンをあっという間に蹴散らす。

その間に、香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入り、駄目押しの追撃を加えラットマンを瀕死の状態に追い込んだ。ラットマンから魔石を回収した光輝達はメルドに報告する。

 

光輝「魔石の回収完了しました。」

メルド「よし、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

生徒の優秀さに内心喜ぶも、他の生徒に気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達にメルド団長は肩を竦めた。

 

メルド「お前達、今回は訓練だからいいが光輝達の様に魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

メルド団長の言葉に香織以外の魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。前以ってある程度の連携は出来ているものの、光輝達以外は自分達の能力任せに戦っている節があり、一言で言えば調子に乗ってしまっている感が拭えなかった。そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

メルド「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合入れろ!」

 

ここまで、ハジメは特に何もしていない。一応、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したがそれだけだ。基本的には、どのパーティーにも入れてもらえず、騎士団員に守られながら後方で待機していただけである。なんとも情けない限りだとハジメは落ち込んでしまう。

 

ハジメ「(これじゃあ完全に寄生型プレイヤーだよね、はぁ~・・・)」

光輝「ハジメ。」

ハジメ「!」

光輝「そんなため息なんかつくな。お前の情報があったからこそここまで何の苦労も無くモンスターを倒せたんだ。」

香織「うん、南雲君の影の努力の賜物だよ!」

龍太郎「いちいちしょげんなよ。」

雫「南雲君は南雲君でキチンと役割を果たせてるわ。」

ハジメ「ありがとう・・・。」

 

ハジメの肩をポンと叩きハジメを励ます光輝と香織達。そう、落ち込む事は無い。信じてくれている友達の為にどんな小さなことでも積み重ねてレベルを上げる。そして光輝達を影で支えるんだ。そう心に再度刻み、気を引き締め仲間達と共に歩を進めるのであった。

 

龍太郎「ハジメ!頼む!」

ハジメ「うん!」

 

龍太郎が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきた。接近したハジメは手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

ハジメ「よし!」

雫「ナイス!」

メルド「(ほぉ・・・錬成をあんな実戦向きに応用して使うとは・・・中々面白いセンスをしているな。)」

 

魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。この応用技を見てメルドを含む騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。小休止に入り、光輝達と談笑している最中にふと前方を見ると香織と目が合った。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。昨夜の守るという宣言通りに見守られているようでなんとなく気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、香織が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた雫が苦笑いし小声で話しかけた。

 

雫「ボソ(香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?)」

香織「ボソ(もう、雫ちゃん!変なこと言わないで!私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!)」

光輝「ボソ(フフ、昨晩はお楽しみだったかな?)」

龍太郎「ボソ(お前・・・今度は香織に何を吹き込んだ・・・。)」

光輝「ボソ(大したことじゃない。ハジメに用事があるから会いに行くって聞いたから、それ相応の恰好をして行けって言っただけだ。)」

龍太郎「ボソ(それ相応の恰好って・・・なんだ?)」

光輝「ボソ(ネグリジェ。)」

龍太郎「ボソ(・・・。・・・良い趣味してるぜホント。)」

ハジメ「ボソ(やっぱり天之河君の仕業だったか!)」

光輝「ボソ(お礼は要らないよ。)」

ハジメ「ボソ(止めてよ!こっちは目のやり場に困ってまともに白崎さん見れなかったんだから!)」

光輝「(この様子じゃ結局何も無かった感じか・・・キスの一つでもしてツバつけとかないと、他の女の子にもしかしたら狙われるぞって言っといたんだけどなぁ・・・。)」

 

光輝達と会話を楽しんでいたハジメはふと視線を感じて思わず背筋を伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりと乗った不快な視線だ。その不快さは朝から何度も繰り返しており、ハジメはいい加減うんざりしていた。

 

ハジメ「(はぁ・・・もううんざりだよ・・・。)」

光輝「どうした?」

ハジメ「あぁ!なんでもない!(天之河君達には黙っておこう・・・今は戦いに集中して貰わなきゃ・・・。)」

 

一行は二十階層を探索する。ここまで楽勝だったせいか、一行は若干弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。どうやら魔物のようだ。

 

メルド「擬態しているぞ!周りをよ~く注意しておけ!」

雫「擬態と言う事は・・・ロックマウントですね・・・。」

メルド「!・・・よく知ってたな・・・!」

雫「有能な友人のおかげです。」

メルド「フ・・そうか。」

 

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラだ。

 

光輝「俺が先行します!(こいつもハジメの情報通りの相手なら・・・!)」

 

ロックマウントの特殊能力に関しても光輝達はハジメから既に知らされていた。それは、ロックマウントには固有魔法である威圧の咆哮があるということ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させるものである。その情報を予め熟知していた香織は既に魔法を打つ準備を完了していた。

 

光輝「香織!」

香織「優しき光を全てを抱く・・・光輪!」

 

無数の光の輪によって編まれた網によって衝撃を殺す魔法、光輪を放つ香織。本来であれば仲間を助ける際に使用する魔法であるが今回は事前に考えた光輝の策を実行、ロックマウントの口元を光の網で包み込み咆哮を上げさせないように仕向ける。作戦は見事に的中、ロックマウントは口を塞がれ自分の固有魔法を使えなくなり慌てふためく。

 

光輝「行くぞ!雫!龍太郎!」

雫「えぇ!」

龍太郎「おぉ!!」

 

三人がチャンスと言わんばかりに一気呵成に攻め立てる。ロックマウントの鳩尾に龍太郎は拳をめり込ませ、口元に纏わりついた網を取ろうとする両腕のガードを落とす。続けざまに突進し、首元を切り裂く光輝と雫。ロックマウントを見事撃破するのだった。

 

光輝「魔石の回収完了しました。」

メルド「よくやった!・・・一つ聞く・・・先ほどのフォーメーションは見事だったが、光輝の技”天翔閃”でも軽く倒せたんじゃないか?」

光輝「こんな狭い場所でそんな真似したら、洞窟内が崩落して生き埋めになってしまいます。」

メルド「だろうな・・・当然の事だが、よく戦況を読んだ。」

光輝「友達のおかげです。な!」

ハジメ「あはは・・・。」

香織「あれ、何かな?キラキラしてる・・・。」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。ロックマウントを倒した先にある奥の壁に青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

 

メルド「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

 

香織「素敵・・・」

檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長であった。

 

メルド「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

檜山「(っち!うるせぇおっさんだぜ!)」

 

しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長!トラップです!」

メルド「ッ!?」

 

しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

メルド「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」

ハジメ「この魔法陣!?」

光輝「あの時と同じだ!!」

 

メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが間に合わなかった。部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる違う場所へ転移される。ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。

 

メルド「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け!!」

光輝「聞いたな急げ!!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達の中、唯一光輝だけは直ぐに体勢を整え毅然と指示を出し、生徒達は直ぐに立ち上がる。しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が出現。現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

メルド「まさか・・・ベヒモスなのか・・・!?」

 




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