光輝がクラスメートとほぼ事実上の決別を言い放った数時間後、光輝の部屋で雫・香織・龍太郎が集まり、4人は今後の事を話し合う。
雫・香織・龍太郎「・・・。」
龍太郎「お前・・・何を考えてる。」
光輝「・・・皆・・・。・・・・俺は、もう一度オルクス大迷宮を目指したいと思う。それも・・・100階層を・・・完全攻略できるレベルにまで鍛えてからだ。そして・・・教会とも離反するつもりだ。」
雫「え!?南雲君はもう・・・!」
光輝「俺は、まだハジメを確認するまで諦めるつもりはない。無謀だし、ハジメの手がかりはもしかしたら見つからないかもしれない。・・・でも、ハジメは奈落に落ちたが・・・あいつの生死の確認まではしてない。・・・その為に、あの迷宮を隈なく探索するつもりだ。そこで・・・この一ヶ月で俺は自分のレベルをマックスにまで高めたい。」
龍太郎「レベル100!?いや・・・いくらお前でも・・・。」
光輝「今の訓練量を10倍にする。」
香織「10倍!?」
光輝「あぁ、この一ヶ月内で達成したい最低限の目標だ。・・・勿論、これは俺が勝手に決めた考えだし、一人でも俺はやるつもりだ。抜けたい奴が居るなら・・・今ここで言って欲しい。それだからと言って責めるつもりはないし、俺達の関係が変わるわけじゃない。・・・ここに残っても良い。メルド団長は信頼できる人物だ。あの人の考えに従って迷宮攻略にやる気のあるクラスメートと訓練を続ければ、いつかはあの迷宮を攻略する事も夢じゃないはずだ。ハジメも探せる・・・。」
雫「・・・。」
光輝「ただ俺は・・・悠長にやる気はないし、今のクラスメートと一緒になって何かをする気は無い。今日の事でよく分かった・・・あいつ等は、檜山と一緒だ。・・・そんな連中と一緒に戦えない。冷たいかもしれないし、これが正しい事なのかどうか俺には分からない。でも俺は・・・友達を簡単に諦めたくない・・・あいつが今も迷宮で独りぼっちでいるなら、早く助けたい・・・最悪な結果が待っていたとしても。・・・皆・・・・・どうしたい?」
光輝の無謀ともいえる考えを聞いた4人は数秒間無言になる。まともじゃない思考回路である事は光輝自身がよくよく知っていた。そんな中、雫は冷静な表情で光輝を見ながら若干馬鹿にした調子で発言し始める。
雫「あなたの気持ちも分かるし、考えも分かった。・・・でも、ハッキリ言って頭の良い考えとは思えないわね。確実性が全く無い考えだし、オルクス大迷宮を一人で攻略するなんて自殺行為と何ら変わりないわ。65階層のベヒモスにすら歯が立たなかったのよ・・・100階層ともなればどんな化物が相手になるのやら・・・イカれてるとしか言いようがないわ。」
光輝「・・・。」
雫「でもね・・・光輝・・・今の私があるのは、あなたがずっと私の傍に居てくれたからよ・・・。傍に居るあなたがそんな無茶をすると知って、今更ほっとくわけにもいかない・・・。・・・これまで通り、苦労人としてあなたの傍に居てあげるわ・・・。」
光輝「・・・いつ苦労をかけたっけ?」
雫「いつもよ・・・フフ!」
龍太郎「迷宮攻略を目指すってんなら、当然前衛で戦う仲間は多いに越したことは無いよなぁ・・・。・・・俺も行くぜ!」
光輝「その力自慢で、敵を悉くねじ伏せてくれ。」
香織「・・・。」
雫「香織・・・あなたは?」
香織「・・・前に南雲君と二人きりで話した時の事を思い出してた。” 天之河君を切っ掛けに、白崎さんとも坂上君とも八重樫さんとも仲良くなれた。天之河君が僕の世界を広げてくれたんだよ。”って・・・光輝君は、南雲君の事をとっても大切にしてるんだね。」
光輝「当たり前だろ・・・今更なんだよ。」
香織「・・・フフ、南雲君の事を勝手に諦めて落胆してた自分がバカバカしくなってきた。・・・うん、行くよ!!私も!!南雲君の事、絶対諦めない!」
龍太郎「ハジメの為だ・・・やろうぜ。」
光輝「・・・決まりだな。・・・ありがとう、皆。」
4人は全会一致で気持ちを一致団結し、光輝の無謀とも取れる考えに乗るのであった。この事は当然メルドと愛子にも報告、愛子は4人をなんとかここに留まらせる様説得したが4人の意志は硬かった。逆にメルドは厳しい表情を浮かべながら考え込む。かつて自分で言った通り、レベル100は人間としての潜在能力を全て発揮した極地とも言えるべき領域、メルド自身ですら未だに到達出来ていない。しかし彼らの気持ちも分からないわけでは無かった。あの後、ハジメを奈落に落とした真犯人である檜山の申告を王族たちに行った結果、エヒト様が召喚した勇者一向に汚点があってはならないという事で檜山をただの犯罪者として隔離し、ハジメの死は戦いの事故として処理をすると言う結論に達した。この王族たちの保身行為に流石のメルドも猜疑心を募らせ、その件を報告された光輝達も当然教会側との決別を更に強くした。そこでメルドは4人に対し条件を提示した。この一月で自分達の課した目標であるレベル100到達を確実に達成する事。これが出来なければ教会からの離反も認めずオルクス大迷宮への100階層攻略へも行かせないと言うものだった。その代り、何があってもクラスメート全員の安全は自分が保障するという、メルドらしい優しい約束だった。4人はその条件を呑み、今日から早速レベル100到達に向けて訓練を開始するのであった。そして・・・一週間後
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天之河光輝 17歳 男 レベル:100
天職:勇者
筋力:3000
体力:3000
耐性:3000
敏捷:3000
魔力:3000
魔耐:3000
技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術[+無念無想]・剛力・縮地[+爆縮地] [+重縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破[+覇潰]・言語理解
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白崎香織 17歳 女 レベル:70
天職:治癒師
筋力:300
体力:600
耐性:800
敏捷:700
魔力:1000
魔耐:700
技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇]・高速魔力回復[+瞑想]
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八重樫雫 17歳 女 レベル:70
天職:剣士
筋力:600
体力:700
耐性:500
敏捷:1300
魔力:500
魔耐:500
技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子]・縮地[+爆縮地]・先読[+投影]・気配感知・隠業[+幻撃]・言語理解
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坂上龍太郎 17歳 男 レベル:70
天職:拳士
筋力:1500
体力:1000
耐性:500
敏捷:300
魔力:200
魔耐:100
技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化]・縮地[+爆縮地]・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・言語理解
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この一週間で目覚ましい成長を遂げた4人。光輝に至っては一ヶ月待たずで既にレベル100にまで達成し、ステータス3000越えという勇者と呼ぶに相応しい力を手にした。しかし、光輝はこの成長に満足する事無く次のステージに向かう。
光輝「鍛冶の本は・・・これだったな。」
王立図書館を訪れ、鍛冶の本を読み漁り始める光輝。目的は残りの数週間でハジメに代わり自分達の武器を管理・調整・鍛冶をする為の技術を身に着ける事である。
雫「ここにいたの・・・光輝。」
光輝「あぁ・・・。」
雫「鍛冶なら王国の錬成師に頼めばいいのに・・・。」
光輝「いや、誰も信用できない。ましてハジメが作ってくれた装備を誰かに任せたくない。残りの数週間で錬成師に匹敵する技能を習得して俺が鍛冶をする。」
雫「天職でもないのに・・・出来るの?」
光輝「そんなの、やってみなくちゃ分からないよ。それに今の武器のままじゃ100階層が厳しいのも事実だ・・・。ハジメの装備をグレードアップする必要がある。・・・100階層を目指すと言い出したのは俺だ・・・皆の命を預ける装備を管理する役目は、俺が担う。」
雫「・・・分かった。なら私は、100階層分のモンスター・ボスの情報と攻略方法を書物から導き出すわ。」
光輝「頼む。雫には・・・また、苦労をかけるな。」
雫「こんなの苦労の内に入らないわ。・・・あなたの苦労を、私が勝手に貰っただけ。ボソ(あなたのそういう自分に厳しい影の強さに・・・私は昔から惚れてるのだから/////)」
光輝「・・・え?」
雫「////・・・何でもない。集中するわよ、時間無いんだから。」
光輝の覚悟を感じ取った雫は彼だけに重荷を背負わせまいと自分も役割を担い、彼の力になる。こうして光輝達の鍛錬と勉強は続いた。光輝の勉強の話を聞いた香織・龍太郎は光輝の頑張りに応えようと更に鍛錬に励み始め、雫を含めた3人はもう一週間でレベル100にまで到達する事に成功する。そして余裕が出来た残りの日数を使い、香織は後衛である自分の身に敵が近づいてきた最悪のケースを想定し、ロッド(メイス)を使用した近接戦闘を習得し始める。龍太郎は近接戦闘主体である自分の技の幅を広げる為に、遠距離に即した技、即ち気功波を習得する方向性へと向かう。各々が今の自分の実力に満足する事無くさらなる高みへ目指し始める。全ては親友であるハジメを救う為・・・その一心で鍛錬に励みに励んだ。そして・・・約束の期日である一ヶ月が過ぎた。
メルド「おいおい・・・マジか・・・!」
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天之河光輝 17歳 男 レベル:100 + 50
天職:勇者、錬成師(天職追加)
筋力:7300
体力:7000
耐性:6000
敏捷:5500
魔力:6500
魔耐:5200
技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術[+無念無想]・剛力・縮地[+爆縮地] [+重縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破[+覇潰][+超越]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系合成][+鉱物分離] [+複製錬成]・言語理解
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白崎香織 17歳 女 レベル:100 + 20
天職:治癒師⇒神官戦士(クラスアップ)
筋力:2000
体力:2500
耐性:1500
敏捷:1200
魔力:7000
魔耐:7500
技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+過剰回復]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇]・高速魔力回復[+瞑想]・棒術[+修羅] [+身体強化] [+部分強化]
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八重樫雫 17歳 女 レベル:100 + 20
天職:剣士、軍師(天職追加)
筋力:3200
体力:4700
耐性:4000
敏捷:7500
魔力:2000
魔耐:2000
技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+無拍子]・縮地[+爆縮地][+神速]・先読[+投影]・気配感知・隠業[+幻撃]・陣形指揮[+円陣体形][+突破体形]・思考共有・言語理解
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坂上龍太郎 17歳 男 レベル:100 + 20
天職:拳士⇒気功拳士(クラスアップ)
筋力:7500
体力:7100
耐性:2000
敏捷:2000
魔力:2000
魔耐:1000
技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化]・縮地[+爆縮地]・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・気功[+気功放出][+治癒功][+身体硬質化]・言語理解
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※装備一覧
■光輝
・フォースメタリカルソード(光属性・火属性・水属性・風属性・土属性)
・プラチナの鎧
・輝きの指輪(全ステータスアップ)
■雫
・疾風迅雷刀(風属性・雷属性)
・プラチナのベスト
・輝きの指輪(全ステータスアップ)
■香織
・アイシクルスプラッシュメイス(水属性・氷属性)
・プラチナのローブ
・輝きの指輪(全ステータスアップ)
■龍太郎
・轟火灼熱拳(炎属性)
・プラチナの道着
・輝きの指輪(全ステータスアップ)
4人全員がレベルを100以上に鍛え上げ、メルドを遥かに超えた力を身に着けた光輝達。ハジメから貰った武器に関しても以前よりも大きく強化が施されていた。何よりメルドが驚いていたのは、天職に新たな天職が追加・もしくはクラスアップしている事であった。
メルド「(鍛錬や勉強で後天的に天職が追加されたりクラスアップする例は極稀にあると聞いたことがあるが、実際に見るのは初めてだ・・・それもまさかたった一ヶ月で4人も・・・!・・・しかも、装備が尋常じゃないレベルでパワーアップしている・・・。これだけの真似が出来る錬成師が果たしてこの王宮にいるかどうか・・・!)」
光輝「メルドさん、約束です。これで俺達はオルクス大迷宮攻略を目指します。」
メルド「フゥ・・・力づくで止めろと言われても・・・今の俺じゃお前達の足元にも及ばんだろうな・・・。お前達なら本当に、行けるかもしれん。迷宮攻略を・・・!」
愛子「そんな・・・。・・・私は、反対です!!!」
雫「先生・・・それは約束と・・・。」
愛子「約束は約束でも!!!先生は認められません!!!どんなに強くても私にとっては皆生徒なんです!!!!先生は・・・先生は・・・・!!!!」
涙ぐむ愛子に近づく光輝。そのまま毅然とした態度で自分達の想いをそのまま愛子にぶつけ説得を始める。
光輝「先生・・・ありがとうございます。ですが、俺達は友達を見捨てたくないんです。今ももしかしたらハジメはたった一人で迷宮を彷徨ってるかもしれない。俺達の助けが来るのを信じて待ってるかもしれないんです!・・・希望的観測かもしれませんが、少しでも可能性があるのなら・・・俺は賭けます。その為に今日まで俺達は頑張って来ました。」
香織「南雲君を・・・諦めたくないんですよ・・・皆・・・。」
愛子「・・・!」
愛子は4人の固い意志と覚悟にそれ以上何も言えなくなった。愛子としてもハジメがもし生きているのだとしたらその可能性に賭けて迎えに行きたい気持ちは一緒だからだ。しかし、自分にはあの迷宮を攻略できる力は無い。生徒を戦わせたくないと言いながら生徒を戦わせてる・・・この矛盾に迷いながらも彼らに頼らざるを得なかった。
雫「先生・・・私達は明朝に出発します。他のクラスメート達の事は・・・よろしくお願いします。」
愛子「・・・。・・・分かりました。」
光輝「今日まで・・・お世話になりました。」
龍太郎「あざっす!!!」
香織「ありがとうございました!」
今日まで自分達のお世話をしてくれた先生、メルド団長に感謝の言葉を述べる4人。明朝に出発する事を伝えた後、クラスメートの中で仲の良かった数少ない友人たちに事情を話し、別れの言葉を告げに向かうのであった。
恵里「香織ちゃん。・・・気を付けて行ってきてね。私達・・・遠くからでも応援しているから・・・」
鈴「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンとシズシズの味方だからね!」
香織「うん、ありがとう。」
雫「二人とも・・・元気でね。」
別れを告げたのは中村恵里と谷口鈴の二人である。高校に入ってからではあるが香織達の親友と言っていい程仲の良い関係で、この一ヶ月でメルド団長から指導を受けている生徒に含まれている。ハジメの死が多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまい、戦闘などできなくなったメンバーの中では貴重な存在でもあった。中村恵里・・・メガネを掛けナチュラルボブにした黒髪の女の子。性格は温和で大人しく基本的に一歩引いて全体を見ているポジションだ。谷口鈴・・・身長142センチと女子にしても小さい子であるが、その小さな体から想像できない無尽蔵の元気が詰まっているクラスのマスコット的な存在だ。
光輝「・・・。」
恵里「光輝君・・・私達の事まだ怒ってるだろうけど・・・。」
光輝「俺が怒った事なら別に気にしなくて良いよ。自分達で考えてそう決めたんならそうすれば良いし、二人の考えや意思を否定する気は無いよ。メルド団長は良い人だ。あの人に付いて行けば、何も心配は要らない。」
恵里「・・・うん。」
光輝「ただ、教会の人間の事はあまり信用しない方が良い。連中は俺達を良いように操る事しか考えてない節がある。」
鈴「うん、そうするよ!あの人たち・・・戦いたくない子達をそれとなく復帰させようとしてきてる感じがしてた。」
愛子「ご心配なく!!戦いたくない生徒達は責任を持って私が絶対に守ります!!」
鈴「むしろ愛ちゃんが守られる感じじゃない?」
愛子「こらー!先生に向かって愛ちゃんとはなんですか!」
しばしの雑談をかわし、張り詰めていた空気が柔らかくなっていく光輝達。そこへメルド団長が険しい表情で光輝達に近づく。
メルド「4人共、ちょっと良いか?」
光輝「はい、何でしょう?」
メルド「お前達に・・・最後の特訓を付ける。」
最後の特訓、その言葉の意図が汲めない4人はそのまま夜の修練場へと向かう。いつも気さくな態度のメルドであったが今日は打って変わって鬼気迫る表情で4人と対峙し始める。最初の相手に選んだのは光輝だった。
メルド「これが俺に出来るお前達にしてやれる事だ・・・剣を抜け。」
光輝「え・・・しかしこのレベル差じゃメルドさんを・・・。」
光輝が喋る途中でメルドが突然剣を抜き光輝に襲い掛かる。光輝はギリギリでかわし距離を空けるが、突然の事に周囲は苦情を申し立てようとした所、メルドは構わず光輝に怒鳴り散らす。
メルド「俺を舐めるな!!!!・・・さっさと抜け。」
光輝「う!」
メルドの目がいつもと違う事にようやく気付き、剣を抜く光輝。メルドはいつもと違う調子で光輝達に最後の教えを述べ始める。
メルド「今からお前達に教える事は一つ・・・人を殺す覚悟だ。」
「!?」
メルド「何を驚いている・・・当然だろう。この先お前達は教会から離れ自分達だけで生きていくんだ。魔物だけじゃない・・・当然ならず者やら帝国兵士やらとも戦う時が必ず訪れる・・・だがその中にはお前等同様に友達・家族・・・愛する者の為に戦っている同じ人間も含まれる・・・それを分かっていても、お前達は必ず人殺しの場面に直面する。そうなった時にお前達は魔物同様に殺さなければならない・・・特に光輝。」
光輝「!」
メルド「お前の力は強大且つ高いカリスマ性を持っている。それ故に中途半端な情けを敵に向ければそれは他の仲間を危険に及ぼしかねない・・・。もし、この戦いの中で俺の教えを学ぶことが出来ないなら・・・・ここで死ね。」
香織「え?」
メルド「そんな半端者が居ては犠牲者が増えるだけだしな・・・上には適当にお前の死を伝えておく。残酷な言い分だと言いたいだろうが・・・それがまかり通るのが殺し合いだ。」
雫「光輝・・・。」
光輝「・・・。」
メルド「どうした?俺との戦いを放棄してビビッて尻尾を巻いて逃げても良いんだぞ。だがその場合は当然・・・坊主の救出は諦めてもら・・・。」
メルドが何かを言いかける前に思いきり握った剣を振るい、メルドの首筋を思い切り斬りつける光輝。メルドはギリギリで剣を受け止めるが光輝の目を見て生唾を飲む。目的の為なら、仲間を守る為なら、自分の命を差出し相手の命を奪う事を躊躇わない・・・目的の為の殺意、守るための殺意・・・その目には確固たる殺意と目的意識が宿っていた。
光輝「(俺は心の何処かで甘い考えを持っていた・・・メルドさんの言うように・・・俺は半端者だ・・・ゲームの世界の様な感覚にまだ酔っていた・・・レベル差でメルドさんを見下した台詞が良い証拠だ・・・自惚れるな!!!ここはゲームの世界じゃない!!・・・命の奪い合いが日常茶飯事の・・・殺し合いが当然の世界だぁ!!!!)ウァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
人殺しをする覚悟を決めるように自分を奮い立たせながら剣を振るい、メルドを力任せに押しに押す光輝。勇者と呼ぶにはあまりにも泥臭くあまりにも邪悪に満ちた殺意であったが、メルドはそれを嬉しそうに受け止める。光輝の覚悟を言われずとも感じ取った香織達はただ黙って見守っていた。
メルド「駄目だ駄目だぁ!そんな大振りじゃ敵に隙を突かれるぞ!」
光輝「フゥン!!」
光輝の攻撃をかわしつづけるメルド。埒が空かないとワンステップ後ろに下がる光輝。地面を思い切り剣で振り払い、砂埃を上げメルドの視界を遮る。砂埃が止んだ瞬間、光輝はメルドの前から姿を消し、メルドは周囲を見るが光輝を見つけられずにいた。その一瞬の隙を見逃す事無く、光輝は遥か上空から必殺の一撃を込める。
光輝「限界突破・・・!・・・万翔羽ばたき、天へと至れ・・・天翔閃!!!」
上空から限界突破で威力を強化させた天翔閃をメルドに向けて遠慮なく撃ち放つ光輝。レベル差を考えれば当たれば即死の攻撃であったが、メルドは辛うじて光輝の斬撃を避ける。砂埃で隙を作ったとはいえ、光輝は大技を放つのに時間をかけ過ぎたのだ。しかし、光輝はメルドの行動を既に読んでいた。限界突破で3倍に上がった身体能力で避けたメルドの直ぐ傍に接近した光輝。完全に虚を突いた光輝は殺意を持って剣を振るう。
メルド「!?」
光輝「ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
決着はついた。メルドは光輝の一撃を受けそのまま倒れ伏す。頸動脈を瞬時に斬られたメルドは倒れ伏したまま出血多量で動けずにいたが、光輝はそんなメルドに何の情けをかける事無く香織に回復魔法を命じる。慌てて香織は回復魔法をメルドにかけ、メルドは復活する。香織が居なければメルドは確実に死んでいただろう。
メルド「・・・。」
香織「あの・・・大丈夫ですか?」
メルド「人の心配をしている余裕はないぞ。次はお前達だ。」
香織「!・・・は、はい!」
メルド「次、龍太郎!来い!!」
龍太郎「お・・・オス!!!」
その後、雫達にも同様人を殺す覚悟を学ぶ特訓が続けられた。メルドは迷っていた。教育係として人を殺す覚悟を教える事は必須とは言え、異世界から来たろくに何も知らない子供に対してそれを教えるべきなのかどうか。段階を踏んで少しずつ教えて行こうと言う半端な考えをメルドは知らず知らず持ってしまっていた。しかし、今回光輝達が自分の元を離れ、少数精鋭でハジメを探しに行くと聞き、測り知れない力を身に着けた光輝達だからこそ今回この人を殺す覚悟を教える覚悟をメルドは持った。力が強大であればあるほど、それに比例して敵も増えてくる。その相手が魔物相手とは限らない・・・必ず人間同士の殺し合いにぶち当たるからだ。そして、光輝達は人を殺す殺意と覚悟をメルドから学び、本当の意味で強くなることが少しだけ出来たのであった。しかし今回の教えだけではまだまだ足りない・・・彼等の人殺しの覚悟が問われる場面はまだ先にある・・・メルドはそう懸念していた。
光輝「・・・。」
香織「・・・。」
雫「・・・。」
龍太郎「・・・。」
メルド「良い顔になったな・・・。教会にはこう報告しておこう・・・勇者光輝は、戦いに恐れをなして数人の仲間を引き連れて逃げたとな。」
光輝「・・・メルドさん・・・短い間でしたが・・・・・・本当にありがとうございました!!!!!」
香織・雫・龍太郎「ありがとうございました!!!!」
メルド「・・・。袂を分かつとはいえ、お前達は俺の大事な教え子だ・・・今度会う時は・・・坊主も一緒だぞ。」
光輝「はい!!!」
メルドに深く深く感謝する4人。・・・そして翌朝。4人は名残惜しい気持ちを引きずらないように誰にも声をかけず城を後にする。その後ろ姿を城の屋上でメルドと愛子がずっと見守っていた。
愛子「・・・。」
メルド「黙って見送ってやりましょう。あいつ等は、巣立った雛鳥と同じです。でも最後は・・・必ずここに戻ってきます。」
愛子「・・・はい!」
昇る太陽を見ながら彼等は決意を新たに一歩一歩歩く。目指すはオルクス大迷宮完全制覇、親友が居るかもしれない迷宮を隈なく探す事だ。
香織「南雲君・・・信じてるよ。」
雫「私達が行くまで・・・頑張って。」
龍太郎「俺達のダチなら・・・根性見せやがれ・・・!」
光輝「皆、行こう・・・ハジメともう一度会う為に!一緒に帰る為に!」
二期おめ!