海神絶唱シンフォギア~海の化身と装者たち~   作:サミン

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ウルトラマントリガー始まりましたね!ちょっと展開が早い気がするなぁとは思いつつも、楽しく見ることが出来ました!

それとは関係ないですが、今回はやってみたかった展開の1つに辿り着けたので、前回より早めに更新致しました


13話 接触

「ウルトラマンの正体、そして―――2年前にあたしたちを救ってくれたのも、お前で間違いないか?」

 

ノイズを倒した後、誰もいないことを確認して変身を解いてバイクで帰ろうとしたところ、なんと奏が一翔の方へと自ら接触してきた。そして、ウルトラマンの正体と、2年前の事件で自分たちを助けてくれたのも一翔なのかと問い質してきた。

 

「……何のことだ?」

 

しかし、当然一翔はその問いに対してシラを切る。すると、奏はズボンのポケットからスマホを取り出し、画面を開いてとある画像を見せた。

 

「この画像のバイクの座席に置いてあるスクールバック……調べてみたら城南高校の指定バックだってことが分かった。そして、ある2人組の男女の生徒にこのバイクを見たことないかと質問したら、同じく城南高校に通ってる“吉宮一翔”っていう男子生徒の所有物ということが分かった」

 

奏からの説明を聞き、恐らく俊と深生から聞いたのだろうと一翔は推測した。

 

そして、なぜ奏が一翔のバイクの画像を持っているのか……それは一翔がウルトラマンとして奏と共にノイズを倒した日、翼が響に刃を向けていたというのを聞いてその場から去った時、周囲を見渡した奏が一翔のバイクを見つけ、撮影したからだった。

 

「まぁ、確かに俺の名前は吉宮一翔で合ってる。その画像のバイクも恐らく俺のだろう。だが、それがウルトラマンの正体と何の関係があるって言うんだ?」

 

自分の名前は合ってることと奏のスマホの画像のバイクは自分のものだと言うことを一翔は認めるが、それでもウルトラマンの正体と関係のあるものではないと主張して問いかけてくる。

 

「そりゃまぁ、これだけじゃ確実な証拠にはならないけど、どうにも不自然だったんだよ。この画像を撮ったのがこの前ノイズが現れた時で、しかもバイクと一緒に置かれてたのがスクールバック―――それを見た時、帰宅途中の学生がノイズに襲われちまったのかと思ってたんだが……調べた結果、その日にあの場所でノイズに襲われた人の中には城南の生徒どころか学生すらいなかった。ノイズが現れた時に逃げたんだとしても、わざわざバイクとスクールバックを捨ててまで逃げるのはどう考えてもおかしかったんだ」

 

奏の推理とも取れるような説明をされても、一翔は至って冷静に黙って聞いているだけだった。

 

「ま、おかしかったってだけで証拠にはならないが……あたしは、それでもお前がウルトラマンじゃないかって思ってるんだ」

 

「……ほぉ、それはなぜだ?」

 

一翔が聞くと、奏は少し間を置き―――

 

 

「―――生きるのを諦めるなと言ってた奴が、生きるのを諦めるような顔をするな……」

 

 

―――と、2年前のライブ会場で絶唱を歌いかけた自分に向けられた言葉を呟いた。

 

「確かにバイクが同じってだけで確信はなかったけど、お前と話をして声を聞いた時、2年前にあたしを止めてくれた声と同じだってさっき気づいたんだ。あの時、さっきあたしが呟いた言葉を言ってくれなかったら、あたしは今頃この場にはいない……そんな言葉と声をあたしは一度たりとも忘れたことはない」

 

懐かしむように目を細め、そう言葉を綴っていく奏。そんな彼女を見た一翔は少し考えた後、首肯した。

 

「……分かった、認めてやるよ。あんたの言う通り、ウルトラマンの正体は俺で、2年前のあのライブ会場に駆けつけたのも俺だ」

 

そう言いながら、右腕から外していたブレスレットを奏の方に向ける。

 

「そっか……なら、1つ言わせてくれないか?」

 

「何だ?」

 

奏は一翔の前へと向き直り、頭を下げた。

 

 

「あんたのお陰であの日、あたしは命を落とすことなくこうして生きていくことが出来た……ありがとう、ウルトラマン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、2人は近くのファミレスへと足を運んだ。その際、奏は変装のためにもう一度髪を纏めた後にキャスケットを被り、眼鏡をかけて入店した。

 

「せっかくだから好きなもん何でも頼んでいいぞ?あたしの奢りだしな」

 

「別にそこまで気を遣わなくても……俺、金に関しては特に問題はないし……」

 

「いいからいいから!黙ってあたしに奢ってもらえ」

 

そう言って、奏はメニュー表とにらめっこを始めた。一翔は仕方ないと思いつつ、奏に倣ってメニュー表を見始めた。

 

そしてメニューを注文した後、互いにドリンクバーで飲み物を注いでテーブルに戻ってくると、開口一番に奏が改めて自己紹介を始めた。

 

「改めて、あたしの名前は天羽奏。ツヴァイウィングの片翼であると同時に、とある組織に所属している」

 

「……吉宮一翔。城南高校2年。うちの学校は午後が選択式の授業になってて、そこで俺は海洋学を学んでいます」

 

「へぇ、海好きなんだな。音楽とか他の何かをやってたりしないのか?」

 

「まぁ、趣味程度だがある程度の楽器を使いこなすことは出来ます。特にハーモニカやギターの類いですね」

 

「ほほう、結構多彩なもんで」

 

自己紹介の後にそのような雑談も交えたところで、奏はさっき自己紹介した際に言ってた、とある組織について一翔に話そうとする。

 

「雑談もひとまずこの辺にして……せっかくお前さんがウルトラマンの正体だって教えてくれたのに、あたしだけが何も教えないってわけにもいかないからな。さっき自己紹介した時、あたしはとある組織に所属しているって話だが―――」

 

「あぁ、二課って言う組織のことですか?」

 

「―――ッ!知ってるのか!?」

 

奏が説明する前に一翔が二課という単語を出したことで、奏は驚きを隠せなかった。

 

「まぁ、完全に詳しく知ってるわけではないですよ。天羽さんの相方の青髪の女に初めて襲われた際にその単語を聞いただけなので……」

 

一翔がそう教えると、奏はバツが悪いような顔になり、両手をテーブルに置き、頭を下げる。

 

「あー、その……悪かったな、翼のこと……あの堅物防人、なぜか知らんが一翔のことを良く思ってなくてな。響っていう新人をお前さんが助けに行ってくれた際、捕まったりするんじゃないかってヒヤヒヤしてたんだよ……」

 

「……まぁ、最終的に二課って組織のリーダーなのか何なのか知らんけど、大男が来てくれたお陰でなんとか事なきを得ましたよ」

 

「けど、本当にすまなかったな……2年前は助けてくれたのに、その恩を仇で返すように襲いかかったり……この前だって新人を助けるためにわざわざ自分から行ってくれたり……本当なら本人が一番謝るべきなんだけど、今は相方のあたしの謝罪で勘弁してくれ」

 

そう言って、再度両手をテーブルに置いて頭を下げた。

 

「……まぁ、結果的に俺も立花も無事で済んだので大丈夫です」

 

「そっか―――ん?一翔、さっき立花って言ってたけど、もしかして……?」

 

「あぁ、立花響は俺の中学の時の後輩ですよ。この間、あいつが天羽さんが身に纏ってたのと似たような鎧を同じように身に纏ったのを見ました。そして、恐らく二課に所属することになるんじゃないかと思ってたら案の定……」

 

「お前さん、結構洞察力あるんだな……響があたしたちの組織に入ったことまでお見通しとはな……」

 

「……けど、さっきも言ったように完全に詳しく知ってるわけじゃない―――だから教えてほしい、あんたたちが纏ってたあの鎧は何なのか……二課という組織は一体何なのか―――」

 

 

「―――お待たせしました!ハンバーグカレードリアお1つと、ナポリタンお1つになります」

 

 

一翔が問いかけてきたところで、店員が2人の注文した品を持ってきた。一翔はすぐさま一旦この話題を出すのを止め、自分から品をもらっていく。

 

「ありがとうございます。ハンバーグカレードリアは俺で、ナポリタンはその人にお願いします」

 

「恐れ入ります。伝票はここに置かせていただきます。ごゆっくりどうぞ」

 

注文した品がそれぞれ互いに自分の前に置かれると、先程の一翔の切り替えの良さと対応の仕方に奏は少々驚きながらも感心していた。

 

「すげぇな……よくある話だと何も知らない第三者が割り込んできたことでテンパることが多いが、お前さんのその冷静な切り替えとか比べ物にならねぇくらいだよ……それにわざわざ自分から手伝うとか」

 

「“お客様は神様”っていう言葉があるでしょ?俺はそんなもん関係なしに、あくまで“人”として対応すべきことは対応するようにしてる主義なので」

 

「ふぅ~ん……ま、それはさておき、お前さんの質問に答えてやるその前に―――もう品が来たからとりあえず食おうぜ」

 

そう言って奏はフォークを取り出してパスタを巻いていき、一翔もスプーンを取り出してハンバーグをぶっ刺すといういつもの行儀悪いことをした。

 

「あぁ~、美味いなぁ……!うちの組織にはもちろん食堂があって美味いのは美味いんだが、たまにはこういった店で食べるメシってのも捨てがたいもんだよな」

 

「まぁ、否定はしませんね」

 

 

 

 

 

そして料理を食べ終えて、違うドリンクを注いで持ってきた後に本題に入ろうとする。

 

「―――じゃあ改めて、天羽さんたちが身に纏っていた鎧、二課という組織が何なのかを教えてほしいです」

 

「あぁ、もちろんいいぜ。ただし、その前に敬語とかさん付けとかやめてくんないか?年下とはいえ、命の恩人様にそういうのされると申し訳なくなっちまう」

 

「えっ?いや……まぁ、あんたがそう言うのなら敬語もさん付けもやめま―――やめるよ、天羽」

 

「いや、そこはせめて名前で呼んでくれよ!?」

 

「あー悪い……俺、基本的に苗字で呼ぶタイプなんだ。ま、もし気が向けば名前で呼んでやってもいい」

 

「……一翔がそうするタチなら……まぁ、仕方ねぇな……」

 

どこか納得がいかない様子の奏だが、ひとまず一翔の質問に答えるように、まずはシンフォギアについて説明を始めた。

 

「まず、あたしたちがノイズを倒すために使っていたあの鎧―――名称はシンフォギア。聖遺物って聞いたことないか?」

 

「あぁ、確か超古代の異端技術の結晶の総称で、世界各地の様々な伝説に登場してるってやつだな。でも伝説ってだけで、歴史上では実在してないんじゃないか?」

 

「まぁ、そう思うのが妥当だな。けど―――実際にはいくつか実在してるものもある。といっても、それはほんの一部の欠片に過ぎないけどな。そして、その欠片の力を歌によって増殖させ、鎧へと変形する……それがあたしたちの使ってる鎧―――シンフォギアだ」

 

奏からシンフォギアの説明を聞いて、歌によってそれは生まれるものだと知った一翔は、奏や翼が現れる際に歌が聞こえたのはそのためかと納得した。

 

「なるほど……」

 

「―――んで聖遺物の話だがな、あたしと響が使ってるのはガングニールって言う聖遺物で、翼が使ってるのは『天羽々斬(あめのはばきり)』って言う聖遺物で、それら全てを総称して、あたしたちはシンフォギアと呼んでいる」

 

聖遺物の説明を聞いた後、一翔は1つ疑問になっていたことを問いかけた。

 

「そういえば、何で立花はそのガングニールっていう、天羽と同じシンフォギアを纏えるようになったんだ?」

 

「あー、それはなぁ……」

 

一翔からの問いかけに、奏はどう説明すれば良いかと頭を悩ませるが、全て包み隠さずに話すべきだと口を開いた。

 

「まず、長くなるが2年前の事件……その原因とも言える事の発端を話さなきゃいけない……実はあの事件、ノイズが出現したのは実質あたしたちのせいでもあるんだ」

 

「……どういうことだ?」

 

「実はライブ当日、あたしら二課はガングニールや天羽々斬とは違う聖遺物『ネフシュタンの鎧』を起動させるため、表向きはツヴァイウィングのライブという名目の起動実験を行っていたんだ」

 

「なんだと……?もしかして、そのネフシュタンの鎧ってのも歌によって誕生させるためにわざわざライブを行ったのか?」

 

「鋭いな。そんで、結果的には起動成功までは行ってたものの、最終的にエネルギー制御に失敗して暴走……それからノイズが現れて、後は知っての通り……」

 

事の発端を説明していく奏は罪悪感を感じているのか、顔を俯かせて自嘲気味に笑っていた。

 

「あたしも最初はただノイズが邪魔しに来たのかと思ってたけど、後からその原因を知って、実質あたしたちのせいなんだなって思い知った。そして……ライブ事件が終わった直後に起こった、響を始めとした生存者へのバッシングにも、あたしたちはただ見てることしか出来なかった……―――“生きるのを諦めるな”なんて言ってたくせに、余計に生きるのを諦めたくなるようなつらい思いをさせちまった」

 

「……それでも、あのバカは天羽のその言葉で、自分を奮い立たせて生きていったよ」

 

段々と自責の念に駆られていく奏だが、一翔がそう口を開いて呟いた。

 

「そして、立花の前向きさに感化された他の生存者たちも、世界に負けないようにと生きていった。あの事件があったからこそ、未来をもっと素晴らしいものにさせるために過去を受け入れて進んだ。あんたたちがそこまで責任を負う必要はない」

 

そう締め括り、一翔はドリンクを飲んだ。そんな一翔の言葉を聞いて、奏は少し心が楽になったように感じた。

 

「一翔って、案外優しいとこあんだな」

 

「その話はやめろ。立花の親友で俺の後輩の1人と同級生にそのことでいっつもからかわれるんだからな」

 

奏がそう口を開けば、一翔は少し顔を赤くしてこの話題を終わらせようとしてきた。

 

「それより―――事の発端は知ったが、どうして立花がガングニールを纏えるようになったのかを聞きたいんだが……」

 

「あ、そういやそうだったな。シンフォギアってのは、当然だが必ずしも誰でも扱えるわけじゃない。響がガングニールを纏う前までは、あたしらの中では翼だけがシンフォギアに適している適合者だったんだ」

 

「適合者……でも、言ってしまえば天羽は適合してないってことだろ?何でシンフォギアを纏ってるんだ?」

 

「ま、そう思うよな。あたしの場合、『LiNKER』って言う制御薬を投与してもらって、後天的な形で適合者になったんだ。だが、もちろん時間制限付きなものだから翼みたいに長く戦えるわけじゃない。そしてライブ当日、制御薬を断っていたのが裏目に出て、あたしのガングニールは砕け散った。その時だったんだ―――砕け散ったガングニールの破片が、偶然にもあたしの後ろにいた響の胸を貫いちまった」

 

一翔はウルトラマンとしてあのライブ会場に駆けつけた際に響が胸から大量出血を起こしていたのを見ていた。そして奏からの説明を聞き、そうなった原因を知ることが出来た。

 

「なるほど……あいつが大量出血を起こしたのはそういうことだったのか」

 

「そ。んで、響の体内に残ったその欠片によって後は知っての通りってわけさ」

 

シンフォギア、そして響がそれを纏った理由を知り、残るは二課についてだった。

 

「そんじゃ最後に、あたしらが所属してる組織についてだ。あたしらが所属してるのは特異災害対策機動部―――その部内の二課に所属してる」

 

「特異災害対策機動部……名前自体は聞いたことあるけど、そこにあるのは一課じゃないのか?」

 

「まぁ、確かにテレビとか一般的には主に一課とかが話題に出るな。二課ってのはシンフォギアを保有してノイズと戦い、情報操作をしながら活動している」

 

「情報操作?シンフォギアを世間から隠すためにか?」

 

「これまた鋭いな。シンフォギアってのはノイズに対抗するために必要な戦力であると同時に、現代の兵器をも凌駕するほどの厄介な代物でもある。だから二課はシンフォギアでノイズを倒すと同時にシンフォギアを隠し通さなきゃならない」

 

それを聞いて、一翔は二課も自分と同じような立場にあるのだろうと思った。

 

ウルトラマンの力もシンフォギアと同じかそれ以上の強さを持っており、そんな力を人間―――ましてや一翔たちのような10代前後の子供が使ってたとなれば色んな意味で問題となってしまう。

 

「ま、シンフォギアと二課についてはひとまずこの辺までだな」

 

「そうか……色々と教えてくれてありがとう。それじゃ、俺はそろそろ―――」

 

説明も終わったところで会計をしようと立ち上がろうとすると、奏が待ったをかける。

 

「待てよ、あたしが奢るっつってんだから、もう1品くらい何か頼んでけ。最後のデザートくらいだって頼んでもいいぞ」

 

「いや、だからそういうわけには……!」

 

 

と言いつつも、結局は奏が自分を含めた2人分の代金を支払ってくれた。一翔は少し罪悪感を感じていたが……。

 

 

 

 

 

その後、互いの連絡先も交換してもらい、一翔はもちろんバイクで、奏も自分用の車で来ていたので、2人揃って駐車場へと足を運んだ。

 

「―――んじゃまぁ、とりあえず今回はお互いの情報交換ってことで、また機会があれば会おうぜ」

 

「あぁ……」

 

「じゃあな、ウルトラマン!」

 

周りに人がいないことを確認した上で敢えてそう呼び、車を走らせてファミレスを出ていった。

 

「……ORCのこととか言ってなかったけど、それもいつかは話すかもな。まぁ、その時はその時で説明しとけばいいか」

 

そう呟いて、一翔もバイクに乗ってファミレスを出て自宅へと帰っていった。

主人公にCVを付けるなら?(最終投票)

  • 松岡禎丞
  • 内山昂輝

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