『お前のせいで……罪のない多くの人たちが命を落としたんだ……!それによって、他にも多くの人が悲しみ、さらには多くの人が酷い目に遭った……!お前さえ……お前さえいなければ……!』
これまでのノイズ出現の原因が、目の前にいるネフシュタンの鎧を纏った人物であることを知ったウルトラマンは、今まで多くの人間がノイズによって命を奪われたことに対する怒りと憎しみを露にし、右手に生成したブレードを天に掲げる。
『お前にも、その計り知れないほどの痛みを味合わせてやる……!』
そう吐き捨て、ブレードが生成されてる右手を大きく振り被る。
『お前を今、ここでこr―――ッ!!』
そして鎧の人物に向けてブレードを振り下ろして斬りかかろうとする―――が、ブレードが鎧の人物に当たる直前に寸止めした。
なぜなら―――
「あっ……あぁ……や、やだ……やめて、くれ……やめて……」
鎧の人物は先程までウルトラマンからの攻撃を食らい続けたために、彼に対する恐怖が頂点に達してしまい、完全に怯えていた。そして、バイザー越しに見えるその目から涙が流れ、鎧の人物の頬に伝っていた。
(俺は……さっき、何を考えていた……!?)
それを見たウルトラマン―――一翔は我に返ったように、先程までの自分の行動を振り返った。
目の前の鎧の人物は、ソロモンの杖を使いノイズを操っていた。それはつまり、これまでのノイズ出現は鎧の人物によるものであり、それを知るや否や、怒りと憎しみを糧にして自分は鎧の人物を徹底的に懲らしめた挙げ句―――
(俺は……ノイズを操ってる黒幕とはいえ、立花が言ってたように人間であるこいつを―――殺そうとした……!!)
一翔は人間と戦いたくないうえ、愚かな部分が多くても人間の命は奪わないことを信条にウルトラマンとして戦ってきた。しかし、先程まで怒りと憎しみに心を支配され、危うく人間の命を奪うところだった。
そのことに気づき、ウルトラマンはブレードを戻し、右手を降ろした。
『す、すまない……俺は―――』
「くっ……おらぁっ!」
ウルトラマンが斬り掛からなくなったことで、鎧の人物はその隙を突いて鞭を振るい、ウルトラマンの体を鞭で巻き付けた。
『オアッ……!』
「へ、へへ……殺意マシマシだったくせに、急に大人しくなりやがって……まぁいい、さっきやられた分を倍返しさせてもらうぜ……!」
鎧の人物はまだ恐怖心が残るものの、気力を振り絞ってソロモンの杖をウルトラマンに向ける。ウルトラマンは先程の動揺からか、自身を巻き付けている鞭を剥がそうとするも上手く力が入らずにいた。
「そんじゃ、次はこっちの番―――ッ!な、何だ!?う、動かねぇ!?」
ソロモンの杖をウルトラマンに向けながら言いかけると、急に自身の体が動かなくなってしまった。
「―――倍返しというのなら、私もそうさせてもらう」
すると、いつの間にか鎧の人物の背後に回り込んでいた翼が、鎧の人物の影に向けて小刀を投擲し、突き刺すことで動きを封じていた。標的の影に短刀や手裏剣を刺して身動きを止める忍の術である『影縫い』だ。それにより鎧の人物は身動きが取れなくなり、ウルトラマンを巻き付けていた鞭の力が弱まったことで、その隙にウルトラマンは鞭を振り払って抜け出した。
『……すまない、風鳴翼。助かった』
「ふん、これで借りは1つ返したからな。さぁ、次は貴方よ……付き合ってもらう、地獄の果まで!」
「ッ!まさか、歌うのか―――絶唱を!」
(ぜっしょう……?)
背後にいる翼が何をするのか理解した鎧の人物がそう叫び、そんな鎧の人物の口から出た聞き慣れない言葉に疑問を浮かべるウルトラマン。
「翼さん、それって……!」
響は絶唱という言葉を聞いて焦り出した。そんな響の方へ翼は顔を向ける。
「防人の生き様、覚悟を見せてあげる……貴方のその胸に、焼き付けなさい!」
そして、響の方からすぐに鎧の人物の正面へやって来てそちらに視線を移しながら豪語し、手に持っていた刀を天高く掲げて、翼はゆっくりと唱え始める。
━━━Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl
「クソッ!動けぇ……ッ!」
鎧の人物は必死に動こうとするも、全くそれは叶わずにいた。
━━━Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl
天高く掲げていた刀を収めた翼はゆっくりと鎧の人物に近寄り、絶唱を歌い切ったと同時に鎧の人物に密着した。
その直後、翼を中心に強力な衝撃波が巻き起こり、その場にいた全てを吹き飛ばそうとする。
「うぅっ!」
『(立花……!)デヤッ!』
ウルトラマンは衝撃で吹き飛ばされそうになっていた響の前に高速移動で駆け寄り、サークル状のバリヤーを展開して響を守りながら耐えていた。
「うわああああああああっ!!!!」
しかし、鎧の人物は影縫いで動きを封じられたうえ、ほぼゼロ距離からだったため、防御することも出来ずに絶唱を食らい、悲鳴を上げていくうちにネフシュタンの鎧やバイザーにヒビが入っていった。
そして、衝撃により影に突き刺さっていた小刀が吹き飛ばされたことで影縫いが解け、鎧の人物もついに吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ……!うぅっ……!がはっ!!」
吹き飛ばされた鎧の人物はその先々にあった木々をなぎ倒し、ネフシュタンの鎧にさらに傷が入り、近くの水辺に突っ込んだことでようやく止まった。
ウルトラマンの攻撃に加え、ほぼゼロ距離からの絶唱を食らったことで、鎧の人物の体を鈍い痛みが襲う。
「あっ、あぁ……ッ!あぅあ……ッ!」
すると突然、鎧の人物の顔が歪み、苦悶の声を漏らし始めた。どうやらネフシュタンの鎧が自己修復を始めたようだ。その際、鎧の人物の体を侵食する痛みが伴ったらしい。
「はぁ、はぁ……くそっ!ネフシュタンの本気も出せないままやられちまった……!この借りは―――必ず返すッ!!」
なんとか立ち上がりながらそう吐き捨て、誰にも見つからないうちに鎧の人物はその場から消えていった。
『……大丈夫か?立花響』
絶唱による衝撃も収まり、ウルトラマンはバリヤーを解除して響の安否を確認する。
「あっ、はい!大丈夫です!ウルトラマンさんのお陰で無事です!」
ウルトラマンからの問いに響は答えると、ライフゲージが赤になって音を鳴らしながら点滅しているのが目に入った。
「あっ……もしかして、それって危険信号ってやつじゃ……!」
『……まぁ、確かにそうだが、このくらいのテンポならまだ少しは余裕だ。それより、ぜっしょうとやらを行った風鳴翼はどうなった?』
「ッ!そうだ……翼さーん!!」
ウルトラマンが翼の名を出したことで響は思い出し、翼が絶唱を行った場所へ向かう。
そこにはクレーターが出来ており、その中心に翼は立っていた。
「翼さーん!!うわっ!?」
翼の名を叫びながら駆け寄ろうとした響はクレーターの凸凹に躓き転んでしまった。するとそこへ、1台の黒い車が響の横を通り抜け、急ブレーキが掛かったと同時にドアが開いて中から弦十郎が出てきた。
「無事か!?翼!!」
弦十郎は険しい表情をしながら翼が無事かどうか確かめようとする。
「私とて、人類守護の使命を果たす防人……」
その呼びかけに応えるように、そう呟きながら翼はゆっくりと振り返ると―――
「こんなところで、折れる剣じゃありません……」
ボロボロになったシンフォギア、足元には真っ赤な血溜まり、そして虚ろな目をしながら両目と口から血を流している翼の姿が露わになった。
「あっ、あぁ……!」
起き上がった響は完全に直視してしまい、ショックのあまり瞳が揺らいでいた。
そして、翼はそのまま糸が切れた人形のように地面に倒れかける。
すると―――
『なんて無茶なことを……』
ウルトラマンが高速移動で間一髪のところで抱き留め、ゆっくりと翼を地面に仰向けで寝かせる。
「……ウルトラマン……」
『待ってろ、今ヒーリングでお前の傷を―――』
「……いや、しないでくれ……」
ウルトラマンは少し距離を離してヒーリングを放とうとするが、翼は手を突き出して待ったをかける。
「……私の、防人としての覚悟が……無駄に、なる……」
最後にそう呟き、翼は完全に力が抜けてしまい、突き出していた手も地面に落ちてしまった。
(そんな状態で見栄を張るなよ……)
ウルトラマンはヒーリングを放つ構えを解きながらそう思っていた。
『……すまないが、俺はここで失礼する』
「むっ!言葉が話せるのか!?」
『詳しいことは立花響に聞いておいてくれ……』
そう言い残し、ウルトラマンは光となってその場を後にし、消え去った。
その後、翼はリディアンのすぐ側に隣接する総合病院に運ばれた。医師によれば、幸いにも一命は取り留めたものの、まだ予断の許されない状態にあるようだった。
「ふむ、彼はテレパシーを使って相手に語りかけてくるというのだな?」
「……はい。たぶん、ウルトラマンさん次第では複数人にも同時にテレパシーを送ることが出来るみたいです……」
「なるほど……今後はウルトラマンとは本格的にコミュニケーションを取ることが可能かもしれないな」
翼の診断結果を聞いた後、待合室にて、弦十郎はウルトラマンが言葉を発したことについて響に問い質しており、彼はテレパシーを使うことで意思疎通を行うということを響は教えた。
「教えてくれてありがとう、響くん。さて―――」
ウルトラマンのテレパシーについて教えてくれた響に礼を言った後、弦十郎は二課のスタッフである複数人の黒服の男性たちの方へ向き直る。
「これより、ネフシュタンの鎧の行方を追跡する!どんな小さい手がかりでも見落とすな!」
弦十郎の号令と共に、黒服の男性たちは外へと出ていく。そして弦十郎もその後に続くように外へと出ていった。
弦十郎たちが出ていったことで、待合室で1人になった響は、ソファーに座ったまま俯いていた。
「……私がもっと強ければ、こんなことには……」
翼が絶唱をしてボロボロになってしまったのは自分が弱かったからだと思い込み、響は段々と自責の念に駆られ始めていく。
そこへ―――
「響さんが気に病む必要はありませんよ。命に別条はなかったんですし、それに―――絶唱は翼さんが自ら望み、歌ったんですから」
「緒川さん……」
端末を自販機にかざして飲み物を買っている慎次が声をかけてきた。
「絶唱は装者の負荷を省みずにシンフォギアの力を限界以上に解放する歌……その説明は既に聞いていると思いますが、それがどれほど恐ろしいものなのか、実際に見て判ったでしょう?」
「……はい」
「ですが、先程も言ったように、決して響さんが気に病む必要はありませんから、そんなに気を落とさないでください」
“響が気に病む必要はない”という慎次からの励ましの言葉をもらうものの、響は俯いたままだった。
「……突然ですが、響さんは翼さんのことをどう思っていますか?」
「えっ……?えっとぉ……翼さんは私にとっては憧れの人です。同じツヴァイウィングの奏さんと同じようにアーティストとして、そしてシンフォギア装者として……」
慎次からの問いに響は嘘偽りなく正直に答えるが、それを聞いた慎次は―――
「では、“今”の翼さんについてはどう思っていますか?」
―――と、“今”という部分を少し強調させて響にもう一度質問する。
「い、今の翼さんって……どういう意味ですか?」
「……この際だからはっきり言わせていただくと、少なくとも僕は―――いや、奏さんも含め僕ら二課の職員ほぼ全員からすれば、今の翼さんに対する評価はあまりよろしくない感じです。ウルトラマンに対する意見の食い違いが起こっただけならまだしも、仲間に刃を向けたり、先輩として指導しなかったりと、色々と……」
「あっ……!」
慎次のその言葉を聞いて、響は察した。自分と翼はウルトラマンに対する意見の食い違いによって対立状態になっていることを。といっても、翼が一方的に響を拒絶してるだけなのだが……。
それでも響は決して翼を拒むことなく共に戦場に赴くことがあるのだが、それでも今の翼に対して響は実際どう思ってるのかと慎次は問い質してきたのだ。
「僕らは正直不安でした。翼さんから一方的に拒絶され、もしこのままの状態が続けば響さんが嫌な思いをし続けるんじゃないかと……でも響さんは、あの時から変わらず翼さんと一緒に戦おうとしている。しかしその度に翼さんから拒絶され続けている……そんな状態が続いて、響さんは実際どんな心境なのか不安でして……」
慎次のそれは二課の職員ほぼ全員の心情と取ってもいい言葉だった。決して翼を邪険にするわけではないが、それでも今の翼に対する評価はよろしくないため、そんな翼と響を同じ戦場に行かせることは見ていられなかったからだ。
「……確かに、あの時は刃を向けられたり、この1ヶ月間は指導させてもらえなかったりと……奏さんが何かとフォローしてくれましたけど、それでも何度か心が折れそうになりました……」
そう声を発する響はまだ俯いたままだったが、意を決したように表情を引き締めて顔を上げた。
「……でも、私はそれでも、翼さんと一緒に戦いたいです。今は翼さんから拒絶されたままでも、いつかきっと一緒に戦えるって……!だって私たちは、同じ仲間なんですから!」
響の自分なりに考えて出した答えを聞き、慎次は微笑んだ。
「そうですか……響さんは強いですね。翼さんに一方的に拒絶されても、それでも翼さんと一緒に戦いたいなんて考えてくれてるなんて」
慎次はそう称賛し、先程購入した飲み物を一口飲み込んでからもう一度口を開く。
「……でも、僕らも概ね響さんとは同意見です。先程、評価はよろしくないと言いましたが、それでも同じ二課の仲間ですから、決して翼さんを邪険に扱うつもりはありません。なので響さん、その想いが届くのはまだまだ先かもしれませんけど、それでも必ず翼さんに届きますから、翼さんに対するその想いは決して忘れないでいてください」
「……はい!」
慎次からのお願いに対して響は間を置きながらも力強く返事した。
原作での緒川さんの“嫌いにならないでください”というセリフですが、既に奏に言わせてしまったため、どんな感じのセリフを言わせたらいいかと考えたんですが、いい感じに伝えられただろうか……
主人公にCVを付けるなら?(最終投票)
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