海神絶唱シンフォギア~海の化身と装者たち~   作:サミン

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年が明けて2週間が過ぎましたが、明けましておめでとうございます!今回が今年初の投稿となります。

一応、歌詞コードは入力したから本当にこれで大丈夫かな?


3話 最悪のライブ

『ツヴァイウィング』

 

それは、世界でも人気を誇る2人のボーカルユニットであり、その名を知らない者は数少ない。

 

そんなツヴァイウィングのライブ会場では、既に楽しみにしている観客たちが団扇やサイリウムを手に持って今か今かと待ち構えている。もちろん、響もその観客の中に混じっている。

 

「はぁ~。ああは言ったものの、やっぱり1人だけで楽しむなんてちょっと気が引けるなぁ……いや!何がなんでも2人を後悔させてやるんだから!おまけに焼肉奢ってもらえるし!」

 

未来だけじゃなく、一翔も今日のライブを一緒に観てやることが出来なくなったことがやはりショックではある響だが、なんとか気を取り直してライブ開始を待つ。

 

といっても、最後の言葉の部分が一番の本音に聞こえなくもないが……。

 

すると、ライブ会場が暗くなり始めた。

 

「おい!始まるぞ!」

 

「気合い入れていくよ!!」

 

暗くなったことでライブ開始間近になったことに気づいた観客は準備を整える。そして、ついにツヴァイウィングのライブが始まった。

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

開始直後から観客のテンションは絶好調である。

 

「奏さーん!!翼さーん!!」

 

響は、ライブ会場を飛ぶように羽を舞い上がらせながら登場した、ツヴァイウィングである2人の少女―――鳥の羽がモチーフとされる特徴的な形をした赤髪の『天羽(あもう)(かなで)』と、青い長髪と左側で結わえたサイドポニーというこちらも特徴的な髪をした『風鳴(かざなり)(つばさ)』の名を叫びながらサイリウムを勢いよく振り回して元気よく声援を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

[ま、そんなところだ。言ってしまった手前、お前にも協力してもらうからな、小日向]

 

「もう……私を抜きにしてそんな約束させないでくださいよ、一翔さん」

 

未来は一翔からの電話で響に会ったことや、ライブに行ってやれなかったお返しとして焼肉を奢るという約束をしたことを伝えられ、その内容を聞いた未来は少し呆れていた。

 

[仕方ないだろ?どうしても手が離せない急な用事が出来たとはいえ、約束を破っちまったんだからな。それ相応の対価が必要だろう]

 

「……まぁ、それは確かに言えますけど……けど、わざわざ一翔さんまでそんな対価を払う必要はないんじゃ―――?」

 

[―――だからこそだ。先に口約束した奴がちゃんと約束守らねぇと、先輩として示しがつかねぇしな]

 

「……分かりました。そういうことでしたら協力しますよ。それにしても―――ふふっ」

 

[?なんだ?急に笑って……]

 

「……いえ、初めて会った時なんていつも辛辣な言葉を言ったり、誰とも関わりたくない雰囲気を晒し続けてたこともあったけど―――やっぱりなんだかんだ言いながら一翔さんは優しいなぁって思って……」

 

[うっせぇ!!]プツッ!ツー、ツー……

 

「あ、切られちゃった……」

 

未来にからかわれたと思った一翔は思いっきり大声を出して通話を切った。

 

 

 

 

 

「ったく、人をからかうのも大概にしろよな……」

 

海が見える高台へと来ていた一翔は顔を赤くしながらも通話を終了させてスマホをしまうと、ジャケットの内ポケットの中からハーモニカを取り出した。

 

「音楽なんて趣味程度だが、たまにはいいよな。今度またあいつらにも何か聴かせてあげるか」

 

そう呟くと、一翔は海を見据えながらハーモニカの吹き口に口を当て、ゆっくりと目を閉じてから綺麗な音色をハーモニカから奏でさせた。

 

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

その心が落ち着くようなメロディに、同じく高台に来ていた人たちも魅了されていた。子供達に至っては好奇に満ちた笑顔で一翔を見続けていた。

 

吹いている一翔自身もこの曲によって心が落ち着きかけていったその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───お父さあああん!!お母さあああん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!!」

 

突然の謎の光景を見たことによって一翔は目を見開いて演奏を止め、思わず倒れかけそうになるが近くにあった手摺に掴まり、なんとか体勢を立て直す。

 

「あの、大丈夫ですか!?」

 

当然それを見ていた人たちは心配して一翔に駆け寄ってくる。

 

「はぁ……はぁ……す、すみません……ちょっと目眩がしただけなんで、大丈夫です……」

 

「そう?ならいいんだけど……」

 

「お兄ちゃん、これ」

 

なんとか駆け寄ってきた人たちに言葉を返すと、倒れかけた際に落としたのであろうハーモニカを、1人の子供が拾って一翔に渡してくる。

 

「あぁ、拾ってくれてありがとうな」

 

「ねぇ、もう1回さっきの吹いてくれない?」

 

「あー悪い、今日はもう吹けねぇや」

 

「「「えぇ~!?」」」

 

「こら、さっきのこともあるんだから無理にお願いするのはやめなさい!」

 

「そうだぞ。あまりお兄さんを困らせるな」

 

もう一度ハーモニカの演奏を子供達に頼まれるも、先程のこともあるために一翔は断り、それぞれの子供の親御さんも一翔の身を案じてやめさせるように子供達に注意する。

 

「じゃあ、俺はこれで……」

 

「気をつけてくださいね」

 

「「「じゃあねー!」」」

 

周りの人たちに見送られながら一翔は高台を後にした。

 

 

 

 

 

その後、一旦自宅へと帰ってきた一翔はジャケットを着たままベッドに仰向けになって倒れる。

 

「はぁ……」

 

ため息を吐くと、一翔はテーブルの上に置かれている、1枚の写真が入った額縁を見つめる。その写真には、海を背景に6~7歳くらいの少年と、彼の両親と思われる2人の男女の姿が写っていた。

 

「戦い続けなきゃ……ならないんだ……!ノイズを全て倒すまで……例え、どんな無茶な戦いになろうとも……ッ!」

 

自分に対して強く言い聞かせていると、ふと、ジャケットの右ポケットに違和感を感じた。ポケットの中に手を入れ、取り出すとウルトラマンに変身するためのブレスレットの水晶部分が点滅していた。

 

「ノイズか!」

 

ノイズが出現したのだと瞬時に気づくと、すぐさまベッドから降り、靴を履いて外へ出て急いで出現ポイントへと向かう。

 

すると、ブレスレットの点滅が段々激しくなっていく。

 

「ッ!?やべぇ、恐らく1人や2人なんてレベルじゃない!結構な団体が襲われてるかも―――!!」

 

そう思い、一翔はちょうど誰も入っていない証明写真撮影機を見つけ、その中に入りカーテンを閉めた瞬間にブレスレットを右腕に装着し、ウルトラマンに変身―――ではなく、青い発光体となってそのまま目的地へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

そして、発光体の状態のまま目的地に到着する。

 

しかし、そこは―――

 

 

(なっ!?ツヴァイウィングの……ライブ会場だと……ッ!?)

 

 

一翔は目的地の上空から、そこはツヴァイウィングのライブ会場であることに驚愕していた。

 

さらに―――

 

 

「生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

(ん?あれは……立花!?)

 

 

ウルトラマン特有の聴力と視力で、胸から大量出血を起こしながら気を失っている響と、彼女を揺さぶって呼び掛けるツヴァイウィングの1人である奏の姿を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前―――

 

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

 

ライブはまさに絶好調である。響や他の観客たちのテンションも最早下がることがない。そんな中、ライブ会場の天井が翼を広げるように開いていく。

 

それにより、観客たちのテンションはさらにうなぎ登りとなっていく。

 

「まだまだ行くぞー!!」

 

1曲目を終えて、熱狂が冷めないうちにもう1曲歌おうと奏がマイクに口を当てた。

 

 

その次の瞬間―――

 

 

ドオオオオンッ!!!

 

 

ライブ会場の中央から大きな爆発が起きた。それにより、ライブは一気にパニック状態に陥る。そして、次に現れた存在により熱狂から一瞬で阿鼻叫喚の叫びへと変わる。

 

「―――ノ、ノイズだあぁ!!」

 

「きゃああああああああっ!!」

 

ノイズ出現に観客たちは我先にと一目散に逃げ出す。

 

「あああああぁぁぁぁぁ―――」

 

「嫌だ!!死にたくない!!死にたくな―――」

 

しかし、逃げ遅れた人たちはノイズにより次々と炭化されていってしまう。

 

「うっ!くっ……!」

 

響もノイズに触れられまいと必死に逃げようとするが、人混みが激しいが故に上手く逃げられる状態ではなかった。それ故に、取り残されてる人たちは次々と炭化されていく。

 

 

 

 

 

「ちっ、今日は厄日かよ。ノイズまであたしらのライブ邪魔しに来やがって……」

 

そんな中、ステージに残ったままの奏は大量に溢れ出したノイズに悪態をついていた。

 

しかし、その目には恐怖というものが全く感じられなかった。

 

「いくぞ翼!この場に槍と剣を携えているのはあたしたちだけだ!!」

 

「ええ!」

 

奏の言葉に翼も恐れることなく応え、ステージを降りる。すると、2人はどういうわけか歌を歌い始めた。

 

 

━━━Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

━━━Imyuteus amenohabakiri tron

 

 

2人はそれぞれの歌を歌い終えると、ライブ衣装が消えたかと思ったら、奏は朱色、翼は青の機械的なアーマーを身に纏っていた。

 

そして、アーマーを纏ったと同時に奏は槍、翼は刀を手に持ち、ノイズたちを蹴散らしていく。

 

その光景に、観客たちはノイズから逃げるのに必死で気づいていなかった―――否、見ている余裕がなかったというべきか。

 

「うりゃあっ!」

 

「はぁっ!」

 

奏の持つ槍がノイズを突き、翼の持つ刀がノイズを両断する。しかし、まだまだノイズはたくさんいる。それでも、2人は決して怯むことなくノイズを一掃していく。

 

だがそこで、空を飛ぶノイズが体を細めて翼に向かって突進してきた。翼はなんとか避けるが、その拍子に奏と引き離されてしまった。

 

(くっ……これでは連携が!)

 

なんとしてでも奏と距離を積めようとするも、ノイズが次々と邪魔してきてなかなか近づけない。

 

一方、奏は苦虫を噛むような表情をしていた。

 

(ガングニールの出力が上がらない!制御薬を断っていたのが裏目に……!)

 

『ガングニール』という、自身が纏っているアーマーを見て悪態をつく。すると、ガングニールは徐々に光を失い始めていく。

 

「くそっ!時限式じゃここまでかよ!?」

 

恐らくタイムリミットが迫ってきてるということで焦りが募ってくる。

 

すると―――

 

 

「きゃあっ!?」

 

「ッ!?生存者!?」

 

 

恐らく上手く逃げられないがために別の避難ルートを探していたのであろう響が、奏たちが戦っている場所の近くまでやって来たのだが、その場が崩れ落ちてしまって彼女も地面に落とされてしまった。

 

「おい大丈夫か!?」

 

なんとか目の前のノイズを倒し、響に駆け寄ろうとする奏。しかし、後ろからノイズがうじゃうじゃと湧いて出てくる。

 

「か、奏さん……う、後ろ……!」

 

「ちぃ!」

 

相方である翼とは引き離されたが彼女はまだ戦えていると信じ、奏はなんとしてでも響を守るために目の前のノイズを相手に槍を構え、一掃していく。

 

だが、段々とガングニールからピシリ、という嫌な音が響いてくる。

 

「くっそぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

そして、ついにガングニールが砕けて飛び散る。

 

「あっ―――」

 

さらに、最悪なことにその砕けて飛び散った欠片の一部が響の胸を貫いた。胸から大量に出血を起こし、響は気を失って倒れる。

 

「大丈夫か!?……おい、死ぬな!目を開けてくれ!!生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

悲痛な面持ちで奏は叫ぶ。すると、僅かながら響は息を吹き返し、小さな唸り声をあげて少しだけ目を開かせた。

 

「よかった……!」

 

その事に奏は安堵するが、肝心なノイズがまだ後ろにおり、他のノイズは翼が1人で蹴散らしているため、まだ終わってはいない。

 

しかし、今の自分では恐らく全てのノイズを倒すことは不可能に等しい。ならばと、奏はこの現状を打破するためにある考えに至った。

 

「一度……心と体を全部、空っぽにして歌ってみたかったんだよな……」

 

響を守るように立ち上がり、決意を固めたかのような表情でノイズと対峙する奏。しかし―――その表情は、まるで自分の死を受け入れようとして(・・・・・・・・・・・・・・)いる(・・)かのような表情でもあった。

 

(奏!まさか、絶唱(・・)を……!?)

 

翼は奏が何をしようとしているのかを理解し、ノイズを倒すと奏を止めようと叫びながら近づこうとする。

 

「いけない!奏!歌ってはダメェェェェェェェェ――――――――――!!!!!!」

 

だが、戦闘中に引き離されてしまった時の距離が大きいため、叫んでも奏を止めることは出来ない。その上、ノイズが邪魔をしてくるので近づけない。

 

(翼……ごめんな……)

 

奏は目を閉じ、心の中で翼に謝罪しながら『絶唱』という歌を口ずさもうとする。

 

その時だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━生きるのを諦めるなと言ってた奴が、生きるのを諦めるような顔をするな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

突然、奏の頭の中に誰かの声が響いた。その直後、奏の目の前にいたノイズが空から降り注いだ青い光弾によって一掃された。

 

「なっ!?これは―――」

 

突然の出来事に奏だけでなく、翼も何が起こったのかと目を見開く。しかし、それにより隙が生じてしまい、1体の巨大型ノイズが翼に襲いかかろうとする。

 

「しまっ―――!?」

 

だが、その巨大型ノイズも空からの光弾の直撃を受け、爆発四散して炭と化した。

 

まだ大量なほどの数がいたノイズも、先程の光弾によりかなりの数が一掃された。それでも、まだ数十体残っている状況だった。

 

「……何だよ、今のは……?」

 

「さっきの攻撃……まさか!?」

 

2人は先程の攻撃が何だったのか考えていると、翼はある存在が思い当たった。

 

その時―――

 

 

ドガアアアアアアン!!

 

 

「うぅっ!?」

 

「な、何だ!?」

 

突然の爆発が起こり、辺りがその衝撃で煙が舞う。その衝撃になんとか耐える2人。

 

そして段々煙が晴れていくと、眩い光に包まれている人型のシルエットが見えた。

 

「あ、あれってまさか……!」

 

さらに光が晴れていくと、片膝立ちで両腕を立てた構えをしている青い超人―――一翔が変身したウルトラマンが降臨していた。




他のウルトラマンネタやオマージュがあることはタグを見る限りわかると思いますが、それ以外にも主人公の一翔には、原作ガイアの藤宮以外の一部の歴代ウルトラマン(またはその変身者)の要素が取り入れられています(さすがに全部入れるのはどう考えても無理があるので)
なので、今回は某銀河の風来坊のようなシーンも書かせていただきました。

ついでに言うと、アグレイターにも様々な要素が取り入れられてます。

主人公にCVを付けるなら?(最終投票)

  • 松岡禎丞
  • 内山昂輝

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