「──ホントにこれでいいの?」
「うん、君くらいのサイズを知ってれば何かと役立ちそうだからね」
悩んだ末、思いついたのはこの子の採寸をさせてもらうこと。
私にはなくてこの子にあるもの。
それは子供の「サイズ」だ。
子供用の服はあまり作ったことがないので、いい参考になるだろう。
これからは何が起きる変わらないし、知っておいて越したことはない。
それに、彼にもし何か聞かれたら『相談の結果、私が欲しかったものをくれたのでタダではない』と言えばなんとかなる。
小言は言われるかもしれないが。
「採寸終ったよ、ありがとう。……でも、やっぱりこれじゃ服はあげられない」
「そんな」
「その代わり、これあげる」
私が出したのは一輪の青いバラが刺繍された布。
この街に来てから何回か練習したものの中の一つだ。
その布にはバラの他に、私のマークも入れている。
「採寸だけじゃね。でも、周りからしたらこれも“高そうなもの”なんでしょ? これじゃだめかな」
「……いいよ」
そう言うと、男の子は布を受け取った。
「あ、それと一つお願いしていい?」
「なに?」
「もし、この刺繍の事聞かれたら“洋裁屋が欲しいものをあげたらくれた”っていっておいてくれる?」
「分かった」
そう言っておけば大丈夫だろう。
なにしろ、タダでやったわけではないのだから。
男の子は青いバラが刺繍された布をしっかりと握り、足早にこの場を去っていった。
数日後、やはり小さい街だからなのか噂は瞬く間に広まったらしい。
その噂の内容が『望むものを貰う代わりに最高の服を仕立てる』。
最高の服を仕立てる、という部分についてはよくわからないが、まあ上々だろう。
──その噂とは別に、今ロシアンマフィアと三合会がこの街の利権を巡って抗争中、ということを耳にした。
だから張さんは一息つく暇もないほど忙しいのだろう。
だが、それは私には関係のない話だ。
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「──軍曹、最近妙な噂があるのを知っているか?」
「噂、ですか。特には」
「“一級品の服を作る洋裁屋”の話だ」
「ああ、そのことですか。それなら聞いたことがあります。なんでも、洋裁屋の欲しいものを渡せば仕立ててもらえるとか」
「しかも、三合会のあの男の服を仕立てたという噂もある。そして、その服と洋裁屋をえらく気に入っているともな。……気に食わんな」
「は?」
「あいつは面白そうな“玩具”を独り占めしている。まるで自分のものだと言わんばかりに。──この街はあいつのモノではない。なら、その玩具を独り占めするのはよくない。たまには、私が遊んでも構わないだろう。何事も息抜きは必要だ」
「その通りであります大尉殿。では、さっそく調査にあたります」
「居場所が割れたら私が直接出向く」
「了解」
とうとうあの方が動きます。