ロアナプラにてドレスコードを決めましょう   作:華原

17 / 134
17 洋裁屋の甘さⅡ

「──ホントにこれでいいの?」

 

「うん、君くらいのサイズを知ってれば何かと役立ちそうだからね」

 

 悩んだ末、思いついたのはこの子の採寸をさせてもらうこと。

 

 私にはなくてこの子にあるもの。

 それは子供の「サイズ」だ。

 

 子供用の服はあまり作ったことがないので、いい参考になるだろう。

 これからは何が起きる変わらないし、知っておいて越したことはない。

 

 それに、彼にもし何か聞かれたら『相談の結果、私が欲しかったものをくれたのでタダではない』と言えばなんとかなる。

 小言は言われるかもしれないが。

 

「採寸終ったよ、ありがとう。……でも、やっぱりこれじゃ服はあげられない」

 

「そんな」

 

「その代わり、これあげる」

 

 私が出したのは一輪の青いバラが刺繍された布。

 この街に来てから何回か練習したものの中の一つだ。

 

 その布にはバラの他に、私のマークも入れている。

 

「採寸だけじゃね。でも、周りからしたらこれも“高そうなもの”なんでしょ? これじゃだめかな」

 

「……いいよ」

 

 そう言うと、男の子は布を受け取った。

 

「あ、それと一つお願いしていい?」

 

「なに?」

 

「もし、この刺繍の事聞かれたら“洋裁屋が欲しいものをあげたらくれた”っていっておいてくれる?」

 

「分かった」

 

 そう言っておけば大丈夫だろう。

 なにしろ、タダでやったわけではないのだから。

 

 男の子は青いバラが刺繍された布をしっかりと握り、足早にこの場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、やはり小さい街だからなのか噂は瞬く間に広まったらしい。

 

 その噂の内容が『望むものを貰う代わりに最高の服を仕立てる』。

 

 最高の服を仕立てる、という部分についてはよくわからないが、まあ上々だろう。

 

 ──その噂とは別に、今ロシアンマフィアと三合会がこの街の利権を巡って抗争中、ということを耳にした。

 だから張さんは一息つく暇もないほど忙しいのだろう。

 

 だが、それは私には関係のない話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

「──軍曹、最近妙な噂があるのを知っているか?」

 

「噂、ですか。特には」

 

「“一級品の服を作る洋裁屋”の話だ」

 

「ああ、そのことですか。それなら聞いたことがあります。なんでも、洋裁屋の欲しいものを渡せば仕立ててもらえるとか」

 

「しかも、三合会のあの男の服を仕立てたという噂もある。そして、その服と洋裁屋をえらく気に入っているともな。……気に食わんな」

 

「は?」

 

「あいつは面白そうな“玩具”を独り占めしている。まるで自分のものだと言わんばかりに。──この街はあいつのモノではない。なら、その玩具を独り占めするのはよくない。たまには、私が遊んでも構わないだろう。何事も息抜きは必要だ」

 

「その通りであります大尉殿。では、さっそく調査にあたります」

 

「居場所が割れたら私が直接出向く」

 

「了解」




とうとうあの方が動きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。