声のない基地   作:pilot

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そういう時代

ここは、少しだけ変わったグリフィンの基地。

大手民間軍事企業として名を馳せたこの会社は、至るところに基地を作り、指揮官という名の社員を送り込み、荒事をさせる。

実行するのは指揮官ではないが。

 

戦術人形と呼ばれる、様々な人の業が詰められたその新たな戦争の主役たちは、元々は一般に流通しているただの自立人形がルーツだ。

たいしてそれらと変わりはない。

人間の兵士にも、一般人と同じで家族がいて、願いがあるのと同じように。

 

ただ、ここの基地の人形だけは、人でも他の戦術人形でも持っているある一つの事が欠けていた。

 

それは一見、いや何度見てもわからないものだろう。

だからと言って分かりにくいものではない。

単純に「見る」ことではわからない部分であるというだけだ。

 

しばらくこの基地で過ごすと直ぐに違和感に気づくだろう。

 

この基地には、声がない。

 

どこにも喋る人形はおらず、ひたすら黙々と日常を送る人形しかいない。

 

もはや人と人間の区別は外見ではつきにくくなっているが、この基地においては見分ける、いや、聞き分けるのは簡単だ。話しかければいい。

話しかけた人間がよっぽどシャイじゃないかぎりは、人間か人形かはすぐわかる。

 

 

 

 

「一人作戦から帰ってきていないのか?」

 

指揮官、つまりこの世界には数少ない人間が人形の報告を受けていた。

一人消えた割にはやけに余裕だが、それには理由がある。

なにせ喋れないからだ。

普通は、人形が消えれば情報漏洩の防止のために捜索するのが半ば義務になっている。

が、ここは先程いったように喋れない。

実は人形の喋る、という機能は中々に高度で、実際ほとんどの指揮官が最初に着任するときには誰も喋ることはない。

その後にほぼ全ての指揮官が、音声を出力するための諸々を導入するのが常なのだが。

 

つまるところ、別に誰に捕まってどんな拷問をされようがここにいる人形が外部に秘密を打ち明けることは絶対にないのだ。だってできないから。

 

「とりあえずこの前あげたメンタルマップのダウンロードをしておいてくれ。もし前の本体が戻ってきたら適当に強化素材にでもするか。」

 

冷酷に聞こるが別に何も悪いことはしていない。

むしろ道具を的確に使っていることに関してはここの指揮官は有能だった。

 

あくまでも軍事企業らしく、冷徹に確実に仕事を終わらせるこの指揮官は、その職業にありながらも人形の声を聞いたことがいちどもなかったし、そしてこれからも聞くことはないのだろう。

そういう人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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