声のない基地   作:pilot

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沈黙の宵

PM11.00

 

全くもって最悪だ。私はおそらく近い内に死ぬ。

 

あの意見のすれ違いのせいでな。

わからなくもない意見だ。確かに声を欲しがる人形がいてもおかしくはない。

だがここに配属されたのなら話は別だ。

 

我々の、そして人形各個のリスクは低くしなければならない。

そもそもあれらも、人間の変わりに犠牲になるよう、そう作られている。よっぽど大事にするのは変わり者だろう。あくまでロボットなのだから。

それにその犠牲になったもの一つを捜索するのですら、犠牲が出かねない。

敵地に侵入するというのが、どれ程危険で、そして破滅のもとなのかを彼はわかっていなかった。

 

もしそれで他の人形に被害が出たらどうするというのだ。

非効率的だし、あれら人形は自らに責任能力をもたない。

我々が、上手く管理するしかないし、それが義務なのだ。

 

私にはわからない。わかれなかった。

そもそもが、人間と近い見た目をしているからという理由で大事にされるのも理解できない。

大事にされるというのは、人間だからという堕落した理由ではならないのだ。

 

その大事にされる、というものはそれらがどんな形であれ、それだけの価値を持っていなければならない筈なのだ。

 

そもそも人間になんの価値がある?

 

人間は賢いから、だとか、人間は感情があるから、だとか、昔から人間は人間を特別視するが、その実野生生物と全くかわりない。

 

少し回りより建築力があり、そして頭が回るだけだ。

大自然の獣など、人間一人では勝てるわけもない。

先達たちの努力と、我々自身の努力によって、この地球上においての地位を守っていたのだ。

 

 

チラと、zasm21の方を見る。

あれはいいな。死んでもバックアップがある。

私には無論、ない。

ここで終わりだ。

 

KSGには強固な盾がある。

羨ましい限りだ。私には盾を支える膂力など残されていない。

よる年の波に全て持っていかれてしまった。

 

416を見れば、ダミーをつれている。

私も複数人いればな。

もっと色々なことができたかもしれない。

 

青年に対して私が言いたかったのは、人形は人間ほど弱くはないということだ。

あれらは完成している。

人間と違って死に悩まないし、自らの存在に悩むことも人間に比べればはるかに少ない。

 

そういうものだったのだ。そう作られていたのだ。

人間が肉を喰うため家畜を育てるように。

だがあれを生き物へ近付けすぎたのだ。

人が感情移入するのは、家畜に対しても人形に対してもおなじだ。

 

彼の思想が悪いとも思わない。

 

だが私の思想が悪いとも思えない。

 

ただただ、私達の意思の疎通ができていなかっただけなのだ。

私も、彼も。

 

人間など、声があっても、どうにもならないことだらけだ。

 

 

 

 

 

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