「わっ」
「きゃ!」
「私以外にも三人どうしよう」
四人の視界は間を置かずに開けた。
急転直下、彼らは上空4000mほどの位置で投げ出されたのだ。
落下に伴う圧力に苦しみながらも、四人は同様の感想を抱き、同様の言葉を口にした。
「ど………何処だここ!?」
眼前には見た事のない風景が広がっていた。
視線の先に広がる地平線は、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。
眼下に見えるのは、縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。
彼らの前に広がる世界は異世界だった。
*
箱庭二一○五三八○外門居住区画、 第三六◯工房
「何から何まで任せて悪いけど……彼らの迎え、お願いできる?」
「任されました」
『工房』の扉に手をかけた黒ウサギに、少 年は不安そうな声をかけた。
「彼らの来訪は………僕らのコミュニティ を救ってくれるだろうか」
「……。さあ?けど“主催者”曰く、これだけは保証してくれました」
おどけるように悪戯っぽく笑った黒ウサギ は、
「彼ら四人は………人類最高クラスのギフト所持者だ、と」
しかし彼らは知らなかった。
そのうちの一人が天災と呼ばれ、恐れられていることを
*
『ぎにゃああああああ!!お、お嬢おおおおおお!!』
上空4000mから落下した四人と一匹は、落下地点に用意してあった緩衝材のような薄い水膜を幾重を通って湖に投げ出される。
「きゃ!」
「わっ!」
「………!!」
ポチャン、と着水。水膜で勢いが衰えていたため四人は無傷ですんだが、耀とともに落ちてきた三毛猫はそうもいかない。
慌てて耀が抱きかかえ、水面に引っ張りあげる。
「………大丈夫?」
『じ、じぬがぼおぼた………!』
まだ呂律が回らないながらも無事を確認した耀はほっとする。
他の三人はさっさと陸地に上がりながら、 それぞれが罵詈雑言を吐き捨てていた。
「し、信じられないわ!問答無用で引き摺りこんだ挙げ句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「……そう。身勝手ね」
「十香たち来れるかな?」
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
耀の呟きに十六夜が答える。何にせよ、知らない場所であることは確かだった。
「まず間違いないだろうけど、お前らにも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ„って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「………春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次に野蛮で狂暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。 見たまんま野蛮で狂暴な逆廻十六夜です。粗野で 凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、 用法と用量を守った上で適切に接してくれお嬢様」
「…そう。取扱説明書をくれたら考えてあげる わ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
「……最後に、白い服を着ている貴女は?」
「私は零泉咲夜」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
一人で考え納得したかのように頷く零泉咲夜。
そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。
(うわぁ………何だか問題児ばっかりみたいで すねえ………)
召喚しておいてアレだが………彼らが協力する姿は、客観的には想像できそうにない。黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。