いつも(?)ありがとうございます。
誤字報告システム便利ですね、活用させていただいております。
頭が重い。それに、意識も霞む。
部隊は、部下はどうなっているかの心配どころではない。
それどころか、次の瞬間には飛びかける意識をつなぎとめるので精一杯。
咄嗟に光学系の屈折光学デコイを展開したにもかかわらず、安全規定を大幅に超過する乱数回避の連続。
辛うじて、統制を維持しているものの共和国の精鋭と自負した中隊が、わずか二人に翻弄されている。
わずかな間に、事態があまりにも急激に進展していた。
「MAYDAY MAYDAY MAYDAY」
始まりは、接敵を知らせる緊急警報。
あの前線戦域管制官が悲鳴を上げるのを聞くのは初めてだった。
「Break! break!」
指揮官が散開を指示。
遠距離から纏まって撃たれるほど馬鹿げたことはない。
即座にそれに従い散開したが、その指示に迅速に応じられる練度の高さであったが甘かった。
敵が見当たらないと首を傾げた瞬間に、バディの上半身が吹き飛ぶ。
「ショーン!?」
「Bandit!Angel12」
「Angel12!?」
攻撃を受けた方向を走査し敵を発見するも、あまりの高度に絶句する。
高度、12000。
魔導師の実用限界高度6000が馬鹿馬鹿しくなる高度だ。
対地上比で6割程度の酸素濃度という過酷な環境云々以前に魔力が枯渇する。
航空魔導師の実用限界が6000というのは、生半可な理由ではない。
であるのに、敵は12000だと?
「It is supposed to be a fighter!」
「Shit! It's not! The magi particle is detected!!」
戦闘機かとも勘ぐるが、やはり間違いない。
感知される魔力の粒子反応と魔力光。
紛れもなく航空魔導師だ。
薄くなる酸素濃度。
急激に低下する体温。
魔力の枯渇は致命的だ。
加えて、高所順応も大きな問題になる。
信じがたいことに敵の魔導師はそのすべてを克服し、あまつさえ戦争をしていた。
悠々と飛ぶ姿は、帝国の武力を如実に体現しているかの印象すら纏ってやまない。
「Climb! Climb and maintain 8000!」
少しでも、こちらの弾が当たる距離まで近づき、迎撃しなければならない。
それでも8000という高度は、魔導士の限界を超えている。
しかし上がらなければ、的当てのようにむざむざ撃ち取られるだけだ。
- - - - side アレクシア・デグレチャフ
こんにちは、アレクシア・デグレチャフ魔導少尉であります。
現在、私は姉であるターニャと共に、共和国軍魔導士を狩っている最中です。
「簡単な仕事ですね。連中にとっては高度6000が限界です、私達はその二倍の高度にいるのですから。」
「そうだな、此処まで上がってはこれまい。」
談笑しながら、仕事をする。
こんなに簡単にスコアを稼いでしまっては、中隊の皆さんに少し申し訳ないですね。
......と高を括っていたのは完全に失敗でした。
高度12000までは来れないとはいえ、相手の弾が当たるかもしれない8000まで、奴らは上がってきやがりました。
敵とは言え、ロクに6000を超えたこともないような敵が、そこまで来れたことには感心します。
「ラインの悪魔共め!今日こそ、今日こそ貴様らを叩き落としてやる!」
「......貴方とは初見になるはずですが?」
私達も軍人です。
それに私達は、ライン戦線で多くの共和国兵をヴァルハラへ送っています。
多少の恨みくらいは買っているでしょう、と思っていましたが。
まさか共和国内で「ラインの悪魔」などという名称が付けられるほどには恨まれていたとは...。
考え事はこれくらいにしますか。
今は上がってきた天晴な敵をヴァルハラへ送り届けてあげるのが私達のお仕事です。
っと、微弱ですが初期照準魔力反応。
ターニャはまだ考え事をしているようですね。
考え込んでいるターニャも可愛いのでずっと見ていたいですが、今は戦闘中です。
「ターニャ、戦闘中です。集中してください。照準されています。」
「ああすまない、そうだったな。ありがとうアレクシア。」
タイミングを見計らって回避。
直後、直前まで居た空間に何本もの魔力光が降り注ぐ。
「もう、危なかったですよターニャ。気を付けてください!」
「だが私達にはこんなもの、スポーツのようなものだろう?」
「それもそうです、ねっ!」
お喋りしながらも、ほとんど無意識に戦闘をこなしています。
ターニャにたくさん教えてもらった意味がありました!
「なぜ当たらない!なぜ避け続けることができる!」
当たらないとはいえ、敵も8000まで上がってきてこの精度の射撃術式です。
相当な精鋭なのでしょうか。
「CPへ至急、敵魔導師はネームド。繰り返す、敵はネームド。」
「CP了解。現在増援が急行中。無理に撃破する必要はない。」
「増援把握。なれど、ここは私達の戦場。」
増援?そんなものが来る頃には終わってますよ。
「「帝国を侵すのであれば、協商連合だろうと共和国だろうと有象無象の区別なく排除するのが我らが使命。」」
エレニウム95式を起動。
「空間座標把握、各目標の乱数回避軌道算出。」
「チャンバーへの魔力充填正常。」
どうやらターニャも、同じことを考えていたようです。
派手にいきましょうか。
「CPへ、戦域空間爆撃警報。」
「CP了解。戦域空間爆撃警報を発令する。」
友軍にも衝撃が来るでしょう。
ここは戦場、我らが主役。
「「去ね。不逞の輩よ。ここは、我らが帝国、我らが空、我らが故郷。」」
ああ、ターニャ...神々しいです、ターニャ...。
「「汝らが、祖国に不逞を為すというならば、我ら神に祈らん。」」
あれ、そういえば、私は、私達は一体何を口走っているのでしょうか。
「「主よ、祖国を救い給え。主よ、我に祖国の敵を撃ち滅ぼす力を与えたまえ」」
なぜ。
私にとっての神は、ターニャだけですが。
一体全体、何なのでしょうかこれは!!
まさかとは思いますが。
ターニャが時々口走る『存在X』とやらでしょうか。
いつだったか、ターニャにそれとなく聞いてみましたが、
「アレは自らを『神』と呼称する世界の邪悪だ。私は奴らを許しはしない。」
って、ものすごく怖い顔で言っていました...。
まさか、その邪悪が?
ターニャの敵が?
私をも利用しようとしている?
「「信心なき輩に、その僕らが侵されるのを救い給え。神よ、我が敵を撃ち滅ぼす力を与えたまえ。」」
エレニウム95式を使う度にこうなるのでは、使うべきではありませんが。
新型宝珠として、性能が突出して素晴らしいことには変わりないのです。
使わざるを得ないのです...。
「告げる。」
「諸君は、帝国の領域を侵犯している。」
ターニャの言いたいことを、私が紡ぐ。
私の言いたいことを、ターニャが紡ぐ。
「我々は、祖国を守るべく全力を尽くす。」
「我々には、守らねばならない人々が背後にいるのだ。」
たとえ、どれだけ邪悪に邪魔されようとも。
たとえ、邪悪が私を利用し、嫌がらせをしようとも。
たとえ、邪悪がターニャを利用し、私に悪夢を見せようとも。
「「答えよ。何故、帝国を、我らが祖国を、諸君は侵さんと欲す?」」
私は、私だけは絶対にターニャを裏切らない。
ターニャが私を、信じなくなってしまうかもしれません。
敵と認識され、殺されてしまうかもしれません。
それでも私は、ターニャのことが大好きです。
私の魂が、この世界からいなくなる、その日まで。
この気持ちだけは何があっても、奪われたくない!
『CPより、戦域へ警報。高魔力ノイズに警戒せよ。』
ああ、ちゃんと仕事してくれていますね。
十分な魔力も蓄積されています。
ターニャと共に、敵を撃ち滅ぼすのみです。
「聖徒よ、主の恵みを信じよ。」
「我ら、恐れを知らぬものなり。」
充填されていた魔力が急激に解放される脱力感。
全身の細胞が吸い取られる魔力によって悲鳴を上げそうになりますが、エレニウム95式がそれを封じ込む。
苦痛が強制的に法悦へ変換されるぬぐい難い違和感。
喜びと苦痛のブレンドで頭がシェイクされる感覚は、何物にも形容しがたい最悪なものです...。
「運命を嘆くなかれ。おお、主は我々をお見捨てにならず!!」
「遥か道の果て、我らは約束された地に至らん。」
なんなのでしょうかこの、不快な気分は。
おそらく、邪悪な存在による、呪いなのでしょう。
「っ、ゲホッッ、ゲホッ。」
「ケホッケホッ、ターニャ、大丈夫ですか...」
「ああ、魔力を使いすぎたか。高度を下げよう。」
敵も倒しましたし、こんな高さにずっと居る意味もありませんしね。
それに、まだ仕事が残っています。
「交戦中の共和国軍に告げる。すでに、勝敗は決した。」
「我々帝国が、共和国軍精鋭魔導士達をヴァルハラへ送り届けてやった。」
「投降するならば、ヴォルムス陸戦条約に基づき、捕虜としての権利を保障する。」
「抵抗するならば、お望み通り二階級特進とヴァルハラへの片道切符を差し上げましょう。」
今回は、私達の、帝国の、勝利です。
ターニャの言いたそうな事を...。
外見はターニャが二人居るだけなので想像しやすい...ですかね?
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ