「さて、アレクシア・デグレチャフ中尉。貴官の補足はありがたかったが、貴官もターニャ・デグレチャフ中尉と同じ考えであるのか?」
こんにちは、アレクシア・デグレチャフ中尉です。
現在、参謀本部戦務参謀様と楽しい楽しい会話中であります。
「はい、閣下。小官も大戦になると確信します。」
「なるほど。では貴官の言う勝つための案とやら、少しでいい、聞かせてくれんかね。」
ターニャと違って、戦後処理についてが殆どなんですが...。
「はい、閣下。現在帝国は、協商連合と共和国の二つの戦線を持っています。」
二正面では、主力部隊を2つに分けるか、1つの部隊を酷使しなくてはいけません。
これでは時間も資源も多く消費するため、さっさと各個撃破するに限ります。
「現在は維持できていますが、共和国に連合王国が支援する可能性を考えると、戦争を長引かせることは賢いとは言えません。よって、協商連合、共和国共に早期決着で終わらせることが最善であると愚考致します。」
「...私もアレクシア中尉に同意致します。北方を手早く終わらせ、膠着状態が続くライン戦線に主力を向けるべきかと。」
「成程。確かにその通りだな。」
「それと、これは言ってもよろしいのかわかりませんが...。」
協商連合国を全土併合してはいけない旨は、戦争というより政治ですし...。
「構わんよ、憶測でも何でもいい、聞かせてくれたまえ。」
「ではお言葉に甘えさせていただきます。北方が解決しますと、我が帝国はおそらく協商連合国の全土を併合すると愚考致しますが、いかがでしょうか?」
今まで読んだ帝国の資料からは、傀儡政権や、それに準ずるものの記述は無かったです。
「そうだな、それが何か、不味いのかね?」
「はい、閣下。全土併合しますと、あの冬は恐ろしく寒い地を、我々帝国が守る義務が生じます。これは兵力の分散となりますし、併合した地域にてパルチザンを逮捕するなど、頭の痛い課題が目白押しであります。」
「...つまり、併合は極力するな、と?それでは国民が不満を持つと思うのだが。」
「軍事的に重要な拠点のみを併合とし、その他の港を何百年か租借するなどいかがでしょう?また、協商連合国の貿易相手を帝国が認可した国のみに制限できますし。」
「しかしそれでは、我々の消費した武器や弾薬などを確保するための財源や資源はどうするのかね。」
「簡単です。彼らとて戦後復興をしなくてはなりません。それを帝国が援助するのです。今の帝国ならば、規格化された安価で高品質な製品がたくさんあります。それを売りつけるのです。」
「...そして協商連合国がある程度復興を成したなら、武器や弾薬など消耗品を生産させ、帝国が買えばよろしいかと愚考します。」
「...成程。そうすれば協商連合国は、帝国と貿易せざるを得なくなる...言い換えれば、裏切れば産業が壊滅する状況にすればよいのだな。」
流石は、というべきでしょうか。
帝国にとって前例のない、未知の話であるのに、閣下は理解されているようです。
ちなみに、帝国の安価で高品質な大量生産品というのは、私が論文を出した翌年には姿を見せ始め、今現在は既に普及しています。
自分の論文が現実になると、とても嬉しいですね。
また、規格化・大量生産化に伴い、ターニャの兵站に関する論文も限定的ですが現実になっています。
「ふむ、なかなか良い話だった。また君達の論文を読ませてもらうとしよう。貴重な勉学の時間を取ってすまなかったな。」
「いえ。小官にとっても、有意義な時間でありました。」
「はい。また、お話させてください、閣下。」
閣下との会話は、本当に有意義で楽しかったです。
- - - - 帝都某所
『ゼートゥーア閣下?』
いつになく、考え込んだ様子を懸念したのだろう。
幾人かの参謀が気がつけば自分の顔を心配げに注視している。
部下の前だというのに、と思いつつ、一方で知的な衝撃の余波が未だに頭に渦巻いているのだ。
なんでもない、と誤魔化す気分にもなれず、つい素直な感想を漏らしてしまう。
『風聞とは、存外正しいものだな。』
『はっ?』
どうされたのだろうか、という表情が一斉に並ぶのを見て、ゼートゥーア自身、信じられない思いを口にするのは憚られた。
新任少尉が、エースオブエースにして、銀翼突撃章保持?
ライフルよりも、人形を抱いている方がよほど似合うような少女達が?
......まあ、魔導師だ。突出した天性の才能があれば、まだ可能かもしれない。
だが、明るく笑っている方が、よほど魅力的であるべきなのに、軍人然とした姿に違和感を覚えさせない時点で、何か狂っているようだ。
魔導師の英才教育は考えものかもしれない。
いや、それだけならばともかく、プロパガンダに使う時点で、軍人として違和感を覚えざるをえなかった。
だから、それが陸軍鉄道部や兵站部に絶賛されるほどの論文を書いたというのは、さすがに無理があるだろうと思った。
十中八九代筆だと確信していたのだが。
たまたま見かけたのを幸い、試すつもりで声をかけたが、これでは予想外も甚だしい。
まさか、あの年齢で、参謀本部が躊躇している戦争の先行き予測をこれほど明瞭に語れるとは。
まさか、戦後の処理についてまでも我々が気づきえない危険を予測しているとは。
他の余人が言えば戯言と断じられるような戦争案や戦後案だが、妙に説得力があった。
まるで、見てきたかのように断言するのだ。あれほど断言できるのは、よほどの確信があるものに限る。
人の意見を語る、というよりも自身の考えを述べていると考えざるを得ないのだ。
『すまないが、出所は言えないが、この案を検討してほしい。』
『......随分と、過激な戦局予想でありますが。』
それはそうだ。自分だって、世界中が戦争に突入するなどという案は、考えつかない。
過激にも程があるだろうが、一考すれば恐ろしい可能性が頭をどうしてもよぎるのだ。
そんなことは、ないだろう。
どこかに、穴が見つかるだろう、とは思うのだが。
しかし、仮にだ。あくまでも仮にだが。
もしも、もしも彼女達が正しかったとしよう。
その時は、約束通り一個大隊預けてやるのも悪くない。
狂気に身を任せねば戦争に勝てないというならば、何でもやるのが自分の仕事なのだ。
『......嫌な大人にだけはなりたくなかったのだがな。』
そしてふと、自分の思考に愕然としてしまう。
子供を戦争に送る?
軍人として最悪の恥だ。
......ああ、自らの無能が恨めしい。
やはり、今回のような話を書いているときは楽しいでありますな。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ