見放さず読んで下さる貴方方に、今一度最上の感謝を。
「総員、傾聴!」
こんにちは、アレクシア・フォン・デグレチャフ少佐です。
大隊の編成も終わり、無事少佐に昇進できました。
また、爵位?を戴けましたので、『フォン』を名乗ることができます。
いいでしょう、『フォン』を名乗れるだなんて。
西暦世界の、かの二重帝国のハプスブルク家を筆頭に、様々な名家が思い浮かびます。
現在、我が帝国領土を侵犯中のダキア公国。
実弾演習も兼ねて、運動がてら戦場へ行くことになりました。
「大隊長より、訓示!!」
叫んでいるのは、我が第203航空魔導大隊所属の中隊長、ヴァイス中尉です。
とても真面目な良い方なのですが、少々真面目すぎるところがターニャは気に入らないようです。
「さて、大隊諸君。戦争だ。いや、戦争のような代物の始まりだ。」
まさかダキア公国、偵察の魔導師や飛行機さえ飛ばしていないとは思いませんでしたよ。
通信も暗号化していないようですし、機密が駄々洩れです。
「折しも今日は、私達の誕生日です。それを知ってか知らずか、ダキア公国からご芳情です。」
「ご丁寧なサプライズプレゼントで、実弾演習の標的を頂いた。」
「ありがたいことですね、なんて優しいダキア公国なんでしょうか...。」
「諸君はこれを銃撃してもよいし、術式で爆破してもよい。航空支配が約束されている以上、ある種のマンハント!ボーイスカウトを蹴飛ばすようなものだ。」
「最後に一つ。今回の標的は、一応反撃してくる。...はずです。まあ、私達があれだけ訓練してあげたのです、撃墜されるような間抜けはいないと思いますが、留意してください。」
さて、出撃です。
良い運動になるといいのですが。
「ではターニャ、行きましょうか。」
「ああ。...セレブリャコーフ少尉、ヴァイス中尉、さっさと準備させろ。」
さて...やっとダキア軍が見えてきました。
ええと...。
「なんと、ご丁寧に狙いやすいように派手な軍服!当てやすいように隊列を組んで来てくださるとは!」
「進軍中のダキア軍、およそ三個師団を確認。大隊各位、行動を開始せよ。」
「連中に本当の戦争とはどういうものか、文明の鉄槌を叩き込んでやれ!」
初陣にしては簡単すぎますね。大隊の皆さんが油断してしまわないよう厳しく見張る必要があります。
「「「了解ッ!」」」
第一中隊はターニャと私直轄なので動いていませんが、この分なら第二、第三、第四中隊だけで十分でしょうね。
『実弾演習とは、よく言ったものだな...。』
『敵は案山子も同然。外したら恥だな。貫通術式......放てぇぇッ!!』
皆さん順調に狩りを楽しんでいるようで何よりです。
敵が卑怯だのなんだのと喚いていますが...先に戦争を仕掛けてきたのは、そちらでしょうに...。
「困ったな。アレクシア、セレブリャコーフ少尉。やる事が無いぞ。」
「予想通りですよ、およそ半分は農民。士気も統率も練度もひどいものです。」
「私はてっきり、難戦する羽目になると思っていましたが...。」
少尉は考えすぎなんでしょうか。それとも、敵のことをちゃんと調べていないだけでしょうか?
「ハンッ、たった三個師団ごときに緊張とは。セレブリャコーフ少尉、ライン戦線帰りとは思えんな。」
そうだったんですね、少尉はあの地獄を生きて帰ってきたのですか。
それなら、大隊副官という立場になったのも納得ですね。
「少佐殿、その......三個師団、ですよ?常々思うのですが...お二人の感性は少々...。」
「「少々?」」
「い、いえ!なんでもありません!」
失礼ですね、まさか私達が狂っているとでもいうのでしょうか。
記憶と記録、実際のデータから事実しか話していないのですが。
...ああ、成程。確かに三個師団に大隊程度で突っ込むと聞けば、怯えますか。
「ごめんなさい、セレブリャコーフ少尉が正しいですね。」
「ええと...はい?」
「三個師団と言った私達が悪かった。厳密には、5万弱の暴徒、ないし群衆と定義するべきだったな。」
「ごめんなさい少尉。言い間違えてしまって...。」
「い、いえ...。」
そういえば、この世界にとってはこれが初めての世界大戦ですか。
西暦世界を知っている私達はともかく、皆さんは知らないのでしたね。
航空戦力の、強力さ、無慈悲さを。
「...ん?」
「どうしましたか、ターニャ?」
「あれは...連中、何をしている?」
ええと...敵兵が、わざわざ集まっていますね。指揮官の指示のようです。
何をしているんでしょう...わざわざ的になるだなんて。
「おそらく...統制射撃の方陣かと。」
「方陣ですって?時代錯誤にもほどがあるでしょう...。」
「......それで、何故ヴァイス中尉達は退避しようとしているのだ?」
...。
「ああ、私分かりました。きっとヴァイス中尉のことです、敵歩兵が対空射撃をしようとしているので、『教範通りに』射程圏内から逃れようとしているのでしょう!」
真面目なヴァイス中尉のことです...。
「はぁ、あのマニュアル馬鹿が。歩兵の、しかも時代遅れな銃の弾が航空魔導師に当たるとでも?当たったとして、撃墜されるとでも本気で思っているのか?」
「......あんなのに撃墜される間抜けだったら、私でさえ怒って撃ち殺してしまいそうです。しかし、ターニャ。仕方ないですよ、まだ皆さんは航空戦力の地上に対する優位性を、知らないのですから。」
確かに魔導師は強力ですが、共和国も協商連合国も、魔導師で地上部隊を制圧する、ということをメインにしている軍は見ませんね。
見ないだけで、いるかもしれませんが...。
基本的には火砲の弾が当たったかどうかの弾着観測、敵観測手の撃墜、味方観測手を守るためにスクランブル、くらいでしょうか?
基本的に魔導師は魔導師と戦う...というのが、常識のようですね。
「チッ、間抜け共め。仕方ない、我々も参加だ、中隊!我に続け!」
「了解です!」
「りょ、了解!」
少しくらいは運動しないとですし。
丁度よかったです、魔導師の強さを教えてあげつつ、運動ができるのです。
「重機関銃の発砲音すら聞こえないとはな...。」
「擲弾投下!」
やっていることは、爆撃機のモノマネです。
ただ、爆弾を投下するだけの簡単なこと。準備運動にもなりませんね。
「はぁ、私達が攻められていると思っていたのですが...。」
「まったくだ...困った連中だな、嘆かわしい。」
なんだかもう、飽きてきました...。
「もう、さっさと前線部隊の指揮官のいる後方基地を潰して友軍に任せましょう。」
「そうだな、そうしよう。時間の無駄だ、こんなお遊戯をしているくらいなら、宿舎周りの草むしりでもしているほうがよっぽどマシだ。」
「......なあ、アレクシア、セレブリャコーフ少尉。本当に、これが?」
「ターニャの言いたいことは、とてもよく分かります。ですが...」
「はい、偽装ではなく、これが本物の侵攻軍司令部のようですね。」
......。
お粗末なものです、出力も絞らずに通信を垂れ流しています。
見え見えの罠だと思っていましたが...はぁ。
「ひどいものですね。もしかして私達は、帝国に観光しに来た人たちを侵攻軍と間違ってしまったのでしょうか?」
「そうかもしれないな。ビザを持っているか確認しようか。」
「入国の目的も、ですよ!」
ダキア軍、恐るるに足らず......といいますか、ここまでひどいと笑えませんね。
...着陸。
すると、流石に気づいたのか、ドタドタと走ってくる音が聞こえて、
「き、貴様らああぁぁぁぁ!!」
「帝国へようこそ!」
「ご入国の目的は?ビザはお持ちですかぁ?」
ターニャ、あまりにひどいので鬱憤を晴らすつもりで皮肉を言っているのは分かりますが...。
私はもう、皮肉を言う気力すら湧きません...。
「...はぁ。」
「ふ、ふ、ふざけるなあぁぁあ!!!」
発砲。
誰が、誰に?
敵が、ターニャに。
「チッ...」
「アレクシア、落ち着け、あの程度の銃撃で私達の防御術式が抜かれるわけないだろう。」
次々に、敵兵が発砲してきますが、一発も当たりません。
いえ、当たってはいるのですが、魔導師の防御を時代遅れの銃で何発撃っても抜けるわけがないのです。
「...はい、すみませんターニャ。ですが、これは本当に時間の無駄ですよ...。」
「そうだな、さっさと終わらせよう。総員、あの指揮官だけ残し残りは射殺せよ!」
- - - - side セレブリャコーフ少尉
少佐方は、お二人とも恐ろしい方ですが、本当に凄い人達です。
時代遅れとはいえ、5万人を蹴散らし、敵司令を潰してしまいました。
3時間も経たないうちに、です。
ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐は厳しいことばかり言われますが、その言葉の裏には私達を死なないように、私達のことを大切に想ってくださっていることが少なくとも私には分かります。
言葉こそ苛烈で、恐ろしいことを連発されますが、とても優しい方です。
実は、以前ライン戦線で助けて頂いたのですが、お二人は覚えておられないようです...。
一方で、そんな少佐の妹様の、もう一人の少佐。
アレクシア・フォン・デグレチャフ少佐は、普段はとても温厚な方で、言葉もなるべく苛烈にならないよう配慮してくださいます。
お姉さんと同様、私達のことを気遣ってくれますが...。
お姉さんが何か、危害を加えられたり、ストレスを感じそうな事などが発生した時に、普段の温厚さからは想像できないほど豹変されます...。
その時の、アレクシア少佐の眼はターニャ少佐よりもとても恐ろしく感じます。
ただ、それが姉を想う気持ちから来ていることを、ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐よりこっそり教えてもらいました。
『あの子にとって、私はあの子の心の支えなのだ。だから、私のことをああも溺愛しているのだよ。それに、あの子にとっても、私にとっても唯一の家族だ。私にも、あの子は必要なのだよ。』
噂で聞いていましたが、『二人で一人』というのは、間違いではないようですね。
それに、あの年齢で、『唯一の家族』ということは、ご両親は...。
...いえ、私が悲しんだところで何も変わりませんね!
私は私らしく、お二人にコーヒーを淹れましょう。
うーん、ヴィーシャの表現、難しい...。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
-
良い
-
まあまあ
-
イマイチ