二人の銀翼   作:アレクシア少佐

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お兄様お姉様、いつも読んで下さってありがとうございます。

そろそろ歴史が変わりそう...?


25 捕虜への見舞い

「っつつ......なんだ、死ねなかったか...。」

 

「ああ、気が付かれましたか。おはようございます。」

 

こんにちは、アレクシア・フォン・デグレチャフ少佐です。

先の協商連合魔導大隊を壊滅させた日から数日ほど経ちました。

捕虜として確保した敵魔導大隊の大隊長、アンソン・スー殿がやっと目を覚まされました。

 

私が確保したので、看ておけ、と。

最初の日は怪我もあってか物凄く魘されておりましたが、回復なされたようでよかったです。

 

「ここは.....ッ、君は!!......そうか、私は捕虜となったのだな。」

 

暴れるかと思いましたが、すぐに状況を理解したみたいです。

 

「はい、まさか自爆なんてされるとは。驚きましたよ、アンソン殿。」

 

「それでもくたばらない、君もどうかと思うがな。それに自爆なら、君だったか?私の部下にやってくれたじゃないか。」

 

...もっと、部下を殺された恨みなどぶちまけられると思っていましたが。

想像よりも、気さくな人のようですね。

 

「いえ、あの自爆は私の姉がやりましたね。......その、アンソン殿。左腕のことは、すみませんでした。部下の皆さんのことも、申し訳ありません。」

 

敵対し、戦闘中だったとはいえ、落ち着いて話せる今ならば謝ることができます。

 

「...まったくだ。まあ、今は誰が望んだのか知らんが戦争中だ、お互い生きるのに必死のあの状況で、仕方のないことさ。むしろ私は、左腕一本だけで生き延びてしまったことが恥ずかしいとも思うさ。」

 

「......その、アンソン殿。一応捕虜ですので、身に着けていたものは全て確認させて頂きましたが...娘さんが、いるのですよね?」

 

「...ああ。君よりは少しだけ歳が上だがな、精神は君の方が大人だろう。......まったく、我儘な娘さ。休暇に会いに行けば、やれヒゲを剃れだの、やれ清潔にしろだのと、誰に似たんだかうるさくて敵わん。」

 

「あはは、娘さんは、アンソン殿のことが大好きなのでしょう。そうでなければ、この写真のような笑顔にはなれませんよ。はい、これはお返しします。」

 

戦場で憎しみあう敵でも、こうやって落ち着いて話すことができれば、いいのですがね。

今回の共和国も協商連合も、どちらもあちらから宣戦布告をされたのです。

政府が戦争をしたいのは、勝手だとは思いますが、国民の皆さんが可哀そうです。

 

「ありがとう。...君は、君達は我々の間では『ラインの悪魔』と呼ばれている。知っているかい?」

 

「はい、それはもう。ライン戦線では共和国の皆さんに散々呼ばれています。」

 

可愛いターニャを悪魔だなんて、ひどいあだ名だと思いませんか!?

 

「ははは、どんな恐ろしい悪魔なのかと思っていたが、私の娘よりも若いとはな。」

 

「アンソン殿は、私達が憎くはないのですか?」

 

「なぜだ?まあ、確かに大事な部下を失っているから、多少は恨みがあるさ。だがこれは戦争のせいだ、仕方のないことだ。それに落とされたあいつらも、技量が足りなかっただけかもしれない。」

 

ここまで、すっぱりと割り切れる軍人はなかなかいないのではないでしょうか。

ターニャならおそらく、『ああ?落ちたあいつらがのろまだっただけだ。』と言いそうですね。

アンソン殿とターニャは、どこか似ているかもしれません。

 

「...アンソン殿は、敵にしておくには惜しいくらい聡明な方ですね。」

 

「ラインの悪魔様にそう言って頂けるとは、光栄ですな。...君も敵にしておくにはもったいないがな。」

 

「アレクシア、です。悪魔ではないですよ?私の名は、アレクシア・フォン・デグレチャフです。ああ、すみません、そういえば名乗っていませんでしたね。」

 

「そういえば、そうだな。改めて自己紹介といこうか。どうせ私はこんな怪我の、しかも捕虜だ。暇つぶしに付き合ってくれ。」

 

なんとも、憎めない方です。

 

「君はもう知っているだろうが、私はアンソン・スーだ。協商連合国にて、中佐を拝命している。今は帝国の捕虜だが、な。」

 

「はい、改めて、私はアレクシア・フォン・デグレチャフです。帝国から少佐を拝命しております。捕虜の貴方にこう言うのも何ですが、戦争終結まで、仲良くしてください。」

 

「ははは、君は変わった軍人だな。捕虜と仲良くしよう、だなんてな。だが、気に入った、しばらくの間、よろしく頼むよ。」

 

今の私も、アンソン殿を看病するのが仕事ですし、雑談でもしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンソン殿の奥様や娘さんは、今はどちらに?」

 

「ああ、娘...メアリーというのだが、危ないから連合王国にでも避難しておけと言っていたのだが、『お父さんが残るのなら私も残る!』と言って聞かなくてな...。」

 

優しい娘さんです。アンソン殿もこれほど聡明な方です、きっと娘さんもすばらしい人なのでしょう。

 

「あはは、アンソン殿は愛されていますね。」

 

「まったくだよ。まあ今は、無理矢理に連合王国へ送り出したがな。......そういえば、アレクシア殿。私のライフルは、どうなりましたか。」

 

アンソン殿のライフルですか...『AS』と掘られていたあのライフルですね。

 

「はい?ライフルですか、あれなら貴方の持ち物ということで、今はお返しできませんがちゃんと保管してありますよ。あれはなかなか良い銃です、誰かにプレゼントでもされましたか?アンソン殿の名前入りでしたし。」

 

「そうか、ありがとう。いやなに、娘が連合王国へ行く代わりに、あのライフルをな。」

 

「...そうでしたか。戦争が終わったら、アンソン殿の娘さんに会ってみたいですね。一体どれほど、おてんばな娘さんなのか気になってしまいます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、アレクシアか。アンソン殿は、どうだ?」

 

一旦、飲み物でも用意しようと部屋を出たところで、ターニャに話しかけられました。

 

「はい、先ほど目を覚まされました。少し話しましたが、なかなか気さくな、敵にしておくにはもったいない方です。これから、飲み物を用意してきます。」

 

「...そうか。ああ、飲み物は三人分で頼む。私もアンソン殿の話を聞きたいからな。」

 

やっぱりターニャも気になるんですね。

ある意味、私達とは最も腐れ縁な敵将ですし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- - - - side アンソン・スー

 

部屋の扉が開く。

アレクシア殿か?と思ったが、どうも雰囲気や立ち振る舞いがまったく違う。

おそらくアレクシア殿が話していた、お姉さんなのだろう。

 

「......君は、アレクシア殿ではないようだな。」

 

「ああ、よく分かったな。私はターニャ・フォン・デグレチャフだ。よろしく、アンソン・スー殿。」

 

......恐ろしい笑顔だ。アレクシア殿とはまるで対極だな。

 

「入りますよ、飲み物を持ってきました。コーヒーですが、よろしいですか?」

 

...ターニャ殿と二人きりで話すのは、いささか緊張してしまいそうだった。

 

「ああ、構わない。ありがとう、アレクシア殿。」

 

「いえいえ、お構いなく。」

 

「......本当に君達は、そっくりだな。雰囲気などはまったく真逆だが...。」

 

「そうですか?真逆というほどでもありませんよ?」

 

いやいや、温厚そうなアレクシア殿と、好戦的なイメージを持たされるターニャ殿では真逆だろう。

 

「まあ、その話はいい。さてアンソン殿、単刀直入に聞こうか。貴官は帝国が勝利して戦争が終結した後も、協商連合国が滅びないと言われて信じるか?」

 

...どういうことだ?

帝国が勝利したならば、今まで通りなら.....いや。

そういえば帝国は、ダキアに勝利した際、戦略的に重要な場所を除いて自治権を認めていたような......。

 

「...にわかには信じられないが、ダキアの件もある。今は信じよう。」

 

「では、協商連合国が残った、ということで話をするぞ。戦後の協商連合国で、帝国と同盟関係を結ぶのが最善だ!と吹聴してくれないか?」

 

「それは、私に祖国を...。」

 

「いやいや、早合点してもらっては困る。いいか、戦後の協商連合国は、戦後復興のために大変な努力をせねばならないだろう。そこで、我が帝国がおそらく、何らかの援助を持ちかけるはずだ。それを、受け入れてくれ、という話だ。」

 

...どういうことだ?帝国が、援助だと?

 

「...まったく信じられない、という表情ですね。私からもう少し説明しましょうか。いいですか、まず帝国が協商連合国を併合した場合を考えてみてください。」

 

...おそらく、祖国の民衆たちは帝国にあまり従わないだろうな。

 

「きっと、皆さん帝国の言うことなんてあんまり聞いてくれないはずです。しかも帝国としては、『帝国領』が増える、つまり防衛せねばならない場所が増えるのです。これは帝国にとってメリットよりもデメリットのほうが大きいです。」

 

...確かにそうだな、帝国の視点に立って考えてみれば、その通りだ。

併合したところで、旨味が少ない。

 

「そこで、協商連合国を残すのです。まあ帝国の臣民たちも、戦争に勝って何もなしでは怒ってしまいますから、軍事的に重要な港などは帝国管理になると思いますが。」

 

「...言わんとすることは、おおよそだが分かった。つまり帝国は、民衆の反発、防衛などの一切を擦り付けるのだな。」

 

「身もふたもない言い方をすれば、そうですね。」

 

......帝国は、戦争に勝った国をすべからく併合すると思っていたが。

いつの間に、ここまで戦略的に物事を考えるようになったのだろう。

 

「それで、援助とはどのようなものなのだ?」

 

「ああ、まず帝国が協商連合国の工場などを直す建材などを援助します。見返りに、直った工場で帝国のために銃弾など消耗品を生産してもらいます。...ああ、ちゃんと買うので問題ないですよ。そうすれば、帝国は軍事物資がたくさん増えて嬉しい。協商連合国は工場を直してもらっただけでなく、軍需によって潤う。いいことしかありません。」

 

「......成程。そういうことならば、その提案に乗ろう。」

 

祖国の為だ、帝国以外の国との関係は悪くなるかもしれないが、致し方ない。

 

「では、アンソン殿。私達は仕事があるのでな、失礼する。何かあれば、部屋の前に従兵がいる、そいつを使え。」

 

「では、アンソン殿。お大事に。」




アンソン回でした。

祖国を想う気持ちで復讐の鬼になるメアリーパッパは見たくないのです。

まだそこまで継続していませんが、感想など。

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