「二人ともっ!!...無事で、無事でよかったっ!!」
「...馬鹿が、大人しく後退していればよいものを...。」
「あはは...命令違反、ですよメアリー。ですが、来て下さりありがとうございます。それに...今は無事ですが、これからどうなるか...。」
「あー...中佐殿、申し上げにくいのですが...。」
ルーデル大尉が、何か言いたげです。
表情から察するに、あまり良くない報せでしょうね。
「なんだ、大尉。言ってみろ。」
「...中佐殿も気づかれていると思いますが...四方八方を囲まれております。故に、簡素な術式どころか、通信でさえ居場所を特定される恐れが...。」
それについては、先程身をもって体験しましたね。
「そうだな...我らの援軍が来てくれるだろうが、このまま耐えきれるとは思えん。攻勢に...出るしかあるまい。」
...ターニャは言葉を濁しましたが...要するに、誰かが囮となり、敵を引き付け、残った3人で敵の背後を突く...。
言葉で言うには簡単ですが、その難易度はこれまでで最も難しいです。
「...では、ターニャ。私が、囮に。」
私ならば、ターニャとほぼ同等の戦闘をこなすことが可能なはずです。
瞬間的な判断力は、ターニャのほうが優れていますが...。
「ダメだ。この作戦が現状最も打破しうる可能性が高いものだが...同時に、失敗のリスクが大きすぎる。この場にいる我々の誰かが欠ければ、打破できたとしても戦闘団の士気は下がるだろう。」
...冷静に考えてみれば、確かにそうです。
私達、隊長格が一人でも欠けてしまえば...。
「では、どうしましょうか...。」
「...私と、アレクシアで囮を務める。一人よりも、二人ならば幾分かマシだろう。大尉と少尉には、援護を頼みたい。」
...リスクはあまり変わらないような気がしますが、一人よりはマシでしょう。
しかし、多少の敵を削ったとはいえ、ざっと4個大隊ほどは残っているでしょうか。
4個大隊を、4人で?
「......ふふ。ターニャ...この絶望的な状況...私達の初陣を思い出しますね。」
「...そうだな。あの時は、二人で1個大隊だったか?あの時よりは、装備もマシになったとはいえ、厳しいな。」
「そうですね。ですが...あの時、弾着観測用の装備でさえ生き残れたのです。今回も、きっと、生き残れるでしょう。」
思い出せば、酷似する、最悪な状況。
「...ターニャちゃん、アレクシアちゃん。どうか...絶対に、死なないで。」
「はい、メアリー。約束です。」
さて...いつまでもこうしていられません。
「では、諸君。戦争の時間だ。」
ターニャと私が、同時に飛び出し、牽制ついでに爆裂術式を撃ちまくります。
敵の数は圧倒的。ですが故に、適当に撃っても誰かに当たるのです...。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、とはよく言ったものです。
「Stirb(死ね)!」
爆裂術式に織り交ぜて、時折貫通術式も放ちます。
貫通術式は致命傷にはなりにくいですが、深手を負わせることが可能です。
ターニャと私で、螺旋を描くように、お互いを守りながら速度350で敵の周りを高速旋回中。
「...チッ!奴らのようなへたくそでも、弾を適当に撃っていれば当たるかッ...!」
...ターニャが、怪我をした!?
意識を向けると、腹部に被弾しています...。
防郭である程度軽減したようですが、それでも出血しています...。
「っ、ターニャ!」
「私のことはいい!目の前の敵に集中しろ!でなければ、この程度では済まないッ!!」
そ、そうです。冷静に、冷静にならなければ...。
弾薬は...かなり余裕があります。艦隊の掃除で、あまり使わなかったことがよかったのでしょう。
「アレクシア、どうにか術式で出血を抑えているが、長く持ちそうにない...。」
...現状、爆裂術式の弾幕によって、1個大隊分くらいの敵は落としたと思います。
敵も、やられてばかりの馬鹿ではないようで、こちらを攻撃することよりも回避に専念し始め、私達の被弾も減ってきています。
「...ターニャのことは、私が守りますからっ!!...私が死んでも、ターニャだけはっ!」
「お前が死んだら、...私が生きている意味など無い!!軽々しく、死んでもいいなどと言うなッ!!」
...私にとってのターニャは、かけがえのない存在。命を賭してでも、守るべき存在です。
ですが...ターニャにとっても、同様なのでしょうか。
普段、激昂したりしないターニャが、本気で怒っています...。
「...ごめんなさい。」
「...帰ったら、沢山可愛がってやる。私が、アレクシアのことをどう想っているか...教えてやる。」
...戦場の真っ只中だというのに、嬉しくて顔が熱いです。
今すぐにでも、ターニャを抱きしめたい衝動に駆られますが...我慢です。
...一旦冷静になれたせいか、焦りも消え、明瞭な思考が戻ってきます。
「...ターニャ、敵が私達を包囲してきたということは、奴らの目的は私達を殺すことの筈です。ですから...。」
「...。なぜ、このような簡単な答えに今まで気づかなかったのだ。」
...上昇すれば、よいのです。
かつて、ライン戦線で共和国の魔導師にやったように。
一気に上昇し、上から消し去ってしまえばよいのです。
「...では行こうか、アレクシア。」
「はい、ターニャ。どこまでも。」
- - - - 連合王国軍 例の中佐
悪魔を包囲し、あとは全員で爆裂術式を撃ち込むだけだったのだが、奴らも状況を打開するために行動を起こしてきた。
二人の悪魔は、互いを守りあうかのように、螺旋を描くようにかなりの速度で飛んでいる。
モタモタしている間に、仲間が減ってゆく。
たった二人で、一個師団を相手に?
ありえん、と叫びたい衝動に駆られるが、現実に起きている...。
ようやく、悪魔の片割れに、傷を負わせることができたと思えば、奴らは上へ、上へと上昇してゆく。
「チッ...どこまで上がるつもりだ。」
現在、高度5000だ。
一般的な魔導師の限界である6000までもうすぐ。
しかし、あの悪魔どもが、それを知らない筈がない。
ならば、何を考えている?
共和国軍が記録として残した、高度12000まで行くつもりなのか?
だがあれは、目撃者ゼロだった筈。そんな信憑性の低い情報など...。
「...敵、高度...8000を突破。どう致しますか、中佐殿...。」
現在、我々の高度は6000。既に飛んでいるだけで辛そうな奴もいる。
だが、悪魔は8000を悠々と突破。追いかけるしかないのか...。
「...仕方ない、我々も8000まで上がるぞ!既にきつい奴はここで待ってろ!」
...先ほどの情報、信じがたいとはいえ本当だったら困る、ということで8000まで上がる訓練は皆施されている。
といっても、演算宝珠が生命維持にかなりのリソースを使用してしまうため、戦闘は非常に困難だ。
「敵......い、12000...。ま、まだ上がっていきます!!」
「チッ!これ以上は危険だな。」
散開、と言おうとした途端に、悪魔共の方向から強烈な魔導エネルギーの反応だと!?
「わ、我々の真上より、強大な魔導反応!!!測定...計測不能!!」
「ただちに散開!散開せよッ!!」
...そう叫ぶと同時に、意識が遠のいていくのを感じた。
...ああ、奴らは悪魔などというチンケな可愛らしいものではない。
『死神』だ。
フラグ建てまくって無事死亡。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ