二人の銀翼   作:アレクシア少佐

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戦場に咲く一輪の花(百合)


48 戦闘の果てに

「二人ともっ!!...無事で、無事でよかったっ!!」

 

「...馬鹿が、大人しく後退していればよいものを...。」

 

「あはは...命令違反、ですよメアリー。ですが、来て下さりありがとうございます。それに...今は無事ですが、これからどうなるか...。」

 

「あー...中佐殿、申し上げにくいのですが...。」

 

ルーデル大尉が、何か言いたげです。

表情から察するに、あまり良くない報せでしょうね。

 

「なんだ、大尉。言ってみろ。」

 

「...中佐殿も気づかれていると思いますが...四方八方を囲まれております。故に、簡素な術式どころか、通信でさえ居場所を特定される恐れが...。」

 

それについては、先程身をもって体験しましたね。

 

「そうだな...我らの援軍が来てくれるだろうが、このまま耐えきれるとは思えん。攻勢に...出るしかあるまい。」

 

...ターニャは言葉を濁しましたが...要するに、誰かが囮となり、敵を引き付け、残った3人で敵の背後を突く...。

言葉で言うには簡単ですが、その難易度はこれまでで最も難しいです。

 

「...では、ターニャ。私が、囮に。」

 

私ならば、ターニャとほぼ同等の戦闘をこなすことが可能なはずです。

瞬間的な判断力は、ターニャのほうが優れていますが...。

 

「ダメだ。この作戦が現状最も打破しうる可能性が高いものだが...同時に、失敗のリスクが大きすぎる。この場にいる我々の誰かが欠ければ、打破できたとしても戦闘団の士気は下がるだろう。」

 

...冷静に考えてみれば、確かにそうです。

私達、隊長格が一人でも欠けてしまえば...。

 

「では、どうしましょうか...。」

 

「...私と、アレクシアで囮を務める。一人よりも、二人ならば幾分かマシだろう。大尉と少尉には、援護を頼みたい。」

 

...リスクはあまり変わらないような気がしますが、一人よりはマシでしょう。

 

しかし、多少の敵を削ったとはいえ、ざっと4個大隊ほどは残っているでしょうか。

4個大隊を、4人で?

 

「......ふふ。ターニャ...この絶望的な状況...私達の初陣を思い出しますね。」

 

「...そうだな。あの時は、二人で1個大隊だったか?あの時よりは、装備もマシになったとはいえ、厳しいな。」

 

「そうですね。ですが...あの時、弾着観測用の装備でさえ生き残れたのです。今回も、きっと、生き残れるでしょう。」

 

思い出せば、酷似する、最悪な状況。

 

「...ターニャちゃん、アレクシアちゃん。どうか...絶対に、死なないで。」

 

「はい、メアリー。約束です。」

 

さて...いつまでもこうしていられません。

 

「では、諸君。戦争の時間だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターニャと私が、同時に飛び出し、牽制ついでに爆裂術式を撃ちまくります。

 

敵の数は圧倒的。ですが故に、適当に撃っても誰かに当たるのです...。

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、とはよく言ったものです。

 

「Stirb(死ね)!」

 

爆裂術式に織り交ぜて、時折貫通術式も放ちます。

 

貫通術式は致命傷にはなりにくいですが、深手を負わせることが可能です。

 

ターニャと私で、螺旋を描くように、お互いを守りながら速度350で敵の周りを高速旋回中。

 

「...チッ!奴らのようなへたくそでも、弾を適当に撃っていれば当たるかッ...!」

 

...ターニャが、怪我をした!?

 

意識を向けると、腹部に被弾しています...。

防郭である程度軽減したようですが、それでも出血しています...。

 

「っ、ターニャ!」

 

「私のことはいい!目の前の敵に集中しろ!でなければ、この程度では済まないッ!!」

 

そ、そうです。冷静に、冷静にならなければ...。

 

弾薬は...かなり余裕があります。艦隊の掃除で、あまり使わなかったことがよかったのでしょう。

 

「アレクシア、どうにか術式で出血を抑えているが、長く持ちそうにない...。」

 

...現状、爆裂術式の弾幕によって、1個大隊分くらいの敵は落としたと思います。

敵も、やられてばかりの馬鹿ではないようで、こちらを攻撃することよりも回避に専念し始め、私達の被弾も減ってきています。

 

「...ターニャのことは、私が守りますからっ!!...私が死んでも、ターニャだけはっ!」

 

「お前が死んだら、...私が生きている意味など無い!!軽々しく、死んでもいいなどと言うなッ!!」

 

...私にとってのターニャは、かけがえのない存在。命を賭してでも、守るべき存在です。

 

ですが...ターニャにとっても、同様なのでしょうか。

普段、激昂したりしないターニャが、本気で怒っています...。

 

「...ごめんなさい。」

 

「...帰ったら、沢山可愛がってやる。私が、アレクシアのことをどう想っているか...教えてやる。」

 

...戦場の真っ只中だというのに、嬉しくて顔が熱いです。

今すぐにでも、ターニャを抱きしめたい衝動に駆られますが...我慢です。

 

...一旦冷静になれたせいか、焦りも消え、明瞭な思考が戻ってきます。

 

「...ターニャ、敵が私達を包囲してきたということは、奴らの目的は私達を殺すことの筈です。ですから...。」

 

 

「...。なぜ、このような簡単な答えに今まで気づかなかったのだ。」

 

...上昇すれば、よいのです。

 

かつて、ライン戦線で共和国の魔導師にやったように。

 

一気に上昇し、上から消し去ってしまえばよいのです。

 

「...では行こうか、アレクシア。」

 

「はい、ターニャ。どこまでも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- - - - 連合王国軍 例の中佐

 

悪魔を包囲し、あとは全員で爆裂術式を撃ち込むだけだったのだが、奴らも状況を打開するために行動を起こしてきた。

 

二人の悪魔は、互いを守りあうかのように、螺旋を描くようにかなりの速度で飛んでいる。

モタモタしている間に、仲間が減ってゆく。

 

たった二人で、一個師団を相手に?

ありえん、と叫びたい衝動に駆られるが、現実に起きている...。

 

ようやく、悪魔の片割れに、傷を負わせることができたと思えば、奴らは上へ、上へと上昇してゆく。

 

「チッ...どこまで上がるつもりだ。」

 

現在、高度5000だ。

一般的な魔導師の限界である6000までもうすぐ。

 

しかし、あの悪魔どもが、それを知らない筈がない。

ならば、何を考えている?

 

共和国軍が記録として残した、高度12000まで行くつもりなのか?

だがあれは、目撃者ゼロだった筈。そんな信憑性の低い情報など...。

 

「...敵、高度...8000を突破。どう致しますか、中佐殿...。」

 

現在、我々の高度は6000。既に飛んでいるだけで辛そうな奴もいる。

 

だが、悪魔は8000を悠々と突破。追いかけるしかないのか...。

 

「...仕方ない、我々も8000まで上がるぞ!既にきつい奴はここで待ってろ!」

 

...先ほどの情報、信じがたいとはいえ本当だったら困る、ということで8000まで上がる訓練は皆施されている。

といっても、演算宝珠が生命維持にかなりのリソースを使用してしまうため、戦闘は非常に困難だ。

 

「敵......い、12000...。ま、まだ上がっていきます!!」

 

「チッ!これ以上は危険だな。」

 

散開、と言おうとした途端に、悪魔共の方向から強烈な魔導エネルギーの反応だと!?

 

「わ、我々の真上より、強大な魔導反応!!!測定...計測不能!!」

 

「ただちに散開!散開せよッ!!」

 

...そう叫ぶと同時に、意識が遠のいていくのを感じた。

 

...ああ、奴らは悪魔などというチンケな可愛らしいものではない。

 

『死神』だ。

 




フラグ建てまくって無事死亡。

まだそこまで継続していませんが、感想など。

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