こんにちは、アレクシア・フォン・デグレチャフ魔導中佐であります。
一週間が経ち、完治ではありませんがターニャが動けるようになりました。
...治りきる前に、次の戦争とかにならなければよいのですが。
さて、私達は予想通り、参謀本部に呼ばれて、来ています。
「さて、先日の攻略作戦はご苦労だった。」
「「誠に有難うございます。」」
「で、だ。貴様らの功績を考慮し...大佐へ昇進だ、喜べ。」
...。
昇進は嬉しいのですが、今まで昇進するたびに部隊の編制やら戦争やらに突っ込まされていた身として、構えてしまいます...。
「...そう身構えなくてもいい、今回は本当に昇進だけだ。」
...気を使わせてしまいましたか。
「...ありがとうございます、ゼートゥーア閣下、ルーデルドルフ閣下。」
「して、昇進の話だけではないのでありましょう。本日はどのような...。」
連合王国については、帝国軍がドードーバード港とその周辺を占領。
敵国首都目前まで戦線を拡大しています。
また、もともとあった敵の航空基地を修理し、使用していますから戦力的には何も問題ありません。
「......貴様らの言っていた話は、残念なことに殆ど現実となった。であるならば、連邦との開戦も時間の問題だ。」
...確かに、学生の頃の戦局予想と多少のイレギュラーはあったものの、概ね同じですね。
「現在の、東部軍はどのような?」
「今は、西方で地獄を味わった将校らが、叩き直している。貴官らも知っているだろうが、東部軍の練度は酷いものでな...。多少は使い物になる程にはなったが...。」
そういえば、魔導大隊編成の際に彼らの情報を一通り見ましたね。
階級、服装だけは御立派でしたが、中身の伴っていない連中でしたね。
「...できれば、君達二人に奴らを精鋭とまでは言わない、魔導大隊を編成した手腕を奮ってはくれまいか。」
......これで東部へ行けば、そのまま開戦しそうな気がします...。
「閣下、教導するのは構いませんが...やるのならば、徹底的に。でありましょう?」
ターニャがまるで、新しいオモチャを得た子供...よりも悪い笑顔をしていますね。
「......そうだな。ならば...とりあえずだ、5個歩兵大隊を貴官らに預ける、死傷者が出なければ構わん。」
「はっ、了解であります。必ずや精鋭に仕立ててみせましょう。」
- - - - side ターニャ・フォン・デグレチャフ
やっと、念願の後方勤務!
アレクシアも居ることだし、連邦の奴らが宣戦してこなければ最高だ。
頼むから、ずっと粛清していてくれ...。
「ターニャ、嬉しそうでしたが...。そんなに、教導をしたかったのです?」
「ま、まあな。しかし歩兵か...とにかく体力と、屈強な精神力をつけてやらねばならんな。」
「そうですね...魔導大隊編成の試験のように、雪山ピクニックはどうですか?」
成程...あの、西暦世界の精鋭を育てる為の地獄の訓練フルコースでいいだろう。
「そうだな、フルコースでいこう。見事すべての訓練を乗り切った者には...昇進を上に進言してやろうか。」
「それは...良案ですね。大抵の兵士ならば、喉から手が出る程欲しいでしょう。」
死の危険もあまり無く、昇進できるなど嬉しいだろう?
訓練中に死にたくなる、死んだ方がマシだとは思うかもしれないが。
「では、アレクシア、訓練プランを考えておいてくれないか。最初は基礎訓練、など大雑把なもので構わん。」
「はい、了解であります。」
ともあれ、まず最初にやることは、鍛えなおすにしても奴らの現状の能力がどれほど酷いのか、確認作業だな。
さて、アレクシアに訓練のプランを作成してもらっている間に、どれほど無能なのか確かめることにしよう。
先日言われた5個歩兵大隊を、『廃棄予定の宿舎前』に集めたはいいが、どうしたものか...。
「私は諸君の再教導をすることになった、ターニャ・フォン・デグレチャフだ。東部軍は無能の集まりだと記憶しているが...喜べ。そんな無能な諸君を、一端の精鋭に仕立ててやろう。」
現状確認をしたいのだが、どのような手段が有効だろうか?
とりあえず、今日のところは自己紹介程度にしておいて、明日にでも本格的に確認すればいいか。
「ああ、再教導といっても何も難しいことではないから安心したまえ。少し、簡単な訓練をしてもらうだけだからな。では、明日から訓練を開始する。」
......はぁ、軍士官学校時代を思い出すな。
私のことをクソガキだとか思っていそうな顔をしている奴が何人もいた。
まったく、吐き気がする。
いやなに、この年齢でこの見た目だ、仕方ないとは思うが。
それでも、帝国にプロパガンダに度々使われているし、『銀翼突撃章叙勲』『黄金柏葉付騎士鉄十字章叙勲』のニュースもあったはずだが...。
私を、私とアレクシアのことを知らない?
少々自己愛が過ぎるかもしれないが、それは軍人ならばありえないと思うのだが。
私は数々の戦場で駆け回り、すべからく成功を収めてきた。
アレクシアは有効な作戦を幾度も立案し、失敗しそうな穴を埋めてきた。
戦場では私の方が目立つだろうが、士官学校の教官などは戦略においてアレクシアの名を出さないはずがない。
故に、私達を知らない軍人など、ありえない筈。
「はぁ...。」
アレクシアにも訓練場所を伝えてあるが、ともかく宿舎に戻ってきて溜息が漏れる。
「入りますよターニャ。ふぅ、寒いですね。...どうしたのですか?叩き直す連中に何か問題が?」
...やはり、私が不機嫌だと分かってしまうのか...。
妹に気を遣わせるなど...姉として失格だな。
「...そうだな。軍士官学校の時のように、未だに私を見てナメた顔をするやつがいた。」
「やはりそうでしたか...。私もプランを組み立てた後に、東部軍司令などにどのような状態なのかお話を伺ったのですが...ひどいものだと。北方や西方が戦争していても、東部は平和。それをいいことに、起床もギリギリ、寝癖はある、服装もシワがついていたりヨレていたり...。」
...想像よりも、深刻なようだな、これは。
本当に、殺さない程度に扱いてやる必要があるらしい。
「...明日は、未明に無能共を叩き起こすことから始めようか。ともかく、その話からするに、基礎体力なども低下しているだろう。本訓練の前に、一週間ほど基礎訓練をやろうか...。」
「そうですね。身体も鈍っていることでしょうし...明日は少しの休憩を挟みつつ、一日中運動させてあげましょうか。」
戦場では一日どころか三日間ぶっ続けで運動みたいなものだ。
それくらいの体力も無ければ、弾除けにしかならない。
弾除けに使う金も、食わせる飯もない。そんな無駄なことをしている余裕など帝国にはないのだ。
「はぁ...どうせ、キツすぎるだとかなんだとか、文句を垂れるのだろうな...。」
「ターニャ、そうなれば上官反抗になります。」
「それは分かっている。だが...士官学校のときもそうだったが、面倒なことになりかねん...。」
「...そうですね。できれば、処刑などにならなければいいのですが...。」
身内のゴミ掃除のために銃弾を使うなど、資源の無駄だ。
はぁ...明日のことを考えると、今から頭が痛い。
「......?なぜ、私を抱きしめているんだ...?」
明日について思案していると、アレクシアに抱きしめられている。
...暖かな体温。服の上からでも分かる、少しずつ成長してきている胸。私とは異なる、アレクシア独特の良い匂いだ。
かすかな、金木犀のような匂い。とても、心が落ち着く...。
「...ターニャが言っていたんじゃないですか。私を抱きしめていると、落ち着く、って。今、焦っているような、困っているような表情をしていましたから...。」
...私を想ってくれる、こんなにも優しい妹を持って、私は幸せ者だな。
その代わりの不幸が、戦災孤児から始まる今までの不幸、最前線へ突撃させられ続けている理由なのかもしれない...。
ターニャが変態じみてきてしまった
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ