...こんにちは、アレクシア・フォン・デグレチャフ魔導大佐であります。
ようやく、腕が動かせる程には回復しましたが...歩いてトイレに行くだけで精一杯です。
いえ...本当は、歩くのもかなりきついです。
「...ッ!アレクシア!無理をするなと、言っただろう!」
ターニャに、見つかってしまいました。
その...トイレに行きたくなってしまって。
なるべくターニャの手を煩わせたくなくて、ですね...。
「ご、ごめんなさい...。」
「...もっと、私を頼ってくれ...。仕事よりも、お前のほうが大切なのだから。」
「...はい。」
...ターニャが、私の事を想ってくれるのは嬉しいのです。
ですが...。
...いえ、ターニャの気持ちを、これ以上無碍にするのはいけませんね。
「では...ターニャ。その...部屋まで、支えて貰っても...いいですか?」
「ああ、当たり前だろう。」
「......大佐殿!宣戦布告です!たった今、帝国に対して連邦が宣戦を布告しました!!」
...私が回復しきる前に、宣戦ですか...。
まあ、いつもいつも私達に都合よくいきませんか...。
「報告ご苦労、戻れ。...チッ、アカ共め、もう少し大人しくしていればいいものを...。」
「...ターニャ。私は、しばらく前線に行けませんが...。その...、んっ...。」
...。
「...っ、大丈夫だ。まずは...お前は焦らずに、傷を治せ。...早く治して、私と...。」
「はい、分かっています。ターニャ...どうか、無事で。」
きっと...この後、すぐさま参謀本部へ呼び出され、明日にでも最前線へ...。
...本当は私が、ターニャを補佐しなければならないのに...。
「ターニャちゃん!アレクシアちゃん!」
「メアリー、どうした?」
突然、血相を変えてメアリーが飛び込んできました。何事でしょうか...。
「連邦が、帝国に対して宣戦布告しました!!」
「ああ...それはさっき、伝令が...。」
「...それと、レガドニア協商連合国に対しても、宣戦布告しましたッ!」
...同盟国への宣戦?...実質、二正面作戦ですか。
ですが...協商連合国と連邦の国境は、どちらからも攻めづらい地形だったはずです。
...それに、アンソン殿ならば、防衛ならなんとかしてくれる...でしょう。
イルドア王国や共和国にも援助を求めれば、協商連合国はもつはずです。
帝国は元々、連邦戦を考慮していたため、準備は万端のはずです。
...西暦世界の、ポーランド国境までが帝国の国境ですから。
「...成程、連邦にも多少は賢いやつが残っていたようだが...。メアリー、祖国が心配だろうが...その程度ならば大丈夫だろう。安心しろ、アンソン殿なら上手く防衛できるはずだ。」
「はい、協商連合国には、帝国製の、型落ちですがZeppelin戦闘機を売り出していますから。航空優勢は間違いなく取れますし、地上支援も十分だと思いますよ。」
最新型のZeppelin製の航空機が連合王国戦終戦間際に大量生産が始まり、同時に型落ちになってしまう新品の航空機を協商連合国に売っています。
あれから、だいたい1か月くらい空きましたし、十分に使いこなせるはずです。
「そう、なんですか。二人がそう言うのなら...大丈夫ですね。」
「だが...帝国参謀本部が、どう動くだろうか。」
友好国が攻撃されているのですから、政治的にも援助しない訳にもいかないでしょうし。
帝国軍の派遣くらいは、するでしょうね。
現在の帝国は、今のところ、東側以外に戦線がありませんからしばらくは、大丈夫でしょうが...。
合衆国が本格的に参戦してくるまでに、どれだけ連邦を追いやれるか...でしょうか。
それに...降伏したとはいえ、連合王国は現在不安定な状態です、どうなることやら...。
「...考えていても仕方ありませんね。...メアリー、私は、怪我で動けませんから...ターニャを、お願いします。」
「...はい、アレクシアちゃんは安心して、ちゃんと怪我を治してくださいっ!」
「...では、どうせ参謀本部に呼ばれるだろう、こちらから先に行くとしよう。」
...連邦が戦争を吹っかけてくることは予想していましたが...こんな予想が当たっても、嬉しくないですね...。
- - - - side ターニャ・フォン・デグレチャフ
...さて、色々と思うことはあるが...。
アカ共め、予想はしていたが、やはり宣戦してきたか...。
連邦以外の周辺諸国はすべて降伏しているとはいえ、連合王国だけは未だ不安定な情勢だ。
もしも、新しく政権を握った奴がろくでもない奴で、帝国に受けた屈辱を晴らそう!などとならなければいいが...。
ともあれ、連邦と開戦してしまったのだ、参謀本部へ行かねばなるまい。
「...ターニャ大佐殿。」
「ん?どうした、メアリー少尉?」
「いえ...何か、悩まれているようでしたので...。」
「ああ、大したことではない。心配させてしまいすまない。」
...いくらここまで帝国が順調に勝っているとはいえ...。
今まで敵に強いてきた、大量の出血。
連邦と戦うのならば、今までとは比べ物にならないくらい帝国も消耗するだろう。
...と、考え事をしているうちに、参謀本部へ到着したようだ。
「...メアリーは、ここで待っていてくれ。ターニャ・フォン・デグレチャフ大佐であります。入室致します。」
今まで以上に、各参謀長官殿は苦虫を噛み潰したような、険しい顔をしておられる。
...あまりにも無理難題でなければいいが。
「...デグレチャフ大佐。貴官の予想通り...というべきか。先程、連邦が我が国に宣戦してきた。」
「まずは、『白銀』の意見を聞きたいが...異論はあるか?」
...異論は無い、らしいな。
参謀本部としても、いくつか案はあるのだろうが...なぜ、いつも私に?とは思う。
「はっ。...数々の戦争で勝利を収めてきましたが...それらに酔いしれている暇は無いようです。...これまで、前線の兵士たちは休む間もなく...戦場へ駆り出されています。」
「...貴官の事だ、前置きは性に合わんだろう?連邦との戦争がどうなるか...率直に言ってみよ。」
...はぁ、ゼートゥーア閣下には本当に、頭が下がる。
「...了解であります。連邦の脅威は、まず国土の広大さであります。モスコーまでは比較的帝国有利に進めると愚考致しますが...。奴らは、共産主義者は首都を後方へ移転し続け、徹底的に抗うでありましょう。」
「...自国の領土、都市などを失っても抗戦する、とはにわかには信じがたいが...。」
ルーデルドルフ閣下の仰る事は、もっともだと思う。
だが、ありえないと思うことでも成す、それが共産主義者だ。
...でなければ、ポルポトのような悪魔は生まれないのだから。
「ルーデルドルフ。...デグレチャフ大佐の予想が、外れた事があったか?...今回の予想が外れた方が嬉しいのは確かだが、な。」
「...むう。...確かに、多少突飛な予想とて、考慮しておく必要はありそうだな...。」
「して、デグレチャフ大佐。...勝算は、あると思うか?」
...多くの帝国軍幹部からの視線が痛い。
「...恐れながら...『勝利できる』とは思えません。ですが...『敗北しない』ことは可能かと。」
どう考えても、大陸横断など国力がもつとは思えない。
...劣悪なインフラ、冬の恐ろしい寒さ。それらに、前線の兵が耐えられるとは...。
勝てない、と言ったようなものだ、何かしらの罰を受けるかもしれない。
だが、ここで事実を言わねば、本当に敗北してしまう。
「...ふむ。貴官の思う『勝利』とは、何だ?」
「小官の考える、帝国の勝利、でありますか。...軍隊の質では、我が帝国軍に勝てる軍など、存在しないと確信します。ですが、どれだけ質が良くとも、...圧倒的な数には敵わないと愚考致します。故に...連邦には、モスコーまでを占領した後...敵の攻撃に対し耐え、反撃を、一撃を加えるだけの余力を残すことこそが、生き残る道であると確信致します。そして、世界に、国民に、帝国は被害者だと、訴えるべきでありましょう。帝国国民が、安心して暮らせるようになることこそ、勝利である、と小官は定義するべきであると愚考致します。」
...合衆国の介入は避けられない、と思う。
だが、揚陸さえさせなければ帝国本土は安全だ。
それに、共和国などの周辺国へ合衆国が宣戦するとは...合衆国国民が黙っていないだろう。
故に、合衆国が帝国へ宣戦したとしても、連合王国が降伏した今、連邦へ援助するほかない筈。
沿岸の警戒は強化するべきだが、それだけだ。
連邦首都を占領し、連邦の国民にプロパガンダを流せばいいだろう。
大粛清、戦争。好き勝手やってきた政府への不満がある筈だ、今一度...。
帝国国民を第一に。人的資源の確保を。
「...デグレチャフ大佐の案に、異論のある者は?」
...ざわざわと、何かを言いたそうにしているな。
そりゃあ、そうだろうが。何せ、一介の将校が、『勝利することは難しい』などと発言したのだ。
...今までの功績があるからこそ、許されているが...それが無ければ、大問題だろう。
「...よろしい。ともかくしばらくは、例の消耗抑制ドクトリンを用いて防衛に徹する。協商連合国側の戦線の状況次第で、攻勢を開始、デグレチャフ大佐の案を採用するとしよう。」
まだそこまで継続していませんが、感想など。
-
良い
-
まあまあ
-
イマイチ