二人の銀翼   作:アレクシア少佐

58 / 65
多少の時間軸が前後します。




58

何だろうな、しばらくアレクシアと会話していないせいか...イライラしてしまう。

 

ロメール将軍と共に東部戦線を任されてから2週間ほど経った。

 

...明日は、敵を我らの陣地へ誘引し、包囲殲滅を図る作戦の決行日だ。

共和国の時と同様、我々、参謀本部直属戦闘団が囮として攻勢を行う。

私達が引き付けている間に、撤退する、というものだ。

 

「ああ、『白銀』。南方ぶりだな。」

 

「ああ...ロメール閣下。今回も、厄介な仕事ですね。」

 

「はっはっは、まったくだ。...君も大概だがな。」

 

...この2週間、撤退の準備とともに、敵側に嘘の情報を流していた。

曰く、帝国は度重なる戦争によって疲弊していて、これ以上戦線維持をするのは困難。後方へ撤退するしかない...。

 

共和国の時と同様だが、有能な将校を粛清してしまった連邦では、な。

おそらく、簡単に信じるだろうな。

 

上層部が信じなくとも、実際に撤退していく様を見る連邦側の前線司令はこれを好機とし、進軍してくるだろう。

...敵陣地が空いているのに、進まないなどすれば...NKVDに粛清されてしまうだろう。この世界にもNKVDのような組織があるのか不明だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...さて、戦闘団諸君。我々は、これまで経験したことのない戦場へ、戦争へ赴く。だがやる事は今までと同じだ。...では改めて聞こう、我々の任務は何だ!?」

 

「「「敵軍の殲滅でありますッ!!!」」」

 

「よろしいッ!!我々の任務は、書面上は殿軍、囮、となっているが...敵軍を殲滅するな、とは書いていないッ!!貴様ら、我々の任務は殲滅だ!敵を、一人残らず殺し尽くせ!」

 

「「「Ja Mama!!」」」

 

...帝国に仇成す存在は、断じて許してはならない。

 

...本当なら、私は今頃はアレクシアとゆっくりできていたはず...。

 

連邦め!徹底的に、叩き潰してやる...!

 

「...連邦の阿呆共に、領土的、数的有利に慢心する阿呆共に、奴らが思いもよらない戦争を見せてやろうではないか?」

 

「「「大佐殿!戦闘団長殿!指揮官殿!」」」

 

「よろしい、ならば戦争だ!戦闘団各員、戦闘団隊長命令だ。...連邦の、コミーのクソ共に本当の地獄を教えてやれッ!!」

 

「「「Ja Mama!!」」」

 

「...では戦闘団諸君、明朝より作戦開始だ。各員、準備をしておけ。」

 

ああ...さっさと作戦を遂行し、帝都へ帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- - - - side メアリー・スー

 

...なんだか今のターニャちゃんからは、いつも以上に...アレクシアちゃんが居る時に比べて、圧倒的な...威圧感を感じます。

 

アレクシアちゃんの怪我が治るまで、ずっと看病してしまう程に心底大切にしていらっしゃいますから...ストレスも大きいのでしょうか。

 

「どうした、メアリー少尉?心配事でも?」

 

「...はっ!い、いえ...なんでもありません!」

 

「...メアリー、私達の仲だ...無理には聞かないが、いつでも相談に乗るぞ。」

 

「...うん、ありがとう、ターニャちゃん...。」

 

最前線の野営地、魔導師、特に女性が優遇されているとはいえ...寝床も多くありません。

ですので、私はターニャちゃんと同じテントなのですが...。

 

...アレクシアちゃんが居てくれれば、こんなにもピリピリしていないのですが...。

 

ターニャちゃんから、アレクシアちゃんを引き剥がしてしまうのは、とても良くない事かもしれないです...。

 

私では、ターニャちゃんの支えにはなれないでしょうが...。

 

「む、メアリー?」

 

「...ターニャちゃん。ターニャちゃんが、何か悩んでいるのは分かりますよ?」

 

...抱きしめるとよく分かりますが...こんなにも小さな身体で、帝国の最前線を駆け続けているターニャちゃんを知ると...本当に、戦争は嫌ですね。

 

「...すまない。どうにもアレクシアがいないと...調子が狂う。私的な想いを持ち込んではならないのだが...帝国軍人として、まだまだだな。」

 

「今までずっと、一緒だったのですから...仕方ないと思います。」

 

「...メアリー、ありがとう。明日も激戦だろう...そろそろ寝ようか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- - - - アレクシア・フォン・デグレチャフ

 

ターニャが戦場へ行ってしまって、2週間が経ちました。寂しいです...。

ですが、ターニャのためにも、早く傷を癒して、また一緒に戦場を...。

 

ええと、今の私は順調に回復し、松葉杖が必要ですが...歩くことができます。

腕の回復のほうが早く、脚がまだ痛みますが。

 

「...エミリアです、入ります。...アレクシア殿、本日の診察をしても?」

 

「はい、お願いします。」

 

...今入ってきた人は、以前怪我をしたときにもお世話になった、軍医さんです。

本名は、エミリア・リーゼンヴェルトさんです。

 

「...お姉さんがいなくて、寂しいのでしょう。」

 

「...はい。私が、不甲斐ないばっかりに、姉には苦労をさせてばかりです...。ですから、さっさとこの傷を治して、姉と共に戦場へ行かなければなりません。」

 

あまり感情を表に出す人ではありませんが...良い人です。

 

「...おそらく、もう一週間もすれば、杖無しでも歩けるようになると思います。痛みが完全に消えるのは、もう少し先でしょうが...。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

 

...軍医さんが、「ではまた。」と部屋を出ようと立ち上がった時、聞いていたラジオから、

『速報です!秋津島皇国が"周辺諸国の解放"を目的に...合衆国へ、宣戦布告しました!』

...と。

 

「!?...っ...。」

 

「アレクシア殿!...無理をしてはいけません、治りかけている傷が、また酷くなってしまいます!」

 

「ですが...この宣戦を機に、合衆国が連邦側に着き、秋津島皇国攻略を狙えば...。参謀本部へ、行かなくてはいけません...。」

 

合衆国としては、連邦と手を組み秋津島皇国を二正面に追い込み、叩き潰したいはずです。

そうなってしまえば、秋津島皇国が倒された後に、帝国へ...。

 

それだけは、何としても阻止しなくてはいけません...。

 

「...仕方ありません。ですが...参謀本部の手前まで、私が同行します。宜しいですか?」

 

「はい。...ごめんなさい、参謀課程を修了しているからには、やらなくてはならないのです...。」

 

参謀将校として、ゼートゥーア閣下に期待されている人間として...。

期待を、裏切るわけにはいきません。

 

それに、合衆国ともやりあうとなると、ターニャも私も...死んでしまうかもしれないですから。

 

...道がないわけではありません。

合衆国としても、欧州を平定した帝国に背後を突かれることは避けたいでしょう。

これを盾に...帝国が連邦を制圧した暁には、何らかの形で秋津島皇国を倒す手助けをする、などのおまけをつければ、不可侵条約の締結も...。

 

やることは、山積みですね。




史実、原作と異なり欧州を平定した帝国。

(あえて理由は書かない!)合衆国へ史実通り?宣戦布告した秋津島皇国(Japan)。


日中戦をどういう扱いにしようか検討中。

まだそこまで継続していませんが、感想など。

  • 良い
  • まあまあ
  • イマイチ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。