さて...今日は北部戦線の撤退、同時に南部より私達、サラマンダー戦闘団が囮として攻勢をかけることになっている。
共和国に対して行った、回転ドア作戦そのままだがな。
あの時と異なる点といえば...敵の数が尋常ではないこと、撤退し敵に踏み入らせる場所すべてに地雷を撒いたこと...くらいか。
今回撒いた地雷は、不発弾にならないよう、クラスター爆弾の応用で魔導師の特殊な魔力に反応して誘爆するようになっている。
勿論、踏んでも爆発する。
...不発弾問題は、前世でも大変なことになっていたからな。この世界に魔法があって良かったと思う。
「...サラマンダー戦闘団諸君。これより、北部戦線の大規模撤退に伴い、南部戦線の維持...単刀直入に言おうか。我々が、殿軍だ。」
これまでの戦争の賜物か?誰も動揺することはない。...しっかりと教導してやった甲斐がある。
「さて...諸君。私と共に、これまで地獄を潜り抜けてきたのだ。もう地獄には慣れただろう?思う存分、戦争を楽しんでくれ!」
「「「Ja mama!」」」
...連邦め、よくも私の大切な時間を邪魔してくれたな。
そう考えると、今までになく、暴れたい気分だ。
...ああ、これから存分にストレスの発散ができると思うと...ククク...。
- - - - side エーリッヒ・フォン・レルゲン
...最早、いつもの事だが...胃が痛い。
偶々だろうか、参謀本部より南部戦線の兵站部門への連絡などの雑務で、此処に来ていたのだが...。
しばらく参謀本部でさえ会っていなかった、『白銀』が何故...。
奴の妹、『白百合』が負傷し、療養中だと聞いていた。
ならば、奴は妹の看病に付きっきりになると思っていたのだが...ゼートゥーア閣下め...。
怖いもの見たさ、とでも言おうか...奴とその妹が、戦場で一緒に居ない光景など想像できない。
それ故に...奴の、戦闘団員への激励を見に行ったわけだが...。
なんだ、あの邪悪な笑みは?
...参謀本部で、数々の幹部の方々に睨まれるよりも寒気を感じた。
...奴から妹を引き剥がすことは、やってはいけない事なのだろうな。
二人で一人、なのだろう。片方がいなければ...あの『白銀』を見るに、精神的ストレスが尋常ではないようだ。
...私から参謀本部に進言しておくか。
私は『白銀』『白百合』ともに、士官学校時代のアレを見て以来嫌いだが...奴ら程、戦争に長けている将校は他にいないだろう。
帝国が戦争に勝つには...奴らが必要だろう。
「...おや、これはこれはレルゲン少将殿!」
チッ...厄介なことに、『白銀』に見つかってしまった。
...胃に穴が開きそうだ。
「ああ...デグレチャフ大佐。...貴官の、任務成功を祈っている。」
「はっ。お任せください、大きな戦果を、参謀本部への土産と致しましょう。」
...なんという覇気、いや...狂気か?
撤退戦の殿軍、友軍の支援など無し、敵地のど真ん中へ突っ込むというのに...何故、笑っていられる!?
悍ましい...。
「申し訳ありません、これより作戦開始でありまして...。では、小官はこれにて。」
ほんの二言三言、話しただけなのだが...『白銀』は、あんなにも恐ろしかっただろうか。
明らかに、普段の奴に比べて...深淵を思わせる、深く暗い眼をしていたな...。
...やはり、奴は妹と一緒にしておかなければならないな。
- - - - side ターニャ・フォン・デグレチャフ
まさか、このような前線にレルゲン少将殿がいらっしゃるとは予想外だったが...。
一応、私は参謀本部所属の将校であるため、レルゲン少将殿の部下にもあたる。
...部下の、危険な作戦へ赴くのをわざわざ見に来て下さり、激励までしてくださるとは...。
つい、嬉しくてレルゲン少将殿に見栄を張ってしまったが...問題ないだろう。
さて...出撃するとしようか。時間も余り無い。
「諸君、戦争の時間だ。喜べ、今日は、勲章の稼ぎ時だ!好きなだけ敵兵をヴァルハラへ送ってやれ!」
「「「Ja mama !」」」
再び、地獄へ行くとしようか。
...作戦開始、もとい戦闘開始からそろそろ1時間か?
戦局は...。
我らが帝国軍、サラマンダー戦闘団が敵軍を圧倒している状況である。
前線より後方に配置されていた敵砲兵隊を、航空隊の爆撃で掃除し。
残りを私を含めた魔導師で掃討しつつ、塹壕に籠る歩兵などを嬲り。
サラマンダー戦闘団地上部隊が制圧する。
まさに蹂躙、これぞ地獄。
響く轟音、悲鳴、敵兵の怒号。
血飛沫と肉片が飛び交い、儚く散ってゆく敵兵の命。
だが。
連邦軍前線司令部は何を考えている?
このような地獄へ、奥から新兵も同然な増援が送られてくる。
それらは、既に戦意喪失したような顔つきで、進軍してくる。
...やはり後方に督戦隊のようなものがいるのだろうな。
それを知ってか知らずか...弾薬などもまだある筈だが、皆の士気が落ち始めている。
「...はぁ。サラマンダー戦闘団各員へ、命令だ。...貴様ら、敵兵が哀れに思うか?ならば躊躇なく、殺してやれ。奴らはこの戦場に来た以上...引き返せぬ哀れな存在だ。さっさと始末してやることが、奴らにとって少しは救いになるだろう。」
コミーの事だ、敵前逃亡などすれば...よくて、督戦隊によって射殺されることだ。
悪ければ、何らかの罪に問われ拷問、そいつの家族は収容所送りか...処刑か。
どちらにせよ、地獄しか待っていないのだ。
「ファントム01了解!戦闘を継続致しますッ!」
「...こちらファントム02。了解しました。」
...つらい命令だろうが、殺らねばこちらが死ぬまでだ。
ルーデル大尉は相変わらずだが。
...ん?敵後方から、対空砲に囲まれた見慣れぬ野戦砲...ッ、あれは100mm野砲と、76mm野砲か!?
対戦車砲も兼ねた化け物め!
「地上部隊!こちらサラマンダー01だ、敵後方に対戦車を想定したものと思われる野砲を確認した!下がりつつ、野砲による砲撃を継続!」
「「「了解ッ!!」」」
「ファントム隊、敵後方へ浸透、野砲を中心に破壊せよ。フェアリー大隊、ファントム隊の援護...対空砲を破壊せよ。」
「「了解であります!!」」
チッ...歩兵の装備や練度が酷いものであったため油断していたが...あんなものを既に開発していたとはな。
「ファントム隊、追加命令だ!...無理にとは言わん、できればでいい。野砲をいくつか、鹵獲可能な物を残せ。」
アレが出てきたならば...現在の連邦前線に存在していた旧式の使い捨て戦車などよりも...。
もっと、性能が良い戦車が控えていてもおかしくはないだろう。
...前世の100mm野砲は、ティーガーなどの装甲を貫けず、大したことはなかったと記憶しているが...。
76mm野砲は、対戦車砲として非常に高い性能を有していた筈、十分に脅威だろう。
前世とは大きく異なるこの世界だ、鹵獲し研究しておいて損は無い。
それに、現在の帝国の戦車はティーガーほどの装甲は無い。
今回、この戦場では見ることは無いだろうが...貫かれる可能性がある。
...それにしても、戦場を見通し作戦を練り、命令を出すというのは...中々難しい。
普段ならば...私のアレクシアがやってくれるのだが...。
やはりどうにも、調子が乗らないな。
「サラマンダー01へ、こちらファントム01!敵砲兵の無力化に成功、地上部隊による支援を!」
「こちらサラマンダー01、了解だ。サラマンダー地上部隊へ、前進し、敵を殲滅、可能な限り装備を鹵獲せよ!」
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ