すまないが私は学生だ、そろそろ就職活動ゆえに...時間があまりないのだ。
許してくれ...。
...戦闘開始から2時間が経過した。
私達の弾薬も切れ始めているが...敵は次から次へと増援を後方から送り込んでくる。
...かなりの数の人間をミンチにしたが...私が言えることではないが、敵司令部には、人の心は無いのか。
戦線を維持するのに、装備の質を上げて耐えるのではなく、人間を肉壁として使い倒すとはな。
連邦にしかできない戦い方だろう...。
さて、どうしたものか...と思案していると、司令部より通信。
「サラマンダー戦闘団へ、北部戦線の大規模撤退は完了した。現時刻を以てサラマンダー戦闘団の離脱を許可する。」
...離脱を許可されたが...未だ我々は優勢とはいえ無限に湧き出る敵兵と交戦中。
「HQへ、こちらサラマンダー戦闘団、離脱を了解。しかし敵兵が一向に減る気配無し、現在継戦中。離脱に際し、南方戦線部隊による掩護を乞う。」
「こちらHQ、南方戦線部隊による掩護を行わせよう。オーバー」
「...了解。オーバー」
流石は、ロメール閣下、話が早くて助かるな。
帝国軍、連邦軍の両軍がお互いに半包囲状態となった。
連邦の参謀将校に、有能な者がいれば、おそらくは気づかれるだろうが...粛清されてなければ、な。
しかし、今回の戦闘は、なんとも...。
「...つまらん。連邦が数を出してきているから戦争のようなものになっているが...実情を見ればこちらの損害は軽微。...ただの虫退治と変わらんな...。」
群がる虫...連邦兵を、爆弾で、爆裂術式で、砲弾で。
おおよそ全ての方法でミンチにしてやった。...なんだこれは、演習か?
「あの...ターニャ大佐殿...。南方戦線部隊が、援軍に駆けつけてくれましたが...。」
...そういえば、ヴィーシャと話すのは、久しぶりに感じるな。
「ああ、報告ご苦労、セレブリャコーフ中尉。...帰るとするか。」
ここまで連邦兵だけで死体の山を積み上げてやったのだ、続々と送り込まれているとはいえ、奴らの士気は最悪だろう。
- - - - side ヴィーシャ
第203航空魔導大隊...フェアリー大隊が結成されて以来、ずっと、ターニャ大佐殿、アレクシア大佐殿と共に戦場を巡って来ましたが...。
こんなにも、ターニャ大佐殿を、恐ろしく感じたのは初めてです...。
...アレクシアちゃんがいないことが、原因だと思いますが...。
戦闘団の皆さんも薄々思っていそうですが...。
普段はアレクシアちゃんが戦場全体を把握して、お二人で戦術を練られるのですが...今回はそれが無いせいか、らしくない...とでも言いましょうか。
「...どうしたヴィーシャ、私の顔に何かついているか?」
「い、いえ!少し考え事をしていただけであります!」
「...はぁ。ヴィーシャ、このテントには貴官と私しかいないのだ。何かあれば、何でも言ってくれ。」
...サラマンダー戦闘団の女性は、ターニャ大佐殿、アレクシア大佐殿、メアリー少尉、私とクリスタちゃんだけです。
クリスタちゃんとメアリー少尉も、このテントで寝泊まりしているのですが...今は戦闘後の航空機の整備に行っています。
「ええと...やっぱり、アレクシアちゃんがいないから、でしょうか...?」
「...何の話だ?」
「そ、その...今日の作戦のことで...。」
「...ああ、成程。......『らしくない作戦』だったか?普段の私...私達ならば今日のような作戦行動はしない。...私が苛々していて、少々冷静さを欠いていたようだ。損耗が無かったからいいものの...。」
...本当は、作戦のこともありますが...普段と違って、大佐殿が敵兵を屠る際に、ものすごく、恐ろしい笑顔を浮かべておられるのを見てしまって...。
...ターニャちゃんもアレクシアちゃんも、お互いを必要と、求めているようでしたし...。
やはり、フラストレーションが溜まるのでしょう...。
「...ヴィーシャ、少しだけ、いいか?」
「はい、何でしょう...。」
返事をした直後、わ、私の胸に顔を埋めるようにして...ターニャちゃんが飛び込んできました。
え、ええと...か、かわいすぎませんか!?
「...すまない、少しだけ、こうさせてくれ...。」
「はっ...はいっ...。」
突然の事で、心臓が張り裂けそうな程に鼓動が...!
わ、私はこの幸せをどうしたらいいのでしょうか...!?
...結局、ターニャちゃんに抱き着かれてどのくらい時間が経ったのか...。
精神的、肉体的、両方の疲れが出てしまったのでしょうか、寝てしまわれました。
...寝顔だけ見れば、歳相応の可愛い少女ですが...。
「......んんっ...。ふああ...ん...?す、すまないヴィーシャ!」
疲れが少しは取れてくれていれば嬉しいですが...起きてしまわれました。
「いえ、私なんかで大佐殿の疲れが和らぐのであれば...。」
「い、いや...そういうことでは...。うむ、礼を言うぞヴィーシャ...。」
「はい!」
- - - - side ターニャ・フォン・デグレチャフ
疲れていたせいか?何も考えずに、ヴィーシャに抱き着いて寝てしまったらしい...。
非常に、恥ずかしい。
それに、上官としての威厳が...はぁ。
...ともかく、撤退作戦は完了したのだ、共和国戦のように...我々の後退した戦線に敵が到着するまでは、休憩だな。
もっとも、私達が殿を務めたこちら側の戦線は、このまま防衛戦になるのだが。
...敵をおびき寄せると同時に、我々も半包囲下になっている。
殲滅されてしまうリスクは多少あるが...連邦兵はあの貧弱な装備、低い士気だ。
おそらく、大丈夫だろう。
だが万が一、ということがある。念には念を、サラマンダー戦闘団の飛行隊から数機、毎日偵察に出すとしよう。
撤退作戦完了から数日が経った。
大量に撒いた地雷原、砲兵による制圧射撃、飛行隊による爆撃。
これらの甲斐あってか、敵軍に出血を強要できているようだ。
だが...偵察の情報によれば、地雷原の突破が予想以上に早い。どうなっている?
「...連邦軍め、旧式もいいところの装備のくせに、帝国最新式の地雷の突破が早すぎる。」
砂漠の狐と呼ばれる程の、ロメール閣下でさえこの調子だ。
「それにつきましては、小官の部下に原因究明をさせておりますが...。」
帝国の技術力が誇る、最新作の地雷が、こうも簡単に突破されることは大問題だ。
早急に原因を突き止めなければなるまい。
「...敵兵を誘引し、友軍が背後へ突破浸透、殲滅...。」
「ロメール閣下、いかがされましたか?」
「いやなに、共和国戦で大戦果を挙げたと聞いているこの作戦だが...果たして、連邦相手にどれ程の効果があるものか、と思ってな。」
...共和国戦では、彼らの主力軍を包囲撃滅したことが大きかったが...。
連邦の兵達は、敵ながら悲惨、としか言いようのない程酷い有様だ。
正直に言えば、前線にいる敵兵が弱すぎて、後方に巨大な主力軍が控えているのではないかと疑う程だ。
...具体的には、ドニエプル河川あたりか?
「...小官も同意見であります。ですが...参謀本部の決定です、逆らう訳にはいきますまい。」
「...そうだな。貴官と初めて共に行った南方での掃討作戦のような、『予想外の出来事』が起こらなければいいがな?」
「......。」
...良い意味での予想外ならいいのだがな。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ