こんにちは、アレクシア・デグレチャフ魔導少尉であります。
本日は、私とターニャにとっての、良い報せと悪い報せがあります。
良い報せからいきましょうか。
ええ、この度、エレニウム工廠製95式演算宝珠の開発打ち切りが決定致しました。
やっと、爆死の危険から解放されるのです!
とても、嬉しいことです!
では、悪い報せです。
開発打ち切りを受けて、開発責任者のドクトルがどうせ打ち切りになるならと、今まで危険すぎてできなかった実験をやろうと言い出したのです。
ふざけるな!
何でも、ドクトルの頭の中に神が舞い降りてきただの、天啓を授かっただの、ついに完全に狂ったのだと思います。
やりたくないですが、これ以上付き合わなくていいのなら、とスタッフの皆さんは抵抗も消極的です。
貴方達はいいですよ、安全な場所で観測機を眺めてるだけなんですから。
実際に実験するのは、私とターニャなんですから...。
「少尉達よ、準備はよろしいかね?」
どうしてこの人は、爆発がほぼ確定しているこの実験で、こんなにもニコニコと、ウキウキとしていられるのでしょうか...。
バカと天才は紙一重とはよく言ったものです、紙一重というよりはもはや単なるバカとしか思えませんが。
「ドクトル、本気でやめませんか?試算では、最悪我々は演習場ごと吹っ飛びかねませんが。」
「それが、なにか?科学の進歩には犠牲がつきもの。それに、君達だけではなく、私もここにいるのではないか。」
「正直に申しまして、その潔さを別のベクトルに向けていただきたいのでありますが。」
何故こんなにも自信満々なんでしょうか...。
「...?科学者足るもの、探究に忠実であるべき。つべこべ言わず始めたまえ。」
「私達は軍人です。このようなことで死にたくありません。」
「じゃあ、命令だ。とにかく、さっさとやりたまえ。」
何を言っても聞かない、無駄。
人間としては難ありどころではないが、頭脳は本物だから質が悪い。
「では、ターニャ。始めましょうか...。」
「アレクシア、短い人生だったが今までありがとう。お前だけでも生き残ってくれ...。」
「どうして死ぬ前提なんですかっ!?」
「ええい、いつまで喋っているのだ!さっさと始めたまえ!」
はぁ...。最悪ですね。
ドクトルに天啓を授けた?神とやらは相当、私達のことを殺したいらしいです。
「...95式へ魔力供給開始。」
「観測班了解。無事を祈る。」
もう多少のケガで済むなら、命さえあれば...。
「なに、安心したまえ。成功は約束されたようなものだよ。」
「...ドクトル、一体どこからそのような自信が?」
本当に。今まで失敗の連続だったというのに。
「なに、簡単なことだったんだよ。」
「と、申しますと?」
「私は、主任技師。少尉達が、首席試験要員。つまり、我々が反目せず、協力すれば事を為すは容易いということだ。」
「もう少し早く、それに気づいてくだされば、私達ももっとケガは少なかったはずなのですがね...。」
「はっはっは、すまなかったね。」
「ですが確かに、その通りではありますな。」
「だろう?そして、私は先日天啓を得てね。」
「...天啓、でありますか?」
またドクトルが言い始めた、夢でも見ていたのでしょう。
「そうだとも。我々が共に、神に成功を祈願すれば、信ずるものは救われようとな。」
「「............は?」」
そんなことで成功すれば今までの苦労は何だったのかと...。
あれ、ターニャが何だか青い顔をしてますね、どうしたのでしょうか。
大丈夫なのでしょうか...。
「驕らず、謙虚な気持ちになるのが重要だということだが。」
「いえ。その前なのですが...。」
ターニャは何だか、『神』について思うところがあるのでしょうね。
そういえば、以前お互いの秘密を打ち明けあったときに、何度目かの時に言っていたような...?
「いい機会ではないか。三人で、神に成功を祈ろうではないか。」
「ドクトル、貴方は無神論者では?」
「発明の神が私に舞い降りたのだ。私は、今や敬虔な信徒だよ。」
「ついに、打ち切りのショックで狂ってしまわれたのでしょう、ターニャ、気にすることはありません。」
「............。そうだといいが。」
「我らが発明の信徒となり、祈願すれば成功は間違いないのだ。」
「...ちなみに、私達が祈願せねばどうなりますか?」
「まあ、仲良く殉教というところだろう。」
狂人の言うことはよくわかりませんが、せめて死なないようにしなければ...。
「今すぐに、メディックを呼びましょう。或いは、私が楽にいたしましょうか?」
「落ち着け、アレクシア・デグレチャフ少尉。君も神に会ったことがあるのだろう?お互い、神を信じれば救われる。」
......ドクトル、一体どこでそれを。
その話は、私とターニャの間でしかしていないはず。
私がターニャの秘密を漏らすはずがありませんし、ターニャも自分の秘密を言いふらすようなことはしないはずです。
...何だか、嫌な予感がしますね。
そう、思った矢先。
「魔力係数が、急速に不安定化!?魔力暴走です!」
「そんな!?核が融解寸前!総員退避ー!!!!!!」
観測班の悲鳴を耳にしながら、私は意識を失う直前まで、ターニャを案じ続けた。
気味の悪い何かが、何処かでにやりと笑ったのを、確かに実感した。
ああ、あいつが。
あいつらこそが。
ターニャを苦しめ続ける、悪魔、なのですね。
今回は切りどころが悪かったせいで短めであります。
許してください。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ