よろしく、お願いします。(唐突)
「主はおられた!奇跡だ!!!信じる者は幸いなり!!」
おはようございます、アレクシア・デグレチャフ魔導少尉であります。
実験直後、意識を失ってしまいましたが、ドクトルの狂気じみた叫び声で意識だけ起こされました。
最悪の気分です。
はっ、ターニャは、ターニャは無事なんでしょうか!?
「落ち着かれよ、主任。」
ターニャの声だ、よかった...。
......あれ?
なんだかものすごく近く、耳元でターニャの声がしたような...?
「おお、デグレチャフ少尉。実験は、成功だ!!共に神の御名を讃えようではないか!!!!!」
「さあ、さあ、私に奇跡の恩寵を見せてくれ!」
「管制、95式の制御術式は正常か?」
あ、ああ...。
ターニャに、抱えられている...。
抱っこされている...!!!
「っと、アレクシア、気が付いたか。よかっ...うわ!やめろ、抱きつくな!」
「ターニャ!よかった...本当に、よかった...!」
思わず、抱きしめてしまいました。
...って、ここ、空じゃないですか!!
「うわっ!あ、危ない...空じゃないですか!!ターニャ!!」
「私に言われてもな...。」
とりあえず、ターニャから離れるために、私も飛行します。
「...ありがとう、少尉達。正常ですね、見た限りにおいては。ですが、観測機器の故障かもしれません。」
「一体何に感謝されているか分からんが。確かに、機器の故障かもしれんな。仕方ない。95式は封印し、研究所で検査をするべきだろう。」
「そうです、こんな危険物、さっさと封印あるのみです!」
降りようと思ったその時でした。
「何を言う!!今すぐに、起動したまえ少尉!!」
「ドクトル、正気ですか...?」
「......起動する。理論上は成功するか工廠が吹き飛ぶかだが、な。」
「笑えないジョークですよターニャ...。」
仕方ないです、ここまできたら私も付き合おう。
ターニャだけに危険なことをさせるわけにはいかないのです。
どんな爆発を起こすのか、とビクビクしながら起動しましたが。
演算宝珠の回路に魔力を走らせて、4核の同調を開始。
今までの欠陥品とは打って変わって、とても順調かつ、スムーズに魔力が走り、核の同調に至ってはそれを意識せずに済むほど滑らかです。
魔力のロスに関しては、ほとんど理論値と同等の結果を出せているに違いないと思える程です。
なんですか、これは。
とんでもない性能、すばらしいと言うほかありません。
本当に、ドクトルに神が降りたのでしょうか...。
「おお、主の奇跡は偉大なり。主を讃えよ。その誉れ高き名を。」
「...ターニャ?」
幻聴ですかね?私の耳もドクトルの頭同様に壊れてしまったのでしょうか?
「成功した?...まさか、本当に!?」
観測班が驚愕の渦に叩きこまれ、疑問の叫びをあげたことで、私は我に返る。
「...今、私は何を?」
「ターニャが...。神を賛美した...?ターニャが?」
おかしい。
ターニャは、神なんて信じていないはずです。
むしろターニャが神であると言ってもいいほどに可愛いですが...。
おっと、失礼しました。
「ああ、少尉達よ。君達にもわかるかね?この信仰が。奇跡だよ奇跡!」
「「奇跡?」」
「唱えたまえ、主への賛美を。見たまえ、奇跡を。」
...まさか、意識を失う前に感じた、あの気味の悪い存在のこと?
最高峰の宝珠と引き換えに最悪な体験をしてしまってから数週間。
どこでもいいから、こんな狂った場所から、ターニャと一緒に逃げ出したい。
そんな願いを叶えるかのように。
「我々が転属、でありますか?」
この報せを、ずっと待っていたのです。
ようやく、私達の悲痛が、嘆願が、通ったのです!
「ああ、転属だ。上は、エース達をあそばさせるつもりはないらしい。
ターニャ・デグレチャフ魔導少尉、貴官は第205強襲魔導中隊の第三小隊長だ。
並びにアレクシア・デグレチャフ魔導少尉、貴官はターニャ・デグレチャフ魔導少尉の、副官だそうだ。」
ターニャと一緒です!
嘆願書に、『絶対にターニャ・デグレチャフ魔導少尉と同じ職場がいいです』と何度も何度も書いた甲斐があったのでしょう!
どうやら人事の人たちは、士官学校時代の私達を知っているらしく、考慮してくれている...とどこかで聞きました。
「それと、おめでとうターニャ少尉、アレクシア少尉。先の戦功で、貴官らには航空突撃章が授与される。さすがに、銀翼に比べるのはおかしいかもしれないが。」
「ありがとうございます。」
また勲章が一つ増えました。
特に意味など、感じませんが。
その後、荷物を素早くまとめ、すぐに指定された部隊へ移動します。
私が遅刻しては、姉であるターニャの尊厳や素晴らしさが減ってしまうような気がします。
ですのでさっさと、移動するのです。
「よくきたなターニャ少尉、アレクシア少尉。歓迎しよう。中隊長のイーレン・シュワルコフ中尉だ。」
ふむふむ、なかなか正統派、良さそうな上司ですね。
無能ではなさそうです、よかった。
もしも無能であったならば、私達が間引かなければいけませんから。
「ありがとうございます。ターニャ・デグレチャフ少尉であります。」
「私はアレクシア・デグレチャフ少尉であります!」
もう既に名前を知っておられるようですが、軍人として挨拶を。
「うむ、銀翼突撃章保有者だ。期待している。」
「「はっ!」」
やはり銀翼突撃章、効果は抜群ですね。
勲章に価値は感じませんが、持っていて損はありませんね。
「よろしい。さっそくだが、状況を説明する。」
そうですね、仕事前に状況を知っておかねばなりません。
上層部での認識と、現場での認識が全く違う!などはあってはならないことですから。
「貴官らも承知しているように、現在大陸軍主力は、急速に再編・集結中であるが、西方戦線に来援するまでにはしばしの時間を必要とする。」
その軍団概要は知悉しています。
なにしろ、急な事態です。
上層部の狼狽具合は、教導隊まで動員して、とにかく西方防衛の確立を急ぐ姿勢が物語っています。
95式も継続評価試験という名目で、実質的に戦力として計算されているほどだ。
こんな、呪われたモノでさえ戦力として使わざるをえないなんて。
「集結状況はどのようなものでありましょうか?」
「芳しくない。北方に輸送車両が払底しているせいで、西方への再配置には想定より1~2週間ほど遅延するらしい。」
「本当に二週間程度で収まるでしょうか。再配置と言いますが、移動し、再編し、統制を回復するのは、容易ではありません。」
「アレクシア少尉、その通りだ。頭が痛い話だ。そこでだ、西方戦線では遅延防御を断念。機動防御に移行することが決定された。」
「......そんなに、不味い状況なのですか。」
しかしどうして、共和国が帝国に?
いくら帝国が協商連合国と戦争中だからとはいえ、冷静に考えれば分かると思うのですが...。
西暦世界のフランスなら、もうちょっと冷静に分析できたかもしれません。
まあ、あちらのフランスはそういう冷静な分析を国の頭脳たる中央がなぜか理解できない上に、プライドだけは強すぎるという弱点を持っていますが。
「我々の中隊はその機動打撃部隊に抜擢されている。貴官らの奮戦に期待する。」
なかなかに厳しい状況ですが、頑張りましょう。
「なにか、質問は?」
「はい、中尉殿。我々の出撃地点は防衛拠点でありましょうか?それとも後方の拠点でありましょうか?」
やっぱりターニャ、最前線に行きたくて仕方ないんだなぁ...。
「喜べ少尉。最前線だ。」
「光栄であります。」
よかったですねターニャ。大好きな最前線です!
私も、ターニャと一緒に戦えると思うとウズウズしてきます。
「貴官らならば、そう喜ぶと疑わなかった。場合によっては、我々も拠点防衛の支援に従事しうる。」
「では、機動打撃を優先しつつも、防衛支援でありますか。」
「其の認識で間違いない。」
仕事が多いですね。その分良い報酬だといいのですが。
私としては、ターニャがほしいですね...。
おっと、危ない、想像したら鼻血が出てきそうになってしまいました。失敬。
「最悪ですな。よほど、大陸軍の集結は難渋しているようだ。」
「ほう、わかるのかね?」
「敵戦力の摩耗を狙った機動防御ではなく、純粋な遅延目的となれば、時間が如何に足りないか、間抜けな新任将校ですら悟りえましょう。」
「これだけ広範な戦線全てで遅延防御ができるわけではないですし、ね。」
敵戦力を消耗させることを前提とした機動防御線ではなく、抑えきれないがために、一部で敢えて突破させて叩かざるを得ない程に状況はよくないです。
一応、組織的な機動防御ということなので、西暦世界の末期ドイツの東部戦線ほどではないのかもしれないですが、これは覚悟を決めざるを得ません。
「...評判通りの毒舌と頭脳だな。まあ、いい。我が中隊の状況は知っているな?」
「はっ。当該方面軍全体で基幹要員が不足。すでに第205魔導中隊からも一個小隊抽出されており、我ら第三小隊はその補充と認識しております。」
「問題ない。つまり、貴官の小隊は錬度不足も甚だしいのだ。拠点防衛を主たる任務として欲しい。」
「つまり、新人教育をしつつ、防衛に徹する。ということでありましょうか?」
「そういうことになるな。」
うーん、新人教育ですか。ターニャが嫌がりそうですね。
「機動防御線にもかかわらず、小官は、拠点防御でありますか?」
「予備戦力だ。」
予備、ですか。それならば幾らか教育の時間はありそうです。
ですが敵も案山子ではありませんので、どれ程の余裕があるかは不明ですね。
「了解しました。状況によっては、拠点の放棄は許されるのでしょうか?」
「残念だが、これ以上の戦線後退は許容されていない。」
「では、可能な限り固守せよということでありますか?」
「上は、勝利かヴァルハラかを選ばせてくれるそうだ。」
勝つか死ぬか、ですか。
「素晴らしい。どちらも大好きです。」
「私達ならば、ヴァルハラに遠足に行く暇もありませんね。勝利のほうが近いです。」
「大変結構。では、さっそく中隊に貴官を紹介しよう。」
さて、とっても楽しい戦争を一緒に遊ぶ仲間達に挨拶ですね。
まだそこまで継続していませんが、感想など。
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良い
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まあまあ
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イマイチ