シャミ子が悪いんだよ   作:PRD2

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衝動に任せて書いた。
後悔はあんまりない。

結局は作者の妄想なので解釈違いに注意です。
そんなの関係ねぇシャミ桃見せろい! な人は暇潰しにどうぞ。
そしてこれ読んだ後に皆もまちカドまぞくの二次創作書きましょう。
私も、書いたんだからさ。


01

 ──これは、私こと千代田桃がばんだ荘に移り始めた頃のこと。

 

 私はどこにでもいる普通の魔法少女だ。

 幼い頃、光の一族であるメタ子と契約してなんやかんやで世界を救った程度の、ごく一般的魔法少女である私は、最近高校で知り合った闇の一族である魔族──シャドウミストレス優子ことシャミ子と協力することで、十年前から行方が分からなくなっている義理の姉──千代田桜を探すことを約束した。

 シャミ子は混沌を糧とし無秩序をパワーとする闇属性でありながら、おつむも弱ければ身体もムチムチの運動不足で、「相手の夢に潜って操る能力」という折角の強力な能力を『相手に親愛の情を抱かせて秘密喋ってもらおう大作戦』程度のショボい使い方くらいしか思いつかない位にはポンコツ魔族だった。

 闇の一族を名乗るには、あまりに戦闘センスが無くて。

 魔族の復興を遂げると豪語するには、あまりに善良。

 それこそ私は、当初シャミ子の事を『何だか手のかかる世話好きな後輩』的ポジションの女の子程度にしか考えていなかった。

 ……いや。

 もしかしたら──行方不明の姉の居場所についての手掛かりになるかも……なんていう最低な下心を持って仲良くしていたことは、否定できない。

 そして姉である千代田桜が原因でシャミ子の父親は段ボールへと封印されてしまい、吉田家から大切なお父さんを奪い去ってしまった事を知って、その負い目から私は彼女の前から去ろうとした。

 けれど。

『桃──魔法少女やめちゃいませんか?』

『桃が考えるのがつらいことは一緒に考えますし、桃がやりたくないことは私も一緒にやります』

『完全に取り戻せなかったら諦めて撤収するんですか? 私は諦めない!』

『私は封印の解除もおとーさんも、桃と一緒にいることも諦めません』

『強くなってもっといっぱい動けるようになって……全部ほしいものを取り戻せるだけ取り戻す! ……まぞくらしく欲張りに生きるのだ!』

『……魔法少女千代田桃、もう一人での戦いは諦めたらどうだ? 自分の弱さを受け入れ、堕落しつくし、光の正道を外れ闇の道に堕ちるがいい』

 

『私の……シャドウミストレス優子の配下になれ』

 

 その姿は、私の知るどの彼女よりも闇の支配者に相応しく。

 その言葉は、私の知るあらゆる言葉よりも強かった。

 傲慢にして恐れ知らず。

 勇敢にして──魅力的。

 私の冷静な判断力によってそれが悪手だと判明しなければ、私はその言葉に従い、シャミ子の眷属になっていたのは間違いなかった。

 結局その話は流れ、代わりにシャミ子と姉を探し、その見返りとしてシャミ子を立派な魔族として鍛え上げる事で契約は成立。そこから私と彼女の関係は、倒すべき宿敵にして共同戦線を張る仲間にランクアップを遂げた。

 

 ……そして、今日。

「桃ー足どけてください、掃除機かけますから」

「……ん」

「足上げるだけじゃなくて、ソファにまっすぐな感じにです!」

「……んー」

 そのシャミ子は──私の部屋を掃除していた。

 リラックスした私服に身を包みながら、私が実家から持って来たそこそこ最新(らしい)掃除機を、両手でテキパキとかける様は手慣れたもので、まるで主婦のようだった。

 私はシャミ子に注意された通りにソファに寝そべりながら、ボーっとしながらシャミ子を見ていた。

 シャミ子が掃除もろくにしない私を見かねて部屋の掃除を始め、それからというもの二日おきくらいに彼女は隣りの部屋からわざわざこちらに掃除機をかけに出向いて三回目の今日──私はとあることを考えていた。

 それは、今日のシャミ子の筋トレはどうするか悩んでいた──わけでなく。

 或いは、『桃が手伝うとタンスの裏や天井をはたきでバシバシしてほこりまみれになるので、私のやり方を見て掃除の仕方を学んでください』と、若干バカにされた腹いせにダンベルの重さを倍にしようか──なんてことでもなかった。

「…………」

 視線は虚ろに天井──と思わせておきながら、焦点をズラしつつ彼女の方へ。

 せっせっと背を屈めながら、熱心に掃除機をかける彼女を盗み見るように。

 私に闇堕ちを提案してきたあの日の姿とは違って、甲斐甲斐しく私の世話をする彼女の姿に──思わず息が漏れた。

 しょうがないと呆れながら、宿敵の家が汚いのはなんか嫌です! と言いたげだった彼女の姿は善良そのもので。

 そして──何だか休日に彼氏の世話を焼く『彼女』みたいだと。

(……また、この感じだ)

 胸をつつくような、奇妙な感覚。

 背筋がそわそわとしながらも、なぜだか不思議と──けれど確かに心が満たされるような感覚。

 例えるなら──まるで子供が、自分のオモチャを胸に抱いて『自分の物であること』に満足を覚えるような……実際にそんな事を思った幼少期は無いはずなのに、不思議と昔似たような思いを抱いてしまったような気がした。

 ──それは、シャミ子と契約を果たした日から私の心に(わだかま)る思いだった。

 あの日から、守るべき妹のような存在だったシャミ子が、共に戦う仲間になった時から、私がシャミ子に向ける視線の意図が何となく変わってしまった。

 体を目一杯使った彼女のオーバーリアクションが、前までは何だか我が儘に映っていたのが──構って欲しそうな猫のように見えた。

 得意気な顔で私に勝負を仕掛ける姿が、前までは仕方の無い子供のようだったのに──お茶目な女の子のように見えた。

 そして今。

 まるで小うるさい母親のように──私に親はいないけれど──世話を焼いていた姿が──一転して“私の”彼女のように……。

(……おかしい。絶対なにかがおかしい)

 いつの間にかテンションが上がってきたのか、鼻唄を歌いながらリズミカルに腰をフリフリしだした彼女の姿を見ながら思案する。

 そう──彼女を見る目が変わった、変わってしまった。

 具体的には──前よりシャミ子が、ずっと可愛く見えた。

 ふと何の気なしに私の部屋に遊びに来ては、私の隣に座って話し出した時とかに緊張する時があったり。筋トレの時に彼女の体に触れて教える時に、思っていたより柔らかくて驚いたり。疲れて無防備な姿で私のソファーで寝たりする姿に……ドキドキしたり。

(なんなんだろう、この気持ちは……)

 すわ私の深層心理にシャミ子が何かを埋め込んだかと思うほどの変化……実際に彼女が私にそんなことをした覚えも無ければ、された覚えも無いと言うのに。

「うぅ、やけに重いですねこのテレビ……流石は()()()()といったところですか……ねぇ桃ー、ちょっとこれ動かしてもらっても──な、何でこっちガン見してるんですか?」

「……いや、やっぱりもうちょっと絞れるかなって。腕とか太ももとか」

「何を搾るんですか!? 私の腕は果物ではありませんよ!」

「いやそっちじゃなくて……まあいいや。それで、テレビをどかせば良いんだよね」

 シャミ子の声に一度思考を中断し、適当にあらかじめ考えていた誤魔化しの言葉を口にしつつ、テレビの前まで歩く。彼女の“桃”と呼ぶ声に緩みそうになった頬を引き締め、私は彼女の元へと歩いた。

 どうやらテレビの置かれた棚の裏の埃を取りたいのか、シャミ子が100均で買ってきた伸びるフワフワした棒を持っていた。

「さっきから思ってたんだけど、まだ引っ越してからちょっとしか経ってないのにそこも掃除するの?」

「ほこりは数日もあれば溜まりますし、ミカンさんも言ってましたがこのアパートはボロいので、小まめにやった方が良いんです。この裏はコンセントとかもありますから」

「あぁ、それは確かにそうかも……ちゃんと考えてるんだねシャミ子は」

「ククク、なめるなよ魔法少女よ。既にきさまのコンセントは私が用意したお古のライトとかに使わせてもらっている。電気代がちょっと()()()のに怖れおののくがいいわ……!」

「この100均で売ってそうなスタンドライトのこと?」

「明るい方が汚れとかよく見えますからね!」

 自慢げに胸を張るシャミ子の姿に内心で可愛いなーとか思いつつ、取り敢えず言われた通りに棚を動かす。引きずって床を傷つけないように持ち上げながらズラすと、確かにそこにはテレビのコード等と共に埃が溜まっていた。

 シャミ子は「ありがとうございます」とお礼を言うと、その場で屈みながら、掃除機の先に細長いアタッチメントを付けた奴や、フワフワを使いながら掃除しだした。私はそれを、何とはなしに横で同じように膝を着いて見ていた。

 そして──ふと、気が付く。

「……そういえばシャミ子。今日はリリスさんは持ってきてないの?」

「はい。ごせんぞは今、おかーさんとお買い物にでかけています。チラシをお供えしとけば、買い物メモがいらないからラクチンなんだそうです」

「……体よく扱われてるんだね、リリスさん」

 どうやらリリスさんはドアストッパーやチラシの重石からメモ書きにクラスチェンジしたらしい。相変わらず不憫な扱いだなと思いながら嘆息し──。

 

「あはは……まあ、そういうことなので、今は私と桃で二人きりですね」

 

 その言葉に、何故か心が揺らいだ。

 ──二人きり。

 ハッ、っとなってシャミ子の方を見れば、そこには先程と変わらない彼女の姿があった。床に手と膝を着きながら、ほわー! と声をあげてフワフワを動かす姿が。

 ──考えてみれば、シャミ子と本当の意味で二人きりの状況という状況は珍しい。シャミ子の側にはいつだってリリスさんがセットでいて、それこそ初めて二人きりになったのはシャミ子が私の深層意識の中に入ってきた時くらいのものだろう。

 ──視線が自然と動いた。

 斜め後ろ側から見えた──シャミ子の裾からのぞく脇腹とか、見えそうで見えないスカートの中へと。

 ごくり、と。

 喉が、鳴って。

 ああきっと……触ったら可愛い声をあげて驚くだろうな、なんて。

(──!? な、何を考えて……)

 いつの間にか彼女の脇腹へと伸びた右手の指先を、思わず引っ込めた。そのまま動かせば確実に彼女に触れていたであろう指が、わなわなと震えた。

 ──今、何を考えた? 

 そんな思考に対しての回答は簡潔で──『シャミ子にイタズラをしようとした』というもので。

 そして逆に言えば──()()()()()()()()何を狼狽えていたのかという問いへと変わった。

 なぜならその程度のことは、一般的に考えてただのお茶目なイタズラで終わって、それこそシャミ子の級友である佐多杏里がするように笑って終わるような──そんな大した事ではない筈だ。

 大したことになるとすればそれは──イタズラ以上の意味を持っていたことは自明だった。

(……おちつけ。これは気の迷い──あるいは多分リリスさんとかのせい!)

 小さく、息を吐く。肺に溜まった邪な何かを吐き出すようにゆっくりと、長く。

「? どうしましたか桃、埃っぽかったですか?」

「……な、なんでもないから大丈夫」

 そんな私を疑問に思ったのか、シャミ子が小首を傾げてこちらに話しかけてくるのを、私は視線を反らしながらそう返した。普段通りに振る舞おうとしたけれど、変に上擦った声が口から漏れた。

「……なんか今日の桃、おかしくないですか? いつもより凄い見てきますし……はっ! まさか筋トレですか!? 今日は午後からって……そんなに待ちきれないんですか!?」

「そうじゃな……いやそう、そうだから。シャミ子のプニプニの腹筋をどうやって六つに割ろうか考えてただけ」

「……なんか、はぐらかしてません?」

「はぐらかしてない」

 はぐらかしてなんか無い。

 シャミ子の脇腹に触ろうとしたのは貧弱な筋肉を彼女に自覚させるためだった。そういうことに違いない。そう決めた。だからそれ以上の議論はいらない。

 そういうことにした。

「……まあ、良いです。そろそろお昼ですしご飯の用意でも──」

 シャミ子はそう言いながらフワフワを持って立ち上がると、それをテレビの棚に置いて台所の方へと向かおうとして──。

「──あっ」

 シャミ子が持ってきたスタンドライトのコードに、足を引っ掛けた。

 ピンと張ったコードは確実にシャミ子の行く手を阻み、重心を前へと倒して行く。空を掴むように泳いだ彼女の手が何かを掴むことはなく──そのまま私の方へと倒れてきた。

「──なっ」

 いつもの私なら、すぐに反応した。

 しなかった理由と出来なかった理由は一つずつ。

 転ぶくらいは大した怪我にならないと思ったことと、動揺して判断を迷ったこと。

 だから取り敢えず手を広げて支えようとして。

 彼女が転ぶのに抵抗したせいか若干位置がズレ──彼女の胸元が顔面へとぶつかってきた。

 ──鋭敏な魔法少女の五感が、あらゆる感覚を如実に私に伝達する。

 想像よりもずっと柔らかい感触だった。服と下着のうえからだと言うのに、それでも分かるくらいの柔らかさと体温に顔を包まれた。脳を揺さぶるようなその感覚と共に、鼻を通ったのは嗅ぎ慣れた彼女の香りだった。貧乏を自称するくらいには微かな洗剤の匂いと──彼女の体の匂い。少し汗を掻いている筈なのに、何故か甘ったるいと感じるようなその匂いに脳が揺さぶられ、反射的に手が彼女の腰に、

「──せいっ!」

「──ぽぎゃ!?」

 そのまま彼女の体をホールドした後、ソファの方へと投げ飛ばす。なるべく優しく放物線を描くように配慮したその投擲の後、ソファへと背中で着地した彼女の呻き声が聞こえた。見れば少し目を回したシャミ子が寝転がりながら。

「うぅ、座布団のように投げられました、遊園地のアトラクションとかこんな感じでしょうか……ってそうではなく桃! なんで投げ飛ばしたんですか!? まさか今のが必殺魔族ちねりの犯行予告とでもいいたいのですか!?」

「い、いや。つい癖で……」

「そんなスナック感覚で投げるな!」

 わちゃわちゃとこちらに抗議の声をあげる彼女の声に無難な返答をしながら──私は内心ホッと息をついた。

 ──あのまま投げ飛ばさなかったら、自分が何をするのか予想できなかった。

 未だに脳を揺さぶる彼女の感触と体温に頬が赤くなり、鼓動が強くなる。必死に平静を保ちつつ息を整え、手の震えを力付くで止める。

 ──おかしい、絶対におかしい!

 最近の私は本当におかしい! 

 あの柔らかな胸元にずっと顔を埋めていたい思ってしまった!

 あの暖かな肌をずっと触れていたいと思ってしまった!

 ──ああ、そうだ。

 やっと思い出した。

 彼女が私の世話をして、まるで“私の”彼女のように私の世話を焼く姿に、私の胸をついた感情の正体。

 子供の頃──姉が失踪する前に、私を可愛がってくれて、私だけを見ていた時に感じたことあの気持ちと同じだと気付いた。

 私だけを見て、私だけの声を聞いているような──まるで私の物のように姉を感じた──『独占欲』で胸が満たされた時の事を。

 誰かを所有物扱いする罪悪感に胸が騒ぎ、けれど確かな優越感に高揚した時の事を。

(──いや、でもだって、それじゃあ──)

 それはまるで。

 私が──シャミ子の事が大好きみたいだと。

 そう思ってるのと、同じようなものだと思って。

「……シャ、シャミ子が……」

「はい?」

「──シャミ子が悪いんだよ!」

「なんでですか!?」

 

 

 

 副題

『もし桃がシャミ子に恋愛感情とか抱いちゃったら』

 




千代田桃
今作の主人公。物理系でシャミ子の彼氏面魔法少女。
原作にシャミ子への恋愛感情と、ちょっとの性欲を混ぜちゃった感じ。基本的に彼女の悶々とした感情が今作のテーマ。全力でクールぶりなから内心すげぇ動揺してる桃が書きたくなった。
原作の二人は至高だが、それはそれとしてラブコメさせたい。

シャミ子
原作の主人公。まだちょっとポンコツまぞくな時。
魔族の復興と一族の繁栄のため、果敢に魔法少女に挑み、たまに炊きまぞくや通い妻ぞくにジョブチェンジする圧倒的ヒロイン。ただしここぞという時は格好いい。
アニメで動きがついて一段と可愛くなり、そして一段と桃との仲が深まってる気がする。でもあの世話の焼き方とか入れ込み具合を見るに、どう考えてもシャミ子が悪い。


続くかも。
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