園子様のUR・・・・・・・
園子様のURぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・(ここでも呻く)
「何だよ・・・ここ・・・。何処だよ・・・」
景色に見覚えは欠片も無い。
そもそも俺はさっきまで教室にいたハズだ。
「わ・・・わたし、夢でも見てるのかな・・・?」
隣に立つ友奈が自分の頬をつねる。
どうやら痛かったらしく、ちょっと涙目になっていた。
「夢じゃ・・・ないみたい・・・」
訪れる沈黙。
それを不意に東郷が破った。
「二人とも安心して。ここは悪い所という訳ではないの」
「────その口振り、あのアラームとかについても知ってると見て良いんだな?」
「ええ」
こちらを真っ直ぐ見つめて答える東郷に、俺は───
「・・・っ!」
「東郷さんっ!」
右手で東郷の肩を掴み、力を入れる。
「全部話してもらう。分かってンだよな・・・・?」
「────ええ、勿論よ。だから安心して・・・・ね?」
諭すように、東郷は俺の右手に両手を乗せた。
「─────かぐやちゃん」
気付けば、友奈が俺の制服の裾を引っ張っていた。
言葉は無くとも、その泣きそうな表情を見れば、言いたい事は理解できる。
まったく・・・この期に及んで他人の心配かよ・・・
友奈らしいっちゃ、らしいけどよ。
「───────────」
仕方ない。友奈に免じて、ここは引き下がる事にしよう。
俺は東郷から手を離した。
「──────悪かった。ちょっと、冷静じゃなかった」
「・・・・誰だって、何も知らされずにこんな場所に跳ばされれば、冷静でなんて、いられないわよ。輝夜くんは、悪くない」
掴まれた肩の調子を確かめつつそんな事を東郷が言う。
やれやれ、まるで俺だけワガママ言ってるみてェじゃねーかよ・・・・ま、概ねその通りか・・・・・
「オラ、さっさと説明してくれよ。俺達ァなんでこんな場所に居る?何をすりゃア良いんだ?」
「それを説明する前に、私達にはまず、合流しなくてはならない人たちがいるの」
合流しなくてはならない人たち?
この場所に、他にも誰かいるのか?
と、その時。
背後から人の気配を感知した。
「誰だッ!?」
咄嗟に友奈と東郷を庇える位置に移動。襲撃に備える。
しかし、それは杞憂に終わった。
「ちょ・・・!?待った待った!あたしよあ・た・し!」
「──────風さん?」
「ふ・・・風先輩?樹ちゃんも・・・・」
茂みから出てきたのは風さんと樹だった。まさか、東郷が言っていた合流しなくてはならない人たちって・・・
「良かった。みんな無事ね・・・」
「風先輩・・・・・・風せんぱぁい!」
二人の姿を見た友奈が風さんに抱き付いた。安心したのか、少し涙ぐんでいる。
しかし、俺は安心できないでいた。
「・・・・風さん。あんた、どうやってここに?」
「これのおかげよ」
そう言って見せてきたのは、端末の画面。
この場所の地形データと、東郷以外の俺達の名前が表示されていた。
「地図アプリ・・・?」
「このアプリはね、この事態に陥った時に起動するようになっているの」
「えっと・・・・これって確か、勇者部に入る時にインストールしたアプリ・・・・ですよね?」
つまり、風さんはこうなる事を初めから知っていた。と言うこと。
「──────────」
言いたい事は腐る程ある。が、今は言わない。
東郷は、風さん達と合流したら話すと言ってくれた。
これまでの付き合いで、こんな時に東郷が嘘を言うヤツではないのは理解している。
だから、今のところは何も言わず、話を聞く事にする。
―――――――――――†――――――――――
場所を移して、現在俺達はさっきよりも低い場所にいる。
「私と東郷は、大赦から派遣されてきたの」
「大赦ァ?」
「大赦って、あの・・・神樹様を奉っている・・・?」
大赦
この神世紀の時代に於いて、知らぬ者のいない名前だ。
西暦最期の時代にて、時の政府機関から政権とかその他諸々を譲り受けた組織で、神世紀300年現在でも、その権威は揺るがない。
何故揺るがないでい続けられたのか。
その理由こそ、大赦が奉っているモノだ。
西暦の時代、突如として猛威を奮った殺人ウイルスの脅威から、人々を救った神樹様。
それだけに留まらず、現在も様々な恵みを与えてくださっている。
今や人類は神樹様無くしては生きていくことが出来ないのだ。
「ちょっと煌月?聞いてるの?」
「聞いてるよ。要はアレだろ。この"樹海"ってヤツは神樹サマが町護る為に張った結界で、俺らの役割はここで襲撃者をぶっ倒せば良いんだろ?」
「・・・・・あんたって、案外頭良いのネ」
「あ?ケンカ売ってンのか?」
「かぐやちゃんストップ!?ストーップ!?」
流石に冗談だって。
しかし、こんな結界用意しなきゃなんねーような敵か・・・・どんなヤツなんだ・・・・?
「っ!風先輩!来ました!!」
「・・・・・遅い奴で助かった。簡単な説明も出来ないままだったら、手遅れになってたかもしれない」
東郷の声に、全員がそちらを見る。
巨大な異形が、ゆっくりと、此方へ向かっていた。
「あれがバーテックス。人類の敵であり、そして、あいつが神樹様の下へとたどり着いた瞬間、世界が終わる・・・」
東郷がそんな事を語る。
大それた話になってきたな。"世界が終わる"・・・ね。
「この場所に・・・・私たちだけ・・・・」
「おい、風さん!東郷!アレとどう戦うってンだよ!なんか武器的なモンは!?」
「方法ならあるわ!このアプリを使うの!」
そう言って見せてきたのは、先程俺達と合流する際に使用していたアプリ。
「戦う意志を見せれば、アプリのロックが解除されて神樹様の勇者になれるの!」
なるほどな。
試しに俺もアプリを起動させる。
すると画面に、錠前のマークが画かれたボタンが表れる。
「これを使えば、俺も・・・・・」
「みんな!伏せて!!」
ボタンを押そうとした時、東郷から警告の声が上がった。
咄嗟に、近くにいた友奈をしゃがませ、東郷に覆い被さる。
直後に起こる爆発。
確認はしていないが、どうやらバーテックスとやらの攻撃らしい。
「あ・・・・ありがとう、輝夜くん」
「気にするな。友奈も無事か?」
「う・・・・うん。なんとか・・・・・」
笑顔で答えるが、その声は震えていた。
当然だろう。いきなりこんな場所に連れてこられて、しかもあんな奴と戦えと言われる────普通なら、失神していてもおかしくない。
「東郷、このアプリがあれば、アイツと戦えるんだな?」
「え?ええ・・・・でも、変身できるのは神樹様に選ばれた少女だけで────」
「知った事かよ!!」
端末を手に、バーテックスと向き合う。
「理屈はどうあれ、俺ァ今、
覚悟なんか、最初から決まっていた。
俺が友奈と出会った時から、ずっと。
だから─────
「俺に力を貸しやがれ!!!」
端末のボタンを押す。同時に、バーテックスから砲弾のようなモノが発射され────
「かぐやちゃん!!!!」
俺の目の前に着弾。爆風が俺の身体を叩きつける。
煙が晴れた時、俺の衣服は変化していた。
普段は着ないような黒いインナーを着て、裾の長い学ランを羽織っている。
長ランは襟元の錠前形の金具で止められており、少し動いた程度ではどっか飛んでいく事は無いだろう。
武器らしき物は見当たらないが、まあ、平気だろう。
俺には、
「・・・・・・うそ、変身した?」
「────────あれ、が」
「・・・・・・・・・・・・・・・かぐやちゃん」
さて、
変身できたって事ァ、バーテックスとも対等って事だ。
「ンじゃ、やっちゃるか・・・・仕事の時間だ」