契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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新五ヶ条の四つ目、まさかの新しいお話だとは・・・!!しかも最初は巫女がメインのお話で、全三章構成だとか!
新キャラはぐんちゃんに関係あるらしい・・・・・って事は、この作品にも絡ませられそうかも知れない。
何はともあれ、来月が楽しみだせぇ!!!


赦しあうF、再びのV -勇者のお役目-

───翌朝

 

「昨日の事故知ってる?」

「あー、隣町で起きたやつでしょ?二,三人怪我したっていう・・・・」

「私その時、現場の近くに居てさー」

「え、ウッソ、マジで!?」

「写メ送ろうとしたんだけど、電池切れてて・・・」

「あるあるー。大事な時に限って電池切れ起こすんだよねー」

 

クラスメイトのそんな会話を聞きながら、私は日直の仕事をする。

今日は東郷さんはお休みだ。

学校には「足の検査に行く」と言っていたらしいが、本当は違う。大赦まで端末を取りに行っているのだ。

 

(・・・・・・・そういえば、風先輩がかぐやちゃんのこと、"魔術師"って言ってたな・・・・)

 

私の知らないところで、私の大切な人たちが大変な事に巻き込まれていた。

その事実に、私の背筋は震える。

 

(大丈夫・・・・今の私には、勇者の力がある・・・・・これなら、みんなを守れる・・・・!)

 

自分を奮い起たせて、震えを止めようとする。けれど震えは収まらない。

 

「何ボケーっとしてンだよ」

 

その時、頭になにかが乗っけられて、後ろからかぐやちゃんの声がした。

乗っけられたのは、紙パックのりんごジュースだった。かぐやちゃんが買ってきてくれたのかな?

 

「あ・・・・ありがとう・・・・」

「オラ、それ飲んだらとっとと日直の仕事、片付けろって」

「うん・・・・」

「────────大丈夫だ」

「ふぇ?」

 

りんごジュースを飲もうとしたら、かぐやちゃんが小さな声で呟いた。

 

「何が有ろうとも、俺がどうにかする。だからお前らは、大丈夫だ」

「───────────────────」

「その代わり、俺の方はお前らに任せるから。持ちつ持たれつ、ってヤツさね」

「─────ふふ、かぐやちゃんらしいや」

 

もう、背筋の震えは収まっていた。

大丈夫。かぐやちゃんやみんなが一緒なんだ、怖いものなんかありはしない。

 

「よぉし!」

 

私はかぐやちゃんから貰ったりんごジュースを一気に飲み干すと、空になったパックをゴミ箱に投げ入れた。

飛んでいく紙パックは、綺麗な放物線を画いてゴミ箱へホールインワン。

 

「お、ナイッシュー♪」

「んへへ~♪」

 

―――――――――――†――――――――――

 

時間は流れて放課後───

部室に着いた私は、端末を操作し、私の精霊"牛鬼"を呼び出す。

アプリの説明書によると、精霊は、私たち勇者に力を貸してくれる存在で、バーテックスから御霊を引き出す"封印の儀"や、勇者のサポートをしてくれるのだとか。

私は気が付かなかったけど、昨日の時もサポートしてくれてた・・・・のかな?

 

「その子、友奈さんになついているんですね~」

「うん。名前は"牛鬼"っていうんだ!」

「かわいいです~♪」

「ビーフジャーキーが好きみたいなんだ」

「牛なのに!?」

 

そんな樹ちゃんの精霊は"木霊"というらしい。頭に葉っぱの生えた緑色の毛玉みたいで、こっちもかわいい。

 

「さて!みんな無事で何よりだワ!」

 

と、その時、風先輩が黒板からこっちに向き直って、話を始めた。

 

「戦い方はアプリに説明があるから置いといて、今は戦う目的を話すわね」

「お願いします」

 

私が返事をすると、風先輩は黒板の謎の絵をビシッと指差して言った。

 

「こいつ!バーテックス。こいつら人類の天敵が、向こう側から壁を越えてやってくる事が、神樹様のお告げで分かったの。その数、十二体。この前倒したから、残り十一体ね」

「それ、こないだのやつの絵だったんだ・・・・」

「き・・・奇抜な様子をよく表しているよねっ!?」

 

樹ちゃんのツッコミに対し、フォローを入れる。

 

「・・・・バーテックスの目的は神樹様の破壊。以前襲って来た時は追い返すのが精一杯だったんだけど、御霊の存在が確認された事で、状況は一変。大赦は神樹様の御力を借りて"勇者"と呼ばれる姿に変身するシステム───勇者システムを作りあげたの。人知を超えた力には、こちらも人知を越えた力ってワケ!」

 

続けて風先輩は、神樹様(っぽい何か)の絵から線を引っ張り、四つの人(のような何か)の絵に繋げて丸で囲んだ。

 

「それ私たちだったんだ・・・・」

「げ・・・・現代アートってやつだよ!(汗)」

「結城さん。それはフォローになってませんよ?」

 

いつの間にか後ろにいたマッキー先生に突っ込まれた!?

というか、先生にお話聞かれて大丈夫なの?

 

「ああ、私のことはお構い無く。大赦の知人から、大体の事情は聞き及んでおりますので・・・・」

「あー・・・・ありがとうございます先生。じゃ、続けるわね」

 

なんかよくわからないけど、大丈夫らしい。

 

「えーと・・・・ああ、そうだ。注意事項として、樹海が何かしらのダメージを受けると、日常に戻ったときにその分、何かの厄災となって現れるそうよ」

「厄災・・・・」

 

思い出したのは、今朝の事故の話とバーテックスの足下で黒く変色していく樹海の姿。

あの事故が、樹海での戦闘の影響・・・・?

 

「派手に壊されて大惨事!・・・なんてことにならない為にも、私たち勇者部が頑張らないと・・・!」

 

 

 

 

 

「その勇者部も、大赦からの指示で意図的に集めたんだよな・・・?」

 

 

 

 

 

それまで黙っていたかぐやちゃんが、突然にしゃべりだした。

 

「───ええ、そうよ。大赦の調べで勇者の適性がある人はだいたい分かっていたから」

「知らなかった・・・・ずっと一緒に居たのに・・・・」

「・・・・黙ってて、ごめん」

「次、敵はいつ来るんですか?」

「わからない。一週間後かも知れないし、明日かも知れない」

「だったら、なんでもっと早くに言わなかった?」

「それ、は・・・・でも、他のチームが当たる可能性だってあって───」

「そ・・・そっか。他にも、ここみたいなチームがあるんですね?」

「うん。人類存亡の危機、だからね」

「なら、なおのこと事前に言うべきだろ」

「──────────」

「友奈も樹も、下手したら死んでいた可能性だってあっただろうに」

「ゆ・・・勇者の適性が高くても、どのチームが選ばれるかは、敵が来るまではわからなかったのよ!だから・・・・」

「ふーん・・・・・・なら、東郷は?」

「え?」

 

え・・・・どうしてここで東郷さんの名前?

 

「あいつは、風さん以上にヤツの事を知っているような雰囲気だった。て、事ァよ・・・・もしかしてなんだが、東郷は以前にもバーテックスと戦ったことがあるんじゃないのか?」

「────────え?」

 

かぐやちゃんの指摘に、風先輩は呆然としている。

 

「だとしたら、勇者部が当たる事はほぼ確定だったんじゃないか?」

「─────そん、な」

「・・・・・・その様子だと、そこまでは知らなかったようだな」

「───────────ごめん」

「謝って済む話じゃないだろうが」

「うん。分かってる・・・・・でも、これだけは信じて。勇者部を創ったのは、大赦からの指示があったからだけど、それだけが理由で創った訳じゃないってこと」

 

風先輩のその一言に、かぐやちゃんは────

 

「分ぁーってるよ、ンな事ァ」

「──────へ?」

「東郷が言わなかったのは『心配させたくないから』。風さんが言わなかったのも『心配させたくないから』。どっちも他人を思ってやった事だ。別に咎めるつもりはねーよ。でもな・・・・」

「うん」

「勇者部五ヶ条一つ、"悩んだら相談"。一人で抱え込んでんじゃねーよ。せめて俺くらいには話せって」

「うん・・・・ごめん」

「ていっ」

 

ぺちん、とかぐやちゃんが風先輩にデコピンした。

 

「あいたっ」

「ごめんはもう聞きあきたぜ。こういう時はよ───」

「・・・・・ありがとう」

「うむ、よろしい」

「─────年下のクセに生意気」

「なら、年上らしい事してみろっての」

「言ったなー!このー!」

「ぬわっ!?ぐりぐりは止めい!────ったく」

 

良かった・・・・二人とも、ちゃんと分かり合えて・・・・

と、その時。

 

 

 

 

 

♪~~♪~~

 

 

 

 

 

「────まさかの二日続けて!?」

「人気者は辛いねえ・・・・・東郷から連絡は?」

「──────────来てないわね。仕方ない、向こうで合流しましょ」

 

さっきまでのふざけあっていた空気は消え去って、真面目な表情で話し合う二人。

間には割り込めそうにないので私は、隣で緊張している樹ちゃんに話しかけることにした。

 

「・・・・・・・・・」

「大丈夫!私たちならやれるよ。勇者部五ヶ条一つ!"為せば大抵なんとかなる"だよっ!」

「・・・・・はいっ!」

 

うん。大丈夫みたい。

 

「話は蒸し返すようだが風さんよ。別に俺は咎めるつもりは無いが、怒ってはいるんだぜ?」

「うっ・・・・・・うぅ、仕方ないわね・・・・・バーテックス全部倒せたら、なんでも一つ言うこと聞いてあげるワ」

「よしなら噂に名高いチアコスで撮影会な!」

「はぁ!?」

「いよーし!俄然ヤル気が出てきたね!!バーテックスちゃんイラッシャーイ!!なんなら十一体全員で来てもいいのよ?」

「フラグ・・・・ですかね?」

「あ・・・・・あははは・・・・(汗)」

 

 

 

 


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