「んで?あの仮面の女にボコボコにされていた俺のことは、すっかり忘れちまった・・・・・と」
「あー、うん。だいたいそんな感じ」
「何がそんな感じだボケァ!!!!!!!!!」
しぱーん!と、友奈の頭をハリセンで度突く。
「いっっっったーーーい!だって~・・・」
「だってもクソもあるかってンだよ!!!」
涙目でぶーぶー文句を垂れる友奈にもう一発ハリセンを見舞う。
「輝夜くん、今日はもうその辺りにしたら?友奈ちゃんだって悪気があった訳じゃないだろうし」
「うわーん。東郷さ~~ん・・・・かぐやちゃんがいぢめるよ~~。暴力亭主だ~~~~」
「誰が亭主か」
「突っ込むとこ、そこですか・・・・」
友奈に泣き付かれて恍惚としている東郷と、オーバー気味に東郷に泣き付く友奈を眺めつつ、ここに至った経緯を思い返す。
―――――――――――†――――――――――
東郷の放った弾丸が、蔦となって仮面の女を簀巻きにした後、仮面の女はとりあえず放置し、東郷と共にバーテックス退治へと向かった。
合流できた時には既に封印の儀が始まっており、サソリの持つ"友奈のパンチをジャスト回避する"御霊を風さんが、カニの持つ"複数に分身する"御霊を樹が、それぞれ粉砕した瞬間だった。
そこで俺は、最後に残った奴の御霊を破壊しようとしたのだが、俺が動くよりも早く、東郷の華麗なスナイプによってバーテックスは殲滅された。
──────俺、活躍できてねーぢゃん。
ま、皆が無事ならそれで良い。しかし疑問が一つ残る。
「なー、友奈?なんで俺ンとこ、救援来なかったんだ?連中、そんなに強かったのか?」
「────────────────あ(汗)」
「あ?(怒)」
―――――――――――†――――――――――
「以上が、ここまでの経緯だ」
「誰に話してんのよ」
「気にしたら負けだぜ、風さん」
にしてもあの仮面女、いったい何の目的で俺を狙った?
どうやら俺の事を試していたようだが・・・・そういや、起動してないとか何とか言ってたな・・・・・何の話だ?
「あ、ところでかぐやちゃん」
「んー?」
何の気無しに返事をした俺だったが、友奈からの一言で頭ン中が真っ白になる。
「"魔術師"って、なぁーに?」
「───────────────────────」
無言で友奈の顔色を伺う。
いつも通りのニコニコ笑顔だ。しかし、俺には判る。
(やべぇ・・・・友奈の奴、ガチで怒っていらっしゃる・・・・・)
「・・・・ね?かぐやちゃん」
「アッハイ、なんでござんしょ?」
「"魔術師"ってぇ、なぁ~にぃ?」
ねっとりと、絡み付いて締め付けるように、ゆったりとした口調で話す友奈。相当怒っていらっしゃりますよこれはァ!?
もうダメだぁ・・・・おしまいだぁ・・・・(野菜王子感)
「・・・・・そ、そういえば私も、よく知らないワね!ねぇ煌月。せっかくだし、ちょっと説明して頂戴!」
あまりの空気の重さに耐えかねたのか、風さんが助け船を出してくれた!ありがとう風さん!!
「よ・・・・よーし、そこまで言うなら仕方ない!俺チャン様の魔術講座を始めちゃるぜ~!」
―――――――――――†――――――――――
「────以上が、魔術師の役割と魔術の基本だ。なんか質問あるかー?」
「はい、先生!」ビシッ
「はい、風さん」
「よくわかりませんでしたー!」
なんでやねん。
「要するに、自然界に対して行えるハッキング行為、と言ったところかしら?」
「あー、なるほど・・・・・確かにそうかもな。流石だぜ東郷」
俺の雑説明を聞いて、それだけ噛み砕いて説明できるとは・・・・流石だぜ、東郷・・・・!
「自作したプログラムに基づいて、魔力を用いて自然現象をハッキングする────うん。確かにこの方が分かりやすいな」
「ふーん・・・・」
「ふーんって、分かったのかよ?」
「・・・・・・・・・・まあ、一応?」
あ、ダメですねこれは。
「あの!」
「はい、樹!」
「ちょっと!?私を無視しないでよ!!」
ならちゃんと理解してよ・・・・
風さんは無視して樹の質問を聞く。
「あの、魔術って・・・・私にも使えたりしますか?」
「うーん・・・・・・難しい質問だな・・・・」
魔術師にも、勇者同様に適性があるらしい。
俺の場合、偶然にも適性がある事が判明したから良いものの、適性検査のやり方なんて、俺は知らない。
その旨を伝えると、樹は少ししょんぼりしたように返事をする。
「そう・・・・ですか・・・・」
──────ふーむ
「適性検査じゃねーけど、それっぽいことならできるな」
「え?」
「魔術の基本を学ぶ上で最も重要な要素に、"魔力を練る"って要素があるンだがな?それのレッスンをやろうぜ。みんなでさ」
―――――――――――†――――――――――
やることは簡単だ。
掌の上に、石でも何でもいいから、小さく丸い物体を置く。後はそれに向かって『動け』と念じるのみ。
「ねぇ、かぐやちゃん。こんなんで本当に魔法が使えるのー?」
「魔術が使えるかどうかは別。コイツぁその前準備の段階なんだから」
しかし懐かしいなぁ。
この石ころが動かせるようになるまで、杏子さんにかーなーり、しごかれたんだよなぁ・・・・・(しみじみ)
ま、動かせるようになってからは、トントン拍子であらゆる事ができるようになったがね!!
その証拠にほぉ~ら♪
俺が少し念じただけで石ころはぎゅるんぎゅるん回転しまくってるぜ!
「うわっ・・・凄・・・・逆に引くワ・・・・・」
「こんなん序の口だぞ?魔術師は魔術を使ってナンボなんだからな」
石ころを回している手とは反対の手を広げ、指先に意識を集中する。
「現代の魔術は、風水が元になっているそうだ。だから、扱える魔術の属性も五行に基づいているんさ」
そう言い、初級魔術の『コモン・ボール』を発現させる。
「木・火・土・金・水。『全属性を同時に扱えるようになってからが一人前だ』ーって言われて、めっさスパルタされたなぁ・・・・・」
親指から順に、風・火・雷・金属・水の小さな塊が指先に出現した。
これが『コモン・ボール』。威力はピストル程度の初級魔術だ。
「・・・・・・木って言うのに、どうして風なの?」
「お、良いとこ気付いたな東郷」
それよりお前の石、なんで盆栽みたいになってんの?
「これはまあ、ちょっと・・・・・」
「ふーん・・・・まあ、良いか。どういうワケか、俺は木と土の属性魔術を使おうとすると、風と雷に変質しちまうんだ。俺の魔術の先生曰く、『風と雷の魔力変換資質がある』とかなんとか・・・・」
「へんかんししつ?」
きょとんとする友奈にも分かりやすく説明する。つっても、杏子さんからの受け売りだけどな。
「なんでも、『ある属性魔術を発現させた際に、別の属性に変質して発現する特異体質』・・・・らしい」
「へぇ・・・・要は、煌月が特別ってワケね」
「そんなとこ」
と、その時最終下校時刻を告げるチャイムが鳴り響いた。
「あら、もうこんな時間」
「んじゃ、今日はもうお開きってコトで・・・・」
そんなこんなで、今日も一日無事に乗り切ることが────
「かぐやちゃん。
「────────────はい」
できなかったようです。とほほ・・・・・
-魔力変換資質について-
体内を循環している魔力が体外の魔力と反応を起こし、指定した属性魔術の属性を変質させてしまう体質のこと。
基本的には一つだが、輝夜は風と雷の二つを持つ。
余談だが、資質を二つ持つ者を"ダブルエレメントホルダー"と呼ぶ者もいる。