翌日───
今日は学校のプール解禁日。が、水泳の授業は女子と男子で別々なのだ。
そんな訳で、女子がプールできゃっきゃうふふしている間、俺達男衆は短距離走のタイム測定となっている。
「はぁ~~あ・・・・・今頃、女子はプールできゃっきゃうふふしてるんだろうなぁ~~」
「似たような事言うんじゃねーよ」
隣で順番を待つ半田の愚痴に付き合いつつ、測定結果を記録していく。
「ほら、お前の番だぞ」
「おっ!んじゃ、いっちょ頑張って良いとこ見せてやろうかな!」
「見せる相手もいないのにか?」
「悲しいこというなよ・・・・」
ちなみに、俺が記録係をやっている理由は、義足によって正確なタイムが測れないからだ。
今日ほど義足で良かったと感謝した日は無い。
・・・・・・・まぁ、水泳の授業も受けられないんだがな。そればっかりは仕方ない。
「ふっふっふっ・・・・」
「ふっふっふー・・・・」
「ひっひっふー・・・・」
と、その時。背後から気持ち悪い笑い声が聞こえてきた。しかも三つ。
呆れつつ振り返れば、そこには三人の男子。
こいつらは通称"三バカ"。右から順に"
「・・・・・んだよ。気持ち悪ぃ声して。あと、最後のはラマーズ法じゃねーか」
「ふふふ・・・・調子に乗っていられるのも今のうちだ・・・・」
「ふふふー・・・・今日こそ、僕らの目的を果たす!」
「ひっひっふー・・・・・ひっひっふー・・・・・」
目的ってなんだよ・・・・・あと沙仁の奴はなんでラマーズ法をやっている。
と、そうこうしている内に、予鈴が鳴り響く。
「ふっふっふっ・・・・よし!授業終了のチャイムだ!」
「ふっふっふー・・・・さあ、今年こそ・・・いや!今日こそ僕らの悲願を!!」
「ひっひっふー・・・・・!ひっひっふー・・・・・!!」
それだけ言うと、三バカは走り去っていった。
「・・・・・あの方向、プールの更衣室か。なるほどなるほど」
「─────良いのかよ?放っといて」
「どーせ近付けもしねーよ」
「あ?」
記録簿を担当の先生に渡して、俺は教室へと戻った。
―――――――――――†――――――――――
そして放課後───
「仕方ないから情報交換と共有よ!あんた達が不甲斐ないから来てやってんだからね!?」
そう言って、昨日同様、部室の黒板の前に立つ夏凜。
昨日と違うところがあるとするならそれは・・・
「煮干し?」
煮干しの袋を抱えて、バリバリ食べてるところか。
つーか、こいつもか。春さんも煮干し喰ってたな、そういえば・・・
「なによ。ビタミン!ミネラル!カルシウム!タウリン!BTA!DHA!煮干しは完全食よ!!」
同じ事を春さんも言ってたなぁ。
やっぱこいつら兄妹だわ・・・・
「あげないわよ」
「いや別にいらないわよ」
「じゃあ、このぼた餅と交換しましょう?」
「はぁ?何よそれ」
「さっき家庭科の授業で作ったの」
「東郷さんはお菓子作りの天才なんだよー♪」
「いらないわよ!」
─閑話休題─
「これまでバーテックスの襲来は周期的なものと考えられてきたけど、相当乱れている。これは、異常事態よ。帳尻を合わせるために、今後は相当な混戦が予想されるわ」
「確かに、一ヶ月前も三体来ていたな」
あのときは・・・・てか、あのときもなんだが、俺、バーテックス戦だと全く活躍して無いなぁ・・・・・
「あ、そうだ。あのとき邪魔してきたあの仮面女、アイツは結局何者なんだ?」
「話なら聞いてるわ。彼女の名前は"鉛"。あんたと同じで鏑矢所属の魔術師・・・・らしいわ」
「────やっぱ、そうなんだな」
「ただ、それ以外の経歴はわからなかったみたいよ」
「え?なんで?」
友奈の疑問は尤もだ。
「鏑矢は、大赦の所属っつー扱いではあるが、そもそもあそこは私設組織なんだよ」
「しせつ・・・?」
「よーするに、個人が所有してる組織ってワケ」
頭にハテナマークを浮かべる友奈。
しゃーない、無視だ無視。
「確かに、鏑矢は赤嶺家の所有だけど、元を辿れば大赦の組織なのよね・・・・まあ、そんな事は良いわ」
「良いのかよ」
「鉛が何を考えて行動しているのか、それは分からないけど、今後も現れると見て間違いないわ。よくよく注意する事ね。ま、私は別に何が来ても対処できるけど、あんたたちは気を付けなさい。命を落とすかもしれないわよ!他にも・・・」
そう言って夏凜は、黒板に何かを書き足す。
これは・・・・紋様か?
「戦闘経験を貯めることで、勇者はより強くなれる、これを『満開』と呼ぶわ」
「満開・・・・!」
「あれ?どこかで聞いた事が・・・・?」
満開
それは、一昨日テツ坊から東郷が預かった紙に書かれていた単語。
「満開を繰り返す事で、勇者は更にパワーアップする。これが、現在の勇者システムよ!」
「──────三好さんは、既に満開経験済み何ですか?」
東郷の問いに、夏凜は顔を背けて「まだだけど・・・」と答えた。
「・・・・・強すぎる力には、大体反動があるのが相場だ。んなモンに頼らずにいられるなら、そうするべきだと俺は思うね」
「は・・・・・?」
俺の一言に疑問符を浮かべる夏凜が何かを言おうとした。それよりも先に、友奈が口を開いた。
「あ!じゃあ私たちも朝練やろうよ!運動部みたいに!」
「良いですね!やりましょう!」
「樹、あんた朝起きられないでしょー」
「あ・・・・」
図星を突かれる樹。そんな彼女を友奈が笑う。
「友奈ちゃんも、朝苦手だったよねー」
「う・・・・」
そんな友奈も、東郷に図星を突かれる。
やれやれ、まったく・・・・友奈のやつ、空気読んで和ませにかかったな。
「・・・・・・・・なんなのよ、こいつら」
そんな俺達を見て、夏凜は呆れていた。
そこへ再び、友奈が声をかける
「『なせば大抵なんとかなる』!」
「はぁ?なによそれ」
「勇者部五ヶ条だよっ♪」
そう言って、黒板の右上に貼られた五つの条文の書かれた紙を指す。
・勇者部五ヶ条・
一つ 挨拶はきちんと
一つ なるべくあきらめない
一つ 良く寝て、良く食べる
一つ 悩んだら相談
一つ なせば大抵なんとかなる
「なるべく、とか、大抵、とか・・・・あんたたちらしい曖昧な文章ね・・・私の中で諦めがついたわ・・・」
「あたしたちは・・・・・・アレよ!現場主義ってやつ!」
「それ、今考えたでしょ」
「あーハイハイ。考え過ぎると将来ハゲるわよ」
「ハゲないわよっ!!」
うーん、このツッコミの切れよ・・・・!
「さて、とりあえずこの話はここでおしまい!次の議題、行くわよー」
風さんが仕切って、樹がプリントを配る。
「はーい、そんな訳で次の日曜、子供会でレクリエーションを行いまーす!」
「具体的には?何するか決めてるんだろ?」
「ええっと、まずは折り紙教室で、次は一緒に絵を描いたり・・・」
「うわぁ!楽しそう~~♪」
「ふっ・・・・俺の画力が唸る良いレクリエーションだな・・・・(キリッ」
「自分で言うんか!」
「夏凜にはそうねー・・・・暴れ足りない子のドッジボールの的にでもなって貰おうかしら~~?」
「はぁ!?ならないわよ!ていうかちょっと待って、私もなの!?」
夏凜が反抗しようとするが、それよりも先に風さんが一枚の紙を夏凜に見せつける。あれは・・・・入部届けじゃん。
「昨日入部したでしょ?」
「あ・・・・あれは形式上、仕方なく・・・・」
「んだよ、入部届け出してンなら、活動への参加は義務だぜ?」
「煌月の言うとおり!ここにいる以上、部の方針に従ってもらうからねー」
「だからっ!それも形式上───」
更に反論を重ねようとするが、それを遮って友奈が問いかける。
「夏凜ちゃん、日曜日用事あるの?」
「べ・・・別にない・・・・」
「だったら、親睦会も含めてやろうよ♪」
「わ・・・私はやるなんて一言も・・・・!」
「嫌・・・・?」
悲し気な顔で訪ねる友奈に、夏凜はしどろもどろである。
うんうん、判るなぁその気持ち。友奈にあんな顔されたら断るに断れないよなぁ。
「し・・・・・仕方ないわね・・・・その日はちょうど空いてるし、行ってやらなくもないわよ・・・・」
「やったぁ♪」
夏凜からの肯定の言葉に、にぱっと華やかな笑顔を咲かせる友奈。
「・・・・・緊張感の無い連中」
なんて言ってるが、満更でも無い表情の夏凜ちゃんなのでしたー(笑)
「──────フン!」
此方のニヤケ面に気付いたようで、夏凜は俺の向こう脛を蹴飛ばして荷物をまとめて出ていってしまった。
ピシャッと閉じられた扉の向こうで「アイツ、足に何着けてんのよ・・・・」という呻き声が聞こえてきたが、彼女の名誉の為にも黙っておくとしよう。
「いやあ・・・・高飛車のツンデレは最高だな♪」
「─────うわぁ」
樹にドン引きされた気がするが、気にしたら負けだと思うことにする。
輝夜の義手、義足に使用している金属は、普通の物よりも軽くて頑丈な特別な物。鍛えているとはいえ、JCのキックごときでは傷一つ付かないのだ!(笑)