ミーティングが終わり"嵐ヶ丘"へ向かう途中、浜辺で木刀を振るう夏凜の姿を見つけた。
「精が出るねー」
「──────煌月輝夜。こんなところで何してるの?」
「これからバイトなんだよ」
「ふぅん・・・・そうだ、今、時間良いかしら?」
「なんだい、改まって・・・・はっ!まさか、愛の告白!?」
「んなわけあるかぁ!!」
「ですよね~(笑)あと思い付くのは・・・・あ、今度のレクリエーションの話か」
「それも違う!!」
「えー?だとすると・・・・・ああ、プールと更衣室の周りに設置した、覗き撃退トラップについてか!」
「それも違────待って何それ私知らない」
違うのか・・・・じゃあ、なんだ?他に思い当たる節は──────はっ!まさか"例の計画"がもうバレた!?
「─────いや、それは無いな。決めたのついさっきだし」
「は?」
「何でも無ェよ・・・んで、結局何の用事さ」
「────────腑に落ちないけど、まあいいわ」
夏凜はジト目で一睨みすると、咳払いをして問いかける。
「あんた、自分の"魔装神衣"についてはどれくらい知ってる?」
「まそーかむい?なんだそりゃ?」
「あんたの端末に登録されている武装のこと!!こんな奴が、神樹様に選ばれた魔術師だなんて・・・・!」
「へー、そんな名前なのか・・・・」
アプリを起動して確認。
ふむふむ、個体名称は『ミストルティン』と・・・
死なない神様をぶっ殺した冥界の木の枝の名前と同じじゃん、超カッケー。
「神サマだって殺せそうな名前してんなぁ~」
「不謹慎なこと言わない!」
「ジョークだよ、ジョーク」
「ぐぬぬぬ・・・・・!!」
あー楽しい♪
なんだろうね、この、"打てば響く"って表現であってるのか?友奈たちと一緒にいるときとはまた違った楽しさがあるね♪
さて、そろそろ夏凜の堪忍袋が切れそうだから、真面目に聞いてあげましょうかね。
「で?俺の『ミストルティン』が何だって?」
「だからっ!扱いきれているのかって話!!─────ま、名前も知らないようじゃ、たかが知れてるけど」
「ほう、言うじゃないか。そういうお前さんこそ、勇者の力に随分と御執心だな」
安い挑発だが、ケンカっ早い俺はあっさりと乗ってしまう。
「・・・・・なんですって!?」
「他の連中との交流も無視して、こんな場所で訓練に明け暮れて・・・・"勇者である事"がそんなに大事なのかよ」
「─────────だったら、何?」
どうやら俺の一言は、夏凜の地雷を踏み抜いたらしい。しかし、もう時既に遅し。
「特別だか何だか知らねーけどよォ・・・・開発に二年も掛かったモンが、なんでお前のだけ一月も遅れた?調整が必要だとか言っていたが、俺達のシステムは調整とか受けて無ェんだぞ?怪しいと思わねえの?なぁ?」
「──────────さい」
「ンなモンにすがって、必死こいて努力して、あんたはいったい何を求める?まっ!どーせ、ロクなモンじゃないんだろーけどな」
「うるさい!!!」
夏凜の叫びが聞こえた直後、木刀が飛んで来たので左手で掴む。
「──────で?」
「勝負しなさい」
「なるほど、実力で黙らせようって魂胆」
「それ、貸してあげる。無手の相手に勝っても嬉しくないもの」
「言ってくれる・・・・なら尚更、
木刀を投げ返すと、夏凜の表情は更に険しくなる。
「─────怪我じゃ済まないわよ?」
「やってみろよ。出来るものなら」
「上っ等!!吠え面かかせてやる!!!」
「コッチのセリフだボケァ!!!!!!」
売り言葉に買い言葉。
俺達の"交流"はこうして、幕を開けた。
・・・・・夏凜ちゃん、こんなキャラだっけ?(唐突)