契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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Kの襲来、Hの真実 -夏凜と輝夜 その③-

輝夜と共に喫茶店"嵐ヶ丘"へと入店した途端、輝夜の顔面に向かって何かが飛んできた。

 

「んごォ!?」

「うわぁ!?いきなり何!?」

「くぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!遅いぞ!輝夜ァ!!!」

 

 

店内から叫び声が聞こえてきたので見てみれば、そこには私と同じか少し高いくらいの身長のウェイター服の女性?(男性にも見える)が、仁王立ちしていた。

 

「痛って~~なぁ!!!物を投げるンじゃねーよ!!マルさん!!!」

「るっせい!!!お前が遅刻なんかするからだろーが!!!」

「メールで連絡したろーが!!!『用事でちょっと遅れる』って!!!」

「ンなもん知るくわぁァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

マルさんと呼ばれた女性(たぶん)が、追撃の飛び蹴りを輝夜に食らわせる。

 

「理不尽っ!!!!!!」

 

そんな断末魔を残して、輝夜は店の外へと弾き飛ばされてしまった。なんなの、この店・・・・・(汗)

 

「あはは・・・・ごめんなさいね?いきなりこんな歓迎方法で」

 

後ろからかけられた突然の声に振り向けば、そこ居たのは、背の高いモデル体型の女性。

 

「輝夜くんが連れてきたってことは、新しいお友達だよね?私は伊予島杏子。で、あっちのカッコカワイイのが、土居円吒」

「あ、はじめまして。私は三好夏凜で──────え?伊予島?土居?もしかして、()()?」

「あはは・・・・うん、その"伊予島"と"土居"だよ」

 

目の前の女性が、苦笑いして頬をかく。

まさか、あの『六花』の内の二家の人が居るなんて・・・・

 

「なんだか騒がしいね、輝夜くん、来たのかい?」

 

その時、カウンターの奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「─────────────え?」

「あ・・・・・夏凜」

 

なんで・・・・・こんなところに・・・・・?

 

「兄・・・貴・・・・・?」

 

そこには、六年間も音信不通だった兄貴、三好春信が居た。

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・・えっと、久しぶり。元気にしてたかい?」

「────────────」

「・・・・・・・・・・・・・ええっと、父さんと母さんは、どうしてる?」

「────────────」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・んーと・・・・・えーと・・・・・・・・うぅ・・・・」

「────────────」

 

奥のテーブル席に案内された私は、黙ってコーヒーを飲んでいる。あ、ここのコーヒーすごく美味しい・・・

 

「夏凜よォ~~、いい加減で春さん無視すんのやめたらどうだ?」

「あんたは口を挟むな」

 

というかこいつ、知ってて案内したんじゃ・・・・?

でも、まぁ、しょうがないか・・・・・

 

「・・・・・なんで家を出ていったの」

「───────────すまん、言えない」

「っ!」

 

兄貴のその一言に、私が掴みかかろうとしたら・・・・・

 

「あだぁ!?」

「んな・・・・!?」

 

カウンターの方から"足"が飛んできて、兄貴の頭に当たった。見れば、輝夜が自分の右足を外して投げた様子。なんつー事を・・・・・というか義足だったんだ・・・・

 

「おいおい春さんよ・・・・そりゃあんまりじゃねーのか?夏凜は、あんた達に認めてもらう為に頑張ってきたんだぜ?」

「ちょ・・・!?」

「──────────流石だね、夏凜」

「え?」

 

兄貴は、寂しそうに笑っていた。

 

「僕はね、夏凜。頑張る事が苦しくなってしまったんだよ・・・・・」

「兄貴・・・・・・」

「周りからの期待を、重荷に感じたってワケじゃない。ただ・・・・・・」

「ただ・・・・・・なによ」

 

兄貴は、片足でここまでやって来た輝夜に右足を渡しつつ、昔話を始めた。

 

「─────僕には、好きな人が居たんだ」

「へぇ・・・・・・・え?"居た"?」

「名前は藤森優芽、ここにいる杏子ちゃんとマルと僕の四人で昔、チームを組んでいたんだ。輝夜くんのおばあさんをリーダーにしてね」

「・・・・・・その話ならばっちゃから聞いたことあるな。たしかチーム名は─────」

「"ワザリングハイツ"。この喫茶店の名前は、そこから取ったんだ」

 

チーム"ワザリングハイツ"は、旧暦時代の技術を復活させて、後世に伝えるべく発足した部隊だと、兄貴は語ってくれた。

なるほど、さっき輝夜が『誘拐された』とか言ってたけど、こいつ、良いとこのぼんぼんだったのね・・・・本人、それらしい部分全く無いけど。

 

「六年前、僕達はある施設の調査をしていた。そこで見つけたのが────────輝夜くん、君だ」

「・・・・・・・こりゃまた、以外な関係が浮上したモンだ」

 

兄貴の暴露に苦笑いする輝夜。

 

 

 

 

 

「でも、その数日後─────優芽が死んだ」

 

 

 

 

 

「「────────え?」」

 

あまりにも、あまりにも衝撃的な告白に、私も輝夜も言葉を失う。

 

「僕には、何もできなかった。知らない間に好きだった人が死んで────────だから僕は、全てを投げ出した」

「────────────」

 

そんな・・・・・そんな事があったなんて・・・・

 

「───────でも、春さんは俺を助けてくれたな」

「・・・・・・・・・・あれは、たまたまだよ。それに、目の前で知り合いが死にかけてたら、助けない訳にもいかないよ」

 

兄貴らしい持論。腐っても兄貴は兄貴だったってワケね・・・・

 

「───────兄貴が、家を出ていった理由は、わかった。ここにいる理由も」

「・・・・・・・」

「だから、次からは私に話しなさい!私が助けてあげるから!!」

「・・・・・・・え?」

 

兄貴はきょとんとしている。

 

「昔の私ならいざ知らず、今なら・・・・この完成型勇者たる私なら!!きっと兄貴を─────」

「勇・・・者・・・・・?"勇者"、だって・・・・!?」

 

突如として、兄貴の顔が険しくなる。

 

「ええ、そう!私、勇者になったの!!兄貴も大赦にいたから知ってるでしょ?私、頑張ったんだから」

「───────────なんてことだ」

「兄貴・・・・?」

「・・・・・・今日は、もう帰ってくれ」

「え?兄貴!?」

 

そのまま兄貴は、店の奥へと去っていった。

なんなのよ・・・・・・・

 

「なんでよ・・・・・・兄貴・・・・・」

 

 


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