「──────あの態度は、流石に酷くねーか?」
春さんに突っぱねられ、呆けている夏凜にコーヒーのおかわりを差し出した俺は、慌てて春さんの後を追っかけて工房まで来た。
「・・・・・・・・・・・」
「だんまりかい。あと、何を弄ってん?」
春さんは人型の何かを修理していた。あれは・・・・確か、この前見たな・・・・なんて言ったっけ?パワードスーツとかなんとか・・・・・
「・・・・・・・・・・・」
「まァた、だんまり・・・・夏凜はなぁ、懸命に努力して勇者になったんだぞ?なんか言ってやったらどうなのさ」
「─────────そんなの、僕は望んでない」
「なら尚の事、言ってやれよ。『対話による相互理解こそが、家内安定への第一歩』だぜ?」
「・・・・・・・・・・ああ、先生の言葉か」
「こんなカッコいい台詞、ばっちゃくらいしか言わねーだろ」
不敵に笑ってみせると、春さんは苦笑を返してくれた。
「ま、夏凜とは後でじっくり話し合ってもらうとして・・・・・何してんの?」
「"ジェフティ"の整備だよ」
「ジェフ・・・・・・?」
「旧暦の時代にあった企業"へリオポリス"が造り上げたパワードスーツ『Ennead Number's』の一機だよ」
「現存するNumber'sは三機って言われててね・・・・ある人から譲り受けたのがこの機体なんだよ」
「ある人?」
「僕が大赦に所属していた頃、お世話になった人さ」
「ばっちゃじゃなくて?」
「先生とは別の人だねえ」
ふむ・・・・誰だろう・・・・?
まあ多分、俺の知らない人なんだろうけど。
「ちなみに、君の左腕はこの機体の武装を流用して造った物だよ」
「え!?マジで!?」
武装付きとはまた・・・・・物騒なマシンだこと。
「・・・・・・着てみたい?」
「良いのか?」
「そろそろ、試着して性能を試してみたかったからね。輝夜くんなら、良い被験体になってくれるよ」
「それ絶対誉めてねーよ」
なんて言いつつも、喜んで被験体を努めさせてもらう。
なかなか楽しかった。
古い技術も、バカにしたモンじゃないね!
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それから数日後
特に何事も無く、レクリエーションの日がやってきた。
やってきた・・・・のだが、
「夏凜ったら遅いわね・・・・・」
「迷子になっちゃった・・・・とかかなあ?」
夏凜が来ない。
こういう時、だいたい十分前くらいから来ていそうな奴なのに・・・・
樹の言うとおり迷子とかか?
「電話は?」
「今からかけるところだよ」
友奈が端末を操作し、夏凜に電話をかける。
しばらくして・・・・・
「───────あ」
「どうしたの?」
「切れちゃった」
「は?」
「なんか、向こうから切ったみたいな感じで・・・・」
「もっかいかけ直してみろよ」
「うん」
・・・・・・・・・・
「───────今度は繋がらないよ」
「・・・・・・なんかあったのかも」
「えぇ!?」
やれやれ・・・・仕方ねぇな。
「俺が様子を見てくる。お前らはそっちを頼む」
「分かった。夏凜をよろしくね、煌月」