契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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Kの襲来、Hの真実 -夏凜と輝夜 その⑤-

兄貴に突っぱねられてから、数日経った。

今日は幼稚園でお遊戯会をやる日。

私はいつも通り勇者部の部室に来ていた。

こんなこと、勇者のやることじゃない。

でも、今は、そんなことでも良いから、とにかく何かをしていたかった。

兄貴のことを、なるべく、考えないように・・・

 

「来てやったわよ」

 

部室の扉を開ける。中には誰もいない。

ちょっと早く来すぎた?

仕方ないから待つことにした。

 

 

 

 

 

三十分後──

 

 

 

 

 

「遅い・・・・」

 

十時集合だったんじゃなかったの・・・・?

全く、弛んでる・・・・

 

 

 

 

 

更に三十分後──

 

 

 

 

 

いくらなんでも遅すぎる。

 

「まさか・・・」

 

渡された用紙を確認する。そこには──

 

「『現地集合』・・・・しまった。私が間違えた・・・・」

 

こういう時は、ちゃんと謝らなきゃ。

ああ、でも、なんて言おうか?

正直に話す?

どうしよう・・・・どうしたら・・・・

 

と、その時、手にしたスマホが鳴動する。

 

「うわぁ!?この番号・・・・結城友奈!?」

 

向こうからかけてきた!

どうしよう!?とりあえず、出て・・・・

 

 

 

 

 

 

「あ・・・」

 

 

 

間違えた。出ようと思っていたのに、切っちゃった。

どうしよう。

かけ直す?なんて言って?

こういう時、兄貴なら─────

 

 

 

 

 

そこまで考えて、ふと、まるで冷や水でも浴びたみたいに、頭が冷静になった。

 

「・・・・・なにやってんだろ・・・・私」

 

そうだ。私は勇者として、バーテックスと戦うためにここにいるんだ。

幼稚園でお遊戯会をやるためでも、兄貴のことに悩まされたりするためでもない!

だから・・・・・良いんだ。

 

「・・・・・・・・・帰ろ」

 

部室を出て、階段を駆け降りる。

今はなんとなく、ここに居たくない。直ぐにでも帰って、訓練したい気分だった。

だから────

 

「ぐえっ」

「あっ!?ご・・・・ごめんなさ────────あ」

 

踊場で誰かとぶつかってしまった。しかも、その相手が────

 

「痛って~~・・・・・む!夏凜じゃん!!ンだよ、やっぱ部室に居たのか」

「───────輝夜」

 

―――――――――――†――――――――――

 

「ったく・・・・なァにやってンだよ、集合場所間違えるとか」

「────────ごめん」

「・・・・・・・・・はぁ、とにかく行くぞ。もうすぐ時間だが、急げば間に合うだろ」

「え・・・・あ・・・・ちょ」

 

輝夜が私の手を取って走り出す。

階段を降り、下駄箱の前まで走ったところで、私は無意識の内に輝夜の手を振り払っていた。

 

「?どーした?」

「あ、いや・・・・・えっと・・・・・」

 

正直、自分でもなんでこんな事をしたのか、分からない。

 

 

私は、私が何をしたいのか、分からない・・・・

 

 

「───────────ふぅ、やれやれ」

 

思い悩む私を余所に、輝夜は端末を取り出して何処かへ電話をかけていた。

 

「──────────────あ、風さん。俺。煌月」

 

相手はどうやら犬吠埼風のようだ。そりゃ当然か・・・一応アイツがこの勇者部の部長だし・・・・

 

「・・・・・・うん。夏凜だろ?実はさぁ───」

 

きっとこいつは全部しゃべる。私が間違えたことも、結城友奈からの電話を間違えて切ってしまったことも。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・」

 

 

 

 

 

え・・・・・?

 

「うん。そっちはこれから。その場合はもう俺ら合流できないと思うから、そん時はよろしく。んじゃ!」

 

 

「・・・・・・・・なんで?」

「なにが?」

「なにが・・・・・って・・・・・」

 

輝夜の、黒い瞳に見つめられ、私は何も言えなくなる。

どうしてだろう・・・・。こいつに見つめられると、なんだか、心の中まで、見透かされているような気分になる。

しかもそれが、嫌じゃないだなんて・・・・・本当、どうかしている・・・・・・

 

「行くぞ。風さんに、お前ン家行くって言っちまったからな」

「・・・・・・・・うん」

 

反抗する気力も無くなって、私は大人しく、輝夜と共に帰宅した。

 

 

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