契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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KとH、対話の時 -その後-

俺が工房へ降りてきた時には、既に夏凜と春さんは口喧嘩を繰り広げている最中であった。と思っていたらいきなり夏凜が春さんへ頭突きをかまし、急に泣き出し、それを見た春さんは夏凜を抱き締めるのだった。

 

・・・・・・・うん。なんだかよく分からないが、とにかくヨシッ!!

さて、これにて一件落着ってなワケで、俺はここらでお暇させて──────

 

「・・・・・・・・あんた、そこでなにしてんのよ」

 

頂く前にバレた。マジかよ(汗)

 

―――――――――――†――――――――――

 

「・・・・・・うん、まぁ、とにかく二人が仲直りしてくれて良かったよ」

「─────────ま、一応、あんたにもお礼は言っとくわ・・・・・ありがと、私をここに連れて来てくれて」

 

それは何よりなんだが、何故俺はボッコボコにタコ殴りされた挙げ句、簀巻きにされて床に転がされているのだ?

 

「あははは・・・・まあ、あれだね。タイミングが、悪かったよね・・・・・」

「笑い事じゃねーですよ、春さんや」

 

よいしょっと

とりあえず起き上がると、左手親指の付け根に内蔵されているナイフでロープを切断し脱出。

ふぅ・・・・これでヨシ!

 

「・・・・・・・・・・兄貴、あんたなんてモン造ったのよ」

「いや~~・・・・・ちょっと盛り過ぎちゃった♪」

「『盛り過ぎちゃった♪』じゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!中学生になんて危険な物持たせてんのよあんたは!!!!!!」

「ま・・・まあまあ落ち着いて」

「ていうか、この前はスルーしちゃったけど!輝夜は中学生でしょ!?なんでアルバイトなんかしてるのよ!?!?」

「そりゃまぁ・・・・義手と義足代賄うため?」

「なんでそこで疑問系!?」

「ぶっちゃけ俺、春さんに誘われたからやってるだけだし」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・?」

「こ・・・・怖いよ夏凜ちゃ~~ん。もっとほら、スマイルスマイル♪ね?」

 

夏凜の怒涛のツッコミ技が冴え渡る!これには春さんも苦笑い。

 

「・・・・・・・・・・まあ、良いわ。色々助けてくれたし、見なかった事にしてあげる」

「多分、学校側も知ってて黙ってンだろうけどなー」

「うっさいわ!」

 

※後日、マッキーに確認した所、『勇者部の活動として許可されている』とのこと。つまりはボランティアかぁ・・・・なるほど。それで良いのか、教育委員会よ・・・・・?

 

「・・・・・んで?あんたはなんでここに居る訳?」

「シフトだから」

「あれ?輝夜くんは今日、休みじゃなかったっけ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

春さんェ・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・うん、まぁ、あれだ。そのー、なんと言うか、な・・・・」

「夏凜が心配だったとか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「え、そう・・・・なの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだよそうですよそうなんですよーっだ!!!」

「急にキレた!?」

「・・・・・・なんか、ごめんね?」

 

ちくしょーめぇ・・・・!!

 

「・・・・・・・・・ま、本題は別にあるんだけどな」

「別?」

「ほい、ハッピーバースデー、夏凜」

 

カバンの中から取り出したのは、ラッピングされた小さな箱。それを夏凜に手渡す。

 

「・・・・・・誕生日プレゼント?」

「本当は昨日渡したかったンだがなぁ・・・・造り変えるのに手間取って・・・・・」

「は?()()()()()?」

 

夏凜は頭に疑問符を浮かべつつ、俺の渡した箱を開けた。

 

「これ・・・・・リボン?」

「春さんのチョイスだ。んで、俺はそこにワンポイント追加した」

「ワンポイント・・・・?あ、これ・・・・・ツツジの・・・・・?」

 

持ち上げられたリボンの先端には、ツツジの花を模したチャームが結われていた。

 

「・・・・・・鈴?」

「おう。その辺にあった鈴から錬成してみた」

「へぇ・・・・・・・・・え?錬成?」

 

リボンを揺らし、チリンチリン♪と音を鳴らしながら、夏凜は問う。

 

「杏子さんの蔵書にさ、『錬金術の本』があってだね・・・・ちょっと試しに造ってみたんよ」

「『錬金術の本』とか・・・・・胡散臭いわね・・・」

「だが本物だぞ?でなけりゃ、造れなかったからな」

「──────────それもそうね」

 

無理矢理納得したらしい夏凜は、今着けているリボンをほどき、渡された新しいリボンを身に着けた。

 

「───────うん。似合ってるよ、夏凜」

「ほう・・・・中々良いじゃねーか。流石、春さんのセンスだ」

「ん・・・・・そう///」

 

夏凜の奴、照れてやんの~~♪

 

「はっはっは~~可愛い奴め~♪」

「~~~~~~~~っ!!!//////」

 

顔を真っ赤にして、夏凜はそっぽ向いてしまった。

チリン♪という鈴の音と、俺と春さんの笑い声が、地下室に響き渡るのだった。

 

 

―――――――――――†――――――――――

 

 

「僕からもお礼を言わせてくれ。僕と夏凜を会わせてくれた事、感謝しているよ」

「・・・・・・俺はただ、余計なお節介を焼いただけさね」

 

要件は済んだので帰宅しようと店を出たところで、春さんが追いかけてきて、呼び止められた。

態々お礼の為に店から出て来たのか・・・・・以前は何があっても店から出ようともしなかったのに。

 

「・・・・・・・もう、情けない兄ではいられないからね。とりあえずは、外出できるようにならないと・・・・・ね?」

「良い心掛けじゃないか」

「─────────────もう一つ、良いかな?」

 

・・・・・・?

なんだ?急に改まって・・・・・

 

「僕は君に・・・・・謝らないといいけない事が・・・・・・っ!」

「じゃあね、兄貴、輝夜。また明日」

「おう夏凜。またなー」

 

春さんが何か言おうとした所に、夏凜が通りすがって行った。

出鼻を挫かれた春さんは、しばらく口をパクパクさせ、そして閉口した。

 

「んで?話ってなんだい?」

「─────────いや、なんでもないよ。呼び止めて、すまない」

「?・・・・・そうかい?んじゃ、俺も帰るな」

「ああ、気をつけて・・・・・」

 

少し寂し気な表情を浮かべる春さんに見送られ、俺も帰宅への徒についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時俺は、春さんが言おうとしていた事を、無理にでも聞いておくべきだったのだ。

そうすれば、あんな悲劇は起きなかったはずだったのに………

 

 


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