契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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Kの訓練、Iのお悩み

実家から帰って来て早々、春さんに頼んでおいた物が届いていたので開封する。

 

「・・・・・これが、ミスリル鋼って奴か」

 

俺の義肢にも使われている特殊な金属『ミスリル鋼』。

天然物は、神樹様の霊脈が通っている場所でのみ採掘可能な希少金属で、そのレア度故に市場には出回っていない。

そんなレアメタルを何故春さんが持っているのか、あまつさえ俺に渡せたのか。

実はこのミスリル鋼、金属を魔力に漬け込むだけで簡単に精製できるのだ。尤も、漬け込む為に必要な魔力量は、かなりの量らしいが・・・・

 

「さて・・・・・春さんの話だと、人工ミスリルは天然物に比べて錬成の耐久度合いが低いって事だけど・・・・」

 

パン!と、音を起てて両手を合わせ、魔力を滾らせる。

作りたい物の形状を頭に思い浮かべ、ミスリル鋼に触れる。

 

バチバチバチッ!!

 

「・・・・・・・・・・失敗、かぁ」

 

馬の形の置物でも造ろうと思っていたのだが、出来上がったのはお彼岸の時に仏壇に飾るナスビ牛(名前なんだっけ?)だった。

 

春さんの書庫から借りた錬金術の本に書かれていた、錬成陣無しの錬金術。もしこれをマスターできたならバーテックスとの戦闘でも利用できると思っていたのだが・・・・

 

「これじゃ、実戦は厳しいだろうな・・・・・」

 

ふと思い立ち、ナスビ牛を再錬成。

 

バチバチバチッ!!

 

今度は上手く出来た。

 

「・・・・・・アイリスの花。花言葉は確か、『吉報』とか、そんな意味合いだっけ」

 

以前、夏凛の誕生日プレゼントを錬成した時同様、花を錬成してみたら、本物顔負けのアイリスがナスビ牛から生えてきた。

 

「とにかくチャレンジあるのみだな」

 

そうして、何度も再錬成を行った。

 

 

眼鏡────失敗

 

茶碗────失敗

 

稲穂────成功

 

仏飯────失敗

 

バラ────成功

 

百合────成功

 

 

そうして、試行錯誤を繰り返す事、およそ五十回。

ミスリル鋼が完全に反応しなくなった時点で、訓練を終了した。

結果として、俺はどうやら植物に関する物ならば錬成可能なようだ。

 

例えば、最後に錬成した笹の葉。見た目こそ只の葉っぱだが、実はこれナイフである。その切れ味は素晴らしく、プラ板を軽く真っ二つにできるほど。

 

今日はもう訓練できないが、次回からは植物形の何かを中心に錬成してみようと思う。

 

「・・・・・やっべ、もうこんな時間じゃん。風呂沸かしてこないとマッキーに怒られる」

 

時間を確認した俺は、ミスリル鋼を窓際に置いて一階へと降りるのだった。

 

―――――――――――†――――――――――

 

翌日、俺が部室に入ると、樹が占いをしていた。

 

「おっ!タロットじゃん。何占ってンだ?」

「あ・・・・・・えっと、今度やる歌のテストなんですけど」

「歌のテスト・・・・・ああ、アレか。曲名忘れたけど、俺達もやったなぁ」

「何々?何の話~?」

 

騒ぎを聞きつけたのか、迷子猫のポスターを作っていた夏凛や、勇者部新聞に貼る写真を吟味していた友奈等、他の連中も集まってきた。

 

「・・・・なぁ、夏凛さんよォ。お前のその絵は・・・・・何だ?鵺か?」

「どう見ても猫でしょうが!?」

「・・・・・・・・・・・・・そうか。まあ、この際どんでも良いんだがな」

「じゃあ何で聞いたのよ!?」

「んで、占い結果は───────────死神やん」

「うぅ・・・(泣)」

 

ワンオラクルで結果は死神ってーと・・・・意味は確か、『破滅』とか『終焉』とか・・・・・・

 

「・・・・・・・・まぁ、アレだ。ドンマイ♪」

「かふっ」

「ちょっ!?かぐやちゃん!?そこは元気付けてあげるところでしょー!?」

「だってよぅ・・・・」

「うーん、もう一度占ってみたら?別の結果が出るかもだし」

 

風さんの助言に従い、もう一度。

 

が、駄目っ!

結果はやはり死神っ!

 

「・・・・・・・・・あ、そうだ。小アルカナも混ぜてツーオラクルでやってみろよ。結果、変わるかもだぜ?」

「煌月先輩・・・・!やってみます!」

 

俺からの助言に従い、カバンから小アルカナのデッキを取り出して再びトライ。

 

 

 

 

 

「─────────────くすん(泣)」

「・・・・・・・・死神と、ソードの十、かぁ(白目)」

「えっと・・・・・どんな意味?」

「簡単に言えば、『壊滅的な終わり』」

「ごふっ(吐血)」

「樹が倒れたーーーーーーーーー!!!!!!」

「ちょっと輝夜!!止め刺してどうすんのよ!?」

 

最早てんやわんやである。

 

「あーもう!わーったよ!俺が占っちゃる!!」

「ホントですか!?」

「あ、復活した」

「魔術の師匠に昔教えてもらったからな、ワンオラクルとツーオラクルくらいならできらぁ!!」

 

そんな訳で、手を清めていざ!

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・なんか、ごめん」

「しくしく・・・・・(さめざめ)」

「まさか同じように二回占って、両方とも同じ結果とは・・・・・」

「えーと、ほら!四枚揃ってフォーカードだよ!これは良い役だよ!」

「死神のフォーカード・・・・・・(泣)」

「うーん・・・・嬉しくは、無いよなぁ・・・・」

「いや・・・・えーと・・・・・(汗)」

「ええい!!作戦会議よ!!!!!!」

 

―――――――――――†――――――――――

 

職員会議から戻ってきたマッキーも参加しての、緊急会議。

議題はズバリ『樹が歌のテストで合格できるようになるには!?』

 

「良い?樹ちゃん。良い歌声には、α波が含まれているのよ」

「そうなんですか!?」

 

おい東郷、なんだその動きは・・・・・怪しい動きを伝授すんじゃない。

 

「うーん・・・・樹さんの歌は、別に下手では無いと思いますけど?」

「そうなのか?風さん」

「そうねえ、お風呂入っているときとか、一人の時だと結構上手なんだけどねぇ」

「そっか!なら、習うより慣れろ!だね♪」

 

どうやら、友奈が何か思い付いたらしい。

さて、それが鬼と出るか蛇と出るか・・・・

 

「鬼も蛇も一緒ですよ、煌月くん」

「ナチュラルに頭ン中見透かしやがってェ・・・・」

 

 




小アルカナの『ソードの十』は、大体『死神』と同じ意味を持ってます。
つまり、フォーカードどころかストレートフラッシュ(爆)

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