なんで間違えて覚えていたのやら・・・・
みんなでカラオケに行った日の翌日。
部室に行くと、机の上に大量の薬瓶が置かれていた。
夏凛がドヤ顔しているから、十中八九夏凛の私物だろう。というか、この中でこんな大量に薬瓶持ってるの、夏凛ぐらいだよな。
「ついにヤク中女が他の連中をシャブ漬けにしようと────!?」
「んな訳あるかぁ!!」
話を聞くと、どうやら樹の為に喉に効果のあるサプリを多種用意したとの事。やっぱシャブ漬けじゃん。
「さあ樹!これを飲みなさい、全種類!!」
「えぇ!?」
「いやいや、無理でしょ」
「流石の夏凛ちゃんでも難しいと思うわ」
「そうだぞー。自分で出来ない事を他人にやらせようとするなよー」
「上等だコラー!!やってやろうじゃないの!!!」
最後の俺の煽りが効いたのか、夏凛がキレて机のサプリ全種類をイッキ飲みしだした。
※彼女は特別な訓練を受けています。絶対に真似しないで下さい。※
最後にオリーブオイルを一気に煽って全制覇達成。いやー、めでたくねぇなあ。
「ぷはぁ・・・・・どうよ!」
と、次の瞬間顔色を青くした夏凛は、口元を押さえて部室から駆け足で出ていったのであった・・・・・
そして、帰還後の一言。
「・・・・・樹はまだビギナーだし、一つか二つくらいで充分よ!」
「ブフォ!!」
この一言に、俺は爆笑の渦に巻き込まれた。あー、お腹痛い!
「輝夜ァァァ!!!!!!」
「オサラバッ!」
キレて襲い掛かってきた夏凛から逃亡する為、窓からダイナミック脱出!ほとぼりが冷めるまで、しばらく逃走した。
んで結局、樹には効果がイマイチだったようで特に何も起こらなかった。
まぁ、当たり前だよなぁ。
―――――――――――†――――――――――
「暇ー、退屈ー」
「だからって入り浸るなよ・・・・」
そして放課後、諸事情で飼えなくなった子猫の受け取り依頼をこなすために、友奈、東郷、夏凛のチームと、犬吠埼姉妹チームに別れて行動している。が、俺は体質───雷の魔力変換資質により、常に帯びている微弱な電磁波の影響───で動物に嫌われてしまうため、一人ハブられることとなった。
なので、暇な俺は"嵐ヶ丘"に来ていた。ちなみに、今日はシフトは入ってないので、完全に客として来ている。
「そんな暇なら勉強しろー、学生」
今日の担当はマルさんだけのようで、杏子さんは見当たらない。春さんは、最近こそ夏凛が来れば出てくるが、基本的には滅多に工房から出ないので論外。
そんなマルさんに、カウンターの上に頭を乗せてぐでーっとしていた俺は、その頭をぺちぺちとお盆で叩かれる。
「だぁって~~・・・・」
「勉強はしといた方が良いぞー・・・本当に」
「急にマジなトーンしてどーしたんスか?」
「いや───────先生にどやされた時のこと、思い出して・・・・・・・」
青い顔をして、ガクガクブルブルと震えだすマルさん。
なるほど、現役教師時代のばっちゃ、そんな怖かったんか・・・・・
「ほら、コーヒーやるから今日はもう帰れ。んでもって勉強しろ」
「へーい・・・・」
仕方ないので、差し出されたコーヒーをイッキ飲みして、今日の所は帰る事にした。
じ・・・・・・っと、こちらを見る、誰かの視線を、背中に感じながら。
―――――――――――†――――――――――
特に何も無いまま、更に翌日。
今日は遂に樹の歌のテストの日。
なのだが、早朝から樹に屋上へ呼び出されたのだった。
「んで?話って?」
「あの・・・・実は」
どうも樹は、姉と違って自分には戦う理由が無い事に悩んでいるようだ。勇者部に入ったのも、風さんに勧められたから。
「私には・・・・何も無い・・・・」
「いやいや、あるでしょ」
「───────────え?」
「今は気付いてないだけさ。何も無いなんて、そんなこたァ無ェよ」
「でも─────」
「なら、なんで勇者部に居続けられるんだい?」
「え?それってどういう・・・・?」
きょとんとする樹の頭を撫でながら、俺は告げた。
「樹。キミが風さんの後ろを、ただ何も考えずに追いかけているだけの人間なら、こんな大変なお役目を背負わされた部活、さっさと辞めてる。でも、キミはまだ続けているだろ?それはつまり、続けたいと思うだけの"何か"がキミの中にあるからさ」
「私の・・・・中に?」
「それがなんなのか、俺にはわからないし、見付けてあげることも出来ない。これは、樹自身が見付けなくちゃならない事だからな」
「────────────」
「そろそろ始業のチャイムが鳴るな・・・・・オラ、お前もさっさと教室に戻りな。今日は歌のテストだろ?」
「あ、そうでした!」
「がんばれよ樹。俺は応援してるぜ。テストも、理由探しも」
「──────────煌月先輩、ありがとうございます!」
ペコリと頭を下げて、樹は去って行った。
―――――――――――†――――――――――
そして、放課後。
俺たちは部室にて、樹の来訪を待っている。
「樹ちゃん、大丈夫かな・・・・」
「大丈夫よ。なんたって私の妹だもの!」
とは言う風さんだが、さっきから作業に集中できていないのが目に見えて明らかだ。
と、その時、件の人物が部室に到着した。
「樹ちゃん。結果は────?」
「─────────────────バッチリでした!」
晴れやかな笑顔と共に告げられた結果に、部室内は歓声に包まれた。
「やったね樹ちゃん!」
「きっと、みんなをカボチャだと思ったのが良かったのね!」
「ふ────ふん!良くやったじゃない!」
「おめでとう。信じてたぜ、樹」
「みなさん────────ありがとうございます!!」
その後、風さんの提案で、樹の歌を聞くこととなった。
先日、カラオケで聞いた時よりも、綺麗で、澄わたっていて、思わず聞き惚れてしまった程の、素敵な歌声だった
―――――――――――†――――――――――
「いやぁ!樹、歌のテストで合格できて、良かったな!」
「そうね────────って、なんで付いてくるのよ!?」
帰り道、今日は夏凛と一緒に帰る。
帰るというか、"嵐ヶ丘"に向かっている。
「なんでって・・・・今日シフトだし」
「・・・・・・あー、そう。じゃ、仕方ないわね」
「そうそう、仕方な~い仕方な~い♪」
「・・・・・・・・・ウソだったらはっ倒すから」
「ウソチガウ、ウソチガウ(棒)」
「絶対嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
なんてふざけあっていた、その時だ。
「あのー・・・・お兄さん達、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・・良ーい?」
俺達の目の前に、突然、五歳くらいの幼女が現れた。
「どうした?迷子か?」
「お家は何処?お父さんかお母さんは?」
「あ、平気だよ。迷子とかじゃなくてね、人をさがしているんだー」
此方の心配を余所に、幼女は質問を投げ掛けてくる。
「あのね・・・・・・"三好春信"って人を、捜しているんだ・・・・知らない、かな・・・・?」
「──────────知らないな」
「えっ?」
「そっかあ・・・・・・そっちのお姉さんは?」
「え・・・・わ、私は・・・・・」
目配せで合図を送る。ここは嘘をついておけ、と。
「・・・・・・・わ、たしも、知らない、わ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そうなんだ」
少し寂しそうに顔を伏せた幼女。
しかし、
「どうしてウソ付くの・・・・・?」
「「っ!?!?」」
突如として幼女から沸き上がった殺気に思わず後退る。
「・・・・・良いよ。それなら、身体に直接聞くから」
意味深なセリフを吐いて、幼女は何かを呼んだ。
「来て、『ヴェルク・セル』!!!」
幼女の呼び声と同時に、上空より飛来したのは、筋骨粒々なツギハギだらけの巨人。
「■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!!!!」
そいつは、声にならない雄叫びを上げて、真っ直ぐにこちらに襲い掛かって来たのだった!