契約者達への鎮魂歌 -Re.birth-   作:渚のグレイズ

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ぐんちゃん・・・・良かった・・・・ちゃんと弔ってもらえて・・・・・ホントに・・・・・・(感涙)


Verk.Cell Impact

閑静な住宅街に響く、鈍重な雄叫びと破砕音。

それら全てが、目の前のツギハギ大男が出しているというのだから、近所迷惑も甚だしいったりゃありゃしない。

 

「・・・・なァんて現実逃避した所で、現状を打開できる訳も無し・・・・っとと!?」

「ボケッとしてんなぁ!!」

 

勇者服を纏った夏凛から叱責の声が上がるが、こんな筋肉モリモリマッチョマンの変態相手に、どーしろっつーのさ・・・・

 

「・・・・・思い出した」

「お、何か打開策あるのか?」

 

大男の攻撃を寸での処でかわしつつ、夏凛に問う。

 

「ねえ、あんた!!その服装・・・・大赦の巫女でしょ!?しかも一番位の高い『神有月』の巫女!!違う!?」

「・・・・・へえ~、良く知ってたね。もう良いよ、ヴェルク・セル」

 

夏凛からの問いかけに幼女は答えると、大男を静止。にこやかな笑みを称えて、こちらに歩み寄って来た。

 

「それじゃあ、私を巫女と見抜いたご褒美に、私の名前を教えてあげるね?私は()()()()。貴女の言う通り、『神有月』の巫女だよ」

 

・・・・・・・・今、なんつった?

 

「藤森・・・・優芽?それって確か、兄貴の────」

「うん。春くんとはちょっとの間だけどお付き合いしていた間柄だよ」

「・・・・・まさか、春さんがロリコンだったとは」

「いやいやいや!?!?絶対違うわよ!!!あいつが私達をからかっているだけでしょ!?」

「あはははは♪そういう反応、春くんそっくりだね~。安心して、見た目こそ五歳くらいだけど、私ホントはそろそろ三十路なの」

 

最早衝撃的過ぎて空いた口が塞がらん・・・・・

 

「まさか、ヴェルク・セルと契約の対価が、『年齢』だなんて・・・・・流石に予想もできなかったよ」

「契約・・・だと?オイちょっと待てよ。まさかそいつ・・・!?」

「ご明察~♪()()()()()()()()()()()()。それも、72体の中で唯一、『肉の体を持った』悪魔。それがこの子の正体なんだ」

 

肉の体を持った悪魔・・・・・それはつまり、

 

「──────悪魔序列十一位、グシオン」

「え?輝夜?」

「わっ。そんなところまで知ってるんだ~~!」

 

・・・・・・あれ?なんで俺、そんな事を知ってるんだ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・・ねぇ、あんた本当に、輝夜なの?」

「は?何を言って─────」

「だって、あんた・・・・目の色が・・・・!!」

 

目?

色がなんだって?

 

「─────────これはちょっとびっくりだなぁ。まさか労せずして、目的の一つが見つかっちゃうなんて」

 

藤森優芽を名乗る幼女の声が、混乱する頭の中を更にかき乱す。

 

「でもまさか、自分の事をお兄さんの様に慕っている子を実験台にするなんて・・・・・・春くんも外道なことをするなあ~~」

「っ!?・・・・・兄貴を悪く言うなぁ!!!だいたいあんた、兄貴の事捜してるみたいだけど、今更出て来て何をしようってのよ!!!」

 

吠える夏凛を、冷たい眼差しで見つめながら、優芽は語る。

 

「・・・・・・それは貴女が彼のやった罪を知らないから言える事よ」

「────────────え?」

「今更出て来て何をするのかって?良い質問ね。春くんに返してもらいに来たのよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・ね?」

 

盗んだ・・・・春さんが?

 

「・・・・・・そん・・・・な・・・・兄貴が、そんなこと・・・・・」

「疑うなら、今度会った時にでも聞いてみてよ。『ジェフティは何処?』ってね」

「ジェフティだと・・・・!?」

 

なんてこった・・・・それじゃ、マジで春さんは・・・・?

 

「・・・・・・・・・・・嘘よ・・・・・そんなの嘘・・・・・兄貴が・・・・・兄貴がそんなこと・・・・するわけ無い・・・・・するわけが無いっ!!!!」

 

夏凛の悲痛な叫びが木霊する。

が、俺には、それを肯定してやることは、できなかった。

 

「・・・・・別に、春くんが盗ったのかどうかは問題じゃないんだよね。ただ、お爺様───"神樹の神子様"の命令だからね。ちゃんと返してもらいたいんだ。まあ、今はそっちよりも、もう一つのおつかいを果たしちゃうのが先かな」

 

そう言って、優芽はヴェルク・セルに命令した。

 

「お爺様の失せ物、『フォトン・ドライヴ』、返してもらうよ」

 

さっきからずっと、衝撃的な事実を突き付けられまくりで混乱した頭では、ヴェルクセルことグシオンが腕を伸ばしてきていても動けずにいた。

そのまま俺は、頭を掴まれ─────

 

 

 

 

 

「まったく・・・・だからさっさと覚醒させちまえば良かったんだ!」

 

 

 

 

 

る事はなく、俺とグシオンの間に、一人の少女が立っていた。

 

「お前・・・・なんで・・・・!?」

「別に。単に、今お前に死なれては此方が困るだけの事だ。気にするな」

 

鏑矢の仮面を被ったその女は、一本のガンブレードだけでグシオンの腕を防いでいた。

 

「・・・・・・・お姉さん、まさか鏑矢の人?名前は?」

「無い。どうしても呼びたければ『鉛』とでも呼べ」

 

それだけ言うと、仮面の女改め"鉛"は赤子をあしらうように、グシオンをひっくり返したのだった。

 




─藤森優芽─

想定CV:門脇舞以


見た目こそ五歳児程度だが、実年齢は二十代後半。
悪魔グシオンの契約者。六年前の契約の際、対価として『年齢』が支払われた為に、身体が零歳児にまで退化してしまっていた。
大赦での位は『神有月』で、『神樹の神子』の側近クラス。
春信に対して執着を見せているようだが・・・・

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ヴェルク・セルの名前の由来はベルセルク───つまり、バーサーカーです。

???「やっちゃえ!バーサーカー!!」

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