大赦の巫女はその適性でランク分けされており、『睦月』~『神有月』までの六段。
ちなみに、修行により、適性値を上昇させればランクも上がる。
各ランクの名前の由来は陰暦の1月から6月まで。
ランクが高ければ高い程、大赦での権威も上がる。
特に『筆頭巫女』と『神子の巫女』は大赦創設の"六花"に対しての発言権が与えられるほどである。
(本来、6月は神無月だが常に神樹が居るので神"有"月にした。余談だが、6月が神無月と呼ばれる由縁は、神様が出雲に帰郷するからだとか。そのため、出雲では6月は神有月と呼ばれているそうな)
小柄な少女が、倍以上もある大男をひっくり返す。
武道の達人であるならば、それも出来ない事では無いそうなのだが、目の前で起こった出来事は、そんなチャチなモンでは無い。
「もっと、恐ろしい何かを見せつけられている感じだ・・・・」
「何言ってんのよ」
夏凛にツッコまれる間にも、状況は変わってゆく。
投げ飛ばされたグシオンが起き上がり、雄叫びを上げたのだ。
「■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!!!!」
「──────────────なんだ、まだヤル気か?もう時間も無いっつーのに」
それに対して鉛は余裕の表情である。仮面で顔見えないけど。
鉛の挑発に乗ったのか、グシオンが鉛へ向かって突撃してきた。
「ヴェルク・セル。ステイよ」
「!?・・・・・・・・・」
が、優芽の静止であっさりと引いた。なんだ?いったい何を──────
♪~~♪~~
「っ!?バーテックスだと!?このタイミングで!?」
「まあ、そういう事だ。バーテックスに救われたな」
「イヤミか貴様!!!」
「言ってる場合か!!!!」
再びの夏凛のツッコミを受けつつ、世界は樹海に包まれていった。
―――――――――――†――――――――――
周囲が木々に覆われた樹海へと変化したのを確認し、ついでに優芽とグシオンが居ないかも確認。
────────よし、居ないな。
「・・・・・・さて」
「っ!」
「警戒しなくて良い。お前にはもう手を出さない」
「・・・・・・信用でき無ェな」
「『勝手な真似をするな』と、雇い主に叱られたんだ。無理に覚醒を急がせるような事は、もうしない」
それだけ言うと、鉛は立ち去ろうと背中を向けた。
・・・・・マジでなんもしないの?
「・・・・・・一つだけ、忠告してやる。"覚悟"だけは、しておけ」
去り際に一言残して、鉛は何処かへ跳び去って行ってしまった。
「──────覚悟、ね」
「なんかよくわからないけど、とにかく皆と合流しましょ」
「・・・・・・・・・・・・・そうだな」
―――――――――――†――――――――――
無事、友奈達と合流できた俺達は、先程までの経緯を簡単に報告する。
「──────ってな事があってだな」
「だ・・・大丈夫だったの!?」
「でなけりゃ、ここにゃ居ねーよ」
「そ・・・・そうだよね・・・・・良かったー・・・・」
ちょっと泣きそうになっている友奈がほっと胸を撫で下ろす。
「ったく・・・・心配性なヤツだなァ」
「だって・・・・・」
友奈の頭を撫でて安心させてやる。
「ん・・・」
「俺が大丈夫って言ってンだ。夏凛も居たし、お前が心配する様な事にゃならんよ」
「輝夜の言う通りよ。この私が居るんだもの!大船に乗ったつもりでいなさい!!」
「夏凛ちゃん・・・・・・ありがとう」
友奈に笑顔が戻ったところで、偵察に出ていた風さんが戻って来た。
「敵さん、壁の外から仕掛けて来るみたい!」
「なんで連中、あんなお行儀良く整列してンだ?」
「さぁね・・・・ただ、『壁の外に出てはならない』って神樹様の教えがあるから、連中がこっちに来るまで攻められないけど」
「あーあ、纏めてぶっ飛ばしてェ~~なァ~~。丁度良い感じに集まっているのによォ~~~」
「かぐやちゃん・・・・・」
「・・・・・まあ、気持ちはわからないでもないワね。あの感じだと、多分、残りのバーテックス全部来てると思うし・・・・・」
「まったく────気合い入り過ぎてこっちもサプリ増し増しよ・・・・・樹もキメとく?」
「いえ・・・・遠慮しときます・・・・」
と、ここで風さんが一つ咳払いをして告げた。
「よし・・・・みんな!気合い入れて行くわよ!!と言うわけで・・・・・ここはアレ、いっときましょ!」
「アレ?なによ、アレって・・・」
風さんの言葉に、夏凛を除いた全員が肩を組んでわっかを作る。コイツぁいわゆる────
「え・・・・円陣!?」
「気合い入れるならこれが一番女子力高いのよ!」
「意味わからんわ!!」
「ほらほら~♪夏凛ちゃんも早く~~」
友奈が自身の左側を空けて、夏凛を招く。ちなみに友奈の右側には東郷が陣取っている。いつの間に・・・・
「・・・・・・ったく!しょうがないわね!」
ツンデレ台詞を吐きつつ、夏凛も円陣に加わった。
うむうむ。仲良き事は平和かな~♪
「何やってんのよ煌月!あんたも早く入りなさいよ!」
「え?・・・いや、俺はいいよ。勇者じゃないし」
「勇者じゃなくても、勇者部の一員でしょ?ほら、ここ空けてあげるから・・・・とっとと入りなさい!!」
・・・やれやれ、そこまで言われちゃ仕方ない。
遠慮なく友奈と夏凛の間に加わらせて貰う。
「あんた達!これが終わったら、何でも好きなもの奢ってあげるわ!だから、死ぬんじゃないわよ!!」
「やった♪じゃあみんなでお腹いっぱい美味しいもの食べよう!肉ぶっかけうどんとか♪」
「良いねェ~~♪なら俺はカレー南蛮蕎麦!!」
「何故そこで蕎麦!?」
「ふんっ、言われなくても殲滅してやるわ!」
「わ・・・私も、叶えたい夢があるから・・・・!」
「頑張って皆を────国を護りましょう!」
「よぉーーし・・・勇者部ファイトーー!!」
『おぉーーー!!!』