戦闘フィールドである瀬戸大橋の付近に到着した時には、既にバーテックスは橋の中程まで進行していた。
「渡り切られたら終わりだ。さっさと終わらせる!」
ランドセルから伸びる二つのグリップを握り、アームを操作する。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アームによる打撃を慣行するが、バーテックスへのダメージは欠片も無い。
当たり前だ。このアームはその様に使用する為の物では無い。
「武装選択・"ベイルバート"」
バックルの端末を操作し、選択した武装を呼び出す。
ランドセルから身の丈程の棒が現れ、それをライトアームで保持すると、先端からエネルギーの矛先が出力された。
これが『ギガント・ローダー』の主兵装、『ベイルバート』
「とりあえず、
バーテックス相手に、どれだけやれるのかはわからない。
故に、三形態の中で一番切断力のある戦斧形態を選択した。
不意に、バーテックスから泡のような物体が放たれた。
おれはそれを避け、切り裂き、バーテックスへと接近する。
神樹内部の情報を参照すると、あのバーテックスは『
あの泡のような物体は水の塊で、あれに取り込まれると脱出出来ずに溺死してしまうらしい。
ベイルバートで切断すれば、弾けて消失するので、本当に只の水なのだろう。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
バーニアを吹かし、バーテックスへと斬りかかる。
瞬間、バーテックスが水をチャージし始めた。
「っ!?」
気付いた時にはもう遅い。激しい水流が襲い掛かって来る!
「かずくん!!」
水流に呑み込まれるよりも速く、横からの衝撃に吹き飛ばされた。
変身した園子が、おれを助けたようだ。
「くっ・・・済まない、助かった」
「えへへ~♪かずくんに褒められた~♪」
「褒めてはいない」
「おーい!!」
そこに銀と鷲尾も合流。
「上里くん、一人で勝手に───」
「合流できたなら丁度良い。作戦がある」
「ちょっと!」
「まぁまぁ。とりあえず、カズマの話を聞こうぜ?」
怒る鷲尾を銀がなだめてくれたので、おれは思い付いた作戦を提示した。
―――――――――――†――――――――――
「よし、それでは
おれの合図で、銀と園子がバーテックスへと突撃する。
鷲尾は後方から、おれは二人の近くで、バーテックスの水球を破壊していく。
「当たって・・・!」
鷲尾の放つ矢がバーテックスへと迫る。が、小さな水球が連なり、バーテックスに届く事は無かった。
「そんな・・・・!?」
「鷲尾は援護に徹しろ!」
「でもっ・・・・!」
「与えられた役目をこなせ!!」
そうこうしている内に、水球の数が増えていく。
このままでは被害が出る・・・・それだけは、防がなくては!
「
大鎌形態は広範囲攻撃に特化した形態。
威力こそ戦斧形態に劣るが、その分、攻撃範囲は広く、数の多い敵を掃討するのに役立つ。
が、それでも対処し切れず、水球の一つがすり抜けて行ってしまった。
「不味い・・・・!鷲尾!!!」
「え・・・?」
水球が鷲尾に向かって一直線に飛ぶ。それを追い駆けるが、間に合わない・・・!
「鷲尾さん!」
「きゃ・・・!?」
おれよりも速く、鷲尾と水球の間に割り込んだ者が居た。銀である。
「銀っ!!」
「ゴボゴボゴボ・・・!」
「わ・・・・私のせいで・・・・」
「言ってる場合か!!なんとかしなければ・・・・!」
ベイルバートの出力を調整すれば水だけ蒸発させられるか?だが下手をすれば銀を傷付ける事になる・・・・どうする?
「んぐ・・・・んぐ・・・・」
「──────ん?」
おれと鷲尾がしどろもどろしている間に、水球が段々、小さくなっている。
と、そこへ園子がやって来た。
「んぐ・・・・んぐ・・・・ぷはぁ!」
「こいつ・・・バーテックスの水を飲みやがった・・・!」
「ふっ・・・神樹様の加護を受けたアタシならば、このくらいの事、造作も無い!!」
ガッツポーズでドヤ顔を決める銀。
「で、味は~?」
「何聞いてんだよ」
「最初はソーダっぽい味だったんだけど、途中からウーロン的な味に・・・」
「お前も真面目にレビューすんな」
「うぇ~、不味そう・・・」
「でもこれ、意外とクセになる味」
「へ~、良いなぁ~。わたしも飲みた~い」
「そもそもバーテックスの攻撃を飲もうとすんな!!」
二人の頭を叩いて叱る。「すみませ~ん」と謝罪する二人。
やれやれだ・・・・そう言えば、鷲尾がさっきから一言も発しないな・・・・・
「・・・・・・・私」
「鷲尾」
「・・・・・・・・・あ」
鷲尾は一人、意気消沈していた。
今はそんな場合じゃ無いと言うのに、まったく・・・
「反省も後悔も後にしろ。今はとにかく、目の前の敵を倒す事に集中しろ」
「・・・・・・はい」
駄目だな。まだ少し引き摺っている。やれやれ、手の掛かる事だ・・・・
仕方ないので、鷲尾の頭を撫で、言葉をかけてやる。
「あ・・・・」
「いいか鷲尾。お前達はチームだ。三人で一人前なんだ。一人で突っ走るような真似はするんじゃない。良いな?」
「いやー、一人で先走ったヤツが言うと、説得力あるなぁ」
「嫌味か貴様」
軽口を言う銀の頬をつねる。
「──────」
「すみすけ、大丈夫だよ~」
「え・・・?」
「かずくんは、ぶきっちょなだけなんよ~。今のだって、すみすけの事を心配して言ってるんだから」
「・・・・乃木さん」
「おいそこ、勝手な事を言うな」
そんな会話をしている間にも、バーテックスは進み続けている。
そろそろ、かなりの危険域だな。
「
「どうするの~?」
「園子。お前の武器は傘になったよな」
「うん」
「全員でその傘を持って、強行突破する。もうこれしか方法が無い」
「よっしゃ、その作戦乗った!」
「すみすけはどう?」
「・・・・えっと、はい。大丈夫、です」
「─────よし、やるぞ!!」
―――――――――――†――――――――――
この作戦は、案外効果的だった。
バーテックスの水球も水鉄砲も、園子の傘ならば受けきれる。
但し水鉄砲は威力が有りすぎるので、全員で園子を支えてやらないと進行すら難しい。なのでこうして協力して行軍を行う。
「オーエス!オーエス!」
「オーエス!オーエス!」
運動会の大玉転がしかよ。
「ほら、カズマも鷲尾さんも!」
「えぇ・・・?」
「仕方ない・・・・やるか」
『オーエス!オーエス!』
四人の声が重なり、一つになる。
次第に縮まるバーテックスとの距離。ついに突撃可能距離まで到達した。
その瞬間、バーテックスからの攻撃が止んだ。
「今!突撃ィィィィィィィィィィ!!!!」
おれの号令に全員散開。
水球を鷲尾が封殺し、左からは銀と園子が、右からはおれが攻める。
「園子!そのまま振り回せ!!」
「うん!」
園子の槍に掴まった銀が叫ぶ。
「うんとこしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
気合一閃。槍を薙ぐ。
勢いを付けた銀は、斧から炎をほとばしらせる。
「こっから・・・出ていけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
その一撃で、バーテックスの左半分が消し飛んだ。
おれも負けていられない・・・!
ベルトから端末を外し、変身ボタンをタップしてスロットに挿入。
『Finish Blow』
音声が鳴って、
これぞ、対バーテックス用に開発した必殺形態。エネルギー消費と
「これで終わりだ・・・・・!」
ベイルバートを
ベイルバートがバーテックスに突き刺さる。しかしそれだけではバーテックスにダメージを与えられない。
だから、跳ぶ。
跳躍し、ベイルバートを掴むと、全エネルギーをベイルバートへと注ぎ込む。
「弾けろ・・・バァァァァァァテックスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」
過剰にエネルギーを送られた発振器がその負荷に耐えきれず、爆発。万感の想いを載せて放った一撃は、バーテックスの右半分を吹き飛ばしてみせた。
「へぶっ」
しかし、着地に失敗。
最後の最後で締まらねぇ・・・ちくせう・・・
「かずくん、平気~?」
「大丈夫か、カズマ?」
「いま、顔から落ちなかった?」
「おまえらよってたかって・・・・・・いや、それよりバーテックスは!?」
痛む身体を無理に起こしながら、三人に問う。
「大丈夫だよ~。ほら、見て」
園子に言われて。空を仰ぎ見る。
大橋が、咲き誇っていた。
実際には花吹雪が舞っているだけなのだが、神聖なその空気に、どうしても、そんな風に見えてしまった。
「すげえ・・・・・・これが・・・・・・『鎮花の儀』か・・・・・・」
『鎮花の儀』
バーテックスをある程度弱らせることで実行可能になる、バーテックスを壁の外へと追い返す儀式。
これが発動した、ということはつまり・・・・・・
「おれたち・・・勝った・・・のか?」
花吹雪がバーテックスと共に消え、辺りに静寂が流れる中、ぽつり、と呟いた。
「勝った・・・?」
「勝ったんだ・・・!」
「勝ったのね・・・!」
『やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
四人全員で抱き合う。
ちょっとしたおしくらまんじゅうだ。しかし気にしない。
おれたちは、お役目を成し遂げたんだ!!
そんな充足感が、四人を満たしていた。