現実世界に戻り、しばらく経過。
大橋公園から戻って来た鷲尾は、何故か泣きはらした瞳をしていた。しかも、二人と仲良く手を繋いで。
「・・・・どうした?」
「えへへ~♪聞いて聞いて、わっしー、ようやく私のこと"そのっち"って呼んでくれたんよ~♪」
「へぇ・・・良かったな」
何か、心境の変化でもあったのだろうか。
「ほら須美、言うんだろ?」
「・・・・えっと」モジモジ
「?」
おれの前に来た鷲尾が、気恥ずかしそうにしながらも、言葉を紡ぐ。
「・・・・今まで、ごめんなさい。これからは、その・・・・私、みんなのこと、ちゃんと見るから。信頼できるよう・・・・がんばる、から・・・・だから・・・・・その・・・・」
「そうか」
「───────────」
沈黙し、俯く鷲尾に手を差し伸べる。
「これからも、宜しく」
「!・・・・・はいっ!」
そうして鷲尾は、年相応の笑顔を見せてくれたのだった………
「ところで~~・・・・"呪い"って、なんの事~~?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやら、良い話では終われないようだ。
―――――――――――†――――――――――
園子達にも"樹浄化"の件を話した後日────
「いらっしゃい」
「お・・・・お邪魔します・・・・」
「おじゃましま~す♪」
「こんちはー!」
「いらっしゃ~い、ゆっくりしていってね♪」
三人をおれの自宅へと招待した。
表向きは親睦を深める為だが、その真の目的は、鷲尾の能力を解明する事だ。
「んじゃ、おれは準備があるから、先におれの部屋にでも行っててくれ。場所は園子が知っている」
「あいよ、ベッドの下でも探ってっから」
「残念だったな、おれは布団派だ」
銀と軽口を言い合いながら、おれは一人、別邸の工房へと向かう。
上里邸は、乃木邸よりも屋敷面積自体は少ない。が、代わりに敷地内に別邸が本邸と合わせて三つある。
と言っても二つある内の一つは蔵として使用していたので、実質本邸と別邸が一つずつあるという事になる。
おれが今向かっている工房は、その蔵にある。
昔はちゃんと屋敷として使用していたらしく、本邸程では無いが幾つか部屋がある。
その内の半数を工房として改装させて貰ったのだ。
「えーと・・・・・あった」
"研究室"と銘打ったプレートが掛けられた部屋にて、目的の品は見つけた。
装着した者の霊力を測る為の機器だ。
「あとの道具は部屋にあるから・・・・とりあえずはこれだけだな」
そうしておれは工房を後にした。
───────view,change:銀────────
「今、戻った」
「おかえり~」
「なあなあカズマ!これ、どうやって動かすんだ?」
「・・・・・・・・・あまり下手に動かすなよ。丁寧に扱わないと爆発する物もある」
棚に乱雑に置かれた発明品の一つを、戻って来たカズマに見せたらとんでもない事を言われた。
「爆発って・・・・どうしてそんな危険な物を・・・・」
「正しく扱えば害は無い」
「そういう問題では無いかと・・・・・」
なにやら須美とカズマが言い合いを始めたので、アタシは再び棚の中を物色。
「・・・・ん?なんだこれ」
出てきたのは一枚の写真。
真ん中には、おばあさんに肩車されて笑うカズマ。
その両サイドには四人の男女。
「集合写真かな?」
「え・・・・・・ちょっと見せろ」
「カズマ・・・?」
言われるがまま、カズマに写真を渡すと、カズマはひったくるみたいに写真を取って、穴が開くほど見つめていた。
「もしかして・・・・・見ちゃいけなかったやつ?だったら、ゴメン」
「・・・・・・・いや、そういうのでは・・・・・無いよ」
ただ、と一言添えて、カズマは語る。
「四年前に解散して以降、音信不通で・・・・・何処に居るのか、そもそも生きてるのかすら・・・・・わからなくて・・・・・・・」
カズマの頬を雫が伝う。
アタシは、須美と園子と顔を見合わせて、それからカズマと手を繋いだ。
「・・・・・・・銀?園子?」
右側に園子、左側にアタシ、そして、アタシと園子は須美と繋いで輪になった。
「アタシ等はどこにもいかない!」
「少なくとも、黙って消えたり、音信不通になったりなんてしないわ」
「私たちはずっと友達────ズッ友だよ♪」
カズマを安心させたくて、笑顔でアタシ等は、そう言った。
「────────────ありがとう」
写真と同じ笑顔で、カズマは応えてくれた。
──────あー、なんか顔が熱いな!繋いだ手が熱いから、その熱でも伝わったかなー!!
「ふふ、銀ったら顔が真っ赤よ?」
「う・・・・うるさいなー!!」
「えへへ~♪良かったね、かずくん」
「フッ・・・・・そうだな」
そうして、アタシ等は"ともだち"になった。
「ところで・・・・・かずくんはわっしーのこと、いつまで名字で呼んでるの~?」
「へ?」
「そういや、須美もだよな。カズマのこと、ずっと名字呼びしてる」
「良い機会だし、わっしーもかずくんのこと、あだ名で呼んでみたら~?」
「えぇ・・・・それは、ちょっと・・・・・」
「でも、せっかくズッ友になったんだしさ・・・」
「うーん・・・・・・・」
「鷲尾、無理に呼ばなくていいから」
「────────一正くん」
「何?」
「これからは、一正くんって呼ぶから」
「マジかよ」
「ほらほら、須美だってそう言ってる事だしさー。キミも乗ったらどうかねー?カっズマく~~ん♪」
「──────楽しそうにしやがって」
「・・・・・・・」
「ドキドキ♪ワクワク♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・須美」
「声小っちゃ!?」
「五月蝿いな・・・・・!おれもちゃんと呼んだだろ!」
「声小っちゃ過ぎて聞こえませーん」
「小さかろうがなんだろうが、言ったモンは言った!」
「聞こえない!」
「言った!」
「聞こえない!!」「言った!!」
「聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない!!!」
「言った言った言った言った言った!!!」
「一正くんって、変なところで張り合うのね・・・・」
「そこがかずくんの可愛いところなんよ~♪」
・
・
・
「────それで、あの後ずっと言い合いを続けたっけなぁ」
「そんな事もあったな・・・・・何もかも、懐かしい・・・・・」
工房を兼任している隠れ家にて、鉛と、昔話に華を咲かせる。
「そういや結局、須美の能力ってなんだったんだ?」
「ああ。そういえば話してなかったな・・・・・」
パソコンからデータを呼び出し、鉛に見せる。
「───────これって」
「そうだ。
「これが観測されたって事は、つまり・・・・」
「そうだ。あいつの能力は"
尤も、それが判明した時には諸事情により、それを本人に伝える事が出来なくなってしまっていたのだが・・・
「──────でも、イマイチ何が凄いのかよく分からん」
「考えてもみろ、神託を受ける事の出来る勇者だぞ?未来を先読みし、敵を欺き屠る事が出来る」
「・・・・・・・・すげぇじゃん」
「尤も、それだけという訳では無いのだが・・・」
「?」
懸念材料は、まだまだ多い。
再び連中が動く前に、準備が整えられれば良いのだが………
「大丈夫。勇者は気合いと根性だよ」
「───────おれは勇者じゃ無いが、な」
こうやって、鉛と軽口を言い合っている時は、あの頃に戻れたような気分になれる。
もう、二度と戻れない、あの頃のように………