今の時間なら、次の授業の準備のために、先生のいる準備室にかずくんは向かっている。
「かずくん見~~っけ♪」
「む・・・・園子か。どうかしたか?」
かずくんに向かって勢いよく突撃。そのまま抱き付くフリをして、ズボンのポケットに盗聴器をしかける。
「─────いきなりなんだよ」
「あはは~~、ちょっと勢い付けすぎちゃったんよ~~」
「で、何の用だ?」
用事がなくちゃ、いけないの?
「ううん。何でも~~・・・・・かずくんを手伝おうと思って・・・・」
「珍しい・・・・明日は雨かもな」
なにそれ。私がかずくんのお手伝いをするのが、そんなに珍しいの?
「えぇ~?そうかな~?」
「少なくとも、いつもならこの時間は昼寝してるだろう、お前は」
「えへへ~~、ちょっとね・・・・」
「まぁ良い。手伝ってくれるなら有難い。早速なんだが・・・・・」
釈然としない気持ちのまま、私はかずくんのお手伝いをした。
―――――――――――†――――――――――
────そして放課後。
「カズマの奴、行ったな。よし!アタシ達も行動するぞ!」
「・・・・・・・やっぱり、覗きなんて良くないわ」
「なんだよー。須美は気にならないのか?」
「そりゃ、気になるけれど・・・・・」
「それじゃ行こう!園子も─────」
「Zzzzz………」
「────────寝てる」
「────────起こしては悪いし、そのっちは置いて行きましょう」
「うーん・・・・・まあ、良いか。すまん、園子。寝てるお前が悪い」
ごめんね、ミノさん、わっしー。本当は起きてるんよ・・・・・
腕の隙間からチラリと覗いて、二人がかずくんの後を追っかけて行ったのを確認し、私は仕掛けた盗聴器からの音声を聞く。
『──────誰にも聞かれたく無い、と言ったはずだが?』
『・・・・なんか、ごめん』
『だってさー、カズヤがずっくに告るかと思ったら・・・・・そんなん見届けないとじゃん!!』
どうやら、くるるんも一緒のようだ。
くるるんはすごいな・・・・いっつもあんなに堂々としてて、ちょっと、羨ましい・・・・・
『は?告る?何を?』
『何って・・・・そりゃもちろん、愛の告白でしょ!!!』
『────────────あー、なるほど。園子達の様子がおかしかったのはそのせいか』
ほぇ?
『おれはただ、聞きたい事があったから呼んだんだ。多分、他の誰にも聞かれたく無い話だろうからな』
それって、どういう・・・・?
『単刀直入に聞こう。
『──────────質問の意味が分からないなぁ』
『とぼけるな。おれは全て知っているぞ』
『っ────』
『お前達が越して来た少し前・・・・
『─────────────────へぇ』
『男性と女性は死んでいたが、奇跡的に一人娘は生きていたそうだ。そして、その娘は隣に住む一家に引き取られたと・・・・』
『──────────────────だから?』
『気になって調べてみた。そして、
『───────────────────────』
『枢木家は、旧暦最期の首相の血族だそうだな。更に言えば、源流は暗殺を生業とする一族だったとか』
『そうなの・・・・?』
『───────────────────────』
『そして、その暗殺技は"護身術"として今も尚、受け継がれている・・・・と』
『なるほどなるほどー・・・・・・じゃ、その護身術を食らってみる?』
次の瞬間、聴こえてきたのは取っ組み合う音。
『おい!止めろって!!』
『待って・・・!待ってください!!明日香さん!!!』
更にわっしーとミノさんの声が聴こえてきた。
かずくんが危ない・・・・!
いてもたっても居られなくなって、私も屋上へと向かった。
―――――――――――†――――――――――
「かずくん!!」
屋上に到着した私が見たのは、かずくんに掴み掛かろうとしているくるるんと、くるるんを抑えているわっしーとミノさんの姿。
「ああっ!そのっち、良いところに!!お願い、明日香さんを抑えて!」
「くっそ・・・・なんで二人がかりで抑えきれないんだよ!?」
「──────────────」
くるるんは、見たことも無い無感情な顔で、二人を振り切ろうとしていた。
「───────かずくん、これが、かずくんのやりたかったことなの?」
「・・・・・・・・・・・・枢木」
「何かな。命乞いでもするつもり?だとしたらそれは無駄。"決めた"以上、貴方には死んでもらう。ずっくの両親と同じように」
淡々と話すくるるん。
これが・・・・あの子の素なの?
「ふっ────それで良い」
『はぁ?』
思わずすっとんきょうな声が、全員から出た。
かずくんは何を言ってるの?
「別におれは、このことを公表しようとは考えていない。安心して良い」
「──────────────」
「信用出来ないと言うならば、ここでおれを殺せば良い。だがおれは、こんな所で死ぬつもりなぞ無い」
と、その時、しずしずがくるるんの手を掴んで止めた。
「止めとけアスカ。んな事したって、意味なんか無ェよ」
「───────しずっち」
あれ?しずしず・・・・だよね?なんだか雰囲気が別人みたいな・・・・・
「おい、上里。なんだってこんな事をする?場合によっちゃ、お前死んでたぞ」
「そうまでしてでも知りたかったからな。枢木が、どれだけ"出来る"のか」
「・・・・・・んで?ボクはカズヤのお眼鏡に叶ったのかな?」
「一正だ。結論から言えば、文句なしの合格だよ。大切なモノの為に、そこまでヤれる覚悟がある奴を、おれは欲していた」
「どういう意味だ?」
しずしず(?)からの質問に、かずくんは屋上からの景色を見ながら答える。
「─────この世界は狂っている。大赦による統治が永く続き過ぎたお陰で、神樹信奉が生活の基盤となってしまっている。まあ別にそれは良い。神を崇める事自体は悪い事じゃない。だが、
「ひと・・・・ばしら・・・・?」
今、一瞬かずくんが怖い顔をしてた・・・・
かずくんは、いったい何を知ってるの?
「おれは、そんな世界を変えたいと考えている。そして、その為の仲間を求めている。枢木の覚悟は見せて貰った。頼む、おれに協力して欲しい」
そう言ってかずくんはくるるんに頭を下げた。
「・・・・・・・・・・・・(ぽかーん)」
対するくるるんは、ぽかーんと口を開けて呆然としてる。
「・・・・・・・お前まさか、その為にこんな危険な賭けに挑んだってのか?」
「先程も言ったが、それだけの価値があったからな。命の一つや二つ、安い物だ」
「かずくんはさぁ・・・・・・・・」
思わずため息が出た。ミノさんも同じだ。
「・・・・・一正くんは、もっと自分の事を大切にして下さい」
「そうは言うが─────」
「言い訳は聞きたくありません!!!」
あーあ、わっしーがお説教モードになっちゃった。
「・・・・・・・・・園子、銀」
「私、知ーらない」
「カズマが悪い」
「────────────────解せねぇ」
かずくんが"なんでさ"って顔をしたのと同時くらいに、後ろから笑い声が聞こえてきた。
くるるんとしずしずだ。二人とも、お腹を抱えて笑ってる。
「ひぃ・・・・・ひぃ・・・・・上里お前・・・・頭良い様に見えて、実はバカだな!?」
「ち・・・違うよしずっち~~。カズヤは頭が良すぎて一周回ってバカになっちゃったんだよ~~あははははは!!」
ミノさんと顔を見合わせ、釣られて私達三人も笑い出す。
一人、笑われているかずくんは、更に遠い目で私達を眺めていた。
「はぁ・・・・・あー、お腹痛い!良いよカズヤ!ボクと同盟を組もうじゃないか」
「同盟、か・・・・善し、交渉成立だな」
「あ~、じゃあじゃあ!私達でクラブ活動しようよ!」
「は?クラブ活動?」
私の提案に、かずくんが怪訝な声をあげる。
「私、前にミノさんとかずくんがいろんな人のお手伝いしてるのを見て、ずっと思ってたんだ~~。『私もあんな風にできたらなー』って」
「ならやれば良いだろ」
「そうだな。カズマの言う通り」
「流石に、ミノさんみたいには上手にできないよ~~」
こほん、と咳払いを一つ。
「なので!ここに『神樹館勇者倶楽部』の発足を宣言するんよ~~~~!!」
「勇者倶楽部・・・・?」
「それが、倶楽部の名前なの?」
「良いんじゃねーか?カッコいいしよ」
「じゃ、決ーまりっ!メンバーはここに居るみんなだよ♪」
こうして、『神樹館勇者倶楽部』が誕生した。
それからの日々は、とても楽しくって、毎日が宝石みたいにキラキラしていた。
こんな毎日が、ずっと続けば良いな・・・・・
そう、思ってた。
あの日────7月10日までは………
次回、"7月10日"