今日は遠足の日だ。
事前に須美から渡されたクソ重い手製のしおりをどうにか読み終え、万全の準備をした今のおれに、死角は無い。
「いってらっしゃ~い」
「いってきます」
「お土産、待ってるからね~」
「───────────いってきます」
「あらあら~?今の間は何かしら~?」
お土産のことを忘れていたなんて、口が裂けても言えないので、急いで集合場所に向かう。
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楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、本日の遠足、最後の場所に到着した。
「わわわっ!?揺れる揺れる~~!?」
枢木と山伏と合流したおれたちは今、アスレチックコースを攻略中。
まあ、園子も楽しんでいるようでなによりだ。アイツらしい独特な楽しみ方をしているが。
「そのっち、頑張ってー!」
「勇者は気合いと根性だぞー!」
「むむっ、勇者は気合いと──────」
勢い良く、園子が飛び出す。
「根性~~!!」
「・・・・っと」
それを銀が見事なお姫様抱っこでキャッチ。
「よくできました!えらいえらい♪」
「えへへ~~♪ミノさんに撫でられると、テレるんよ~~///」
「・・・・・・・むー」
あ、須美が二人の間に割り込んだ。
「何やってんだ、お前」
「・・・・・・・だって、そのっちばかりずるい」
「まるで、犬・・・・」
んで、結局銀に撫でられてご満悦の須美であった、と。
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アスレチックコースもいよいよラスト。ほぼ垂直の壁を垂らされたロープを掴んで登るアスレチックだ。これを越えればゴールとなる。
「ふふん♪この程度、銀さんならヨユーヨユー♪」
「ちょっと銀!危ないわよ!」
銀が片手だけでロープを登っていく。あれは・・・・不味いな。と思った傍から────
「痛っ─────あっ!?」
「銀っ!!」
「わわっ!?ミノさん!!」
「っ!!!」
手を滑らせて(?)銀が落ちる。ダッシュで銀の落下地点を予測しつつ、そこに飛び込む。
「ぐえ」
「あた!?・・・・・・うわっ!カズマ!?」
「二人とも大丈夫!?」
「かずくんナイス飛び込み~」
「───────本当は上手い事キャッチしたかったんだがな」
銀がおれの上から退いた後、ゆっくりと立ち上がる。うん、銀にはどこも怪我は無いな。
「・・・・・・ごめん、カズマ。アタシのせいで───」
「ん?何がだ?」
「え?」
「おれなら無事だ。そしてお前も無事だ。なら、今回の事を反省すれば、それだけで良い」
「──────カズマ」
「駄目よ」
須美の奴がピシャリと言い放つ。あーあ、相当ご立腹なようで・・・・
「もう!危ないって言ったじゃない!!はしゃぐのは結構だけど、もうちょっと慎重に行動して!!」
「うぅ・・・・・ごめんなさい・・・・」
「まあまあ、ミノさんも反省してるみたいだし・・・・ね?」
「むー・・・・」
園子が須美を宥め、銀は俯く。
「うん・・・・反省してるよ・・・・・これからは──────口数を減らします♪」
テヘペロ♪なんて言いそうな顔で銀は宣言した。
「──────反省してない」
「あははははは♪」
まったく・・・・・やれやれだ。
「何はともあれ、ゴールしたんだしさ。アレやろうよ、アレ」
「アレ?・・・・どれ?」
「やだなぁ~。アレって言ったら、アレじゃん」
そう言って、枢木はゴールの向こうにあるものを指差した。
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アスレチックコース全制覇の鐘が鳴り響く中、おれはアスカと共に先に展望台に来ていた。
「で?話ってなんだ?」
「───────ボクの家のこと、全部知ってるんだよね?」
「───────ああ、知ってる」
「そっか・・・・・・」
沈黙が流れる。
「────────────枢木家は」
不意に、枢木が沈黙を破り、語り始めた。
「枢木家は、この四国において、"呪われた一族"って呼ばれているんだ」
「────────────」
"呪われた一族"
旧暦の時代に、高知のとある村で起きた事件が原因で、彼女の一族はそう呼ばれている。
枢木家の人間が、村の住民を惨殺。それを止めたのは一人の勇者だったと言う………
「枢木の血を引く者はね、『愛する誰かを何をしてでも護る』呪いにかかっているんだ」
「呪い・・・・・」
本当かどうかは不明だが、その惨殺事件も『呪い』のせいなのだと、神樹の記録には残っている。
「ボクがずっく────しずくに出会ったのは六歳の頃だった。当時から両親に虐待を受けていて、身体中にアザができてたんだ・・・・・・そんな彼女を、ボクは見過ごせなかった」
「それが、二人の馴れ初めか」
うん、と枢木が頷いた。
「しばらくは、ウチで預かったりして、しずくを匿っていたんだけど・・・・・・・こっちに引っ越してくる少し前に、事件が起きた」
「事件?」
「しずくの両親が無理心中を謀ろうとしたんだ」
「────────なるほど、そうだったのか」
これで合点がいった。
枢木家が如何に富豪であろうとも、完全な証拠隠滅は不可能だ。
にも関わらず、完全に自殺と認定されているのは─────そもそもの状況が自殺としか認定できない状況だったから。
「しずくもろとも死のうとしてたあの二人を殺して、ボクはしずくを助けた。あとは多分、知ってる通りだと思う」
「────────何故、今話した?」
「んー、なんだろ・・・・・?今しか話す機会が無いような気がしたんだよ」
「・・・・・・・・・そうか」
再びの沈黙。
「─────んー、ま!ともかくだよ。ボクが言いたいのは、イロイロあるけど、今後ともシクヨロだよ、
「!・・・・ああ、此方こそ。
友情のシェイクハンドを交わす。
なんだか、枢木─────否、アスカとは上手くやっていけそうな気がすr
「さぁて、それじゃあすみちーの着替えを手伝ってくるとしようかねぐへへへへ」
「須美に殺されるぞ、お前・・・・・」
───────と、思っていたが、気のせいだったらしい。