「バーテックスに生き残りがいて、戦いは延長戦に突入した・・・・・・と」
「だいたい、そういうことね・・・・・・・」
鉛を見送った直後、風さんから呼び出された。
内容は、鉛の言った通り。まさかこんな早くに来るとはな・・・・
「みんな・・・・・ごめん・・・・・」
「風先輩だって、さっき知ったばかりじゃないですか」
項垂れる風さんを東郷が慰める。
今はとりあえず、東郷に乗っておくか。無駄に心配事を増やす必要も無いだろ。
「でもさ、そいつさえ倒しちまえばバーテックスは全部倒したってコトだろ?んなら、パパパっとやっちまおうぜ」
「もう、かぐやちゃん!バーテックスは壁の外から来るんだよ!どうやって倒すの?」
「・・・・・・・こっちから攻め入ることってできないん?」
「ったく、神樹様の教えにあるでしょ。『壁の外に出てはならない』って」
あー・・・・・あったなぁ、そういえば。
「・・・・・・輝夜、あんた忘れて・・・・・?」
「まー、大丈夫だって!今更一体や二体程度、あの猛攻を凌いだ俺たちだせ?」
「話をそらすなァ!!」
ちょ!?待っ!?チョークブリーカーはやめ────あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!
『成せば大抵なんとかなる!だよ、お姉ちゃん』
「樹─────そうね!」
続いてコブラツイストをかけられている俺を無視して、風さんが窓から大声で叫ぶ。
「何時でも来なさいバーテックス!!勇者部六人がお相手よーーー!!!」
それはいいから早く助け─────あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!
―――――――――――†――――――――――
「なぁーんて言ってたのに、もう一ヶ月過ぎちゃったよ」
新学期が始まり、数日しての放課後。
俺たちは三人で、部室に向かいながら駄弁っていた。
「平和が一番さね」
「輝夜くんの言うとおりだわ。でも、気が弛みすぎても駄目よ?」
「わーってるって」
と、その時、赤い猫が唐突に現れて俺の頭の上に乗り丸くなった。
「わっ、だめだよ火車。戻って戻って」
友奈が慌てて端末を操作し、火車と呼ばれた赤猫は消えた。
「・・・・・・・・・あの牛もそうだけど、俺、友奈の精霊になつかれてる?」
「っぽいねぇ。よかったね!かぐやちゃん♪」
ちっとも良くねー・・・・・
そんなこんなで部室に到着。どうやら俺たちがラストの模様。ちょっち悔しい。
「うぃーッス!」
「ちっす。遅かったじゃない」
「日直にもなると、いろいろあるのさ~」
「またテキトー言って・・・・」
なんて他愛も無い会話をしていると、視界の端に何かが過った。
気になってそちらを見ると、尻尾が鎌になった謎の生き物に東郷が絡まれていた。なにあれ?
「ああ、ごめん東郷。その子まだ私の言うこと聞かなくて・・・・」
どうやら風さんの精霊らしい。
友奈の火車同様、大赦が今回用にシステムをアップデートしたらしく、夏凛以外の四人に新しい精霊が追加されたようだ。
(なんで夏凛だけ・・・・・・・・関係あると考えられるのは、やっぱ・・・・・・・)
なんて事を思考していると、またもや視界に何かが横切る。なにこれ?鏡?
『私の木霊と雲外鏡も出てきちゃいました』
雲外鏡。
なるほど、だから鏡・・・・・・いや、やっぱワケわかんねーや。
そうこうしていたら、牛と火車も出て来て、更には東郷が自分の精霊を出して・・・・・いやいやちょっと待て。
「いくらなんでも多過ぎィ!?」
「ちょっとした百鬼夜行ねー・・・・」
「も・・・もう文化祭の出し物、これで良いんじゃないかな?」
「駄目よ」
「ですよねー・・・・」
―――――――――――†――――――――――
牛が義輝にかぶり付いたり、俺が東郷の精霊ズに取り囲まれたり、ともかくいろいろすったもんだしたが、全員が自分の精霊を無事端末に戻すことに成功した。
「やっと戻ってくれたわね・・・・・」
「なんつーか、めっちゃ疲れた・・・・・」
肩で息をしながら、夏凛を見る。何か引っかかる事でもあるのか、夏凛は釈然としない顔をしていた。
まぁ、理解はできる。大方『なんで自分だけ、追加の精霊がいないのか』とか思ってんだろ。
精霊の追加。単純に、戦力が増した・・・・・・ってだけじゃないだろうな・・・・
考察ポイントは一つ。ズバリ、
精霊追加の条件が、満開の使用であるのならば、かつて夏凛が言っていた『勇者は満開する度に強くなる』という言葉にも説明が付く。
ということは、東郷の精霊が最初から三体いたのは─────
と、そこまで思案したところで袖を引っ張られる感触。
振り向けば樹が、心配そうな表情でこちらを見ていた。
怖い顔でもしてたかな・・・・?
「んー?どうした樹ー」
なるべく笑顔をつくりながら、樹の頭を撫でてやる。
すると、スケッチブックを取り出して文字を書く。
『バーテックス、いつ来るんでしょう?』
文字の下には顔文字まで書いてある。緊張してる顔か?
「うーん、そうね・・・・・私の読みだと明日あたり怪しいわね!」
「うぉ!?夏凛お前いつの間に後ろに!?」
「実は神樹様の勘違いで、バーテックスの生き残りなんていなかったー、とか?」
「風さんもか・・・・!?」
お前ら人の後ろを取り過ぎィ!!
と、その時だった。
♪~♪~♪~
「ふぇ!?」
「樹海化警報・・・・!?」
「これはアレね。神樹様からのツッコミね」
「そういう夏凛だって外してんじゃないの!」
「はいはい、二人共ケンカしてんじゃないのー。行くぞ、正真正銘のラストバトルだ」
そんなワケが無いと分かっているが、それでも、皆を鼓舞する意味で、嘯いて、俺は樹海へと赴く。