Summer Voyage〜鴎アフター〜   作:(ノ*°▽°)ノルーっ!

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~再会~

『7つの海を超えてあなたに会いにいきます』

『愛を込めて』

『海賊ひげ猫団・久島鴎』

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

……ここはどこかな……。

どのくらい飛んできたのだろう……。

どこに向かって行けばいいのかな……。

 

あっちに行かなきゃいけない気がする……。

 

 

……見つけた。

……やっと見つけた。

……私の行くところ。

……あなたのいるところ。

 

……ただいま。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

海賊船が完成してから1年。

俺はまたここに戻ってきた。

 

そうだ。

俺も旅に出れば良い。

いくつもの海をこえて。

長い旅をすればいい。

そうしたら、いつかどこかで、出会えるような気がした。

手を広げる。

帆がめいっぱいに、風を受け止めるみたいに。

彼方の世界へ、船は少しずつ進んでいく。

光の方へ。

 

その先に、再会が待っている。

 

 

 

『よし、出発だ!』

 

 

『羽依里!!』

 

『えっ?』

 

羽依里は振り返るとそこに私の姿を見つけた。

 

『羽依里!』

 

私は一生懸命に彼の名前を叫ぶ。

 

『か…鴎?鴎なのか?』

 

『うん!……ただいま!』

 

『鴎……おかえり!』

 

 

私は久島鴎。

2年間ずっと外国の病院に入院していた。

でも長い長い旅を経てようやくここに戻ってこれた。

 

体調もだいぶ良くなったけど寒くなるとまだ少し痛む。

お医者さまもびっくりだよ。

ここまで回復するなんて思ってなかったから……。

 

 

どうしてかはわかんないけど、去年この島にいた記憶がある。

羽依里と冒険したことを憶えてる。

だから、私はここに戻ってきたの。

 

 

『羽依里が今年もここにいるなんて思わなかったよ』

 

『これは鴎と一緒に叶えた夢だからな!』

 

『……すごいねぇ。全部羽依里が作ったの?』

 

『さすがに俺だけの力じゃやれるとこまではやれても完成はしなかったかもな……。みんながいたからこそ出来上がったんだ。』

 

『そっか……』

『羽依里、ありがとう』

 

ここにある海賊船は以前私とおかあさんの二人でこっそり準備していたものでした。

しかし3年前海賊船の準備中、私は倒れてしました。

 

実はそこからの記憶がよくわからなくて、病院にいたりこの島にいたりと、ここにいるはずはないんだけど記憶があやふやになっていたの。

 

でも羽依里が船を完成させてくれた後、なぜか私の体調が回復しはじめて、数カ月後には身体を起こせるようになっていた。

 

それから毎日少しずつ歩く練習をして、ようやくここまで歩けるようになりました。

 

そして、私はここに戻ってこれた。

 

『ねぇ羽依里?』

 

『どうした?』

 

『どうしてこの船完成させようと思ったの?』

 

『……正直自分でもよくわからない』

『でも完成させることで何か奇跡でも起きるんじゃないかと……』

 

『ふふっ、起きたね。奇跡。私の体調すごく良くなったよ』

『これは羽依里のおかげかもしれないねぇ〜』

 

『そういえば去年俺と一緒にいた鴎は何だったんだろうな?』

 

『うーん、わかんない。……でも、私がここにいたことはだいたい憶えてるの』

 

『まぁ深く考えても仕方ないか。今は鴎が戻ってきてくれただけで嬉しいよ』

 

『ちょっと……羽依里〜。恥ずかしいじゃない……』

 

羽依里ってこんなに大胆だったっけ……?

急にそんなこと言われるとホントに照れちゃうじゃない……。

 

『もうこんな時間か…』

 

気がつくと夕方17時になろうかという頃だった。

 

『そろそろ戻ろっか』

 

『そうだな。鴎歩けるか?』

 

『うん、ゆっくりなら大丈夫』

 

私と羽依里はゆっくりと歩いて村へと戻った。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

『ここでいいのか?』

 

『うん、おかあさんが迎えに来てくれるから大丈夫だよ』

 

『わかった!』

 

『あのね……今日羽依里と再会できてよかった!』

『正直もう逢えないと思っていたの……』

『船が完成して、羽依里にはもう来る理由もないだろうって……』

 

そう、私は羽依里に逢えないって思っていたの。もうここに来るような理由なんてなくなってしまったし。

 

『……そんなことはないぞ。俺は毎年ここに来るつもりだったんだ』

『……ここに来れば鴎のこと忘れないからな』

 

とてもうれしいことを言ってくれている。

 

『そっか……ありがと♪』

『えへへ……』

 

そんなこと言われたら顔がにやけちゃうじゃん!!

 

『羽依里さん、鴎』

 

『あ、おかあさん』

 

『鷺さんこんばんわ』

 

そんな話をしていたらお母さんが迎えに来てくれた。

 

『羽依里さん鴎を送ってくださったんですね。ありがとうございました』

 

『いえいえ。当然のことですから』

 

『じゃあまた明日ね』

 

『ああ、また明日』

 

また明日。もうこんな風に言うこともできないと思っていた。

だから今すごく幸せなんだ。

 

こうして羽依里との再会の初日は過ぎていったのでした。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

次の日。

 

窓から差し込む日差しはすでに強い。

すっかり日が昇った午前9時。

 

 

 

『よーし、準備完了!スーツケースのスーちゃんセカンドもばっちりだよ!』

 

スーツケースは改良してスーちゃんセカンドになっています。

そして今日は土曜日ということもあって港はすでに大勢の人でにぎわっていた。

 

『鴎来るの早いな……』

 

『ううん、今来たところだよ。今日はどうしよっか?』

 

『鴎は行きたいところあるのか?』

 

『うーん…』

 

少し考えた私は羽依里と一番最初に冒険したある場所を思いつきました。

 

『あっ!例の場所!』

 

『???』

 

『ふふーん、行ってからのお楽しみ!今は教えてあげないよ!じゃん』

 

『久しぶりにでたなそれ。よし、ならいこっか。』

 

その場所へと行こうとするといい香りとともに背中のほうから声が聞こえてきた。

 

『らっしゃせーらっしゃせー。焼きそばはいかがっすかー』

『らっしゃせーらっしゃせー。焼きそばはいかがっすかー』

 

『…り、良一……』

 

『羽依里……朝から見せつけてくれるじゃねーか!こっちは朝から店番なんだぞ!』

 

『お、おう、そうなのか…がんばれよ……』

 

『ところでそちらのかわいいお嬢さんは誰なんだ?』

 

かわいいお嬢さん!とてもうれしくなる響き!私は自己紹介をした。

 

『どうも、久島鴎です!』

 

『あ、三谷良一っす。ん、鴎……。あれか、去年羽依里が船作ってる時に言ってたあの娘か!』

 

『そうでーす!』

 

『いや、お前が言うなよ……』

 

『……羽依里、良かったな』

 

『ああ…そ、そろそろいこっか…』

 

『うん!』

 

私と羽依里は目的の場所へと向かった。

 

『ここは……宝箱の隠し場所』

 

『うん、羽依里……憶えてくれてたんだ』

 

プールサイドのフェンスを伝って上へと登っていく。

 

『よいしょっと』

 

『一年前に来た時のまま変わってないな』

 

『宝箱はもう空いてるけどね』

 

そう、去年私はここに来ていた。

羽依里と一緒に島中を駆け回って鍵を探して…一緒に冒険したことを憶えている。

ひげ猫団と同じように冒険をした。

 

『……鴎?』

 

『ううん、なんでもないよ』

 

ほんの少し寂しい感じもあった。

記憶が残ってるとはいえ私じゃない私だったから。

私の想い。それが具現化したような存在。

 

…でも、「楽しかった」のを憶えている。

 

『なぁ鴎?』

 

『ふぇ!?』

 

『これからもたくさん冒険しような!』

 

『羽依里……うん!じゃあさっそく……』

 

『ちょっとまった!!まだ体調万全じゃないんだろ?』

 

『…うん……』

 

『なら今日は近いとこにしような。ここからならそうだな…灯台のほうなんてどうだ?』

 

『そうだね!それなら心配ないかも!』

 

『その前に何か食べないか?』

 

『腹が減っては戦はできぬってやつだね!』

 

私たちは灯台に向かう前に食堂へと移動した。

 

『いらっしゃい!』

 

『そういえばここの食堂初めてかも』

 

『ま、まぁいろいろ気になるけどうまいとこだから……』

 

『……?』

 

『な、なんにしようかなー……』

 

『じゃあ私はお造り定食にしようかな!』

 

『なら俺はハッピーセットで』

 

『えっ?ハッピーセット!?おもちゃついてくるの!?』

 

『いや違う。店主曰く親子どっちもイケてハッピーだろ?だそうだ』

 

『……』

 

『じゃあハッピーセットとお造り定食で!』

 

『あいよ』

 

注文を受けた店主さんは準備を始めた。

 

『チーン』

 

聞いたきことのある機械的な音が店内に響く。

 

『お造り定食お待ち』

 

『ねぇ羽依里……今チーンて!チーンって言ったよね!?』

 

『さ、最新機種らしいぞ……』

 

『なにそれ?』

 

『さぁ……』

 

『ハッピーセットお待ち』

 

『あーハッピーセットって親子丼のことなのね』

 

『とりあえず食べるか。いただきます』

 

『いっただっきまーす。はむっ。…おいひい!!はいひおはへう?』

 

『食べてからしゃべれよ…。』

 

食事を食べ終わった私たちは食堂を後にして灯台へと向かうのでした。

 

『おいしかったねぇ!あのチーン!て言ったのが気になるけど』

 

『あれは気にするな』

 

『それじゃあいこっか!……よいしょっと』

 

『鴎……なにやってるんだ……?』

 

『えっ?何ってスーツケースに座ってるんだよ?』

 

『つまりはスーツケースを押せと……』

 

『少しだけお願い!ねぇ、お・ね・が・い!』

 

『わかったわかった。少しだけだぞ』

 

『わーい!』

 

 

羽依里はとてもやさしいです。羽依里イズいいやつ!

私はこの人に出逢えてよかったと思います。

 

『鴎…そろそろ歩かないか…?』

 

『そうだね。ここまで押してくれてありがとう。よいしょっと』

 

スーツケースから降りて両手を組んで手をのばす。

 

『うーーーーん!風が気持ちいいねぇ』

 

『少し休憩してもいいか?』

 

『羽依里はずっとスーツケース押してくれてたもんね、少し休んで行こっか』

 

夏の日差しが熱く降り注いでいた。私と羽依里は日陰を見つけそれぞれ休む。

 

『鴎は夏休み終わったらどうするんだ?本土に帰るのか?』

 

『それはおかあさんと相談してるところ。島のほうがのんびり過ごせるから病気治すのにはいい環境だしって。羽依里はどうするの?』

 

『俺は学校がまだあるからな。夏休みが終わったらまた本土生活だな』

 

『そっかー。それは寂しくなるね』

 

『鴎がこの島にいるなら俺は毎週来るさ』

 

『ほんと!?』

 

『ああ。ほんとだ』

 

『それなら私も頑張らないとね』

 

『さて、そろそろ行くか』

 

 

気持ち暑さも和らいだのでここから灯台までゆっくり歩いて行く。

 

 

『鴎、足は大丈夫なのか?』

 

『うん。大丈夫だよ!』

『~♪きみーとーいっしょならー♪』

 

『Withだっけ?いつも歌ってたもんな』

 

『うん!あっ!灯台見えてきた!』

 

歌を口ずさみながら歩いていると灯台が見えてきた。

改めてみると大きく手入れがきちっと行き届いている灯台だ。

 

『すごーい』

 

灯台を見上げているとそこには金髪の女の子がいました。女の子は羽依里に声をかけてきました。

 

『むぎゅ!?そこにいるのはタカハラサンです!』

 

『よう!』

 

『羽依里、誰かな……?』

 

『初めまして。ワタシは紬・ヴェンダースといいます』

 

『私は久島鴎だよー!よろしくね、ツムツム!』

 

『むぎゅ!?新しい呼び方なのです!ところでお二人は何をしに灯台へ来れれたのですか?』

 

『ああ、散歩だよ』

 

『むぎゅ!ここは歩いてくる場所じゃないと聞いたことがあります』

 

『…なんか俺が言ったような気が…。まぁいいか』

 

『羽依里はね、私のリハビリに付き合ってくれてるの』

 

『むぎゅ?カモメサンはどこか悪いのですか?』

 

『昔から体が弱くてね。やっと回復してきたところなの』

 

『そですか。あっ。ちょっと待っててください』

 

そういうと紬は灯台の中へと入って行きました。

しばらくすると灯台の中から何かを手にして戻ってきました。

 

『お待たせしました。これをどうぞ。いろいろなビョウキに効くお薬だそうです。裏の砂浜にたくさん流れ着いていました』

 

『へぇ、そんなのがあるんだな。ん…流れ着いて……?なになに…ひでんピザドリンク……。はい!!』

 

『むぎゅ!?タカハラサンどうして突き返すのですか?』

 

『心の底からヤバイという感情が…。ものすごくアブナイと思うんだ…』

 

『羽依里〜用意してくれたツムツムに失礼だよー。せっかくくれるっていうんだしね。本当に効くかもしれないし…』

 

『か、鴎っ!?やめとけ!?』

 

私はツムツムにもらったドリンクを勢いよく口の中に流し込んだ。

 

『………む………。ごっほごほっ』

 

『いわんこっちゃない…』

 

『…羽依里…。この世のものとは思えない味がするよ…』

 

『今度からは迂闊に飲まないようにな』

 

『うん、そうする…』

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

『じゃあツムツムまたね!』

 

『カモメサン、タカハラサン今日はありがとうございました!』

 

『また来るよ』

 

『ハイ、お待ちしています』

 

ツムツムと別れ灯台を後にする。

 

『ツムツムいい子だね!』

 

『くれるものはぶっ飛んでるけどな…』

 

『あ、羽依里…空見て…』

 

『ん?』

 

私は灯台の向こうへ日が沈みかけていた夕陽を静かに見つめていた。

 

『きれいな夕陽だな』

 

『うん。ほんとにキレイ』

 

こんなに綺麗な夕陽を見るのはいつぶりだろう。楽しくて一日があっという間に終わっちゃうなぁ…。

 

『見てるのもいいけどそろそろ行こうか。あまり遅いと暗くなる』

 

『うん、そうだね』

 

私と羽依里は港へと足を向けました。

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

『ここでいいのか?』

 

『うん、おかあさんが迎えに来てくれるから大丈夫だよ!』

 

『鴎、お帰りなさい』

 

『あ、おかあさん、ただいま!』

 

『鷺さんこんばんわ』

 

『羽依里さん、いつも鴎を送っていただきありがとうございます』

 

『気にしないでください』

 

 

『羽依里ーまた明日ねー』

 

『ああ、また明日な』

 

 

また明日って言えることがとてもうれしい。この先もずっと言っていけるといいな。

 

 

 




(ノ*°▽°)ノルーっ!
こんにちは!Summer Voyage第一話読んでいただきありがとうございます。

個人的な主観が多いかと思いますが鴎ルートの先が『こうであったらいいな』を描いています。

※2021年4月3日加筆修正

今回の中で紬が持ってきたドリンクはCharlotteで有名なひでんピザソースを使用した特製ドリンクです。どこかのブラック企業が海に捨てたのでしょうか…。

しばらくの間は鴎と羽依里が冒険する様子を描いていく予定です。
緩やかな更新になると思いますが、読んでいただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。



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