現代童話集 作:早崎 富也
あるところに、料理を作るのが得意な少年、A君がいました。
A君はよく料理を作り、友達にご馳走していました。
ある日友達の一人、B君が言いました。
「君は将来、コックさんになれるだろうな」
「ああ、僕は将来料理を作る仕事をするんだ!そして、いつか自分の店をだすんだ!」
▽
それから数年たち、A君もB君も大人になりました。
B君はある会社の社員として働いていました。
ある休日、B君は公園でA君に会いました。
「久しぶりだな」
「そうだな。お前、今は何をやってるんだ?」
「ごく普通のサラリーマンさ。お前はどうなんだ?」
「それが……」
「?」
「料理学校を卒業してすぐ、あるレストランの厨房で働き始めたんだけど、すぐクビになったんだ」
「ええっ⁈」
「しばらくは、他の料理屋とかをまわっていたんだけど、どこもすぐクビになってさ。だから、料理屋を始めたんだけど、それも全然上手くいかないんだ」
「どうして?あんなに料理得意だったじゃないか?腕が落ちたとか、そんなわけないだろ?」
「もちろんだ。料理学校でも成績は優秀だったし、いろんな資格も手に入れたんだ。それなのに全然ダメでさ」
「どうしてなんだ?」
「さっぱりわからないよ……。よかったら、相談にのってくれないか?」
「いいぞ。いつになるかわからないけど、お前の店に行くから。俺でよければいくらでも知恵貸すよ」
「ありがとう」
▽
それから数日後、B君はA君の店に行きました。
そして中に入ってビックリしました。
お店の中がとても汚いのです。
とても食事ができる状態ではありません。
食器も全て汚れていますし、冷蔵庫の中に食材はほとんどありません。
残っているものも、賞味期限が切れたものや、カビが生えたものばかりです。
レジを見てみると、お金は乱雑に入っていて、ちゃんと管理されていないことが明らかです。
B君はすぐにA君に訊きました。
「お店の掃除はどうしてるんだい?」
「してないよ」
「食器は洗っているかい?」
「いいや」
「食材の調達は?」
「私用のついでにやってる」
「お金の管理は?」
「特に何も」
「誰か人をやとったりは?」
「してない」
「どうしてやらないんだい?それじゃあ、すぐクビになるし、お店が上手くいかないのも当然だよ」
「だって僕は料理人だろ?料理を作るのが仕事だろ?
だったら掃除したり、食器を洗ったり、食材を買ったり、お金や人の管理をするのは僕の仕事じゃないだろ」
B君はため息をついて思うのでした。
(料理人は、料理だけやってればいいってわけじゃない。料理だけが得意でも、料理人になれるとは限らないんだなァ……)