カズマと名乗るのは恐れ多いのでカズヤと名乗ることにした   作:美味しいパンをクレメンス

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今回は、文字数がいつもの二倍弱ほどあります。
長いけど、分割もしたくなかったし、カットもしたくなかったので、全部ぶちこみました。


かつて交わした約束と、これからへの誓い

カズヤと未来の存在をロストし、シェルブリットと神獣鏡の反応が途絶したことがもたらした混乱は、マリア達にとって大きな衝撃となっていた。

 

「カズヤは!? カズヤはどうなったの!!」

 

半ば錯乱したように叫ぶマリアの隣で、ナスターシャは手元の機器を操作し何か見落としがないか、二度三度と確認を行うが、結果は無情なものであることに体を震わせた。

 

「...二人の反応が、ありません。フロンティアの封印が解除されたと同時に、二人の存在が消えてしまいました...一体何が起こったのかすら、分かりません」

「そんな!?」

「...カズヤさんと未来さんが...」

 

目に涙を溜めて言われたことを認めたくないマリア、ショックで膝を突きそのまま座り込んでしまうセレナ。

その二人の後ろで、切歌の目から涙が零れる。

 

「嘘デスよ...カズヤと未来さんが...いなくなっちゃったっていうんデスか? そんな、嘘デスよね!? ねぇ!!」

「...切ちゃん」

 

悲し気な表情で切歌を横から窺う調。

そして調に宿ったフィーネは、カズヤと未来が消滅した現象に心当たりがあり、舌打ちしたい気分だった。

 

『あの光の柱、たぶん、彼が二課に初めて来た時に聞かせてくれた"向こう側の世界"、その扉でしょうね。クリスと一騎打ちした後にもその片鱗は見せたけど、完全な扉の存在がこれほどまでに凄まじいとは......未来ちゃんを止める為とはいえ、力の使い過ぎで扉開いて二人纏めて取り込まれるなんて、間抜けにもほどがあるわよカズヤくん!?』

 

あの男がこの程度で本当にくたばるとは微塵も考えられないし、彼の性格上、何が何でも戻ってくるだろうが、今この場からいなくなってしまったのは事実で、かなりの痛恨だった。

しかも二課の装者は神獣鏡の力で無力化されている。

 

『もう二課に残ってるまともな戦力なんて弦十郎くんくらいじゃない! それでもノイズには歯が立たないし!』

 

ウェルは今も尚、ソロモンの杖を所有している。いくら弦十郎が強くても、ノイズの位相差障壁と炭素分解を無効化できない以上、アドバンテージは揺るがない。

 

『かといって私は表立って動けない...どうする?』

 

調の魂を塗り潰すことは絶対にしたくない。

だがこの場で調から肉体の主導権を奪うのは難しい。

......いや、この際だ。逆の発想でいこう。あえて表立って動けるようにすればいい。

調を介してフィーネとして、あえて堂々と行動できるようにするのだ。

その為にも──

 

『調にちゃんと説明して、協力してもらえるようにしておかないと』

 

できる限りのことはしておこう。そう思考し、フィーネは調に声を掛けた。

 

 

 

『調、調、私の声が聞こえてるんでしょう!?』

 

また声が聞こえてくる。知らない女性の声。

いや、本当は誰なのかとっくに分かっている。ただ、その事実を認めてしまえば、自分が自分でなくなってしまうのを容認してしまうようで、怖くて知らない振りをしていただけ。

 

『もう色々と段階すっ飛ばしてはっきり言うわ! 私はフィーネ、私の魂はマリアではなくあなたの肉体に宿っているのよ!』

「嫌ぁぁぁ!!」

 

突然頭を抱えて蹲り叫ぶ調に周囲の視線を集めるが、調はそれどころではないし、フィーネも気にしなかった。

 

『落ち着いて聞きなさい! 確かに私の魂はあなたの肉体に宿っているけど、あなたの魂を塗り潰すつもりもなければ肉体を乗っ取るつもりもないから安心しなさい!』

 

叱るように言いつけてから矢継ぎ早に続ける。

 

『今の状況を私が分かる範囲で説明するわ。まずさっきの光の柱は"向こう側の世界"への扉。カズヤくんのアルター能力の源であり、この世界とは違う異世界へと繋がっているの。カズヤくんと未来ちゃんの二人はその世界に取り込まれただけで、死んではいないわ』

「本当!? カズヤと未来さんは、生きてるの!?」

 

思わず叫ぶ調の声は更なる驚きを振り撒くが、そんな周囲の反応など知ったことかと二人の会話は続く。

 

『ええ、たぶんね。ただ、"向こう側"に取り込まれたことは事実だから、帰ってくるのを待っていたら何年経ってるか分からないけど』

「どういうこと?」

『こちらの世界と"向こう側"とでは時間の流れが違うらしいのよ。ネフィリムの暴走がマリア達にとっては六年前の出来事でも、今年の四月まで"向こう側"にいたカズヤくんにとっては数ヶ月前の出来事だったってこと。つまり、あの二人に再会できるのは早くても数年後になる』

「そんな!!」

 

蹲って頭を抱えていた状態から急に立ち上がり、何とかならないのかと声を上げた。

 

「マリアとセレナは六年も待ったんだよ! やっと会えたのに、さよならも言えないこんな別れ方で、また何年も待たなきゃいけないの!?」

『生きてるんだからまだマシ、と考えるしかないわ。それよりも、あなた達にはまだやるべきことがあるでしょ』

 

言われて初めてハッとなる。

 

『そもそもあなた達は何の為にここまで来たの? 世界を救うんじゃなかったの? カズヤくんがいなくなって、それで心が折れる程度の覚悟で世界を救おうとしていたなんて、笑わせないで!』

「そうだ...私達は世界を...」

『ネフィリムの成長、フロンティアの封印解除、ここまでお膳立てしてもらいながら、もし世界が救われてなかったら、数年後に彼が戻ってきた時にどうすると思う? とりあえずあなた達にシェルブリットバーストをぶち込むわよ』

 

獣の咆哮に似た雄叫びを上げ、光輝きながらこちらに向かって拳を振り抜こうとするカズヤを想像し、調は冗談抜きで危うく気絶しそうになったが気合いで耐え、強い意志を瞳に宿す。

 

「私達がやらなきゃ。フロンティアの力で世界を救う...戻ってきたカズヤに怒られない為にも」

 

そこで調は気づく。今、自分が周りからどのような目で見られていたのかを。

 

「し、調?」

 

切歌が得体の知れないものを見るような目で見つめる。

 

「...調...あなた」

「調、さん...?」

 

マリアとセレナも戸惑っていた。

ナスターシャとウェルも訝しむような表情だ。

 

『調。体を貸して』

 

困った彼女は、不意に聞こえたフィーネの声に体を委ねた。

 

 

 

「私はフィーネ。今までマリアに私の魂が宿っていたとしたけれど、それは偽り。本当はこの調の肉体に宿っているの」

 

この発言に誰もが唖然とする中、先程調に説明した内容にいくつか追加する形で伝える。

 

「カズヤくんと未来ちゃんはアルター能力の源、"向こう側の世界"という異世界に取り込まれたわ。暴走した未来ちゃんを止める為、カズヤくんは全身の肉体をアルター化させるシェルブリットの最終形態を使った。けど、力を使い過ぎてしまったことで"向こう側の世界"にアクセス過多を起こし、扉を開いてしまった」

 

金の瞳で周囲を睥睨した。

 

「二人は死んでいないけど、暫くは帰ってこれない。残念だけど、ここから先は私達だけで計画を進めるしかないわ。ということで、マリア」

「な、何...?」

 

呼ばれてビクリと肩を震わせたマリアにそのまま指示を出す。

 

「あの光の柱が消えたらエアキャリアをフロンティアに着陸させなさい。着陸地点は私の言う通りにお願いね」

 

無言で頷く彼女に満足気な笑みを浮かべてからウェルに視線を向ける。

 

「ドクターはネフィリムの準備を」

「...言われなくてもそうするつもりですが、話が違いませんか? 私はマリアにフィーネの魂が宿ったと聞いてこの作戦に参加したのですが」

 

やはり非難するように食いついてきた彼に舌打ちしそうになって、なんとか目を細めるだけに抑えてから努めて平然と言い放つ。

 

「あれはブラフよ。本物の私に目がいかないようにする為の。敵を騙すにはまず味方から、っていう諺を知らないかしら?」

「ブラフ、ですか」

「そもそも私がこの中の誰に宿ろうとあなたに何か問題がある? こうして私は復活を遂げた、それで十分じゃない」

「まあ、そういうことにしておきましょうか」

 

眼鏡の位置をクイッと直し、ウェルはネフィリムの準備をする為に退室した。

なんとか上手く切り抜けたことに安堵の溜め息を吐いたタイミングで切歌が涙を零しつつ問う。

 

「フィーネの魂がマリアに宿っていたのが嘘で、本当は調に宿っていたなら、調は、私の大切な調はどうなってしまったデスか!?」

 

切歌の号泣を見て慌ててフォローに入る。

 

「安心して。あくまでも私は調の体を間借りさせてもらってるだけ。この子の魂を塗り潰すつもりも、体を乗っ取るつもりもない。これからのことについて口出しはするけど...だから、調、後はよろしく」

 

何度も同じ説明を行う疲労から、泣いている切歌の相手まで受け持つのは面倒臭くなり、体の主導権を調に返してフィーネが引っ込む。

 

「切ちゃん、私は大丈夫だから泣き止んで、ね?」

「調!? 調デスか! 調ぇぇぇぇ!!」

 

抱きついてきた切歌を抱き締め返し、調は彼女を安心させるように背中を優しく叩いてあげた。

 

 

 

暫くして、エアキャリアはフィーネの指示に従い、フロンティアに着陸する。

フィーネを宿した調を先頭に、ウェル、車椅子のナスターシャ、マリア、セレナ、切歌、そして象よりも大きな体躯を誇るネフィリムという順番で一行は進む。

懐中電灯を片手に、暗い洞窟の中のような回廊を無言で進む一行を包む空気は重い。

消えてしまったカズヤと未来について、つい先程質問されたことに正直に答えてしまったのは、迂闊だったかとフィーネは悩む。

下手に希望を持たせてしまうと後で絶望することになる、と判断し「いつ二人が戻ってくるのか?」というセレナの質問に「早くて数ヶ月後、遅くて数年後」と伝えたのだが、フィーネの予想を大きく上回るイヴ姉妹の打ちひしがれた姿は見ていられたものではない。

 

(想いを伝えることもできぬままの別離...痛いほど分かるわ)

 

だからか、フィーネはさっきからマリアとセレナのことが気になって仕方がなかったが、どうすることもできず歯痒い気持ちだ。

それぞれの足音とネフィリムのズシンズシンという重い足音をBGMにし、やがて一行はフロンティアにおけるジェネレータールームに相当する場所へと到着した。

 

「ネフィリム」

 

静かな声でウェルが声を掛ければ、部屋の中央に鎮座する巨大な球体状の物体にネフィリムが取り付く。

すると象よりも大きな体躯は見る見る内に球体状の物体に吸い込まれていくようにその体積を減らしていき、ついには完全に溶け込んでその姿を消してしまう。

 

「ネフィリムは今、フロンティアと一つになったのですよ...ふくくくくく」

 

下卑た笑みを浮かべてウェルがそう言うと、これまで沈黙を守っていた巨大な球体状の物体が脈打ち、光輝き始め、エネルギーを放出した。

変化はそれだけ留まらない。ネフィリムがフロンティアと一つになったことにより、フロンティアが起動したことの証として様々な場所で照明が点く。何の為に置いてあるのか分からない石板に記載された古代文字が光を放つ。

内部からでは分からないが、外壁部などに自生していた草木なども青々と新芽を実らせ、通常ではあり得ない速度の成長を見せていた。

 

「これでフロンティアは起動した。後は月の軌道を元に戻すだけね...ナスターシャ、制御室をお願いしてもいいかしら?」

「...分かりました」

 

少し肩の荷が下りたという感じで疲労したように言うフィーネに、ナスターシャは首肯する。

 

「さて、では僕はブリッジに向かうとしましょうかね」

「待ちなさい」

 

こちらに背を向け歩き出すウェルにフィーネが待ったを掛けた。

 

「何か?」

「これで月軌道を元に戻すことができれば、あなたは間違いなく歴史に英雄として名を残すことでしょう」

「...」

「だから、余計なことは考えず、世界を救うことだけに集中して」

「安心してくださいよ。人類救済こそが我々の崇高な目的ですから」

 

これはウェルに対する釘刺しだ。

ルナアタック以降、ウェルは表に出さないようにしていたがカズヤのことを異様なまでに敵視していた。

だからこそ、異常を通り越した英雄願望を持つこの男の扱いは、現段階で細心の注意を払わなくてはならない。

個人的には心配や不安の種など今すぐこの場で消してしまいたいが、調の体を借りている状態で、そんな血生臭いことはできない。

 

(本来ならカズヤくんがこの男を見張ってくれることになってたのに)

 

あの暴力装置のような男の前ならウェルも迂闊なことができまい、と考えていたことだった。

今更無い物ねだりなどみっともないが、無い物は無いので代わりを用意するしかない。

 

「マリア...ドクターに付いてあげて」

「私!?」

 

驚くマリアに構わずフィーネは歩きながら口を開く。

 

「大したことじゃないわ。一応のお目付け役よ...私達はフロンティアに邪魔者が侵入した場合の迎撃に出るわ。セレナ、切歌、ついてきて」

 

フィーネとしては危険性を孕んでいるウェルを、年長者であるマリアに任せておきたい、という思考から出た指示であった。また、早い段階で弦十郎達二課の面々と合流して、順に元F.I.Sのメンバーを二課に寝返らせたかったのである。

なので、制御室をナスターシャに任せ、ブリッジに行きたがるウェルに釘を刺した上でマリアを同行させ、自分はセレナと切歌を連れてこちらに向かっているであろう弦十郎達と合流を果たす。

しかし、ここで彼女は大きな勘違いをしていたことに気がつかない。

それは、ウェルが抱え持つ英雄願望と承認欲求と自己顕示欲の強さが、彼女が思うより遥かに常軌を逸していたこと。

カズヤがいなくなったことが、ウェルにとって目の上のたんこぶが消えたことと同義であったこと。

ルナアタック以降英雄扱いをされているカズヤへの嫉妬と敵対心が、ウェルの中で燻り続けたことで強大な力への渇望を生んでいたこと。

そして、

 

(...カズヤ...)

 

カズヤがいなくなったことで、マリアから活力や覇気などの類い、及び使命感などがごっそりと削られていたことを。

フィーネがこの時できた最善は、ウェルの殺害しかなかった。

 

 

 

「セレナ、切歌、調。まず最初に謝っておくわ。私ね、実は切歌と調がリディアンの秋桜祭にやって来た日からカズヤくん達の協力者として動いてたの」

「「っ!?」」

『!?』

 

外の景色を一望できる外壁部まで辿り着いて、後ろに振り返り告げると、ついてきた二人が驚愕で固まり、体を貸してくれている調が緊張するのが分かる。

 

「でもね、これはあなた達を捕まえる為じゃない。悪を貫いてでも世界を救済する、というあなた達の決意に賛同する形で、っていう注釈がつくんだけどね」

 

誤解を生まぬよう、歩きながら真摯に説明を続けた。

 

「あの日、あなた達の本当の目的を私から聞かされたカズヤくんは、マリアとセレナと切歌と調が本来は善良な人間であると見極めた上で、こちら側についてくれたのよ。だから、四人が彼をネフィリムから庇ったあの時点で、彼はもう全部知ってたの。知った上で、知らない振りをしてたのよ。今後のあなた達の行動が円滑にいくようにね」

「カズヤさんが...」

「だから二課の面々は私達の味方よ。これから合流するだろうから、攻撃しちゃダメよ」

 

そう言ってイタズラっぽく笑った瞬間、三人の背後で──フロンティアの尖塔部分から凄まじいエネルギーが光となって上空へ放出された。

 

「へ...」

「な、何が!?」

 

切歌とセレナが呆然として見つめる中、光の束は巨大な手の形となって月まで伸びると、そのまま月を掴み、眩い光を撒き散らしながら炸裂する。

すると大きな振動がフロンティア全体を襲う。

 

「あのクソ眼鏡、一体何をしたの!? っていうかマリアは何をしていたの!!」

 

先程の光がアンカーの役目を果たし、月にアンカーを打ち込んだことでフロンティアが浮き上がっている、ということに流石のフィーネでもすぐには気づけない。

何が起きているのか分からない。分からないがウェルが何かしたのだけは確実だ。

止めないと、そう思いつつも揺れが酷い。なので揺れが収るのを待ってから走り出そうとして、遠くから砲撃音が微かに聞こえてきた。

 

「......砲撃音? 砲撃音!?」

 

砲撃音がした方向に体ごと向き直る。

 

「まさか、米国の第二陣による攻撃?」

 

カズヤが死者を出さないように潰した米国の哨戒艦艇が第一陣だったとしたら、今フロンティアに向けて攻撃しているのは第二陣で間違いないだろう。フロンティア封印解除まで、彼が装者達との戦闘に時間を掛け過ぎたのだ。

 

「セレナ、切歌、ブリッジに向かうわよ! あのクソ眼鏡の眼鏡を叩き割って──」

 

フィーネの怒声を轟音が遮る。

その音は地面から──もっと正確にはフロンティアの真下から聞こえたような気がした。

 

「今度は何が...」

 

急がなくてはいけない。どう考えてもウェルがフロンティアの力を好き勝手しているとしか思えない。

やはりウェルは信用ならない人間だった。最早奴は殺すべきだ。これ以上何かする前に。

改めて走り出そうとしたその時、視界に醜い肉塊が映る。

その肉塊が蠢きグネグネと音を立てて形を変え、やがて──

 

「ネフィ、リム...?」

 

大型の肉食獣を超える体躯を持ったネフィリムとなった。

一体だけではない。そこら中から、地面からボコボコと生まれてくる。

気がつけばネフィリムの大群に囲まれていた。

次いで、それらが咆哮を上げ一斉に襲いかかってくる。

 

「ちっ!」

 

咄嗟にドーム状に桃色の障壁を張り、セレナと切歌、そして宿主である調の体をネフィリム達の突進から守った。

 

「どうしてネフィリムが!」

「しかもこんな大量デス!?」

「あのクソ眼鏡の仕業に決まってんでしょ二人共! あいつは私達を皆殺しにするつもりよ! だから早くシンフォギア纏って! 調も今から体の主導権を渡すから聖詠の準備を! 私は出来る限りバリアでサポートするわ!! 相手は聖遺物を食らう化け物、手加減抜きで戦わないと食い殺されるわよ!!」

 

言って、障壁を解除するタイミングを見計らいながらフィーネは調に宣言通り体の主導権を渡す。

 

『ええい! とんだ貧乏くじ引いたわ! これも全部カズヤくんがいなくなったせいなんだからね!!』

 

誰にも聞こえない声でこの場にいない男に文句を吐きながら、フィーネは調の中から現状を忌々しく思うのだった。

 

 

 

少し時間は遡る。

お目付け役としてついてきたマリアの存在を若干鬱陶しく思いながらも、昇降機でブリッジに到着したウェルは興奮と歓喜で頭がどうにかなりそうだった。

まさか、まさかまさかあの男が、"シェルブリットのカズヤ"がフロンティアの封印解除と同時に消えてしまうという思わぬラッキー。宝くじで一等が当たるよりも遥かに価値がある幸運だ。

調に宿っていたフィーネの存在は想定外だが、どちらにせよシンフォギア装者という存在は、これからの自分の為の新世界には不要なので宿主ごと消してしまえばいい。

ブリッジ中央部に、フロンティアを操作する為の装置と思わしきものまで歩み寄り、懐からある物を取り出す。

 

「それは?」

「LiNKERですよ。聖遺物を取り込むネフィリムの細胞サンプルから生成したLiNKERです」

 

マリアの疑問に答えつつ、自身の左腕の袖を捲り、一切の躊躇なくLiNKERを打ち込み、体内に緑色の液体を注入。

変化はすぐに現れ、痩せた成人男性の腕が数秒で浅黒い異形の腕へと変異する。

声を押さえつつ低い声で笑いながら、異形と化した左手でフロンティアの装置に触れた。

左手に呼応して装置に罅状の赤い光が走り、その光が消えると装置全体が、ブリッジ全体がウェルの操作を待つかのように起動し、明滅し始める。

 

「ふへへへへ、早く動かしたいなぁ。ちょっとくらい動かしてもいいと思いませんかぁ? ねぇ、マリア」

「...」

 

答えない彼女を放置し、光る古代文字が記載された石板の表面に外の映像を映す。

米国の軍艦が多数、フロンティアに接近している光景が確認できた。

 

『これは...』

「どうやら、のっぴきならない状況のようですよ」

 

制御室にいるナスターシャも外の映像を確認して声を上げている。

 

「一つと繋がることで、フロンティアのエネルギー状況が伝わってくる」

 

ウェルの口元が喜悦に嫌らしく歪み、狂気を含んだ目が爛々と輝く。

 

「これだけあれば、十分にいきり立つ...!」

『早過ぎます、ドクター!!』

 

ナスターシャの制止の声など最早耳に入らない。

 

「さあ、イケ!!」

 

己の意思に従ってフロンティアが動く。

フロンティアの尖塔部分にエネルギーが集まり、それが月に向かって発射された。

光は瞬く間に月に到達すると、巨大な手の形となり月を掴む。

 

「どっっっこいしょおおおおおおお!!!」

 

狂喜の雄叫びを上げるウェル。

月を掴んだ巨大な光の手は炸裂して消滅すると、フロンティア全体が大きく振動しながら宙へと浮き上がる。

これまで海面の上に浮いていただけの島だったのが、重力を無視してどんどん高度を上げていき、ヘリや飛行機といった空を飛べなければ絶対に届かない高度まで上昇して、漸く止まった。

米国の軍艦から艦砲射撃がフロンティアの底部分に着弾するが、その程度ではビクともしない。 

 

「愉し過ぎて眼鏡がズリ落ちてしまいそうだ」

 

自分達が一体どれほど強大な存在に立ち向かっているか理解していない哀れな生け贄共を血祭りに上げる為、フロンティアの力を試す為、手にした力を世界に知らしめる為、ウェルはフロンティアに命令を下す。

フロンティアの底部分に設置されているリング状の物体と、その中心にある柱のようなものから光が迸る。

次に起きたのは米国の軍艦全てが、見えない巨大な手に掴まれたかのように宙に浮き上がり、そのまま握り潰されたかのようにぺしゃんこになってから爆発四散したことだ。

 

「制御できる重力はこのくらいが限度のようですね...んふふふ、ふははははは、あはははははははは!!」

 

今、行使した力を目の当たりにして、ウェルは狂ったように──否、既に狂っていた──哄笑する。

 

(果たしてこれが、人類を救済する力なのか...)

 

その隣では、マリアが力に酔うウェルの姿に戦慄していた。

 

「手に入れたぞ、蹂躙する力を...これで僕も英雄になれる! あいつを、"シェルブリットのカズヤ"を遥かに超える英雄に!! でぇへへへへ、この星のラストアクションヒーローだぁぁ! やったぁぁぁっ!!!」

 

眼鏡を外し、ウェルは天を仰ぐように笑い続けた。

 

 

 

「行き掛けの駄賃に、月を引き寄せちゃいましたよ」

「月を!? 落下を早めたのか!? 救済の準備は何もできていない! これでは、本当に人類は絶滅してしまう!!」

 

先程の操作が一体何だったのかを得意気に語るウェルを押し退け、マリアは装置に手を翳すが何の反応もなければ操作を受け付けない。

 

「どうして!? どうして私の操作を受け付けないの!?」

 

嘲笑いながらウェルが答える。

 

「LiNKERが作用している限り制御権は僕にあるのです」

 

彼はマリアに向き、言う。

 

「人類は絶滅なんてしませんよ。僕が生きている限りはね」

 

両手を広げ、これまでひた隠しにしていた野望の片鱗を──化けの皮を剥がして見せた。

 

「これが僕が提唱する、一番確実な人類の救済方法です」

「そんなことの為に、私は悪を背負ってきた訳ではない! そんなことの為に、カズヤはその身を犠牲にしてまでフロンティアの封印解除に力を尽くしてくれた訳じゃない!!」

 

激昂したマリアがシンフォギアを纏わずウェルに掴みかかろうとしたが、

 

「ハンッ!!」

 

逆に裏拳を食らって倒れ伏す。

 

「ここで僕に手を掛けても、地球の余命があと僅かなのは変わらない事実だろ? ダメな女だなぁ!」

 

倒れた彼女を見下ろし、指差し笑いながらウェルは続けた。

 

「フィーネを気取ってた頃を思い出して、そこで恥ずかしさに悶えてな」

 

悔しさと悲しみ、そして今まで我慢していたカズヤがいなくなってしまったという喪失感から、ついにマリアは声を上げて泣き出した。

 

「...カズヤ...カズヤァ、どうして、どうしてあの時のように、私達を、置いていなくなってしまったの...やっと、やっと会えたのに...あなたに伝えたいことが、あったのに...」

 

そんな彼女から踵を返し、ウェルは何処かへと歩き出す。

 

(そこで気が済むまで泣いてなさい......僕はその間に、さっきこっそり放った可愛いネフィリム達を応援してきますからね)

 

勿論、その様子を誰にも見られないようフロンティアを操作しながら、ソロモンの杖を右手に握って。

 

 

 

『マリア。今、あなた一人ですね』

 

突如聞こえた声に、マリアは横になっていた状態から上体を起こして涙を袖で拭う。

 

「...マム?」

『フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました』

「え...!」

『最後に残された希望...それにはあなたの歌が必要です』

「私の、歌で?」

 

言われたことがよく理解できず呆然とするマリアに、ナスターシャは説明を開始する。

 

『月は、地球人類より相互理解を剥奪する為、カストディアンが設置した監視装置。ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動できれば、公転軌道上に修正可能です...うっ、がはっ!』

 

説明の最中、間違いなく血を吐いたのだろう。激しく咳き込んでいる声が響く。

 

「マム!? マム!!」

『あなたの歌で、世界を救いなさい...きっとそれは、彼も、カズヤも望んでいることでしょう』

「っ!」

 

他者からカズヤの名前を出され、マリアは自分がどれだけ無様に泣き喚いていたのかを自覚して、息を呑む。

 

『何の為に彼がこちらに協力してくれたのか、忘れたのですか? 全ては世界を救う為。私達は彼に託されたのです。託された以上、成し遂げなくてはなりません。それとも、マリアのカズヤに対する想いは、その程度だったのですか!? 今のあなたを見て、彼がどう思うか考えてみなさい!!』

 

この叱咤激励を受けて、マリアは漸く立ち上がってみせた。

 

 

 

「デェェェェス!!」

 

切歌が気合いと共に鎌を振り回し、迫り来るネフィリムを三体同時に斬り裂き、両断する。

 

「はああ!!」

 

調が回転する鋸を飛びかかってくるネフィリムに押し当て、真っ二つにした。

 

「二人共、前に出過ぎないで!!」

 

時に蛇腹剣を振るい、時に召喚した短剣の群れを射出してネフィリムの群れとの距離を保ちながらセレナが叫ぶ。

量産された大量のネフィリムは、一体一体の強さは大したことがなかったし、何も考えず飛びかかってくるだけなので倒すこと自体は問題ではなかったが、その数が異常だ。

倒しても倒しても地面から、建物の壁から生まれてくる。

また、倒した残骸を食らって分裂して増えたり、もしくは分裂せずにより強く大きくなる、という成長機能までをも有しており、時間が経てば経つほど不利になっていく。

数の暴力に押され、三人はどんどん疲労を重ねてしまう。

最早視界はネフィリムの醜悪な姿で埋め尽くされており、逃げることもできない。

 

(どうしたらいいの!? このままだと...)

 

頬に流れる汗を拭う余裕もないセレナの思考は焦る。

そこへ、更なる絶望が──追い打ちとしてノイズの群れが現れた。

 

「あのキテレツゥゥゥ!!」

 

ノイズがウェルの手によるものといち早く気づいた切歌が激怒し、これまで以上に鎌を振り回すが、ネフィリムに混ざったノイズのせいで、わらわらとこちらに集まる敵の数は減るどころか増える一方だ。

三人は、自分達に死神が歩み寄っていることを強く自覚した。

 

 

 

全世界に向けたライブ中継。

マリアは、これまで隠蔽されていたことを──特権階級の者達にとって不都合な事実を白日の下に晒し終えた。

 

「全てを偽ってきた私の言葉、どれほど届くか自信はない。だが、歌が力になるという事実だけは信じて欲しい」

 

目を瞑り、聖詠を歌う。

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl」

 

待機状態のペンダントが瞬き、漆黒のシンフォギア──ガングニールを纏い、世界に向けて訴える。

 

「私一人の力では、落下する月を受け止め切れない。だから貸して欲しい、皆の歌を届けて欲しい!!」

 

そして彼女は全世界の注目が集まる中、一人で歌い始めた。

 

 

 

セレナにとって死を覚悟するのは久しぶりだ。

六年前のあの時以来だろう。

自身の後ろでボロボロな状態なのにまだ戦おうとする、家族同然の妹分の二人を肩越しに振り返り、彼女は二人に微笑んだ。

 

「二人は私が守ります」

 

セレナの覚悟を感じ取り、二人の脳裏にまさかと嫌な予感が浮かぶ。

 

「絶唱を歌うつもりデスか!?」

「ダメだよセレナ! そんな状態で歌ったらセレナの体が!!」

 

調の悲痛な声の通り、戦いの中、二人を何度も繰り返し庇ったセレナはボロ雑巾の方がマシという有り様だった。

装甲は砕け落ち、インナーは血塗れ、手にしたアームドギアも刃が半ばから喪失しているのだ。

 

「それで二人を守れるなら、本望です」

「やめなさいセレナ! この数を相手に絶唱を使っても焼け石に水よ!!」

 

調の声だけを使ったフィーネの制止もあえて無視。

目の前に、大量のネフィリムの残骸とノイズの群れを食らってその体を肥大化させた、とてつもなく巨大なネフィリムがいる。

 

(まるであの時みたい)

 

六年前もそうだった。

ネフィリムが目の前に迫っていて、皆を守る為にシンフォギアを纏って、絶唱を使おうとして──

 

(でもあの時とは違う...カズヤさんには、もう会えない)

 

力強くて頼もしい後ろ姿。

光輝く拳と腕。

耳にいつまでも残る雄叫び。

目を瞑れば、まるで昨日のように思い出せる光景。

恋焦がれていた男性は、いざ再会してみれば自身の拙い想像よりもずっと素敵な男性で、姉と一緒になって更に惹かれてしまった。

 

(いいの...だって、短い間だけど、一緒に同じ時間を過ごすことができた)

 

彼に再会できたという事実があれば、自分にはもう思い残すことはない。

だから、この命が灰になるまで燃やすことに、躊躇いはない。

だから──

 

 

「シェルブリットバァァァストォォォォッ!!」

 

 

突然だった。

声と共に後方から飛んできた金色に光る弾丸が、爆発的な突進力で突撃し、眩い光を爆裂させながらネフィリムを一瞬で粉微塵にして消し飛ばす。

弾丸──否、金色の光を全身から放つ男は、そのままこちらに背を向けたまま、スタッと着地した。

 

「あ、ああ...」

 

まるで六年前の再現だ。

橙色の装甲に覆われた右腕。

大きな背中と、右肩甲骨の回転翼。

肩越しに振り向いた際に見える、右目の周りを覆うような橙色の装甲。

あの時と違うとするなら、自分は彼の名前を知っていること。

故に叫ぶ。溢れる嬉し涙を抑えることも忘れ、あらん限りの声で、心の底から求めている男の名を。

 

「カズヤさん...カズヤさん、カズヤさん、カズヤさん、カズヤさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

そして男はニッと笑い応えた。

 

 

「あいよ」

 

 

 

 

 

【かつて交わした約束と、これからへの誓い】

 

 

 

 

 

右の拳を地面に叩きつけ、その反動で高く跳躍する。

跳んだカズヤに反応したネフィリム達とノイズ達が、彼を狙って動き、集まってきた。

眼下に集まる大量の敵に怯むことなく、握る拳に力を込める。

右肩甲骨の回転翼が高速回転し、軸部分から銀色のエネルギーを噴出させ、凄まじい推進力を得たカズヤが敵の群れに急降下を敢行。

 

「派手に決めるぜ!!」

 

拳を振り下ろし、閃光を伴う大爆発が発生。

たった一撃でネフィリムの群れもノイズの群れも、文字通り塵と化す。

 

『あの男、今更ノコノコと...っていうか、どうやって"向こう側"から戻ってきたのよ!? すぐ戻ってこれるならもっと早く帰ってきなさいよ!!』

 

フィーネが声にならない文句を言いつつ、彼が来た方角を確認し、窮地は脱したと安心する。

こちらに向かって飛来する四つのミサイル。更にそれぞれのミサイルの上に一人ずつ乗っているシンフォギア装者。

四人の装者がミサイルから飛び降り、セレナと切歌と調を守るような配置で着地した。

なお、乗り捨てられた四つのミサイルはそのまま敵の群れに突っ込んで爆発。一気にその数を減らす。

 

「セレナ、切歌、調、無事か!?」

 

ある程度敵を殲滅し、一旦こちらに戻ってきたカズヤがセレナのそばまで降り立つ。

セレナは堪らず抱きついた。

 

「余計な心配かけちまったな。すまねぇ」

 

右手を背中に回し、左手を頭の上に載せ、抱き締め返しながらセレナに優しく謝罪する。

彼女は溢れる涙をそのままに、カズヤの胸に顔を埋め、ただ声を押し殺して静かに泣く。

 

「た、助かったデ~ス」

「...もうダメかと思った...」

 

そのすぐそばで気が抜けた切歌と調がヘナヘナとへたり込んだ。

 

「おいおい、休憩にはまだ早いっつの。まだマリアと合流できてねーんだから」

 

この言葉にセレナは顔を上げるとカズヤに懇願する。

 

「お願いですカズヤさん! マリア姉さんを──」

「分かってる。あいつのことは俺に任せろ」

 

短い応答だが、込められた想いの熱さは筆舌し難いのを感じる。それに胸を打たれつつ、セレナはカズヤから離れた。

 

「ここは任せていいか?」

「モチのロンさ!!」

「防人の務め、果たしてみせる。だから行け、カズヤ」

「三人のことは私達が必ず守ります」

「早く行ってやれって。お姫様がヒーローをお待ちかねだ」

 

問いに対して奏が槍を、翼が刀を、響が拳を、クリスがボウガンをそれぞれ構え、微笑む。

 

「サンキュー」

 

一言礼を述べ、カズヤは踵を返し拳で地面を殴って跳躍、そのまま飛翔していく。

 

 

 

遠くを見る為に持ってきた双眼鏡でカズヤの姿を発見した瞬間、彼は逃げ出していた。双眼鏡を放り捨て、全力疾走でブリッジへ急ぐウェルの頭の中にあるのは、なんで? という疑問。

 

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでだぁぁぁぁぁぁ!! なんであいつがいるんだぁぁぁあ!? あいつはさっき消えたじゃないか!! どうやって戻ってきたんだぁっ!? しかも神獣鏡で無力化されたはずのシンフォギア装者を四人も引き連れて!!」

 

理由は不明。聞いた話と全く違う。まさかフィーネが騙したのか。

とにもかくにもブリッジに急がなくては。

ブリッジにさえ着けばフロンティアの力でなんとかなる、なるはずなんだ。

 

「僕は英雄なんだから、あんな奴らには負けないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

全力で歌い終わったマリアは、肩で大きく呼吸をしながら疲労で倒れまいとなんとか踏ん張るものの、立っているのが精一杯だった。

ブリッジの様子は、歌う前と変化は見られない。

 

『月の遺跡は依然沈黙...』

 

残念そうな声色のナスターシャの声を聞き、心が折れたマリアは膝を突いて四つん這いになってしまう。

 

「私の歌は、誰の命も救えないの? ごめんなさい、ごめんなさいカズヤァ...」

 

再び涙が込み上げてきて頬を濡らす。

 

「...カズヤァ...カズヤァ...」

 

体を震わせ、親とはぐれた幼子が親を呼ぶように、何度も何度も泣きながらカズヤの名を呼んだ。

 

『マリア、もう一度月遺跡の再起動を』

「無理よ! 私の歌で救うなんて!」

『...マリア...』

 

ナスターシャの再挑戦を促す声に強い拒絶を示す。

 

『月の落下を食い止める、最後のチャンスなのですよ。頑張りなさい、彼の為に!』

 

再度促され、マリアがふらふらと弱々しく立ち上がったところに、昇降機を使って下の階層からウェルが姿を現す。

ウェルはそのまま走ってくると、

 

「このヴァカチンが!!」

 

立ち上がったばかりのマリアを邪魔だとばかりに左の裏拳で殴り、地面に転がした。

 

「あうっ!」

 

悲鳴を上げて倒れるマリア。

 

「月が落ちなきゃ、好き勝手できないだろうが!!」

 

ウェルが装置に手を翳して操作しようとして、

 

『マリア!』

 

ナスターシャが彼女の名を呼んだ瞬間、ウェルの顔が不快気に歪む。

 

「ああん!? やっぱりオバハンか...」

『お聞きなさい、ドクターウェル! フロンティアの機能を使って、収束したフォニックゲインを月へと照射し、バラルの呪詛を司る遺跡を再起動できれば、月を元の軌道に戻せるのです!』

「そんなに遺跡を動かしたいのなら、あんたが月に行ってくればいいだろ!!」

 

怒鳴り声と共にウェルは装置に左手を叩きつける。

その際に送られた命令にフロンティアが従い、ナスターシャがいる制御室を含んだ区画が丸ごと切り離されてしまい、月に向かって打ち上げられた。

 

「マム!!」

 

うつ伏せの状態から顔を上げ、打ち上げられてしまった区画の映像を見てマリアが叫ぶ。

 

「有史以来、数多の英雄が人類支配を成し得なかったのは、人の数がその手に余るからだ! だったら支配可能なまでに減らせばいい。僕だからこそ気づいた必勝法。英雄に憧れる僕が英雄を超えてみせる! フヘヘヘヘヘヘ!!」

 

高笑いするウェルを、殺意と憎悪で濁った視線で睨み、マリアが立ち上がる。

 

「よくもマムを...!!」

 

アームドギアである槍を顕現し、構えた。

 

「手に掛けるのか? この僕を殺すことは、全人類を殺すことだぞ!?」

「殺すっ!!」

 

挑発するような物言いに即答したマリアが踏み込み、槍でウェルの肉体を貫かんと迫る。

 

「ええええええええええええ!?」

 

いざ殺されそうになると、いかにも小物臭が漂う見事な小物っぷりを晒すウェルの胴体に、槍の穂先が突き刺さろうとしたその瞬間、金属と金属が衝突するような甲高い音がブリッジに響き渡った。

 

「やめとけ。こんな汚ぇゴミの血で、お前が穢れる必要はねーよ」

 

それは、シェルブリット──右手で槍の穂先を掴み、マリアの攻撃からウェルを守るカズヤの姿。

 

「か、カズヤ...?」

 

眼前のカズヤの存在が信じられず動きを止めたマリアを見て、カズヤは槍の穂先を離すとウェルに向き直り、その腹に喧嘩キックをかましてぶっ飛ばす。

 

「ぶべらぁっ!?」

 

聞くに耐えない汚い悲鳴を上げて転がるウェルを無視して、カズヤは未だに呆然としてるマリアをギュッと抱き締めた。

 

「すまねぇ。遅くなっちまった」

「あ、あ、ああ...カズヤ、カズヤァァァ!!」

 

槍を足下に落とし、彼の腰に腕を回して恥も外聞もなく泣き叫んだ。

 

「何処に、行って、たのよ、あなたが、急に、いなくなって、私、私、また会えなく、なると、思って、凄く怖くて、悲しくて、辛かったんだからぁぁ...もう絶対に、私の、前から、勝手に、いなく、ならないでぇぇぇ...」

「悪かった、俺が悪かったよ。だから泣き止めって」

 

嗚咽を上げながらつっかえつっかえ訴えるマリアの頭を優しく撫でつつ、カズヤは今日で何度目になるか分からない謝罪を行う。

 

「マリア、すまねぇ。続きはまた今度にしようぜ」

 

彼女の両肩を掴んで体を離す。

背後では今更になってやっと立ち上がり、ソロモンの杖を構えたウェルがいた。

ゆっくりと余裕を持って振り返ってから睨む。

 

「おい。いい年こいて幼稚園児みてーな英雄ごっこ遊び拗らせてる自称英雄(笑)(かっこわらい)

「ごっこ遊びの(笑)(かっこわらい)だとぉっ!?」

「とりあえずソロモンの杖を寄越せ」

「これは僕のものだ! 真の英雄である僕が持つに相応しいんだ! 誰がお前なんかに渡すもんか!!」

 

案の定、カズヤの言うことに聞く耳持たないウェルがノイズを召喚し、カズヤとマリアを襲わせようとするが、

 

「つまんねぇ野郎だ」

 

召喚された瞬間、ノイズは虹の粒子となって消滅する。

 

「うぇっ!?」

「ノイズなんざ、俺には効かねーんだよ。とっくに知ってんだろ、バーカ」

「だったら、これならどうだぁぁぁっ!!」

 

続いて左手で床を叩けば、そこからぬるりとネフィリムが一体、象よりも大きな個体が現れた。

 

「ネフィリムはこのフロンティアと一つになっている! 故にエネルギーがある限り、僕は何度でも何体でも無尽蔵にネフィリムを──」

「輝け」

「っ!?」

 

遮るように紡がれた言葉とカズヤの動きにウェルは固まった。

全身から虹の光を放ち始めたカズヤが、顔の高さに右の拳を掲げ、手首の拘束具を弾き飛ばし、手首から肘にかけて装甲のスリットを展開したからだ。

 

「もっとだ、もっと!」

 

装甲のスリットが展開したことで開いた手の甲の穴に、光が収束する。

右肩甲骨の回転翼が高速回転し、カズヤの体が浮く。

その頃には、彼から放出される虹の光は金の光へと変化し、真夏の太陽にすら勝る眩しさと力強さを得ていた。

 

「もっと輝けええええええええええ!!」

「殺せ、ネフィリム、こいつを殺せ!!」

 

命令に従いネフィリムが飛びかかったと同時にカズヤも真っ直ぐ突っ込んだ。

 

「シェルブリットバァァストォォォ!!!」

 

鈍重な巨体を圧倒する速度で接近したカズヤが、ネフィリムの懐に容易く潜り込み腹部をぶん殴る。

ブリッジ内を金の輝きが支配し、収束していた膨大なエネルギーが爆裂し、粉々に爆散するネフィリム。

 

「ひぃぃぃ!!」

 

余波に巻き込まれ吹き飛ばされたウェルの手からソロモンの杖が落ちる。

それを左手で拾い上げ、尻餅の体勢で見上げてくるウェルに歩み寄り、心底軽蔑した眼差しで見据えた。

 

「そんなに英雄ごっこがしてーなら、幼稚園児からやり直せ」

 

その時だ。弦十郎と緒川がブリッジ内に進入してくる。

丁度良いタイミングだ。そう思ったカズヤがチラリと二人に視線を向けた隙に、ウェルは床に着けていた左手からフロンティアに命令を下し、自身の真下に落とし穴を開けて落ちていく。

 

「あ」

 

落とし穴は一瞬で元の床に戻ってしまい、あっさりと逃げられてしまった。

 

「ちっ、やっちまった。とっととぶん殴って気絶させとけゃよかったな...あのクソ野郎の確保、悪ぃがおっさん達に任せていいか?」

 

舌打ちし、装甲に覆われた右手で額を押さえてから、弦十郎と緒川に振り返り問えば、彼らは迷うことなく頷く。

と、フロンティア全体がまたしても振動し始めた。

カズヤの左耳に装着したインカム越しに、朔也とあおいの声が届く。

 

『重力場の異常を計測』

『フロンティア、上昇しつつ移動していきます』

「あのキチガイ、往生際悪ぃな」

 

一人毒を吐くカズヤ。

 

「...今のウェルは、左手をフロンティアと繋げることで、意のままに制御できる」

 

ポツリとマリアが教えてくれる。

 

「フロンティアの動力は、フロンティアと一つになったネフィリムそのもの。さっきカズヤが倒したのは恐らくコピー、覚醒心臓を持つ本体を倒せれば、ウェルの暴挙は止められる」

「分かった。ならばそちらはカズヤくん達に任せよう。俺達はウェル博士の確保に向かう」

 

言って、弦十郎は床に拳を叩きつけて、轟音を生み下の階層へと続く大穴を開けた。

 

「行くぞ、緒川」

「はい」

 

二人が穴にその身を投げ出すのを見送って、カズヤはマリアに歩み寄り、足下にソロモンの杖を放り捨て、彼女の両肩を掴み、至近距離から見つめた。

 

「...歌わないのか?」

「へ?」

 

一瞬、何を言われたのか分からず、呆けた声を出す彼女の反応にカズヤが苦笑する。

 

「難しい理屈とかはよく分かんねーけど、お前の歌なら世界を救えるんだろ? だったら、歌うしかないんじゃねーの?」

「無理よ、私じゃ無理なのよ!」

 

自分の歌を否定する意味も込めて彼女は左右に首を振った。

 

「所詮私には、世界を救うなんて大それたこと、無理だったのよ!」

「今更ここまで来て何言ってんだ!?」

 

完全にネガティブな方向に思考が偏ってしまったマリアにカズヤが怒鳴る。

 

「だって!」

「だってじゃねぇ! 全部諦めんのか!? 月の落下で発生する天変地異を止めたくて、犠牲を少しでも減らしたくて、世界中からテロリスト扱いされてでも成し遂げようとしたんだろ!? 回りくどいやり方で俺のこと引き入れようとしてぶん殴られたり、米国の特殊部隊やらエージェントやらから殺されそうになったり、トラブル続きだったけどなんとかここまで漕ぎ着けたんだろうが!! ここでお前が世界を救わなきゃ、全部水の泡なんだよ!!」

「いいの! もういいの! もう世界なんてどうでもいいの!!」

「どうでもいい訳ねぇだろがぁ!!」

「だって私は、初めから世界を救うつもりでこの計画に乗ったんじゃないの! あなたに会いたくて、本当はあなたに会う為だけにこの計画に乗ったの!! だから、そんな私が世界を救うなんて烏滸がましくて、できる訳ないのぉ...」

 

両膝を突いて、またしても泣き出す。

カズヤもそれに合わせて片膝を突く。

 

「ずっと、ずっとあなたに会いたかったの...六年前の、恩人のあなたに、直接会って、お礼が言いたくて、ただそれだけの為に、マムに言われるがままに従ってたの...だから、私じゃダメなの...私は、カズヤみたいに強くなれなかった...あなたに憧れて、あなたみたいに強くなろうとしてたけど、全くダメで...こんな私には、もう、期待しないで...」

「...そうか、分かった。じゃあもういい」

 

大きく溜め息を吐くと、カズヤはマリアの両の手首を掴み、無理矢理引っ張るように掲げて、かなり強引に立ち上がらせると、その背に両腕を回して強く強く抱き締める。

 

「か、カズヤ?」

 

彼の意図が分からず戸惑うマリアの耳元に、優しく囁く。

 

「ライブ前の控え室でのこと、覚えてるか?」

「ライブ前の、控え室?」

「お前が奏と翼に挨拶しに来た時だ。そん時お前言ったろ。俺に歌を捧げる、って」

「あ...」

 

確かに言った。彼との再会に感激していたあの時、思わず言っていたのを思い出す。

 

「あの言葉が嘘じゃなくて、お前の本心から出たものなら、世界を救う為に歌えとはもう言わねー。ただ、俺の為に歌ってくれ」

「世界の為じゃなく、あなたの為に?」

「そう。人気の歌姫として客やファンの為じゃなく、武装組織フィーネのマリアとして世界を救う為でもない。ただのマリア・カデンツァヴナ・イヴっていう一人の女として、俺の為に歌ってくれねーか?」

 

それは、これまでに積もり積もった精神的負荷で限界だったマリアにとって、自身をあらゆる負荷から解放し、尚かつ女としての自分をカズヤから求められたという意味を内包した殺し文句──少なくとも彼女はそう捉えた──であった。

 

 

──ドクンッ!!

 

 

まるで魂に火が点いたような、胸の奥に突然沸き上がった熱に震えながら、か細い声でマリアは問う。

 

「カズヤは、私の歌、聴きたい...?」

「聴きたい」

「本当に? 嘘じゃない?」

「本当だ。嘘じゃねーって」

「あなたの名に誓って?」

「誓って欲しいならいくらでも誓ってやる。このシェルブリットに誓って、俺はマリアの歌が聴きたいってな」

 

はっきりとした口調で即答し、カズヤは右手をマリアの視界に映るように顔のそばまで掲げた。

 

「...嬉しい...!!」

 

彼女は一筋の涙で頬を濡らしながら、覚悟を決めたように表情を引き締め、カズヤの顔を互いの息がかかる至近距離で見つめる。

やがて、胸の奥から沸き上がる熱と衝動に突き動かされ、想いのままに宣言した。

 

「私も誓うわ。改めて、これからあなたに歌を捧げることを。ううん、歌だけじゃない! 身も心も、魂さえも、マリア・カデンツァヴナ・イヴという女の全てをあなたに、"シェルブリットのカズヤ"に捧げることを、誓うわ!!!」

 

溢れ出る想いと言葉が止まらない。

 

「私はあなたのもの。あなたの意思が私の意思。私はあなたと共に生き、あなたと共に死ぬ!! あなたに何処までもついて行く!!!」

 

更に言葉だけでは足らないとばかりに、カズヤの首の後ろに腕を回して強く引き寄せ、誓いの証として口を口で塞ぐ。

 

「.........だから、聴いてカズヤ...私の歌を」

 

口付けを終えて、顔を真っ赤にしたマリアが潤んだ瞳でお願いし、

 

「ああ、是非聴かせてくれ。マリアの歌を」

 

カズヤがほんの少し照れくさそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリアが歌った曲は『Apple』という。

幼い頃に彼女の祖母から聴いた、マリアとセレナの故郷に伝わる童歌。

彼女はカズヤに抱きつき──抱き締められた状態で目を瞑って歌い、世界中にその優しい旋律が響き渡っていく。

その光景を見て、彼女の歌を聴いて、何故か世界中の誰もが歌詞も知らない『Apple』を同時に口ずさみ始めた。

そんな不思議な現象など知らぬまま、マリアは心のままに歌い続ける。

やがて世界中からフォニックゲインが発生し、マリアとカズヤに届けられた。

そして、マリアの背中に回していたカズヤの右腕──シェルブリットが彼の意思に関係なく勝手に動く。

装甲のスリットを展開させ、開いた手の甲の穴に光が──フォニックゲインが集まり収束し、それに呼応するかの如く金の光がカズヤとマリアの全身から放たれる。

次第に光はブリッジを満たし、二人の姿が誰にも確認できなくなった時、マリアのシンフォギアに変化が現れた。

虹色の粒子となって一度完全に分解された後、再構成される。

その色は純白。

漆黒のガングニールは、純白のガングニールへと生まれ変わっていた。足下に転がっていた槍も全体的に白を基調とした色に変化している。

尚、そのデザインは、先程のマリアの誓いと想いが反映されたのか、誰がどう見ても、何処からどう見てもウェディングドレスにしか見えない。

所々にシンフォギアとしての装甲らしきものが存在するものの、見た目は完全に、ドレスの中でもプリンセスラインとタイプ分けされているもの。ウェディングドレスの王道とまで言われているそれは、ウェディングドレスと聞いて誰もが一番最初にイメージするもの。ふわっと広がったロングスカートが特徴的だ。

ご丁寧に腰まで届く長い髪はアップスタイルで纏められ、それでも余った先端部分がポニーテールのように垂れているのが可愛らしさを強調していて魅力的だ。

両耳付近から伸びる角のような突起物はそのままだが、おまけとして宝石のようなものが散りばめられたカチューシャとベールまでついている。

ベールは上げられており、その素顔は隠していない。髪型とベールが顔と首から下を隠していないので、色っぽいうなじが露出し、ドレスもストラップレスなので両肩も隠す布地がないのでセクシーさを増す。

一見では白手袋なのかギアインナーなのか判別がつかないそれは、肘と肩の間という長さが絶妙で、マリアの華奢な両腕と肩回りの美しさを際立たせる。

光が収まり、『Apple』を歌い終えて自身のギア及び外見の変化に気づいたマリアがカズヤから少し離れ、まじまじと己の姿を観察した。

 

「そういう格好、美人がすると映えるな。綺麗だし、似合ってるぜ」

「...っ!!」

 

面と向かってそんな風に褒められて嬉しくない訳がないが、恥ずかしくて嬉しくて顔から火が出そうだ。実際、顔どころか首筋までトマトのように赤く染まっている。

 

「ほら見てみろって」

 

おもむろにカズヤは、光る古代文字を映し出す石板を殴って砕き、手の平サイズのものをこちらに向けると、劣化しておらずよく磨かれた石板の表面が鏡面反射を起こして自身の姿を映し出す。

そこには美しい花嫁衣装に身を包んだ自分がいた。

 

『綺麗ですよ、マリア...まさかあなたのそんな姿を見れる日が来るとは思っていませんでした』

「...マム!?」

 

通信越しの感激したようなナスターシャの声にマリアがブリッジ中央の装置に走り寄る。

 

『...マリア。あなたの歌に、世界が共鳴しています。これだけフォニックゲインが高まれば、月の遺跡を稼働させるには十分です。月は私が責任を持って止めます...!!』

 

老婆の声には並々ならぬ決意が込められていた。

 

「マム!!」

『もう何もあなたを縛るものはありません』

 

優しげな声でナスターシャは言葉を紡ぐ。

 

『行きなさい、マリア。行って私に、あなたの歌を聴かせなさい』

「マム...」

 

告げられた内容にマリアは何度目になるか分からない涙を零す。

 

『そして、"シェルブリットのカズヤ"...あなたに、老い先短い年寄りの、最期の身勝手な我が儘を聞いてもらいたいのです。よろしいですか?』

「だいたいどんな内容か察してるが、言ってみろよ。婆さん」

『マリアを、セレナを、切歌を、調を、私の大切な娘達を、どうかよろしくお願いします』

「ああ。任された」

『...ありがとう...』

 

万感の想いが込められた礼が述べられる。

床に転がったままの槍とソロモンの杖をカズヤは拾うと、槍をマリアに手渡す。

 

「マリア」

 

受け取った槍を右手で力強く握り締め、決意を新たにしたマリアが宣言する。

 

「オーケー、マム! カズヤ!! 世界最高のステージの幕を開けましょう!!」

 

次に差し出された右手──装甲に覆われたシェルブリットに対し、白手袋のようなギアインナーに覆われた左手を重ね、握る。

勿論、指と指を絡めるように。

 

「行くぜ! マリアっ!!」

「ええっ! あなたとっ!! カズヤと一緒なら、何処へでもっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後の歴史にてマリア・カデンツァヴナ・イヴはこのように語られる。

愛で世界を救った歌姫、と。

 




マリアを除くヒロイン一同
「は? なんで一人だけ決戦仕様がアプリ版っぽくなってるの!? しかもウェディングドレスとかズルくない!?」

→私がこの作品を書くと決めた段階で既に決定していたから。
マリアさん、原作アニメだとガングニールが響に強奪されちゃうからガングニールのエクスドライブモードがない。(アプリ版? そっちは全くやってないので知らん!!)
ならオリジナルでやってやる!

→物語の展開的に、この流れで決戦仕様になるならウェディングドレスしかねーわ。

→ヨシッ!(現場猫感)


ついに"シェルブリットのカズヤ"の正体が判明、及びカズヤ全世界に身バレ。会話内容からツヴァイウィングのマネージャー補佐兼ボディーガードのKさんであることも判明。後に芸能関係者からの垂れ込みで確定情報として拡散されたり、カズヤに命を救われた人々から間違いないとしてやっぱり拡散される。
マリアさんは全世界に向けた全裸生放送配信を回避。その代償としてラブシーン&キスシーンを配信。ウェディングドレスも披露するというおまけ付き。

マリア「大逆転完全勝利!!!」

尚、ウェディングドレス姿は決戦仕様のみ。普段はいつもの黒いガングニールなんで、そこんとこよろしく。

マリア「なん...だと...!?」

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