カズマと名乗るのは恐れ多いのでカズヤと名乗ることにした   作:美味しいパンをクレメンス

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今回は、長いというか説明がくどいというか、こじつけっぽいところがあって、書いててスゴイ疲れました。


特異災害対策機動部二課

特異災害対策機動部二課の本部はノイズ発生後のエネルギー反応──ガングニールのものに混乱が発生していた。

 

「どういうこと? アタシも、アタシのガングニールもここにあるのに」

 

ペンダントを片手に疑問を口にする奏の言葉は、ここにいる全員が同意するものである。

しかし、そんな疑問も次の瞬間には誰もが捨て置く破目になる。

 

「っ! 更に特殊な高エネルギー反応を確認、過去のデータから該当するものを検索します...これは!?」

 

《SHELL BULLET》

 

モニターに表示される文字に誰もが唖然とした。

その存在は二課にとって特別な意味を持つ。

特に奏にとっては。

 

「弦十郎のダンナ、アタシは行くよ」

 

そう告げると全速力で司令部を離れていく奏。それを慌てて追いかける。

背後で叔父様が何かこちらに言っているような気がしたが、よく聞き取れなかった。奏にはそれすら聞こえていないだろう。間違いなく頭の中はシェルブリットのカズヤのことで一杯なのだ。

奏を追いかけつつ後ろから声をかける。

 

「待って奏、本部から現場まで近い。なら、私のバイクに乗って」

「翼、いいの?」

 

一切スピードを緩めず走りながら首だけ振り返る奏に笑みを返す。

 

「奏があの人に会いたいって気持ち、そばにいた私が一番よく分かってる。それに私だって奏の命の恩人にお礼を言いたい。奏にとっての恩人は、私にとっての恩人でもあるから」

「...サンキュー翼、恩に着るよ」

「ふふ、どういたしまして」

 

嬉しそうに目を細める奏を先頭に、進路をバイクが置かれている場所に変更。

バイクまで到着するとすぐさまヘルメットを被りバイクに跨がり、キーを差して押しながら回しハンドルロックを外す。

 

「オーケー翼、行ける」

「分かった」

 

同じようにヘルメットを被った奏が後部シートに跨がったのを確認し、キーを『ON』まで軽く回し、メーターが全て点灯したのに合わせてイグニッションスイッチを押しエンジン始動。

重低音が響く中、スロットルを二回捻りエンジンの回転数と排気音を確かめ、サイドスタンドを左の踵で蹴り上げ、クラッチを握りシフトをニュートラルから一速に落とす。

 

「飛ばすよ奏、しっかり掴まってて」

 

告げると返事も待たずバイクを発進させ、一気に加速。

本部の敷地から公道に出ると更に加速。夜の街を爆走しながら突き進む。

 

「頼む翼、なんとか間に合わせてくれ」

「分かってる。もうこんなチャンス二度と来ない」

 

観測できたエネルギー反応が本部からこれほど近いのは初めてのこと。あの人はノイズ殲滅速度が早く、今までは現場に急行しても後の祭りだったが、今回のような近場であれば間に合う可能性は高い。

 

『聞こえるか二人共!』

 

と、通信越しに叔父様の声が鼓膜を叩く。

 

『もしシェルブリットのカズヤに接触することができたなら、彼には是非我々の協力者となって欲しい旨を伝えるんだ。その為ならできる限りのことをさせてもらうとも』

「そんなこと言われなくても分かってる!!」

「叔父様、まだ反応はありますか!?」

 

怒鳴る奏は無視して問いかけた。

 

『幸い今回は距離的に近いしまだ時間も経ってないからな、まだまだ反応は続いてる。そっちの方は肉眼で確認できないか?』

「こちらではまだ──」

 

返答しようとした瞬間、進行方向から天を貫かん勢いで伸びる虹色の閃光と爆音が確認できた。

光と音をほぼ同時に知覚できたこと、音の大きさから、かなり近づいていることが分かる。

 

「翼!!」

「今、肉眼で確認しました。どうやらまだ戦闘中のようです。まもなく接触できるかと」

『よし、頼んだぞ』

 

逸る気持ちを胸に現場へ急ぐ。

 

 

 

 

【特異災害対策機動部二課】

 

 

 

 

 

到着した時点で戦闘そのものは既に終わっていた。

ノイズの気配がない安全が確保された現場には三人の人物。

一人目は年が十に届いていないだろう小さな女の子。恐らくはノイズの襲来に巻き込まれ、後ろの二人に助けられたと考えられる。

二人目も女の子だが、年は私と同じか少し下、十代半ばといったところ。だが気になるのはその姿で、奏が普段纏うシンフォギアと若干細部は異なるがほぼ同じ格好だ。まず間違いなくこの少女がガングニールの反応の発生源だと断定。

そして──

 

「カズヤ...やっと会えた」

 

バイクを降り脱いだヘルメットを私に押し付け、奏が二年前の記憶と全く変化のない男性──シェルブリットのカズヤに歩み寄る。

 

「もしかしたらアンタはアタシのこと覚えてないかもしんないけど、アタシはアンタに命を救われたんだ」

 

瞳を潤ませ、感極まったように震えた声で彼の装甲に覆われた手を取り、自身の額に押し付けるように置く。

 

「あの時は本当にありがとう。アンタのお陰で、アタシは今もこうして生きることを諦めずに生きてられる」

 

「いやまぁ、その、そんな面と向かって言われると照れるな」

 

気恥ずかしそうに残った左手で頬をかく彼の隣で、

 

「はぁぁぁ~、『ツヴァイウィング』の二人が揃った状態で私の前にぃぃ~」

「テレビで見たことある歌のお姉ちゃん達だ!!」

 

と嬉しそうに騒いでる女の子二人がやけに平和に映った。

 

 

 

「あれって()()()の話だったのか!? マジかよ!」

 

その後、いかにも事後処理にやって来ましたと言わんばかりの方々が多種多様な業務に使用する車に乗ってやって来た。

その中で、黒塗りの高級車を運転していた緒川と名乗る黒スーツの兄ちゃん──カズマに声がそっくりでマジでビビった──から事情聴取を求められ、「飯が食えるなら」という条件で任意同行に頷いた。

この世界に留まることができた理由は不明だが、今は分からないことに頭を悩ませるよりも食欲のままに飯を食らいたい。

ちなみに緒川は、先程バイクに乗って現れた二人の女性『ツヴァイウィング』とかいう歌手のマネージャーで、車を運転しながら「僕からもお礼を言わせてください」ということで、()()()の話を持ち出し、俺を大いに驚かせた。

何か致命的な認識の齟齬を肌で感じつつ口を開こうとすると、隣で座る響が緒川に同意する。

 

「当時のことは朧気ですけど、私カズヤさんのこと覚えてますよ。私をノイズから庇ってくれた奏さんの目の前に空から降ってきて──」

 

響の言葉を心の中で反芻しながら考える。

どうやら"向こう側"とこちらでは時間の流れが異なるらしい。

俺の体感時間としては、カズマのアルター能力で化け物退治を始めてから数時間から一日前後といった感じだ。確かに"向こう側"にいた時は俺の時間感覚が狂っているという自覚症状があったが、さすがに年単位で狂っていた訳ではあるまい。

(こりゃ口で説明すんのがメンドくせぇぞ)

最早この時点で既に逃げ出したくなってきたが、この世界に留まる以上は衣食住が必要だ。しかし今の俺は"向こう側"からやってきたので戸籍無しの無一文、住所不定無職の不審人物、見る人によっては犯罪者予備軍だ。挙げ句の果てにはこの世界で人類の天敵とされる存在を単独で撃破可能な戦闘能力を持つ危険人物でもある。

今後の身の振り方としては特異災害対策機動部二課とかいう連中に大人しく従うのがベストだ。

 

 

 

車が到着したのは響が通う高校だった。学院の地下に二課の本部があるらしい。自分が毎日通う学舎にまさかそんなものがあるとは予想だにしなかった彼女はさっきから驚きっぱなしである。

 

「学校の地下に秘密の基地か、テンション上がるな」

 

かなりの速度で降下中のエレベーター内で呟くと、響と奏が興味深そうな表情を浮かべた。

 

「今の、なんだかいかにも男の子って顔でしたよ」

「そういうの好きだよね、男って」

 

二人は互いに顔を見合わせると「ねー♪」と声を上げる。

いつの間に仲良くなったのやら。どうやら響と奏は気が合うらしい。

 

「カズヤさんなら司令と意気投合できそうですね」

「ええ、期待しましょう」

 

緒川の少し安堵したように溜め息を吐き、翼が腕を組み頷く。

やがてエレベーターが停止し、ドアが開く。

案内されるまま着いていくと、よく分からん幾何学的な模様が走る広間のような空間やSF映画に出てきそうな廊下を進む。暫く歩くと緒川がとあるドアの前で立ち止まり、俺に開けるよう促したのでとりあえず開け放つ。

すると待っていたのはパーティー用クラッカーの炸裂音。

 

──特異災害対策機動部二課へようこそ!!

 

歓迎の声が唱和する。大勢の拍手の出迎えに呆けていると、集団の中心、赤いカッターシャツを着た背が高く格闘家のような男性が前に出た。筋肉質な肉体を持ちながらシルクハットを被りステッキを手にしている姿は致命的に似合ってない。

室内は制服やスーツ、研究者のような白衣の格好をした者達が大半で、テーブルの上には様々な料理の山とグラスと飲み物。

達磨や垂れ幕を用意しているあたり、なかなかの徹底ぶりだ。

 

「我々は君達を歓迎する、立花響くん...そして、シェルブリットのカズヤくん。俺は風鳴弦十郎、一応、ここの司令官、責任者という立場だ」

 

差し出された手を取る前にズボンで手を拭い、握手した。

 

「シェルブリットのカズヤだ」

 

分厚くて無骨な手と拳。明らかに格闘技経験者だ。

続いて響が弦十郎と握手。

 

「立花響です」

 

それから順に自己紹介が始まる。写真まで撮ろうとする者まで出てくると、翼を強引に引っ張ってきた奏も混ざりたがりミニ撮影会へと突入。

 

気の済むまでやらせると待ちに待った食事である。緒川との約束を果たさせてもらうつもりで一切遠慮せずに料理を胃袋に叩き込む。響も腹を空かしていたのか俺と共に猛烈な勢いで料理を食い荒らしていたのが印象的だった。

 

 

 

「食事も済んだことだし、そろそろ本題に入ってもいいかな?」

 

弦十郎が告げると、俺は食後のコーヒーを飲み干しマグカップをテーブルの上に置き、ソファーに全体重を預けつつ足を組む。

 

「いいぜ。何から話すんだ?」

「私も教えて欲しいことがたくさんあります。さっき私に起こったことは一体何だったんでしょうか?」

 

隣に座っていた響が身を乗り出すように立ち上がるが、弦十郎は落ち着かせるように穏やかな口調で尋ねた。

 

「その前にいくつか約束して欲しいことがあるが、構わないだろうか? 一つ目は今回の件に関して誰にも口外しないこと。国の重要機密に関わることだからだ。二つ目はこの後君達にメディカルチェックを受けてもらうこと。特に響くんの疑問に関しては調べさせてもらい、分かり次第後日となってしまうので今は返答できかねてしまうのが心苦しいが。とりあえず以上の二点を約束してもらえるなら今この場で答えられる範囲で答えよう」

 

俺は隣の響を一瞥してから、

 

「俺はそれで構わねー」

「...私も構いません」

 

同意を示すと彼女もこちらをチラリと見てから同意した。

 

「無理を言って本当にすまない。二人共、ありがとう」

 

礼を述べて頭を下げる弦十郎を筆頭に、二課の一同も頭を下げる。奏と翼、緒川も同様だった。

見た目青二才の若造と女子高生相手に人ができた連中である。響は「あ、頭を上げてください」と泡を食ってたが、俺は彼らが頭を上げるのを待ってから静かに質問を投げる。

 

「俺と響をここに連れてきた理由は?」

「それは二人に協力者となってもらいたいからだ」

「...ノイズっつー化け物対策で?」

「その通り」

 

まあ、予想していた内容である。

感謝を述べてきた際の奏や響の態度、車内で緒川から聞かされた話。それらを総合するとノイズと呼ばれる人類の天敵は予想以上に厄介な存在のようだ。

 

「そもそもノイズってのは一体何なんだ?」

「え? カズヤさんノイズのこと知らずに戦ってたんですか?」

 

若干呆れた視線を向けてくる響。

 

「何も知らねー、名前ですら今さっき教えてもらって知ったばっかだ。とりあえずぶん殴れば倒せてたから気にしたことねーな」

 

これまでのことを振り返りながら告げると、周囲からは信じられないものを見る目に晒される。例外は実際に俺が戦う姿を直接見た響と奏と翼だけだ。

 

「ノイズについて知りたいと言うのなら、この私、櫻井了子が教えてあげるわ」

 

白衣を着たメガネのなんかキャラが濃い姉ちゃんの即席講義がはじまる。

ノイズ。曰く、全世界で人類の天敵と認定されている特異災害。

人間のみを襲い、接触した人間を炭素の塊に変換後自身も炭素の塊となって崩壊するか、一定時間経過で自壊する。

空間から滲み出るように突如発生する。

位相差障壁と呼ばれるものにより、自身の存在を別世界に()()()()()ことで一般的な物理エネルギーの干渉を減衰、無効化する為通常兵器の類いでは効果が薄くまともに戦うことすらできないこと。

唯一の対抗手段は、目の前の櫻井了子が提唱した理論に基づき運用される『シンフォギア・システム』。

存在を別世界に()()()()()()()ノイズを無理矢理こっちの世界に引きずり込んで攻撃が通用するようにすること。

炭素変換を無効化するバリアコーティングを発生させること。

この二点でノイズの攻撃と防御に対処するのだとか。

しかしながら、その特殊性によりシンフォギアを纏うことができる人間は非常に希少で、日本国内で確認されてるのは奏と翼、そして本日発見された響の三名のみ。

(なるほど、響は当然だし、ノイズを単独で倒せる俺の協力は是が非でも必要な訳だ)

銃や爆弾、ミサイルなどといったものが通用せず、他に有効な手段もないとなれば、二課の連中が──言い方が悪いが国家の重要機関がここまで下手に出てくるということは、それほどまでに追い込まれている現状と察した。

 

「だいたい分かった。じゃあ、今度はこっちが答える番だな」

 

ここまでの流れで聞くべきことはほとんど聞き終えたので、説明する側の交代をするべきだと考える。

何故なら、彼らにしてみれば自分達が持つ手段がノイズへの唯一の対抗策だった。そこへ突然──俺にとってはついさっきの話でも彼らにとっては二年前──ノイズをぶん殴って倒す人間が出てきたら放置はできないし、どうやってノイズを倒しているか知りたくなるだろう。

まー、アルター能力について上手く説明できたとしても真似できるようなもんじゃないから、戦闘要員として力は貸せても技術提供は一切できないことについて勘弁して欲しいのだが。

 

 

 

「アルター、能力?」

 

アタシが思わずオウム返しをするとカズヤは一つ頷いた。

 

「アルター能力、正式名称は精神感応性物質変換能力って呼ばれてる」

「せいしんかんのうせいぶっしつへんかんのうりょく?」

 

難しい顔をした響が頭の上にクエスチョンマークをたくさん飛ばしながらカズヤの言葉を呟く。

彼女だけではなく周りの皆もアタシを含めていまいちピンときてないのか、響と同じような表情だ。

 

「分かり易く言えば、能力者の意思で周囲の物を一度分解してから再構成する力のことだ。ま、百聞は一見にしかずってもんだ...そうだな、そこのテーブル使わせてくれ」

 

言うとカズヤはソファーから立ち上がり、片付けが終わり何も載せていないテーブルの前に立つと、全身から淡い虹色の光を発生させる。

次の瞬間、テーブルはカズヤと同じ光に覆われ、瞬きする間もなく──文字通り一瞬で粒子となって消え失せた。

 

「何っ!?」

 

弦十郎のダンナが皆を代表するように驚愕の声を出すが、目の前の光景はそれだけに留まらなかった。

カズヤの前髪が逆立ち、右腕が肩から消えたと思えば橙色の装甲に覆われた腕が現れ、顔の右半分も同様に橙色の装甲で覆われる。角度的に彼の背後は見えないが、右肩甲骨部分にもあの尾のような物体が現れているのだろう。

 

「物質の分解と再構成...つまり、今カズヤくんが身に纏っているものは、さっきまでテーブルだったもの、そういうことね」

「理解が早くて助かる。ちなみに分解するもんは基本的に生き物じゃなければなんでもいい」

 

納得したかのような了子さんの声にカズヤは肯定するが、了子の言葉はそこで止まらない。顎に手を当て、一人言のようにぶつぶつと話す。

 

「...人間を炭素に変換するノイズの能力とは真逆。しかも生物を変換の対象としないのならカズヤくんにノイズの炭素変換が通じないことに説明がつくわ」

「待て待て待て了子くん、一人で納得するな。つまりどういうことだ?」

「ノイズは人間を炭素に変換するけど、カズヤくんは生物以外の物質なら何でも己の意思で変換でき、その代わり生物は変換の対象とならない。重要なのはこの生物は変換の対象とならない点ね。両者の能力は相反していて、アルター能力の()()()()()()()()()()()()要素がノイズの炭素変換を阻害、もしくは中和しているとしたら?」

「なるほど! シンフォギアのバリアコーティングと似た効果を持つということか!!」

 

了子さんとおっちゃんが展開する問答に誰もが驚きを隠せなかった。

ノイズの炭素変換が効かない、これだけで驚愕に値する事実だ。つまりノイズに触れたり触れられたりしてもそこで死ぬことはまずあり得ない。おっちゃんの言う通りシンフォギアのバリアコーティングのメイン機能と同じ働きだ。

 

「カズヤくんに炭素変換が効かないのは分かった。ではノイズに攻撃が通る理由は何だ?」

「そのことについて何か心当たりはあるかしら?」

 

二人の問いにカズヤは顔を顰めた後、苦虫を噛み潰したように眉根を寄せる。

 

「今から話すのは眉唾みてーなもんだから説明になってねーと思うし、そもそもアルター能力を研究してた学者が言ってたらしい内容を、俺なりに解釈して話すからそれでもいいならで聞いてくれ」

 

 

"向こう側"の世界、という現実世界とは異なる世界がある。

そこはアルター能力の源であり、アルター使いは皆全て生まれる前から"向こう側"の世界を認識してきたことで、その世界とアクセスし、物質を分解・変換する方法を無意識に理解している。

"向こう側"へアクセスすることで能力を発動させるアルター使いだからこそ、ノイズの位相差障壁を無意識に理解している可能性が考えられること。

 

「...俺がノイズを倒せる理由で思いつくのはこの程度だ」

 

説明を終えると疲れたように溜め息を吐く。

そんな彼の説明を聞いて了子は面白いものを聞いたとばかりに口を開く。

 

「他の世界を無意識に認識しアクセスを行うカズヤくんは、同じようにノイズの位相差障壁を無意識に認識しアクセスすることで攻撃を通している、と。この点についてはシンフォギア・システムとは逆ね」

「そうだな。シンフォギアは攻撃の際、ノイズの存在をこちらの世界に強引に引きずり込むことで位相差障壁を無力化するものだ。てっきりカズヤくんも同じだと考えていたが、まさか逆だったとはな」

 

腕を組んだ弦十郎がふむふむと感心しているのを横目に、奏は気安くカズヤの肩に手を置くと皆に聞かせるように告げた。

 

「別に難しい理屈なんてこの際なんでもいいじゃない? 要するにカズヤがアタシ達と一緒に戦えることが証明されたってことでしょ? だったらアタシはそれでいいさ。な? 翼もそうだろ?」

「ふぇ!? そ、そうだね、カズヤがいてくれるならとても心強いね!」

 

いきなり振られた翼が慌てて応じる。

 

「しかしアルター能力か...カズヤくん以外にも同じ能力者が存在しているなら是非とも我々に協力して欲しいものだ」

「残念ながらそれは無理だな」

「やけにはっきり断言するけど、その理由は何かしら?」

 

首を傾げる了子の疑問は皆同じだ。アルター能力者が他にも存在するのならノイズによる被害をぐっと減らすことができるのに。

しかしカズヤは一切の希望を打ち消すように重苦しい声で宣告した。

 

「俺が、別の世界から"向こう側"を介してこの世界に来たからだ。アルター使いはこの世界に俺一人だし、"向こう側"を開けるだけの実力を持ってる奴なんてほとんどいねー。もしいたとしてもこの世界にやって来る確率なんてないに等しい。だってよ、世界があっちとこっちの二つだけ、なんてことはねーだろ?」

 

 

 

 

 

窓もドアを締め切り外部と完全に遮断した部屋の中で、その人物は気だるげに独りごちる。

 

「新たな装者と異世界からの来訪者、立花響とシェルブリットのカズヤか...研究対象としては興味深いが計画の邪魔だな。早い段階で消してしまいたいが、さてどうするか」

 

本日得た情報を振り返りながら思考を巡らす。

イレギュラーの存在は確かに悩みの種だが、カズヤのような生まれながらに厄介な能力を持っている存在が、これ以上増えないことは不幸中の幸いだ。

 

「しかし間抜けな話だ。力を使い過ぎた代償で"向こう側"とやらの扉を開き、記憶のほとんどを失った状態でこちらの世界に流れ着くとは」

 

高い実力を誇るアルター能力者同士が激しい戦闘を繰り広げると、"向こう側"へのアクセス過多で扉が開き、肉体を分解され取り込まれるらしい。それ以後は肉体の再構成と分解を繰り返しながら稀に空いた扉を通ってこちらの世界に来訪し、ノイズを倒してはまた"向こう側"に取り込まれて、という時間を過ごしていたとのこと。

 

何故奴が今回だけ"向こう側"に取り込まれずこちらの世界に留まれているのかは、もしかしたら立花響が現場に居合わせていたことが関係しているのかもしれない。

 

聞けば聞くほど興味が尽きないが、早々に排除することを優先しよう。

 

立花響は今日まで普通の女子高生として生きてきた為、対処は容易い。しかしカズヤの方は明らかに戦い慣れしているし、その実力も高い。策を練るならカズヤ用を先に講じておかなければ。

 

「そうだ。あの娘を使うか」

 

名案が浮かぶ。ノイズの群れを圧倒する戦闘力を持つなら、その戦闘力を使えない相手を用意してやればいい。

純粋なあの娘なら、記憶喪失の少年が二課に騙され利用されているとでも言えば率先して動くだろう。

そうと決まれば行動に移す。まずはあの娘に連絡だ。

 




響が手錠される描写ないやん!

それを見たカズヤが「何しやがる!」と気分を害するのを緒川さんが警戒した為。なので響は原作と違い手錠なし、やったなビッキー!
カズヤは嘘を言っているつもりはないけど、真実は語ってません。アルター能力については教えられるけどアニメ"スクライド"については口が裂けても言えません。だからテキトーにその辺は誤魔化してます。
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