カズマと名乗るのは恐れ多いのでカズヤと名乗ることにした   作:美味しいパンをクレメンス

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ちょっと前にブチギレ案件発生したから更新遅くなったよ! 既に解決済みだからもう気にしてねーけど。(何のことか気になる方がもしいたら私の活動報告見てね)

ん? この話更新する前にR-18版(クリスちゃんメイン)の更新したじゃないかって?

き、聞こえんなぁ(震え)


呪いの魔剣に希望を見出だして

「皆は、シンフォギアシステムにはいくつか決戦機能があることを知ってる?」

 

ブリーフィングルームにて白衣姿に伊達眼鏡をかけた調──ではなくその体を借りたフィーネが皆に質問を投げ掛ける。

 

「はい、カズヤくん! 答えてみて」

「知らねー」

「......あなた、本当に装者と一緒に戦ってるの?」

 

ビシッ、と教鞭の先端を向けられたカズヤが首を傾げて即答すれば、フィーネは頭を抱えて項垂れた。

 

「はいはい了子さん!!」

 

響が元気良く立ち上がりながら、ピーンと真っ直ぐ腕を伸ばし挙手。

 

「はい、響ちゃん」

「これは簡単ですよ、カズヤさんとの同調です」

「はいブー! 響ちゃん、お手付き一回、装者本人なのに間違えたからマイナス百点ね」

「この会議って減点方式なの!?」

「響さん、今はシンフォギア独自の決戦機能についての話をしています。カズヤさんとの同調については切り離して考えてください」

 

調と同じ白衣姿のエルフナインが苦笑して告げれば、響はうーん? と腕を組んで首を傾げつつ席に着く。

 

「私も響さんと同じ装者なのに全然分からないデスよ!!」

「自らアホを晒け出していくスタイル」

「...」

 

何故か自慢気に立ち上がって胸を張る切歌に、カズヤが鼻で笑えば、彼女は無言で彼に飛び掛かり取っ組み合いを始めた。

 

「うお!? 痛ってぇ、やめろ! 噛みつくな!!」

 

ガシャンッ! とけたたましい音を立ててカズヤが座っていた椅子が倒れ、そのまま切歌にマウントポジションを奪われた。

カズヤの両隣をキープし座っていた響とクリスは、顔色一つ変えずに取っ組み合う二人から忍者のような動きでさっと距離を取る。

 

「バカ一号と三号は放置して話を進めるわよ」

 

目の前で暴れる二人をなるべく視界に入れないようにしつつ、フィーネが話を進めていく。

隣でエルフナインが若干引き気味に「...どうして誰も止めないんですか?」と至極当然のことを言い出すが黙殺。

 

「シンフォギアの決戦機能についてだけど、分かる人は何人いるかしら?」

 

学校の先生が生徒達に「この問題分かる人?」と問うように挙手を求めれば、響と取っ組み合いをしてる二人を除いて、この場にいる全員の手が上がる。

 

「じゃあ、はい。奏ちゃん」

「絶唱のことでしょ」

「はーい、大正解。花丸あげるわー」

「ああ、なるほど! 絶唱かぁ」

 

当たり前のことを当たり前のように答えた奏の言葉に、響はやっと納得してうんうん頷く。

 

「バカ一号と二号と三号はこれを機にしっかり覚えておいてね」

「いや、この場合は了子さんの決戦機能って言い方が悪いんだよ。切り札とかだったら一発正解してたはずだっての!」

「そうですよ、切り札だったら間違えません!」

「二人の言う通りデス! 問題の出し方に問題があったと断固抗議デス!」

 

頬に引っ掻き傷と首筋に歯形を付けられたカズヤが吐き捨てるように言って、バンッとデスクを両手で叩いて立ち上がった響がカズヤに同意を示し、カズヤの襟首を掴んで暴行していた切歌が動きを止めて叫ぶ。

 

「...口の減らないバカ共め...」

『フィーネ。カズヤが揚げ足取りに走って、二人がそれに便乗したら相手にしない方がいい。この三人、手を組むと凄い厄介』

 

喚き出す三人にフィーネは調の顔で眉間に皺を寄せ、調がフィーネにだけ聞こえる声でアドバイスを送る。

 

「おい、やべーよ。このままだと新参のエルフナインにすらその内バカ呼ばわりされるぜ」

「だったら私達は本当はやればできる子っていうのをアピールしましょう!」

「ちなみに言い出しっぺの響さんは何かプランがあるデスか?」

「.........バカなので何も浮かびません」

「ちなみに私も『ねぇよそんなもん』と言わせてもらうデス!」

「このバカ野郎共め! でも可愛いから許す」

「...私やっぱりこのままバカでいいや」

「もうバカでいいので話終了デース!」

「なんで急に機嫌良くなってんだ!? 諦めんの早ぇよ!」

 

三人が顔を寄せ合いコソコソと何か相談し始めたが、文殊の知恵には至らず。不毛なやり取りが一瞬にして終わった。

 

「ですが、シンフォギアには絶唱以外にも決戦機能が存在します。それはご存知でしょうか?」

 

三バカを全力でスルーし、フィーネに代わって話を進行させるエルフナインの問いに、今度は皆が揃って頭の上に疑問符を浮かべると、ブリーフィングルームのメインモニターにとある画像が映し出される。

 

「エクスドライブモード、限定解除形態のことです。皆さんはこれまでに何度か、カズヤさんとの同調を経てこの形態を稼働させています」

 

映し出されたのは、フロンティア事変にてネフィリムとの最終決戦で装者達が見せた姿だった。

 

「あれ? これってさっき言ってた『カズヤさんとの同調』に含まれる内容じゃないんですか?」

 

さっきこのこと言ったら不正解にされたのに、と納得いかないのか唇を尖らせる響。

すると、フィーネは肩を竦めてみせて、エルフナインは顎に手を当て考える仕草をする。

 

「まあ、実はさっきの響ちゃんの答えって当たらずとも遠からずなのよ」

「皆さんのシンフォギアはカズヤさんと同調することで、シェルブリットの形態に引きずられるようになっていることが考えられるんです」

「どういうことかバカでも分かるように解説してくれ」

 

未だに切歌にマウントポジションを取られているカズヤが仰向けのまま声を出す。

二人の解説を要約すると、こんな感じだ。

シンフォギアの限定解除形態、エクスドライブモードは、本来であれば通常ではあり得ない高レベルのフォニックゲインを獲得することでロックされていた機能が開放された姿とのこと。

その為、それを発動すること自体が奇跡を起こすことと同義なのだが、皆のシンフォギアはカズヤによって分解、再構成されたシェルブリットでもある。

故に、カズヤがシェルブリット最終形態を発動させ、その上で同調することで、最終形態に引きずられるようにしてエクスドライブモードが発動されているのではないか。もしくは最終形態を発動させたことで膨大に引き出される"向こう側"の力が、同調によりフォニックゲインの代わりになっているのではないか、という仮説だった。

 

「検証するにはサンプルデータが少ないから断言できないけど、エクスドライブモードを発動させる方法は恐らく二つ。一つ目は本来の方法である高レベルのフォニックゲインを獲得すること。これはフロンティア事変の時にマリアが世界中からフォニックゲインを集めてやって見せたわね。二つ目はカズヤくんが最終形態を発動させて同調すること。こっちはルナアタックでやって見せたでしょ?」

 

フィーネの言葉に従い、画像がパラパラと切り替わっていく。ウェディングドレスのような純白のギアを纏い顔を赤くして微笑むマリアから、ルナアタックでフィーネと最後に戦った時の五人の姿の画像へ。

 

「その仮説でいくと、条件を満たすことさえできれば、今後はもう俺がギアを分解、再構成しなくてもエクスドライブモードは発動するってことか?」

「その可能性は高いわ。けど......」

「けど?」

「皆のこの姿が、本当はエクスドライブモードとは異なる別の何かで、カズヤくんの分解と再構成という工程が必須だとしたら話は別よ」

「あー、どっちにしろサンプルデータが不足してて検証はできてない、仮説の域を出ない話ってことか」

「そういうことよん」

 

フィーネは「話を戻すわ」と呟き仕切り直すように一度顔の前でパンッと手を叩く。

 

「でね、シンフォギアシステムにはもう一つ......搭載されたシステムじゃないんだけど、こういうのがあってね」

 

次に映し出されたのは、デュランダルを手にした響の姿だった。

 

「これは、何?」

 

当時のことを知らないマリアが疑問を口にし、セレナと切歌も同様なのか不思議そうな表情となる。

 

「これは、聖遺物によってもたらされるシンフォギアシステムの暴走」

「暴走?」

「そう。当時、完全聖遺物デュランダルに接触したことで暴走状態に陥った響ちゃんは、破壊衝動に支配され、手にしたデュランダルで目に映るもの全てを破壊しようとした」

 

画像内の響の表情は憎悪と殺意に塗れており、とても普段の彼女とは似ても似つかない。むしろ面影すらないと言っても過言ではない。

 

「で、Project IGNITE(プロジェクトイグナイト)は、この暴走状態をダインスレイフで人為的に起こし、その上で制御することで暴走時のパワーを我が物にするシステムを組み込むことよ」

「おいフィーネ! お前まさかトンチキなこと考えてないだろうな!!」

 

立ち上がったクリスがフィーネに詰め寄り襟首を掴む。

 

「暴走を制御することで、純粋な戦闘力へ錬成変換し、キャロルへの対抗手段とする、これがProject IGNITE(プロジェクトイグナイト)の目指すところです」

 

そのすぐそばで冷静な声を響かせるエルフナインに皆の視線が集中した。

 

「モジュールのコアとなるダインスレイフは、伝承にある殺戮の魔剣。その呪いは、誰もが心の奥に眠らせる闇を増幅し、人為的に暴走状態を引き起こします」

「それでも、人の心と英知が、破壊衝動を捩じ伏せることができれば......」

 

ここで初めて、黙していた弦十郎が厳かに発言し、

 

「カズヤさんとの同調に頼らずとも、シンフォギアはキャロルの錬金術に打ち勝てます」

 

はっきりとエルフナインが断言する。

誰もが考え込むように黙り、ブリーフィングルームを沈黙が支配した。

クリスは鼻息荒くフンッ、と掴んでいたフィーネの襟首を離し、自分の席に着く。切歌とカズヤも示し合わせたように立ち上がって倒れた椅子を直し座る。

 

「......暴走を制御、ね」

 

デュランダルを握る響の画像を見つめるカズヤの声は、不安と心配が滲んでいた。

 

 

こんなやり取りがあった数日後に、未来がアルター能力に覚醒したのである。

 

 

 

 

 

【呪いの魔剣に希望を見出だして】

 

 

 

 

 

「んで、肝心要のダインスレイフをギアに組み込む件については、俺が聖遺物を分解、再構成すればいいんだっけ?」

 

本当にそれで大丈夫なのか? と懐疑的なカズヤにフィーネとエルフナインは力なく溜め息を吐く。

場所はいつものS.O.N.G本部内、ブリーフィングルーム。錬金術師キャロル一派の襲撃が始まって何度目になるかカズヤには分からない、いつもの会議である。

今回はS.O.N.Gに正式加入した未来も参加しており、響の隣に座っていた。

 

「未来ちゃん発案のやつね。現状、他に試せることってもうそれしか残ってないのよ」

「以前にもお伝えしましたが、ダインスレイフの欠片をギアにそのまま組み込むと、通常のギアを纏うことすらできません。調さんに起動実験を試していただきましたが、何を試してもギア側から必ず拒絶反応が出てしまいます」

「拒絶反応...シンフォギアが、いや、シェルブリットが呪いを受け入れないってことか」

 

唸るカズヤに二人は解説をする。

 

「そう、シェルブリットは光の力。ダインスレイフの呪いとは対極にあるようなものよ」

「もしかしたら属性の問題ではなく、シェルブリットが装者の皆さんを呪いから守ろうとしている可能性もあります。再構成された物質がカズヤさんの意思を反映していないとは考えられません」

「だからこそ、一度ダインスレイフの欠片をカズヤくんが分解と再構成を行うことで、ギアとの親和性を高めて拒絶反応を出ないようにする。未来ちゃんの案は実に理に適っているわ」

「同じように再構成された物質同士であれば恐らく拒絶反応は出ない、はずですので」

 

そう言いながら差し出されたのは、膿盆──外科手術の際に摘出したものを載せたりするソラマメ型の皿──であり、その上にはダインスレイフの欠片がいくつもある。

膿盆を受け取り、目を細め、じっと見つめてからカズヤは意識を集中させた。

淡い虹色の光が彼の全身から放たれ、その様子を皆が固唾を飲んで見守る。

ダインスレイフの欠片が一度虹の粒子となって分解されてから、その粒子が集まって欠片を形成──再構成が行われ、元通りになった。

 

「ほい、一丁あがり」

「エルフナインちゃん急ぐわよ!」

「分かってます!」

 

すかさずフィーネが膿盆をカズヤから奪い取り、意気揚々とエルフナインを伴って駆け出し、ブリーフィングルームを出ていく。きっとあの勢いのまま研究室で作業に入るのだろうと容易に想像できる。

立ち去る二人の背中を見送って、弦十郎が皆に告げた。

 

「では、今回のProject IGNITE(プロジェクトイグナイト)についての会議は一旦終了とする。装者達のこの後は本部にて待機、他の者達は業務に戻れ」

 

オペレーター陣や緒川らが指示に従い、弦十郎と共にブリーフィングルームを退室していく。

それに倣い装者達も退室しようと席から立ち上がって、そこで気づいた。

カズヤが席を立とうとしない。

 

「...カズヤさん?」

 

響が訝しみ名を呼び、他の者達もどうしたのかと思いつつ足を止めて振り返る。

調を除いた装者八名と、未来と、カズヤだけが残ったブリーフィングルーム。

と、背もたれに体重を預けたカズヤが天井を仰ぎながら、抑揚のない少し低い声で言葉を紡いだ。

 

「......もしかして俺は、無意識に呪いの力を拒絶してるのかもしんねぇな」

 

え? と誰もが疑問に思った。

 

「さっきエルフナインが言ってたろ」

「でもそれは、呪いから私達を守ろうとしてるって──」

「本当にそれだけとは限らねーだろ」

 

先程のエルフナインの言葉をそのまま繰り返す響を、カズヤはきっぱりと遮り、ゆっくりと立ち上がり響達に向き直る。

 

「俺は心の何処かで、お前らが強くなる方法は俺の力だけでいい、呪いの魔剣なんてもん本当は使って欲しくない、そんなつまんねー意地...いや、この場合は嫉妬か。そういう類いのもんがあるかもと思ってよ」

 

思わずハッとなる響達。

エルフナインは言っていた。再構成された物質がカズヤの意思を反映していないとは考えられない、と。

暫しの間、誰もが口を噤む。

沈黙が降りてきた室内で、彼はバツが悪そうな表情で俯き皆から視線を外すと、右手でボリボリと自身の後頭部を掻く。

 

「......あー、ただの愚痴だ。お前らはあんま気にすんな」

 

そう言って力が抜けたように笑うカズヤに耐えられず、響は口を開く。

 

「正直言って私は、呪いの魔剣なんかに頼りたくありません」

「響...」

「だって、凄く怖い伝承がある聖遺物じゃないですか。そんなのより、いつものカズヤさんとの同調の方が絶対に良いに決まってます」

 

この言葉に誰もが同意見だと口々に言い出す。

 

「このバカの言う通りだ。あたしだって呪いの力に頼る必要がなけりゃ、カズヤとの同調を選ぶって」

「防人として手段を選んでいる場合ではない、ただそれだけであって、私はいつだってカズヤと同調することを望んでいる。それを忘れるな」

「アタシも。そもそも同調がなけりゃ、未だにLiNKER頼りだったし、アンタがアタシ達をずっと支えてくれてた。それをいきなり別のに乗り換えろって言われて、はいそうですかってすぐには切り替えられないし、頭では理解してても、気持ちはまだ納得いってないんだよ」

 

クリスが、翼が、奏が優しく諭すように言ってくれる。

 

「皆同じです。だからこそカズヤさんの気持ち、分かります」

「そうよカズヤ。あなた、自分だけだと思った? 私だって強くなるなら、呪いなんかじゃなくあなたの力に包まれながらが良いわ」

「カズヤとの同調、とってもあったかいから私は好きデース! 実は調も気に入ってて、密かにカズヤとの同調訓練楽しみにしてるんデスよー」

 

セレナが、マリアが、切歌が朗らかに笑う。

それから未来が引き継ぐように静かに訴えた。

 

「自信を持ってください、カズヤさん。いつも前しか見てないあなたのことが、いつだって光輝くあなたの力が、私達は大好きなんです。あなたの存在そのものが、あなたがもたらす全てが、私達には必要です。それは魔剣なんかにすぐ取って代わられるようなものじゃない。だから安心してください」

 

皆の本音を聞いて、カズヤは救われたような気持ちになる。

純粋に嬉しかった。普段から皆に頼られ、求められていると実感できて。

 

「それに私、信じてるんです」

 

未来に次いで更に響が付け加えた。

 

「もし私達が魔剣の呪いに負けそうになって、心の闇に呑まれそうになっても、シェルブリットがあの時みたいに守ってくれるって」

「あの時?」

「私がデュランダルを手にした時ですよ」

 

かつてのことを思い出すように、懐かしむように彼女は目を細める。

 

「あの時、私は真っ暗な闇の中にいました。破壊衝動に突き動かされて、何もかも滅茶苦茶にしてやろうとしました。けど...」

 

そこで一旦区切り、続けた。

 

「けど、闇の中で光を感じたんです、カズヤさんの光を。それを掴んだら闇が吹っ飛んでったんです」

 

響はカズヤに近寄ると、両手でカズヤの右手を取り握る。

 

「カズヤさんは以前私に言ってくれました。私の手は誰かを救う手だって。だったらカズヤさんの手は、皆を導き照らす希望の光です」

 

呆然とするカズヤに響が言い募った。

 

「たとえ闇の中にいても、そこには光があるはずです、カズヤさんの輝きが。だってシンフォギアも、ダインスレイフの欠片も、全部カズヤさんが再構成してくれたものなんですよ! だからきっと大丈夫、へいき、へっちゃら!」

 

そして太陽のように輝かんばかりの笑みを浮かべる響こそが、希望そのものだと感じてしまうくらいに眩しくて。

 

「......サンキュー、な。そこまで言われたら、俺はもう覚悟を決めてお前らのことを信じることしかできねー」

 

漸くいつもの、人懐っこい笑みを見せたカズヤの変化に、皆は微笑みで返す。

 

 

 

それから数時間後、シンフォギアにダインスレイフの欠片を組み込み、拒絶反応が出ないことが確認された。

 

 

 

 

 

キャロル達にとって計画の要である巨大装置にして、居城であるチフォージュ・シャトー。そこの主であるキャロルは苛立ちを隠せぬまま、玉座に座り来客の対応をしていた。

来客といっても、招かれざる客だが。

 

「何の用だ?」

 

眼前に佇むは三人の錬金術師。

中央に立つは男装の麗人、サンジェルマン。

胸元が大きく開き丈の短いスカートという大胆な装いのカリオストロ。

小柄な背丈に眼鏡とゴスロリファッション姿のプレラーティ。

パヴァリア光明結社の幹部三人が揃い踏み。アポも取らずに土足でズカズカと入ってきた連中に、キャロルのこめかみがヒクヒクと震えている。

その玉座の両隣では、最大限に三人を警戒し、いつでも戦闘できるように構えたファラとレイアが控えていた。

ガリィとミカはこの前の戦闘で手酷くやられた為、現在修復中であり、玉座の間にはいない。

 

「単刀直入に言う。数日前の戦闘についてだ。小日向未来が"シェルブリットのカズヤ"と同じ力を行使したことについて、知っていることを聞かせてもらおう」

 

拒否や虚言は許さない、サンジェルマンの恫喝めいた口調にキャロルは苛立ちを更に募らせ、目を細めて三人を睨み付ける。

ここで教えないと色々と面倒なことになりそうだ。最悪、今にもこの三人と戦うことになるかもしれない。それを考慮して、リスクとデメリットの計算をしてから口を開く。

 

「見返りは何だ?」

「損傷したオートスコアラーの修復をあーし達がお手伝い、っていうのはどうかしら?」

「先の戦闘で穴だらけになって使い物にならない人形共を、我々が診てやるワケダ」

 

カリオストロが聞き分けのない小さい子どもを諭すように、プレラーティが陰気な笑みを浮かべて告げる。

 

「どうだ? 悪い交換条件ではないと思うが」

 

僅かに首を傾げて問うサンジェルマン。

顎に手を当て数秒間黙考。ガリィとミカの損傷具合はかなり酷かった。逆に言えば、それだけ小日向未来の力が強大だったということ。全くノーマークだった存在が、完全に予想だにしなかったイレギュラー。それ故に、二体のオートスコアラーが動かせなくなってしまった現状は、非常に厳しい。このままでは計画に大きな支障をきたす。

確かに悪くないと考えキャロルは応じることにした。

 

「いいだろう。二体の修復が終わるまで、お前達の手を借りてやる」

「では...」

「交渉成立だ」

 

それからキャロルは、自覚のない内通者としてS.O.N.Gに協力しているエルフナインが見聞きした情報をくれてやった。

アルター能力。正式名称、精神感応性物質変換能力。

"向こう側の世界"と呼ばれる異世界にアクセスすることで行使される力であること。

そして、小日向未来が能力に覚醒したのは、フロンティア事変の際に彼女がカズヤと共にその世界への"扉"を開き、赴いたのが原因だということ。

能力者の精神的な強さが能力の強さに直結していること。

能力者によって一度分解、再構成された物質は能力者の力と同質の属性を得るらしく、現存のシンフォギアは全てシェルブリットの『光』を帯びていると考えられること。

なお、小日向未来の能力が『神獣鏡のシンフォギア』と全く同じ理由は不明。しかしながら『鏡』であるが故にシェルブリットの『光』とは相性がとてつもなく良いとされることなど。

 

「...なるほど、"向こう側の世界"、それ故の"向こう側の"力、か...つまり、"向こう側の世界"に行くことさえできれば、あの力が手に入る...その為には"向こう側"への扉を開く...ならばやはりあの男を...」

 

話を聞き、研究者の顔になってぶつぶつ一人言を呟きながら思案に耽るサンジェルマンを、キャロルは冷めた目で見つめる。

ちなみに、月読調の肉体にパヴァリア光明結社にとっての宿敵、フィーネの魂が宿っていることに関しては聞かれなかったので、あえて話さなかった。

 

「そっちの欲しい情報はくれてやった。働いてもらうぞ。ファラ、案内してやれ」

「...では皆様、こちらへ」

 

満足気にしているサンジェルマン達をファラが引き連れ、玉座の間を出ていく。

それを見送って、キャロルは疲労を吐き出すように溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

オートスコアラーが下校中の響を襲撃し、その際に未来がアルター能力者として覚醒してから、一週間と数日が経過。

その間、キャロル陣営はアクションらしいアクションを起こしていない。

S.O.N.Gの本部である次世代潜水艦は、各動力部のメンテナンスの為、ドック入りとなっている。

Project IGNITE(プロジェクトイグナイト)の現在の進捗率は八十七パーセント前後。破壊されてしまったギアの修復はカズヤのお陰で即終わったが、ギア側からの拒絶反応の問題で計画が発足と同時に一時停滞していたので、当初の予定よりもかなり遅れているらしい。

今もなお、エルフナインと調の肉体を借りたフィーネが急ピッチで作業に当たっている。

 

「それにしても、シンフォギアの改修となれば機密の中枢に触れるということなのに、随分あっさりと許可が出ましたよね...まあ、完全に事後承諾でしたけど」

 

司令部にて慎次が口にすれば、弦十郎が腕を組みつつ応じた。

 

「状況が状況だからな。それに、八紘兄貴の口利きもあった」

「ああ、それ。たぶん俺が前に親父さんにメッセージ送ったからだと思う」

「え...それ本当ですか、カズヤさん?」

 

椅子に四肢を投げ出すようにだらしなく座るカズヤが、ポケットからスマホを取り出しヒラヒラさせるのを見て、慎次がぎょっとする。

 

「そうか。そう言えば八紘兄貴とは頻繁に連絡のやり取りをしているらしいな、カズヤくんは」

「頻繁ってほどじゃねーけど、現場の声を直接聞きたいから、困ったことがあればなんとかするので些細なことでもすぐに教えてくれ、って連絡先交換して以来それなりに、な。つっても、普段はそんなお堅い内容なんてないに等しいし、今じゃもう半分メル友みてーな感じだぜ。都内の隠れた名店のラーメン屋教えてもらったり、翼とツーリング行った時の動画を来週アップするから見てねとか、基本的にそんなやり取りばっかだ」

「...何それ、私そんなの知らない...お父様、いつの間にカズヤとメル友に...」

 

すぐそばにいた翼が何故かショックを受けたような表情で呻く。

それを放置してカズヤは続けた。

 

「シンフォギアについても、そもそもあれは俺が何度か分解と再構成してる時点で、改修なんて今更だとか言ってたから、許可なんてすぐに出せたと思う」

「確かにその点については今更だよなー。事後承諾で問題ないってのもそういうことか」

「国家機密の代物を何度も原子レベルで分解してるもんな」

 

奏とクリスが納得したように言いながら、カズヤに視線を注ぐ。

当のカズヤは、丁度翼に詰め寄られ「ジャンプしてみ」とカツアゲされるが如くスマホを奪われ、メッセージのやり取りを勝手に見られており「仲良さそう...羨ましい」と恨みがましい視線で睨まれていた。

 

「そう言えば、私達の身柄をカズヤに引き渡してくれたのも、S.O.N.G所属を後押ししてくれたのもその人物だったわね」

「やけに話がスムーズに行くかと思ったら、翼さんのお父さんで、カズヤさんのメル友だったんですね」

 

マリアとセレナも合点がいったと頷く。

実際、メル友になったのは翼とカズヤの婚約云々の話の後なので、イヴ姉妹の言うことには時系列的な差異があるのだが、八紘が予めカズヤと個人的にパイプを持ちたいと考えて動いていたことは十分あり得る。

 

「そしてカズヤさんと翼さんの二人を婚約させた人です」

「響、それはちょっと違うよ。八紘さんは風鳴家を君島家にした上で全部私達にくれる人だよ」

 

羨ましそうに言う響を、未来が不敵な笑みで訂正した。

うふふふ、と声を押し殺して笑う未来の横顔を目撃し、弦十郎や慎次、オペレーターのあおいと朔也の大人達は末恐ろしいと内心で戦慄する。

 

(アルター能力に目覚めてから、未来くんから放たれる凄味が一段と増したな)

(アルター能力者はエゴイスト...なるほど、未来さん、所々カズヤさんに似てきましたね)

(...カズヤくん、このままだと未来ちゃんにどんどん尻に敷かれるわよ...もう手遅れっぽいけど)

(前々から思ってたけど、どう考えてもカズヤくん達のヒエラルキーって未来ちゃんが頂点だよね)

 

 

 

「ふぅ......エルフナインちゃん、少し休憩にしましょうか」

「はい、分かりました」

 

肩の力を抜いて溜め息を吐きフィーネが提案すれば、エルフナインが同意し大きく伸びをする。

 

「くかー」

 

研究室の隅では、椅子に座り涎を垂らして居眠りしている切歌。

フィーネは苦笑を浮かべると、肉体を本来の持ち主である調に返却。

調は装着していた伊達眼鏡を外し眠る切歌に歩み寄り、肩を揺すった。

 

「切ちゃん起きて。休憩行こ」

「......んあ? 調? おはようデース」

「おはよう、切ちゃん。おやつ食べに行こ」

「オヤツ!!」

 

寝ぼけ眼だった切歌はおやつという単語に過剰反応し、バネ仕掛けのように立ち上がる。

 

「食堂行くデース♪」

 

楽しげに宣言し、右に調、左にエルフナイン、それぞれの手を取り元気良く駆け出す切歌に、二人は笑顔でついていく。

辿り着いた食堂でケーキセットを注文し、席に着くと三人は我先にとケーキに食らい付いた。

 

「フィーネが頭使うから糖分の摂取は最優先事項」

「はい、頭脳労働に適度な糖分摂取は欠かせません」

「今日のケーキセットも美味しいデス!」

 

頬袋に餌をたくさん詰め込んだハムスターみたいになりながら、三人はケーキを食べた。

やがて食べ終わり、セットの紅茶を飲みながら切歌が二人に尋ねる。

 

「それで、進み具合はどんなもんデスか?」

「やっと残りは全体の十パーセントを切った、ってところかな?」

「当初の予定より遅れてますが、順調に完成へと近づいています。ただ、ギア八つ分となるとまだ時間は掛かりますね。場合によっては一つずつ順番に集中的に改修を行うこともできますが」

 

確認するような声の調にエルフナインが相槌を打つ。

質問をしておいてなんだが、それを聞いても「ほえー」と感嘆の声を出すことしか切歌にはできない。

作業を見学して思ったことは、何をどうしているのか分からない、だ。

調の体を借りたフィーネはひたすらキーボードを高速で叩き何かを入力していて、エルフナインはギアに謎の粉を振りかけたり、ハンダゴテのような器具だか工具だかでギアをジージーバチバチと火花を散らせているだけ。

エルフナインが錬金術を応用して改修するというので、大きな鍋をぐつぐつさせて呪文を唱える怪しい儀式をするのでは? と勝手な妄想を膨らませていたので、実際の作業内容は思ってたのよりずっと地味デス、と内心で呟いていたのは内緒だった。

地味で退屈だから見ている内に居眠りしていたのだが。

 

「とりあえずもうすぐ完成、完成したらアルカ・ノイズも怖くない、ってことでいいデスか!?」

「うん、そうだね。切ちゃんはそれでいいよ」

「? 調、それはどういう意味デスか?」

「切ちゃんは難しいことを考えずに、カズヤとか響さんみたいに前だけ見て突っ込めばいいってこと」

「立ち止まるな、振り返るな、考えるな、一歩も退かず突撃しろ! ってことデスね!!」

「......あ、うん、そんな感じ......傍から見ると完全に猪突猛進の脳筋おバカトリオだ......」

 

人の話をろくに聞かないし考える前にパンチが出る男、師匠が考えるな感じろ系で勉強が死ぬほど苦手な少女、そして最近はその二人から悪い影響を受けまくってる自称常識人の相棒。

字面にするとなんて恐ろしいことか。この三人、ある意味最強だ。何があっても絶対に力任せのごり押ししかしないだろう。

 

『せめてもう少し知力上げなさいよ三人共』

 

呆れた感じのフィーネの声が調だけに聞こえてくる。その意見には全面的に同意だ。

 

『とりあえず攻撃力、攻撃力さえあればいい。攻撃力さえあれば後は全部プレイヤースキルでなんとかすればいいんだよ!』

『カズヤさんがそう言うなら私もステータス全部攻撃力に振ろっと』

『当たらなければどうということはないデスが、こっちが当てても効かなかったら意味ないデスからね!!』

 

徹底した殺られる前に殺れ、という思考。

以前、皆で集まってゲームをしていた時、キャラメイクの際にしていた会話を思い出し、改めてフィーネが言いたくなる気持ちに共感して、調は頭痛がしてきた。

なお、攻撃力全振りのステータスで、ある程度までは詰まることなく進めてしまう実力があるのが、あの三バカの恐ろしい点なのだが。

閑話休題。

休憩も十分に取れたし、そろそろ作業に戻ろう、そう思った矢先、食堂に耳を劈くアラートが鳴り響く。

 

「何事デス!?」

 

大声で叫び、切歌が椅子を蹴倒し立ち上がる。

 

「まさかキャロルが...!? あと少しでギアの改修が完了するのに...!」

 

深刻そうに表情を歪めるエルフナイン。

食堂内のモニターには、赤い文字で『Alca-NOISE』と表示されていた。

 

『調! とにかく司令部に向かうわよ!』

 

フィーネの提案に調は無言で頷き、一目散に走り出す。

その後ろを二人が急いでついてくる。

やがて転がるように司令部に駆け込むと、既にカズヤと未来の姿がない。

 

「カズヤと未来さんは!?」

「...二人なら今出てった」

 

自分が共に出撃できないことに歯痒さを感じているのか、ぶっきらぼうな口調で簡潔にクリスが答えたので、視線をメインモニターに移す。

画面内では多種多様なアルカ・ノイズが暴れ回り、この潜水艦が停泊しているドック周囲の人工物を片っ端から分解していく。

 

「フィーネ、エルフナイン、ギアの改修はあとどのくらい掛かるの?」

「後は最終調整を残すのみです。だけど、ギア八つ分はもう少し時間がないと...」

 

少し焦った様子で問うマリアにエルフナインが応答するが、途中で言葉を詰まらせた。

装者全員分は時間が掛かり過ぎるのだ。

カズヤと未来、この二人の能力ならアルカ・ノイズの群れなんて一睨みするだけで消滅させられる。しかし、敵はそれだけではない。現在確認できているのだけで錬金術師のキャロルに、オートスコアラーのガリィ、レイア、ファラ、ミカの計一人と四体。

だが懸念すべき点はそれだけではない。パヴァリア光明結社がキャロルの支援をしていたことを考慮すると、最悪何処かのタイミングで介入される可能性もある。

できる限りこちらの戦力は整えておきたかったが、時間が許さないし敵は待ってくれなかった。だから──

マリアは一度強く唇を噛み締めてから弦十郎に向き直る。

 

「風鳴司令、今は強化型シンフォギアの完成が最優先。ならばフィーネとエルフナインには、私達の中で戦闘力が最も高い順に、クリスと翼のギアの完成を急がせるべきだと思います」

「「マリア!?」」

 

名指しされた二人が戸惑ったように声を重ねた。

 

「マリアくん、それは──」

「今前線に立つべきは強者! 未来という強力な仲間が加わっても、彼女はアルター能力者になってまだ日が浅いし戦闘経験も少ない! 万が一がないとは言い切れません! カズヤも"吸収(アブソープション)"のせいで第一形態までしか使えない! ならば最悪を想定して動くべきです!」

 

唇の端から一筋の血を流し訴えるマリア。自分自身も前線に立ちたいがそれを許されない現実に、悔しいという感情を押し殺し必死に訴えるているのだ。

 

「...了子くん、エルフナインくん!」

「分かってるわ! 行くわよ、エルフナインちゃん!」

「はい!」

 

彼女の意図に理解を示した弦十郎の声に、弾かれるように二人が動き出し、研究室に向かう。

それに何故か、意を決した表情の切歌もついていく。

 

「...マリア姉さん...」

 

ポケットティッシュを手渡し気遣うように姉を呼ぶセレナに、マリアは一言「ありがとう」と小さく感謝を述べて口回りを拭う。

使い終わり血で汚れたティッシュをギュッと強く握り締め、マリアはモニターを注視する。

他の装者達も、そんな彼女と同じ思いだ。戦場に赴いた二人と共に戦いたい。けど、それができない。

肝心な時に動けない事実に痛いほど拳を握り、歯を食い縛り、それでも俯かず顔を上げモニターを見つめ、ただカズヤと未来の無事を祈り、一刻も早く強化型シンフォギアが完成するのを願った。

 

 

 

 

 

自分達が放ったアルカ・ノイズの群れが眼下で暴れ回る光景を眺めつつ、レイアが口にする。

 

「そろそろ来る頃か?」

「ええ.........ほら」

 

応じたファラに示し合わせたように、アルカ・ノイズの群れが全て虹の粒子となって消滅。

煙幕にでもなったかのような大量の虹の粒子は、まるで吸い込まれるかの如く渦を描きながら一ヶ所へと集まっていく。

 

「出やがったな、化け物夫婦が!!」

 

忌々しげに毒づくガリィの視界の奥、その中心に佇み集まった虹の粒子を身に纏う二人の人物がいた。

 

「ふむ...派手な登場だ。おまけにアルカ・ノイズが時間稼ぎにもならんとは、こうして実際に目にすると凄まじいな」

「アルター能力者はシンフォギア装者とは一線を画す存在です。物質を分解し己の力へと再構成する、それの前ではアルカ・ノイズなど彼らにとって、己の力を具現化する為のただの材料でしかありません」

「破壊と創造、そして"向こう側"の力か......確かにこれだけ派手なら、パヴァリアの連中が騒ぐのも分かる。まあ、マスターも目をつけていたのは同じだが」

 

レイアとファラの会話を横で聞き流しながら、ガリィが不機嫌を隠そうともせずギザギザの歯並びで歯軋りする。

 

「マスターの命令とはいえあの化け物二人の相手とか、ガリィちゃん玉砕される予感がビンビンするんですけどぉ?」

「心配するなガリィ。何もマスターは奴らを倒せ、派手に散ってこいと言った訳じゃない。ただ、あの二人を適度に消耗させたら撤退しろとのことだ......業腹だが、パヴァリアの連中のお陰で、我々も地味に強化された。必要以上に悲観するな」

「しかし、神獣鏡は錬金術の天敵。警戒し過ぎて損はしないでしょう。付かず離れずを維持して戦い、疲れさせたらさっさとテレポートジェムで逃げますよ」

「シェルブリットが突っ込んできたら?」

「それこそ問題ないでしょう。第一形態は第二形態と比較して脅威度は高くありません。もし殴られても数発程度なら耐えられますし、顔面が粉々になるだけで済みます」

「それはそれで嫌なんだけど...」

 

会話を終えると三体の人形はその場から飛び降り、二人のアルター能力者と相対した。

 

 

 

 

 

こちらと対峙している三体のオートスコアラー、ガリィ、レイア、ファラを前に身構えたカズヤに、神獣鏡をその身に纏った未来が穏やかな口調で問う。

 

「第一形態で大丈夫なんですか?」

 

横目でチラリと窺えば、こちらを真剣な表情でじっと見てくる未来の顔がある。

 

「本音を言えば少し不安だ。けど、これでやるしかねーさ」

 

正直に答えて油断なく前を見据えていたら、未来は一つ頷いてから「分かりました」と納得し、左手を差し出してきた。

 

「?」

「右手、出してください。手を繋ぎましょう」

 

敵を目の前にして何を悠長なことを、と一瞬口に出そうとして、その眼差しに込められた熱意に動かされ、無言のまま言われた通り、金の装甲に覆われた右手を──シェルブリット第一形態の手を彼女の左手に重ねる。

互いの指を絡めて手を握り、未来にどういうつもりか視線で疑問を投げると、彼女は目を瞑った。

 

「一度私にカズヤさんがしてくれたから、コツは知ってます」

 

言って、彼女は全身から淡い虹色の光を放つ。

周囲の瓦礫と化したコンクリートやアスファルトが、一斉に分解され虹の粒子となり、カズヤの右腕全体に集まり、纏い、覆い隠す。

そして──

 

「こいつは...!」

 

刹那、右腕全体が()()()に包まれ、光が消えると右腕に変化が現れていた。

金の装甲が()()()()へと色が変わっている。

赤かった五本の指は全て白に。

色が変わっているのは指や腕だけではない。右肩甲骨から発生している突起物のような三枚の羽も、赤から紫になっているではないか。

 

「上手くいったみたいです。これに名前をつけるなら、シェルブリット第一形態、神獣鏡モードでしょうか?」

 

まるでドッキリが成功したとばかりに、無邪気に可愛らしく笑う未来に、暫し呆然としていたカズヤだが、彼女の意図を察して唇を吊り上げニヤリと笑う。

 

「こんなこといつ思いついたんだよ?」

「思いついたのは最近ですけど、そもそも似たようなことは先にカズヤさんがフロンティア事変で私の絶唱取り込んでやってたじゃないですか。私達って相性良いですし、お互いの"向こう側"の力同士が共鳴してるから、きっとあの時みたいなことができるだろうな、って」

 

事も無げに告げる未来の頼もしさに、カズヤは更に笑みを深めると前へと向き直り、彼女と繋いでいた手を離して拳を構えた。

 

「サンキュー、なんか不安がぶっ飛んだぜ」

「どういたしまして」

 

微笑んだ未来が応じる否や、カズヤは一歩踏み込んでから右拳を地面に叩きつけ、その反動で跳躍。

これまで呆けたように固まって二人のやり取りを黙って見ていた三体の人形が、泡を食ったようにそれぞれ動く。

 

「未来! 背中は預けた!!」

「任せてください! カズヤさん!!」

 

上から襲い掛かるカズヤに合わせるように、未来が自身の周囲に展開していた十枚の鏡から閃光を撃ち出す。

それが狼煙となり、戦いの火蓋が切って落とされた。




ガリィ&レイア&ファラ
「そんなの聞いてない!!!」

ミカ
「ヤバイ......ヤバイ(語彙力喪失)」

キャロル
「」

クリス
「これあたしらに出番回ってくるのか?」


「...私が知りたい」

マリア
「...もう全部あの二人でいいんじゃないかしら?(白目)」

S.O.N.Gの皆
「おい!?」





次回のネタバレ予告(嘘)

弦十郎
「カズヤくん、第二形態は使うなよ!!」

カズヤ
「オッケー、シェルブリットォォォォッ!!」

S.O.N.Gの皆
「人の話を聞けええええええええええええ!?」

サンジェルマン
「素晴らしい...! そうだ、もっと見せろ! お前の輝きを!!」

カリオストロ
「...あー、サンジェルマン?」

プレラーティ
「......聞いてないワケダ」

サンジェルマン
「もっとだ、もっと、もっと輝けええええええええええええ!!」
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