カズマと名乗るのは恐れ多いのでカズヤと名乗ることにした   作:美味しいパンをクレメンス

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ロリマリアと大人セレナ、めっちゃ良いけど石ないねん(憤怒)

そして私個人のプライベートの時間がなかなか取れず、休日も忙しくて執筆あんまできず、更新ペースがどんどん落ちるのを許してクレメンス。

原作アニメで響と切歌と調の学生組三人が地下構へ突入する時、クリスちゃんは本部で待機してますけど、あれってなんで学生組のクリスちゃんが制服着て本部で待機してたんですかね?
制服着てたってことは学校行ってた? 放課後は即本部に向かった? でも作戦中は『本部は現地に向かって航行中』ってことは海の中らしいしそんな時間あったん? 早退でもしたんだろうか?
つーことで、この作品では計十人と原作より四名多いので『学生組は学校行ってて、放課後に呼び出しを受け地下構に突入した』、『それ以外はカズヤを除き本部で待機していた』、『カズヤは一人で街をほっつき歩いてた』って感じになりました。
なのでクリスちゃんも原作アニメと違って地下構突入組です。

ちなみに響パパは前回カズヤから頭突き食らったので暫く出番なし。


布石

「共同構にアルカ・ノイズの反応?」

 

通信越しに知らされた内容に疑問を覚え、カズヤは眉間に皺を作る。

筑波から東京に戻ってきて数日後。時刻としては学業を終えた学生が喜び勇んで部活や遊びに精を出す放課後。

彼は一人、駅前付近の繁華街で通信機を片手に歩道の端に寄って立ち止まり、耳に意識を集中させた。

 

「なんでんなとこに?」

『分からん。だが、アルカ・ノイズが出た以上、こちらが出張らない理由はない』

「それもそうだな」

 

弦十郎の厳かな声を聞き、カズヤは口元を歪め獰猛な笑みを浮かべると、サングラスを外す。

 

『本部は現場に向かって航行中』

『先んじて立花、小日向、雪音、暁、月読を向かわせている』

 

現在本部にいるマリアと翼が、それぞれ本部の状況と振られた采配を教えてくれる。

見事なまでに突入グループは学生組&カズヤとなり、本部に待機していた年長組が留守番という形になる。時間帯的に放課後になったばかりなので当然と言えば当然なのだが。

 

『いいかいカズヤ。緊急事態だけど、皆と合流してからの突入だからね』

『いつもみたいに一人で真っ先に突っ込まないでください』

 

奏、セレナからしつこいくらいに釘を刺されて渋面になるのを自覚しながら質問する。

 

「場所は地下の共同構なんだろ? 頭数がそれなりにあんなら合流してから突っ込むより、一旦地下に降りてから動いた方が効率良くね?」

『......一理あるが、地下は広くて迷路のように入り組んでいる為、単独で各々が動くより纏まって動いた方が危険は少ないと判断した。合流ポイントのデータをこれから送る。既に切歌くんと調くん、クリスくんが現地に到着済みだ。距離的には響くんと未来くんよりカズヤくんの方が僅かに近い。六人揃い次第突入するように』

「了解」

 

暫し間を置いてからの弦十郎の返答に納得し、通信端末で合流ポイントを確認してから走り出す。

ほどなくして合流ポイントに辿り着けば、制服姿のクリスと切歌と調の三人が地下への入り口前で待ち構えていた。

駆け寄りながら片手を上げて「よっ」と挨拶する。

と、切歌がクンクン鼻を鳴らしながらカズヤに近づき、

 

「ソースとあんこの美味しそうな匂いがするデス......カズヤ! 『ふらわー』寄った後に鯛焼き食べたデスね!?」

 

ズビシッ、と擬音が聞こえそうな勢いで顔を指差してきた。

 

「犬かよ」

「犬だな」

「名犬切ちゃん」

 

カズヤとクリスが半眼になり、調がパチパチと拍手。

 

「で、どうなんデスか?」

「大正解だ。ったく、変な特技身に付けやがってこの食いしん坊め」

「デヘヘヘェ~」

 

切歌の頭に手を載せそのままグリグリ撫でてやれば、両手を腰に当てて胸を張り、得意気になる自称常識人。

尻尾があればブンブン振ってるのではなかろうか。

 

「ごめんなさい、遅れました~」

 

響の声が聞こえた方を向けば、制服姿の響と未来が駆け寄ってきた。

これで突入メンバー全員集合だ。

 

「...あれ? ソースとあんこの匂いがカズヤさんからする。もしかして『ふらわー』でお好み焼き食べてからデザートに鯛焼き食べました!?」

 

鼻をスンスンしながら響がカズヤに近づき聞いてくる。

 

「犬がもう一匹いたぞ」

「いたな」

「名犬響さん」

「響さんも仲間デス!」

 

知ってた、と言わんばかりの表情になるカズヤとクリス、やはりパチパチと拍手をする調、何故か大喜びする切歌の反応に、響と未来は何のことか分からず揃って首を傾げて頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。

 

 

 

 

 

「犬ってそういうことだったんだ。確かに響と切歌ちゃんって、犬っぽいかも」

「そうかなー?」

「私と響さんってそんなに犬っぽいデスか?」

 

未来の発言に響と切歌が笑って応じる。

アルター能力者はアルターを発動させ、シンフォギア装者はシンフォギアを纏い、地下構へ突入を開始。

地下は最低限の明かりのみで薄暗いが、アルターとシンフォギアにより身体能力と知覚能力が上昇している六人には何ら問題なく行動できる環境だ。

なお、カズヤはシェルブリットの第一形態。その理由として、地下という限定空間でシェルブリットバーストをぶちかましたら何が起こるか分からないのと、地下共同構は都市のライフライン等が張り巡らされた場所である為、下手に暴れたせいで思わぬ事態を招いてしまう、ということを嫌ったから。ちなみに同じ理由でクリスもミサイル系の爆発物は厳禁としている。

 

「逆に未来とクリスと調は猫っぽいよな」

「言われてみれば」

「そうデスねー」

 

先頭を小走りで進むカズヤに犬属性の二人が同意。

談笑しながらも周囲の警戒は怠らない。口調は軽いが目付きは鋭く。軽いやり取りも緊張し過ぎない為のもの。突然の襲撃にも対応できるように用心しながら進む。

 

「あたしは猫か」

「確かにクリスちゃん、猫だよね。初めて会った当初は奏さんがクリスちゃんのこと、『あの泥棒猫!』って怒ってたし」

「そういう意味での猫じゃねぇだろこのバカ!」

 

微妙にトンチンカンなことを言って過去を蒸し返す響にクリスが憤慨。

 

「切ちゃん、私って猫?」

「可愛い猫ちゃんデース!」

「ふふ。そっか」

 

元気な返答に調が微笑んだ。

 

「カズヤさん、私のどんな所が猫っぽいですか?」

「......あー、まあ、色々と」

「色々?」

「色々だ」

 

背後からの未来の声にカズヤははぐらかすように応対するに留めた。

フロンティア事変以降、今まで比較的性格が大人しく控えめな(と皆が思っていた)未来が、まるで発情期を迎えたメス猫のようにこれでもかと甘えてきたり求めてきたりするとは思っていなかった、とは口が裂けても言えない。言ったら最後、ぶん殴られてノされた後にホテルに引きずり込まれるのが目に見えている。

普段の日常では何かと未来に頭が上がらず、模擬戦だと未だに負け越しているカズヤであった。

 

「じゃあ奏さん達は犬と猫ならどっちですか?」

「奏とマリアは猫、翼とセレナが犬だな」

 

響の質問にカズヤが即答し、皆もそうだよそうだねと笑い合う。

奏は自由気ままな性格が、マリアは髪型や人前での高飛車な振るまいが猫のようだ。

逆に翼とセレナの二人は前者の後ろをちょこちょこ付いていく感じが実に犬っぽくある。

 

「でもカズヤは犬とか猫って感じしねぇよな。動物でどれかっつわれたら、ライオン? しかも群れのボス的な」

「最早野獣猛獣の類いデス!」

「言い得て妙なことを言いますね、クリス先輩」

「だろ?」

「クリスちゃんに座布団一枚!」

 

クリスの言葉に納得する面々。

シェルブリット最終形態はまさに獅子といった感じなので、むしろそれは『っぽい』ではないとカズヤは思う。

 

「ライオンさんなカズヤさん、何か一言」

 

背後から皆を代表するように未来が声を掛けてきたので、一瞬振り返ってから、

 

「ワリー、気の利いた一言が言えればよかったんだが、どうやら本格的に仕事の時間だぜ」

 

低い声で呟くと前に向き直り、立ち止まって拳を構えた。

皆もつられて急停止し、響も拳を、他の皆はアームドギアを構え迎撃体勢に入った。

視界の先で、赤い光と共にアルカ・ノイズがその姿を現す。

 

 

 

 

 

【布石】

 

 

 

 

 

こちらの周囲をぐるりと囲むように召還、配置されたアルカ・ノイズ。

これらが出現したならば、それを使役する者が付近にいるはず。

前側をカズヤが、後ろ側を未来が睨み付け、二人は同じタイミングで全身から淡い虹色の光を放ち、アルカ・ノイズの群れを瞬時に分解、粒子化させて殲滅する。

 

「ゲェェェ!? 化け物夫婦!!」

 

大量の虹色の粒子が空気に溶けて霧散していく視界の奥で、慌てた様子のミカを発見。

以前、腕一本粉々にした上で再起不能にしたのだが、それを全く感じさせない姿。どうやら綺麗さっぱり修復したらしい。

 

「ハッ、ガラクタ人形が。今度こそ後腐れなく粉々にしてから不燃ゴミとして処理してやっから覚悟しやがれ」

「オシドリ夫婦だなんて......そ、そんなに褒めても見逃してあげないんだから......」

「オシドリなんて何処から出てきた!?」

 

今にもミカに飛び掛かりそうになったカズヤの後方で、未来が自身の頬に手を当てて嬉しそうに口元を弛ませながら身を捩らせていたので、思わず振り返って突っ込んでしまう。

 

「お前ら化け物夫婦にミカは付き合ってらんないゾ!」

 

その間にミカは背を見せると、脇目も振らずにすたこらさっさと逃げ出した。

 

「ああ! オートスコアラーが逃げたデス!」

「迷いなく逃げた、判断が早いし逃げ足も速い」

 

切歌と調の声に急いで反転すると、ミカが地下の闇に消えていく。

 

「くっ、私とカズヤさんの隙を突くなんて......追わなきゃ!」

「誰のせいだ、誰の!!」

 

今度は悔しげに唇を噛む未来にカズヤが突っ込まずにはいられない。

 

「どう聞いたら化け物をオシドリに聞き間違えるの未来!?」

「何が『くっ』だよ!? 耳に悪魔の補聴器でも填まってんのか!!」

 

非難するように響とクリスが詰め寄り叫ぶ。若干、カズヤと未来が敵サイドから『夫婦』呼ばわりされていた事実に嫉妬がない訳ではないのだ。むしろ自分も呼ばれたい。この際『化け物』が付いてても構わないのであった。

ついでに言えば、『化け物』を『オシドリ』に脳内変換し、いかに自分とカズヤが仲睦まじいかをアピールしようとする様にちょっと腹が立っている。

 

「戦闘中にやめて響、クリス、私とカズヤさんがオシドリ夫婦だからって嫉妬しないで!」

「「「だからオシドリ何処から飛んで来た!?」」」

「オシドリでも雄鶏でも七面鳥でもいいから早く追うデスよ!!」

 

珍しくまともなことを言う切歌に急かされ一同は漸く走り出し、ミカを追う。

 

「......アルター能力者って基本的に話を聞かない人種なんじゃないかと最近私は思うの」

『ああ、アルター能力者はエゴイストってそういう......』

 

調が呆れたように口にすれば、彼女の体に宿るフィーネが妙に納得したように呻く。

 

「クソッ、待て! 待ちやがれ!! ぶっ壊してやる!!」

「そんなこと言われて待つバカいないゾ!」

 

全力疾走しながらカズヤが怒声を上げ、ミカは逃げながらアルカ・ノイズを召還する為の黒い石を大量にバラ撒く。

 

「ああもう、鬱陶しいぜ!」

 

虹色の光を放ち、召還された瞬間にアルカ・ノイズを分解。粒子状の光が煙幕のように視界を遮るが構わず走り抜けるものの、ミカとの距離は縮まない。

 

「クリス、狙撃できねぇか!?」

「あっちもこっちも走ってるから命中率クソだが、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるで!!」

 

並走するクリスが直ぐ様アームドギアをアサルトライフルに変形させ、走りながら腰溜めに構えて間髪入れずに撃ちまくる。

地下構内をマズルフラッシュが明滅し、マシンガン特有の銃声が響き渡るが、前方のミカは地面を蹴って跳躍し、そのまま壁や天井を足場にして、三次元かつアクロバティックな動きで上下左右に跳び回り、的を絞らせない。

 

「ちっ、ちょこまかと......!」

 

クリスが舌打ちする。場所が場所だけに高出力の技は厳禁。ここが地下でなければいつもみたいに小型ミサイルで面制圧できるのに、と思うが口にはせず。

 

「クリス、私と切歌ちゃんと調ちゃん、四人で一緒に!」

「合点デス!」

「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、第二弾です」

「分かった、皆で一緒に!」

 

ホバークラフトのように地面から僅かに浮いて進む未来が、自身の周囲に鏡を展開させて先頭に出る。

 

「「「「せーっの!!」」」」

 

声に合わせて切歌と調がジャンプし、

 

「「「「クタバレェ!!!」」」」

 

空中からそれぞれが鎌の碧刃と鋸の紅刃が射出。鏡から紫の閃光が放たれ、アサルトライフルが火を吹く。

 

「お前ら殺意高過ぎだゾ!?」

 

悲鳴を上げながら、先程の動きに加え、ミカは自身の括られた髪の先端からバーニアを吹き更に加速しながら螺旋を描くように壁を走り天井を走り、必死に殺意増し増しの攻撃を躱す。

壁や地面、天井などを紫の閃光が灼き、碧の刃と桃色の鋸が突き刺さり、弾丸が穿つが、オートスコアラー内で最も高い戦闘能力を回避と逃走に全力を出すミカには当たらない。

 

「何だあいつのあの動き!? 慎次ほどじゃねーが敵ながらスゲーなおい!」

 

カズヤの感嘆の声に頷いている余裕はない。このままでは逃げられる可能性が高い。なんとか急いでミカの動きを止めなくては、空間転移をする余裕を与えてしまう。

 

「カズヤさん、私が突っ込むからサポートお願いします!!」

「オッケー任せろ! 衝撃の──」

 

叫びつつ響がカズヤの前に出た。

続いてカズヤの右腕──シェルブリット第一形態における上腕部から肘にかけての装甲が左右に展開し、両端に鋭い刺が突き出ると、右肩甲骨に発生している赤い三枚の羽根の内上から三枚目が先端から砕け散る。

 

「──ファーストブリットォォォォッ!!」

 

雄叫びに合わせて響は小さく跳び、空中で両足の踵を揃えて膝を曲げて身を屈めて縮こまった。その際、丁度踵がカズヤの正面になるような体勢になるのを忘れない。

一方カズヤは、彼女の踵を殴るのではなく拳を合わせるだけに留めた上で、右肩甲骨から翡翠色のエネルギーを噴射させ推進力とした。

靴底を地面に滑らせながら猛スピードで前進するカズヤと、空中で彼の拳に載るような形で押される響。

 

「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」」

「うげっ!?」

 

カタパルトから射出される戦闘機の如く、急接近してくる二人に気づいたミカが肩越しに振り返り、その表情を驚愕に染めた。

 

「行け響ぃぃぃっ!!」

 

拳を振り切りカズヤが響の踵を全力で押し出し、響がそれに合わせて足場にしていたカズヤの拳を蹴る。

 

「......どおおおおおりゃああああああ!!」

 

さながら戦闘機から発射されたミサイルのように飛ぶ彼女は、空中で腰のバーニアを吹かし更に加速。拳を振りかぶってミカに向け気合いを籠めて突貫。

一気に間合いが詰まる。

対してミカは速度を落とさぬまま、人間では絶対にあり得ない動き──人形らしく()()()()()()()()()()()させこちらを向き、両腕を交差させて防御体勢に入った。

構わず右の拳を打ち抜く。

耳を塞ぎたくなるような大音量の打撃音を伴い、ミカが物凄い勢いで吹き飛ぶ。

ついに捉えた! 誰もがそう思った刹那、

 

「これがミカの逃走経路だゾ!!」

 

かかった、と言わんばかりに唇を三日月の形にしたミカが笑い、空間転移をする為の石──テレポートジェムを取り出し、握り潰す。

 

「っ! 撃滅のセカンドブリット!!」

 

殴り飛ばされた際の運動エネルギーをも利用して距離を取る、そして十分に離れてから安全に空間転移をする、それらのミカの考えに気づいたカズヤが二枚目の羽根を消費し、翡翠色の光を尾に引きながら猛然と飛び出し響のそばを通り抜けミカへと迫るが既に遅い。

 

「これでバイバイだゾ~」

「待ちやがれッ!」

 

赤い光に包まれてから消えるミカ。それに一瞬遅れてカズヤの拳が空を切る。

勢い余ってその場を二十メートルほど通り過ぎ、やがて翡翠色のエネルギーの噴出が終わるのに合わせて百八十度回転してから止まり、ミカが立っていた位置を睨む。

 

「......クッソ!」

 

まんまと逃げられてしまい、カズヤは忌々しいとばかりに口汚く吐き捨てた。

 

 

 

 

 

場所を地下構から本部に移し──

 

「言い訳はしねぇ、面目ねぇ」

 

そこにはミカを逃がしてしまったことに俯くカズヤの姿が弦十郎の前にあった。

最近彼が凹んでる様子をよく見るなぁ、と内心で思いながらも口には出さず、とりあえず形式的にだけで構わないのでお叱りの言葉をくれてやる。

 

「今回については、緊張感が欠けていたのは否めないな」

「ああ」

「......すみません」

 

相槌を打つカズヤの隣には、『私は最近調子乗ってました、反省してます』と書かれた札を首から下げた未来が深々と頭を垂れていた。

ちなみに札は奏が用意したもので、「今日一日それを身に着けて過ごすように!」と叱られた結果でもある。

 

「......ま、あたしらも同罪みてぇなもんだ」

「すいませんでした!」

 

未来に倣うようにクリスと響も頭を下げるので、切歌と調がつられて頭を下げようとしたのをマリアが肩を掴んでやんわり止めた。

そんな光景に弦十郎はこれ見よがしに大きな溜め息を吐き、後頭部を軽く掻いてから告げる。

 

「以後、私情を現場に持ち込まないように。一つ間違えれば自分や仲間が怪我をしたり、最悪命を落とす戦場にいることを忘れるな。今回の失態を教訓にすること、いいな?」

「「おう」」

「「はい」」

 

カズヤとクリス、響と未来がそれぞれが素直に返事をし、反省会及びお説教が終わった。

 

「...そんで、結局オートスコアラーが地下構にいた理由とか目的とかって何だったの?」

 

話題転換を図る奏の疑問に、今回突入した六人は首を横に振るのみではあったが、ここで弦十郎が自身の顎に手を当てて呟く。

 

「その辺りについては、緒川に独自に動いてもらっている。どうも気になるものを見つけたらしい」

「気になるもの?」

 

オウム返しする奏。

カズヤが「そういや慎次が戻ってきてねーなー」と小さく漏らす。

 

「カズヤくん達がオートスコアラーと遭遇した場所には、地下構のメンテナンス用の機器や端末が配置されている場所でもあったんだ。それ自体は地下構内に一定間隔でいくつもあるんだが、緒川曰く一部使用された後があったとのことだ」

「使用された後って、オートスコアラーが?」

 

ますます分からないと顔を歪める奏に誰もが全面的に同意するように、眉を顰めて難しい顔になる。

 

「ああ。業者に確認をしたが、本日は誰も使用していないはずなのに不審な使用履歴があったことも確認されている。しかも時間はカズヤくん達が遭遇する直前までのもの。何を企んでいるのか不明だからこそ、それを明らかにする為、今緒川に調査してもらっている」

 

肩を竦めてみせる弦十郎も、後手に回りっぱなしとなっている現状に、いかにも「やれやれ」といった感じだ。

 

「......つーかさ、キャロルの最終的な目的ってのは世界を壊すことなんだろ? だったら、そもそもなんであのガキは俺らに喧嘩売ってきたんだ?」

 

近くのソファーにドカリと体重を預けて座りながら腕と足を組んで天井を仰ぐカズヤに皆が注目する。

 

「影でコソコソ何か企むんだったら、それこそ最初から俺達に認知されないようにするべきだ」

「エルフナインが聖遺物を持って脱走したからじゃないの?」

 

マリアの指摘にカズヤは首を横に振った。

 

「なら、逆にあんな大火事になるような騒ぎなんて起こすべきじゃねーだろ。街中で派手に錬金術を使いまくるのは絶対に避けるべきだし、オートスコアラーの身体能力なら人知れずエルフナインを抱えて連れ帰るなんて余裕だろうしな」

 

言われて誰もが、あっ、と気づく。

 

「それに、ロンドンで俺と歌手三人を襲撃する必要もねーし」

「ファラの襲撃は"向こう側"の力を狙ったものだったのではないか?」

「だとしてもリスキーじゃねーか? よく考えてみろよ。S.O.N.Gに目ぇつけられんだぜ? どう転んでも今後の邪魔になるとしか思えねーって」

「む......確かに」

 

質問した翼は返答を聞いて唸った。

 

「ちょくちょくちょっかい出してくんのもそうだ。目的が分からねぇ襲撃が多くねーか? 未来がアルターに覚醒した時は"向こう側"の力のテストだったらしいが、わざわざ襲撃しなくてもテストなんていくらでもできる。筑波でのガリィなんて特にだ。あいつは結局何がしたかったんだ?」

 

う~んと誰もが考え込むものの、なかなか答えは出ない。

 

「んで、今まで派手に暴れてたのが、ここにきて地下でコソコソだ。しかも戦おうともせずに逃げの一手。これまでとギャップがあり過ぎて違和感が拭えねーよ」

 

悔しいが判断材料となる情報が少ない。だが何かを企んでいるのは間違いない。残念ながら敵の動きは読めないが、それだけは確信を持って言えた。

セレナが小さく挙手をし、問う。

 

「違和感、ですか?」

「ああ。地下の一件と比べて今までのはどう考えても()()()()()。何しに来たのか不明で、戦闘を仕掛ける必要がないとしか思えねー場面がいくつもあった......だがもし」

 

そこで一旦区切ってから低いトーンに変わる。

 

「俺達から見て()()()()()()()()()()()()()が、連中にとっては必須であり明確な目的があって実施されたもんなら、まんまと掌の上で踊らされてることになるな」

 

司令部がシーンと静まり返り空気が少し重くなったのを感じて、カズヤはそれを嫌って立ち上がると、

 

「つっても、俺達肉体労働組が今ゴチャゴチャ考えてもしょうがねーか! こういう時は何も考えず体動かすに限る! まだまだ暴れ足りねーから模擬戦でもしよーぜ!」

 

一転してシリアスな雰囲気を吹き飛ばすように人懐っこい笑みを見せ、装者達を促すのであった。

 

 

 

 

 

私はカズヤから強烈な一撃を防ぎ切ることができず、吹っ飛ばされたと同時にアームドギアの鎌を手放してしまい、もんどり打って倒れてしまったデス。

続いて全身を覆っていた金の光──"向こう側"の力が消失すれば、昂揚感や一体感、漲っていた力が嘘みたいに抜けていき、身も心も熱くさせていたものが失われて、代わりに体の節々やら殴られた箇所やらがジンジン痛みを訴えてきました。

......いや、痛み自体はダメージを受けた時からずっと変わらずあったデスが、同調してると痛覚があまり気にならないくらい『ハイ』になってるんデスよね。

で、同調が切れると感覚が全部元に戻るから、地味に辛い。

仰向けで、大の字になって見上げるトレーニングルームの天井の照明が眩しい。

眩しさに目を細めれば影が差し、視界にはこちらを気遣うような表情で覗き込んでくるカズヤが。

 

「大丈夫か切歌?」

「......全然平気、へのカッパ、デス」

 

痩せ我慢を口にしながら差し出された手を取り、立ち上がるのを手伝ってもらいます。

次にカズヤは、背中から壁に叩きつけられてそのままめり込み前衛芸術みたいになってる調を引っこ抜く。

 

「俺と切歌と調、ちょっと休憩するわ」

 

マリア達にそう告げるカズヤの後を、調と一緒にフラフラと覚束ない足取りで追い、トレーニングルームを出ます。

私達と入れ替わるようにマリア達がトレーニングルームに入ると、七人でどういう組み合わせで模擬戦をするか話し始めました。

強化ガラス越しにその光景をぼんやり眺めながらギアを解除し、訓練用のジャージに戻ると、カズヤが真っ先に近くのソファーに座ってスポーツドリンクを飲み出すので、調と二人でカズヤを挟むように座ります。

次の瞬間、強化ガラス越しに爆音が響いてきて、空気が震える。

七人で乱戦でも始めたのか、手当たり次第に攻撃し出したマリア達。

 

「あいつら、いっつもバトルロイヤルしてんな」

 

のんびりしたカズヤの声とは対照的に、視線の先では激しい戦いが繰り広げられています。

でも、なんかやけに未来さんに攻撃が集中してる気がするのは気のせいなんデスかね?

 

「......こんのぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

あ、やっぱり未来さんもそう思ってたみたいで、怒りの声を上げて全方位に目掛けて反撃開始。トレーニングルーム内が光で満たされ、一拍置いてから大爆発が起きたデス。

それにしてもトレーニングルームの壁と床と天井と強化ガラスは相変わらず頑丈デスね。中であれだけ暴れても外には全然被害が出ません。

その理由は、実は内装を一度カズヤが分解、再構成したから。とてつもなく頑丈にできているので、ちょっとやそっとじゃビクともしない造りになってます。

まあ、絶唱とかS2CAとかだと流石に無傷とはいかないデスけど、それでも罅一つ入れるのにかなり苦労するようになってるとか。

 

「がっ!!」

 

と思ってたら、奏さんに吹っ飛ばされたセレナが目の前の強化ガラスに叩きつけられて、クモの巣状に大きな罅が入りました。

 

「......よくもやりましたね、お返しです! イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

ダメージなんて気にした風もないセレナがそのまま奏さんに飛び掛かっていくデス。

......訂正。罅、結構簡単に入るみたいデス。私と調以外は、という注釈付きになりますが。

というか、思い出してみると、私も調も揃って壁ビターンした時、壁が粉砕してましたね。

でも、やられてそうなったことはあっても、自分でやったことは一度もないのがちょっと、いや、かなり悔しい。

私は今しがたできた強化ガラスの罅を見ていると、前々から燻っていたモヤモヤが胸の中で渦巻くのを感じながら、隣のカズヤに質問しました。

 

「カズヤ......私は、皆の役に立ってるデスか?」

 

唐突な問いに目をパチクリさせきょとんとしている顔を見ながら、私は更に言ったデス。

 

「私だけ、あんまり役に立ってない気がするデス。適合係数も模擬戦もいっつも調と一緒でビリッけつ。大した活躍もできてなくて。だけど調にはフィーネの魂が宿ってるから、他のことで皆の役に立ってます。でも、私にはないデス、他に何にもないデス......」

「......切ちゃん」

「切歌、お前──」

「私は、もっと皆の役に立ちたいデス......もっと強くなりたいデス......だから、たまに未来さんに嫉妬してしまうデスよ。アルター能力に目覚めたらノイズもアルカ・ノイズも一瞬で殲滅できるようになって、誰よりも強くなった未来さんに......私にもアルター能力があれば、そう思ってしまう時があるデス」

 

今まで調にすら話すこともできず、ずっと思っていたことを吐露すれば、カズヤは困ったような表情になってしまいました。

その隣に座る調は、聞かされた内容に少なからずショックを受けたような顔になっちゃったデス。

......二人を困らせるつもりは、なかったのに。

バカで迂闊な自分にうんざりしながら、私は無理に笑顔を作って誤魔化すように口を開く。

 

「アハハハハ、無い物ねだりなんて情けないデスね! 私らしくなかったデスよ!」

「......」

「......」

「ただの愚痴、愚痴デスよ! ちょっと甘えたかっただけデス、だからそんな深刻そうな顔しないで欲しいデス!」

 

私がそう言うと、

 

「フィーネのことを抜けば、私も切ちゃんと同じ。だって私はフィーネに体を貸してるだけだよ? 私自身は何もしてないし、できない。それに戦いでも全く役に立ててない。だから切ちゃんの気持ち、私も分かる」

 

カズヤ越しに調が訴えてきました。

 

「調......」

「お前もかよ」

「私だってもっと強くなりたい。皆に頼られたい。守られてるだけなんて嫌だよ。役に立たないお子様なんて卒業したい」

 

間にカズヤが座っているのに構わず、カズヤの胸の前で私と調は思わず互いに向かって両手を伸ばす。

指と指を絡ませるように手を繋ぐ。

 

「......ちょ、お前ら──」

「切ちゃんと私は一緒。だから一人で悩まないで。愚痴くらい、いくらでも聞くから」

「黙ってて、ごめんなさい、デス。そうデスね、調にだけは伝えておくべきでしたね。でも、調も何かあるなら言って欲しかったデスよ」

「ならこれでお相子にしよ」

「そうするデス!」

 

作り笑いが漸く本物に変わったところで、

 

「俺邪魔だからどっか消えるわ」

 

と、カズヤが空気読めてないことを言いました。

 

「カズヤはここにいて!」

「カズヤにも聞いて欲しいデス!」

「なんでだぁぁぁぁ!?」

 

二人して肩を掴んで逃がさないようにすると、カズヤが喚き出したデス。

 

「お前ら今なんか完結してたじゃん? 一人で悩まないで二人で愚痴言ったり聞いたりしようって話だったじゃん? 俺要る?」

「根本的な解決になってないでしょ」

「今のやり取りは前振りデス! 本番はこっからデス!」

「前振りって自分で言うなや!」

 

大きな声で叫んでから、カズヤは脱力したように体重をソファーに預けてだらしなく四肢を投げ出す。

 

「俺にどーしろって? 最初に言っておくがアルター能力が欲しいとかなら無理だかんな。"向こう側の世界"への扉を開くのってアホみてーに大変だし、そもそも未来みてーに"向こう側"を垣間見たとしてもアルターに目覚める保証なんてねーし、よしんば"向こう側"を見てアルターを手にしてもこっちに無事帰ってこれる保証なんてねーし、帰ってこれても手にしたアルターが戦闘向きだっつー保証もねー」

 

投げ槍な口調ではっきりと宣言するカズヤ。

そんな態度に私と調は、ヒマワリの種をたくさん頬袋に詰めたハムスターみたいに頬を膨らませ、腕を掴んで左右から全力で引っ張ります。

 

「なんとかして!」

「そうデス! それにもっと真剣に考えて欲しいデスよ!!」

「いつも訓練付き合ってんだろ!? それに同調訓練はいつもお前ら優先的にやってんだろが!」

「パパッと強くなりたい!」

「そうデス、パパッと強くなる方法はないんデスか!?」

「無い物ねだりしないってのは何処行ったんだよ!!」

 

暫く三人でギャーギャー騒ぎますが解決の糸口は見えません。

私と調はとりあえずカズヤの腕を放し、不貞腐れたようにそっぽを向く。

 

「要するに、お前ら二人は明確な功績なり実績なりが欲しいんだろ? マリアとセレナみてーな、オートスコアラー撃破とか」

 

観念したように紡がれた言葉に、明後日の方向から改めてカズヤに向き直り、我が意を得たりといった感じで調と一緒にコクコクと頷く。

すると、カズヤは盛大に溜め息を吐いてから、勢い良く立ち上がってくるりと半回転し、私と調の頭の上にポンッと手を置きます。

 

「だったら、次にあの人形共が出たら二人でスクラップにしてみせろ」

「二人で、デスか?」

「ああ」

「やれるかな......?」

 

不安を内包した調をカズヤは叱咤激励。

 

「やれるかどうかじゃねぇ、やるんだよ! それともこのままでいいのか? 諦める方向に行くのか? それじゃあちっとも前に進まねぇぞ! そんなの嫌だろ!?」

「このままなんて嫌デス!!」

「前に進むのを諦めたくない!!」

 

咄嗟に二人で叫ぶように返事をすれば、にぃぃ、とカズヤはとてつもなく悪いことを思いついた極悪人のように唇を三日月の形に歪め、更にこう述べたデス。

 

「切歌も調も役立たずでもなければ足手まといなんかじゃねー、っていくら俺や他の連中が言っても納得できねーのは目を見れゃ分かる。誰かの口じゃなく、自分自身の力でそれを証明したいって顔に書いてある......ならやってみせろよ」

 

それから悪人面を引っ込めて、いつもの無邪気な子どものような──マリア達が大好きな笑顔を浮かべると、

 

「世の中にはなぁ、『しょうがねー』、『運が悪かった』、『自分にはできない』、『明日やればいい』、そんなことを言ってる連中がごまんといるが、お前らは違うだろ? お前らは違うって俺は信じてる。だから証明してみせろ。『自分は違う、絶対違ってやる!』ってな。その為のお膳立てなら俺ができる限りやってやる......ま、ないとは思うが、もし尻拭いが必要になっちまったらケツは俺が持ってやるから安心しろ」

 

自信満々に、はっきりとそう言ってくれました。

次に真剣な表情と眼差しになって低い声を出します。

 

「いいか? 目の前に突破しなきゃならねー分厚い壁があるとする」

「突破しなきゃいけない......」

「......壁、デスか」

「俺なら迷わず力ずくで突破する、迷わずにな。だからお前らも『こう』と決めたら迷うなよ。迷ったらその迷いが他者に伝染する。迷わずに、どんな手段を使ってでも前に進め。壁はぶん殴って壊してもいいし、登って乗り越えてもいい、自分なりの方法でやれ。だけど諦める方向へは行くな。一度諦めちまったら、二度と前に進めないと思え......俺から言えるのはここまでだ」

 

言われた内容を噛み締めるようにして頷くと、カズヤは嬉しそうに微笑む。

......思い返してみれば、マリアやセレナ、他の皆から子ども扱いされることはあっても、カズヤから子ども扱いを受けたことは一度もない気がします。

常に一人の人間として対等に扱ってくれる。

今回のことだってマリア達だったら、きっとこんな風に背中を押してくれない。優しく窘めるか諭そうとするはず。二人だけじゃ危ないから、心配させないで、無茶しないで、って。

でもカズヤは──

 

「つーことで、ちょっくら弦十郎のおっさんに話つけてくらぁっ」

 

そう言い残すと、ゆっくりとした足取りで立ち去っていく。

ドアが閉まって完全に姿が見えなくなるまで、私と調は無言のまま、その大きくて頼もしい背中をじっと見つめていました。

 

「......」

「......」

 

なんだか凄いやる気が出てきたデス。

こう、胸の中で不完全燃焼って感じで燻ってたものに、まるでガソリンを大量に投下してメラメラと激しく燃え上がらせたかのようで、とってもとっても熱い気持ちになれました。

体は疲れてるはずなのに、今すぐにでも暴れたい気分。

 

「......切ちゃん」

「調......」

 

どちらかともなく名前を呼んで向かい合うと、

 

「二人で頑張ろう。壁を突破しよう」

「二人でならどんな壁でも斬り開いてやるデス!」

 

互いに気合いを入れて握った拳を突き出し、コツンと打ち合わせたのデス。

刹那、まるでタイミングを見計らったかのようにトレーニングルーム内で大爆発が発生して、私と調はビックリ仰天して体を震わせました。

 

「なんだか最後は漁夫の利っぽかったけど、勝ったからヨシッ! 今日は私が一番よ!!」

 

最早罅だらけで触れれば砕け散りそうな強化ガラスの中を覗けば、死屍累々の中心でアームドギアの槍──刀身が半ばから消失している──を高く掲げて勝鬨を上げるマリアの姿があるデス。

 

「お、終わったみたいだね」

「マリア以外皆目を回してるデスよ」

 

誰も彼もがプロテクターはズタボロ、インナーはあっちこっち裂けてて、おまけに全体的に煤だらけで、体の所々から黒い煙を上げて燻ってる様子は戦闘の激しさを物語っていて。

倒れ伏している他の皆を捨て置いてトレーニングルームから出てくると、ボロボロのシンフォギアを纏った姿なのにマリアは上機嫌なニコニコ笑顔で「あら? カズヤは~?」と聞いてきます。

近寄られるとかなり焦げ臭いんデスけど。

 

「カズヤなら司令の所」

「少し相談したいことができたって言ってたデス」

「相談したいこと? 何かしら?」

「「さあ?」」

 

本当は知ってる、というか私達のことだけどすっとぼけました。マリアにもし知られたら反対されたり止められるのが火を見るよりも明らかなのデス。

 

「ところでマリアに教えて欲しいことがあるの」

「何かしら? 調」

 

ここで調がさりげなく話を変えようします。

 

「前から思ってたんだけど、マリアの適合係数、私と切ちゃんより伸び率が良いのはどうして?」

「あ、それ私も疑問だったデス! 私達の方が優先的に同調訓練してるのにマリアの方が伸びてます! 何か特別なことでもしてるんデスか?」

 

考えてみればおかしな話デス。以前までの──フロンティア事変前のマリアの適合係数は私達とそんなに変わりませんでした。それがカズヤと同調訓練をするようになってからは、三人共LiNKERが要らなくなるくらい伸びたデス。でも、マリアの伸び率は私達と比べてずっと高くて、LiNKERが要らなくなるまでの期間は一人だけ短かったデスから。

この問いを受け、マリアは一瞬だけピタリと固まってから、すぐに慈愛に満ちた笑みでこう答えました。

 

「愛よ」

「何故ここで愛!?」

「デス!?」

「私からカズヤへの愛、カズヤから私への愛、この二つが揃ったことで私の肉体は奇跡的なアレとかそういうなんやかんやがあって適合係数が二人よりも上がり易くなっているのよ!!」

 

早口で力説する割にはなんか凄くテキトーなこと言ってる気がするのはなんでデスかね?

調もそう感じたのか、マリアを見る目が胡散臭い人や詐欺師を見る目になってます。

 

「本当に?」

「本当よ。特別なことなんてしてないわ」

「切ちゃん、どう思う?」

「う~ん、嘘ついてるようには見えないデスねー」

「嘘なんてつかないわよ!」

 

真面目に答えたのに心外ね、と急にプリプリ怒り出したマリアはギアを解除して訓練用のジャージ姿になると、こちらに背を向け「シャワー浴びてくるから!」と告げて出ていきました。

 

「......本当にカズヤとマリアが互いに想い合ってるだけで適合係数が上がるのかな?」

「けど、本当にマリアが特別なことをしていないなら、そうなるんじゃないデスか? 実際、マリアの伸び率、私達より全然高いデス!」

「そうなんだよね......何か特別なことがあれば知りたかったんだけど」

「......デース」

 

私と調はマリアの秘密を解明することができず、ガックリと肩を落としました。

 

 

 

 

 

(あ、あ、危なかったわ......心当たりなら一つあるけど、カズヤとの、その、アレなことしかないじゃない......)

 

上手く誤魔化すことに成功したマリアは、廊下で一人胸を撫で下ろす。

 

(それにしても適合係数の伸び率を気にするなんて......って当たり前か。今まで同じくらいだったのが、私だけ伸び方が違えば何かあるんじゃないかと疑うのは当然ね。むしろ今まで口に出さなかったことに驚きよ)

 

同調によってカズヤの"向こう側"の力を宿すことは、適合係数の上昇に繋がっているのは最初から分かっていた。

しかし、彼とそういう関係ではない二人と自身を比べた結果、如実に差が出るとは当時思っていなかった。

それ故に変な勘繰りをされないように、皆がいる前では二人に優先的に同調訓練をさせていたのだが。

 

(でもまだ二人共少し怪しいと思った程度で、確信や動かぬ証拠を掴んだ訳ではなさそう......良かった)

 

シャワールームに向かいながら先程のやり取りを反芻する。

 

(それに私は別に嘘は言ってないわ。愛し合う男女ならああいう行為は当たり前のことであって、特別なことじゃないし......)

 

言い訳染みた思考、及び予防線を張っておくという言動に若干の後ろめたさを覚え、ほんのちょっとだけ自己嫌悪に陥りつつ、シャワールームに辿り着く。

 

(まあ、ルナアタック後の奏の適合係数の伸び率と私のを比較されたら、全く同じだから誤魔化し切れないんでしょうけど、それについては知らないみたいだから......とりあえず当分は大丈夫よね?)

 

安堵の溜め息をついて、マリアはジャージを脱ぎ捨てシャワーを浴びることに。

そんなことよりさっきの模擬戦の結果だ。

 

(ふふ、ふふふふ)

 

自然と口元がニヤついてしまうのを止められない。

恒例のバトルロイヤルで最後まで立っていた勝者。揉みくちゃになっている響と翼と未来をレーザービームで纏めてぶっ飛ばすという、完全に漁夫の利みたいな勝ち方だが勝ちは勝ち。

つまり久々に二人っきりの時間を過ごせる。誰にも邪魔をされずカズヤと──

 

(嗚呼! どうしよう!? この前はドライブに行ったから、今度は映画? でもカズヤの笑顔をたくさん見るなら食べ歩きとかでも良いし、動物園や水族館も捨てがたい。今から考えるだけで楽しみ!!)

 

切歌と調の疑問については既に頭の片隅に追いやり、代わりに思考をお花畑満開にさせ、ただの乙女なマリアと化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調。

 

「何? フィーネ」

 

調は、その......。

 

「? なんだか歯切れが悪いけど、どうしたの?」

 

......カズヤくんのこと、ぶっちゃけどうなの?

 

「?」

 

彼のこと、どう思ってるの?

 

「お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな、って思ってる。きっと切ちゃんも」

 

......兄、か。

 

「カズヤと一緒だと、あたたかいんだ。だって、カズヤがいてくれるだけで皆が笑顔で、楽しくて、幸せな気持ちになれる」

 

そう、ね。不思議よね。何千年も人の世を見てきたけど、なかなかいないわよ、ああいうのって。

 

「今日だって、私と切ちゃんを励ましてくれた。お陰で、今の私と切ちゃんなら誰が相手でも負ける気がしない。絶対にオートスコアラーを斬り刻んでやる......!」

 

でも、さっきのあれ、私としてはあんまり誉められたものじゃないと思うんだけど、それも含めて彼らしいのよね。

 

「まあ、カズヤは今のままで全然問題ないんだけど」

 

......待って。私としては、カズヤくんは存在そのものというか言動とかその他諸々が問題だらけで、『問題ない』って躊躇わずはっきり言い切る調のことが急に心配になってきたわ。

 

「最近、マリア達が調子乗ってるな、って感じてきて」

 

んんんん?

 

「皆、カズヤに甘え過ぎ。そう思わない?」

 

え? 今更?

 

「黙って聞いて」

 

......あ、ハイ。

 

「今日の失敗でやっと気がついた。皆カズヤに甘え過ぎだよ。調子にも乗ってる。それにもっと私と切ちゃんの為にもカズヤを融通するべき」

 

ハイ。

 

「適合係数を上げる為にも、もっと強くなる為にも、皆の役に立つ為にも、私達にはカズヤの協力が必要」

 

ハイ。

 

「だから、マリア達は自分の都合ばっかりカズヤに押し付けてないで、少しは自重して、その分私達に回すべきだと思う」

 

あの、調、いいかしら?

 

「何?」

 

......自覚ある?

 

「何の?」

 

んん? これどっちなの? 分からないわ。そうかもしれないしそうじゃないかもしれない......流石の私でも判断が難しい......!!

 

「ごちゃごちゃと訳の分からないこと言ってないで聞いて!!」

 

ごめ、ごめんなさい!

 

 

 

それからフィーネは、調と二人きりの精神世界の中で、体感で一時間程度、くどくどくどくど、マリア達への不平不満や文句に付き合わされた。




カズヤの悪影響で、ヒロイン達がついに「クタバレ」とか戦闘中に言い出しました。クリスちゃんは元から口悪いからあんま変わらんけど。

猫やライオンのオスには発情期というのが基本的にないらしいです。
定期的な発情期が存在するのはメスだけで、発情期に入ったメスがそばにいることでオスの発情期が促されるとか。
つまり発情したメスがオスを発情させている......ライオンって強いオスをボスにした群れという名のハーレム作るしね。
ちなみに仲睦まじい夫婦をオシドリ夫婦って言うけど、オシドリは実は一夫多妻制みたいで、オスがメスを取っ替え引っ替えするとかなんとか。んで、オシドリ夫婦って言葉の由来である『オスとメスが離れようとしない』その実態は、オスが他のオスにメスを盗られないようにする為らしいです。
※上記についてもし違ってたらスマン。

響達もカズヤもやっぱり獣じゃないか!(確信)


・バトルロイヤルについて
勝者には、誰にも邪魔されずにカズヤを一日好きにできるという権利が賞品として無条件で手に入る女の戦い。
ルールらしいルールは特になし。自分以外は全員敵だけど、共闘ヨシッ! 裏切り上等ッ! 漁夫の利推奨! と何でもあり。とにかく最後の一人になるまで立ってればオーケー。勝てばよかろうなのだぁぁぁ! という殺伐とした空気の中でのガチンコファイトである為、回を重ねるごとに響達はどんどん腹黒く、狡猾になっていく。
なお賞品扱いである当の本人は、皆が裏でこういうルールでやってることを知らない。
また、直近でカズヤとイチャコラしてた奴が集中狙いされ真っ先に潰される模様。

・響
爆発力と突進力ならトップ。近距離パワー型。相手の懐に入り込む──超接近戦だと手がつけられない。一発一発はカズヤに劣るが、それを補う高速連打で相手を圧倒する。
ボディブローが当たる至近距離=響の間合い=ボディブロー、アッパーカット、フックの連打=相手の負けが確定。
弱点は遠距離攻撃や飛び道具が乏しく、誰かを殴ってたらそいつ諸共ぶっ飛ばされて脱落する可能性がちょっと高いこと。
でもアホみたいに調子良いと稀に秒殺で六人抜きとかやっちゃうので侮れない子。

「懐にさえ潜り込めれば誰が相手でもぶっ倒せる!」


・翼
近距離武器による技量トップ。近距離スピード型。
動きが速く、ヒット&アウェイ戦法が得意。
普通に強いのに、影縫いで相手の隙を突いて動きを止めて背後からドスッ、と通り魔及び辻斬りみたいなことをしまくったせいで地味に皆から警戒されがち。

「我が夫との逢瀬を邪魔するなら、問答無用で斬り捨てる!」


・クリス
攻撃範囲と殲滅力トップ。遠距離パワー型。
とりあえずテキトーにバラ撒いておけば誰か一人には当たるだろと撃ちまくる。
遠距離は強いが接近戦は不得意。間合いを詰められると一気に窮地に陥ってしまう。
また、飛び道具を全て反射する未来が大の苦手。なので、未来を誰かに倒させてからそいつをぶっ飛ばすという絵に描いたような共闘、裏切り、漁夫の利が基本戦法。

あの子(未来)さえ落ちればお前らはもう用済みなんだよ! 寝んねしな!」


・奏
安定した戦闘力と対応力を持つ近距離バランス型。
誰が相手でもそれなりに戦える、苦手な相手というのがあまりいないので勝ち残り易い。
ただしマリアの万能マント、お前は絶対許さん。絶対にだ!!(実力は奏が僅かに上で一対一(サシ)ならギリギリ勝ち越してるが、バトルロイヤルの勝ち星はマリアが上の為)

「蹴散らしてやるから掛かって来な!!」


・マリア
万能マントが万能過ぎる防御寄りの近距離バランス型。
槍じゃなくてマントがアームドギア、攻防一体のマントが本体と皆からは皮肉られている。
実際マリアを攻略するにあたりマントを何とかしないと話にならない。
そしてマリアが勝ち残った時で、マントに頼らなかった時はない。
故に、最近ではマントの防御力をぶち抜く高火力を皆が一斉にぶっぱしてきて押し潰されること多々あり。

「姉より勝る妹などいない!!」


・セレナ
遠、中、近距離全てに対応可能な防御寄りのオールラウンダー。
得意の防御で攻撃を凌いで耐え抜き、周囲が潰し合ってくれるのを待ってると勝ってた、ということが多い。
そのせいで考え方が一番狡猾になってしまった。
なお、マリアに対して異常に対抗意識が強いので、その点の煽り耐性がないに等しい。

「皆さん、あまり粘らずさっさと倒れてください。あとマリア姉さんは調子に乗らないでください(半ギレ)」


・未来
なんで皆私ばっかり集中狙いするの!? とばかりに狙われる最凶の人。
その強さ、模擬戦ならカズヤより上という時点で語る必要なし。凶悪な強さだけどさりげなく遠距離バランス型。
でも実は、カズヤより攻撃力が低い代わりに手数が圧倒的に多く、至近距離を高速で動き回る響と翼が苦手。
その実力故に集中狙いされることが多いので、あんまり勝率は良くない......悪くもないけど。

「皆纏めて返り討ちにしてあげる!!」





なおデートは朝帰りが仕様。
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