カズマと名乗るのは恐れ多いのでカズヤと名乗ることにした   作:美味しいパンをクレメンス

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遅いよ、そう思ったあなたは正解です。
なんで本編じゃなくて閑話書いてんだよという疑問を持った方は何も間違っていません。
しかも今回のお話って二万文字超えですからね。
......何やってんだ私......


時系列的にはGX編第一話のシャトル救出作戦後、エルフナインがキャロルから離反及びシャトーから脱走する一週間程度前って感じです。


しないフォギア風な閑話GX1

繁華街において、一人の男が困り果てた様子でノロノロと歩いている。

男の名は緒川捨犬。都内のとあるホストクラブに勤めるホストであった。

 

「どうしよう......明日だけでもいいから、誰か手伝ってくれる人を見つけないと」

 

彼が困っているその理由は、自身が勤めるホストクラブにおいて、共に働く仲間達に欠員が出てしまったことだ。

一人は夏風邪、一人は食中毒、一人は身内に不幸が、という感じで店に立て続けに連絡が入り、今後数日の人手不足は否めない状況に陥ってしまう。

幸い、本日は定休日なので問題ないのだが、問題は明日。明後日はたぶん急遽休むことになった仲間がある程度は戻ってきてくれるはずなのでなんとかなるにしても、明日はどうしても人手が足りない。

いっそ明日は店を開かなければいい、という考えが一瞬脳裏を過るが、予約客が数件入っているのでそういう訳にもいかない。

勿論、休んだ仲間の中には予約客から指名されていた者もいたので、先程こちらから謝罪の電話を入れたが、それでも構わず来店してくれるという、非常にありがたいお言葉をいただいた。

 

「マジでヤバい......どうすれば......」

 

当然知り合いや友人には片っ端から助けを求めたが、そもそも急な話ではあるし、ホストという職業柄である為か「ハードルが高い」やら「俺そんなイケメンじゃないし」とかを理由に断られてしまっていた。

こうなったら街を歩いて一日ホストとして働いてくれそうな男性を見繕うしかない、そう思って練り歩いていたのだが、どうにもこうにも上手くいかない。

というか、ビビっとくるような、ピンとくるような男性を見掛けない。

妥協点を見つけてそれなりの見た目の男性に声を掛ければいいのだが、捨犬はそれがどうしても嫌だった。

来店してくれる女性には、笑顔で帰って欲しい。ホストという職業に真摯に向き合っているからこそ、たとえ短い間であっても共に働く仲間の水準は一定以上にしておきたい。

そんな思いのせいで、結果が出る前に体の水分が汗となって出ていき脱水症状になりそうだが。

もう夏の本番前。燦々と輝く太陽の下、彼の頭の上でのみ暗雲が立ち込めてきたその時、すぐそばのコンビニから一人の男性が出てきた。

店内の冷気に自然と体と意識が誘われ、少しコンビニで冷たいものでも買って一旦頭をリフレッシュしよう、そう考えた刹那、つい今しがたコンビニから出てきたサングラスを掛けた男性とたまたま目が合った、気がする。

次の瞬間、捨犬に電流が走る。

 

 

 

 

 

「そこのキミ、ホストに興味はないかな?」

「は?」

 

コンビニでアイスを買って店を出たら、歌舞伎町あたりでホストでもやってそうなチャラついた格好の男がいきなりそんなことを言ってきた。

面倒くせーなー、と内心で呟きながら応じる。

 

「......あんた誰だよ」

「キミから滲み出るそのオーラ、俺には分かる! キミはこれまで何人もの女性を誑し込んできた天性の女っ誑しだ!」

「初対面でいきなり失礼だなおい!! つーか誰なんだよあんた!?」

 

なんで分かるんだよ!? という疑問はぐっと堪える。シカトすれば良かったと後悔。

 

「あ、すいません。申し遅れました。自分、こういう者です」

 

差し出された名刺を思わず受け取ってしまい、視線を走らせ読み上げる。

 

「......ホストクラブ絶対隷奴(アブソリュートゼロ)、 No.4、亜蘭......一介のホストの兄ちゃんが俺に何の用だよ」

 

俺のことを"シェルブリットのカズヤ"と気づいた上で声を掛けてきた訳ではない様子(グラサン掛けてるし)だが、先の言葉と名刺の内容から面倒臭いことに巻き込まれそうだと悟り、心底うんざりした。

 

「実はね、ウチのお店、明日一日人手が足りないんだ。でさ、キミみたいにイケてる男性に手伝ってもらえればなと思って」

 

とりあえず名刺をズボンのポケットに突っ込み、コンビニの袋の中からスイカバーを取り出し開封して一口食らいつき、言ってやる。

 

「ホストになんぞ興味ねー」

「明日一日だけ、一日だけでいいんだ。日雇いのバイトだと思って、お給料弾むから!」

 

S.O.N.Gで実働部隊として働く俺の預金通帳がどんなもんか見て同じことを言えるかどうか気になるところだが、余計なことを言わずに突っぱねた。

 

「残念ながら金には困ってねーよ」

「ただでお酒飲めるよ、ドンペリとかお客様が頼んでくれたら飲み放題も同然だから!」

「っ」

 

......自他共に認めることだが、俺は根っこが小市民というか庶民派なので財布の紐は固い。上等な舌をしてる訳でもなければそこまで舌が肥えてる訳でもないので、基本的には安くて量が多いものを好む。飲み食いする物は美味いに越したことはないが、高いものを率先して購入することは滅多にない。

当たり前だが、高い酒なんてもんを買うことは俺にとって無駄遣いでしかない。だからドンペリなんてものには私生活で縁がないものだと思っていた。

 

「ドン、ペリ......」

「そうだよ、ドンペリ」

「......」

 

いかん。一瞬心が揺らいでしまった。

しかし、俺は鉄の意思を以て首を横に振る。

 

「悪いが明日は無理だ、諦めろ。こっちにも予定ってもんがあるんでな」

 

そう。明日は飲み会、もとい男子会がある。いつものメンバーで、テキトーな大衆食堂や居酒屋で語り合う、男同士の大切な約束があるのだ。それをすっぽかす訳にはいかない。

俺の意思が固いことを察したのか、ホストの兄ちゃんは肩をガックリ落として俯き、これ見よがしに大きな溜め息を吐く。

 

「......それなら仕方ないね。その、無理に引き留めちゃって本当に申し訳ない」

 

なんだか雨の日の捨てられた犬みたいな、悲しげな雰囲気を纏い始めたが、正直知ったことではない。

 

「ま、ホストなら他当たってくれ。人を待たせてるんでな。俺はもう行くぜ」

 

踵を返して男性に背を向け歩き出そうとしたら、目の前に慎次がいたので「うおっ!?」と間抜けな声を出して咄嗟に出そうになった拳(スイカバー持ったまま)を慌てて引っ込める。

 

「気配消して背後に立つなよ、ビビって殴るところだったろが。いつからいたんだよ」

「丁度今来たところです。というか、ちょっとコンビニに行ってくるとか言ってそのまま何分待たせるつもりなんですか。またコンビニで雑誌の立ち読みでもしてたんですか?」

「ちっげーよ! 変なホストに絡まれてたんだよ! 一日だけでいいからホストやらないかってスカウトされてたんだって」

「ホスト?」

 

若干呆れている慎次に待たせてしまった理由を述べていると、俺の背後にまだいたホストの兄ちゃんを認識した慎次が驚いたように目を見開く。

 

「すてくん?」

「あ、兄者!?」

「え゛え゛え゛え゛!?」

 

二人のやり取りのせいで口から変な声が出た。

 

 

 

場所を近くの喫茶店に移して。

 

「弟です」

「改めまして。緒川慎次の弟、緒川捨犬です」

「......"シェルブリットのカズヤ"だ。一応、便宜上では君島カズヤって名乗ってる」

 

慎次が表向きはツヴァイウィングのマネージャーを務めていること、及び裏ではエージェントとして活動しているは知っているので、捨犬は兄と俺の関係を当然のように知っていた。

つーか、ツヴァイウィングのマネージャーが"シェルブリットのカズヤ"と仕事仲間というのは、周知の事実だし。

むしろ、たまたま声を掛けたのが"シェルブリットのカズヤ"だった偶然に驚いたとのこと。

対面に座る二人をしげしげ見つめてから、クーガー兄貴仕様の黒いワンレンズタイプのサングラスを外し唸る。

 

「確かに顔立ちが似てる。慎次、お前弟いたのかよ」

「言ってませんでしたっけ?」

「聞いてねーし、しかもホストやってるなんて思ってもねーよ」

 

それにしても捨犬なんて名前、あまりにも酷いと思うのだが。

慎次が次男で捨犬が三男で、二人は正真正銘血の繋がった兄弟だと言う。

話を聞くと、なんでも緒川家に三男は不要という考えが古くからあり、三男以降は一族の忍として生きる必要がない代わりに、遺産を含む一切の奥義継承を行わない、というのがあるとかなんとか。

ついでとなるが二人の兄貴──長男は緒川家の当主だとさ。

 

「じゃ、あんたは忍者じゃねーのか」

「うん。俺は一族の血は引いてるけど、兄者達みたいな術は使えないんだ。三男には修行を受ける権利はないから」

 

忍の世界にも色々な決まり事や掟があるらしい。

あっけらかんと、一族から蔑ろにされてるっぽいのに気にした風もなく答える捨犬。忍としては育てられなかったが、家族としては普通に育てられたようだ。その証拠に、性根がねじ曲がった印象や卑屈な感じが一切ない。

 

「ところで、すてくんはカズヤさんをホストにしようとしてたんですか?」

「そう、そうなんだよ兄者! 兄者も助けてよ! 明日一日だけでいいんだ!」

 

弟が兄にすがり付く。それから語られる捨犬の話に慎次は困ったように苦笑。

 

「確かにカズヤさんは希代の女誑しですが......」

 

おい。

 

「だからといってホストクラブで働かせるというのはどうかと......ほぼ確実に皆さんが爆発しますよね?」

「ソーダネー」

 

アイスコーヒーのストローを咥えてちびちび吸いながら感情の篭らない声で返す。

 

「え? 誰が爆発するの?」

「すてくんが見抜いた通り、カズヤさんは女誑しです。なので、カズヤさんの女を自称する女性は片手では数えられないくらいに存在します」

「あっ......」

 

どうやら何かを察したらしい。

 

「そもそも俺にホストなんて無理なんだよ。細かい気遣いとかできねーし。だいたいホストクラブに来る女ってのは、そんだけ色々なストレスやら問題やらを抱えて日々を生きてんだろ? そんな人種をどうやって癒せってんだ」

「......」

 

おい慎次、無言で「何を仰る、ご謙遜を」みたいな目でこっちを見るのはやめろ。

確かにあいつらが俺に癒しを求めてるならいくらでも応えるつもりだが、見ず知らずの赤の他人にまでは流石に無理だぞ。

 

「慎次の弟だからなるべくなら力になってあげてーけど、今回は協力できねーよ」

 

何より、ホストクラブで働いた後にどんな目に遭わされるか想像するだけで怖い。

それに逆の立場から考えてみれば許可など出せる訳がない。もしあいつらから「知り合いに頼まれたから一日キャバクラで働くね」とか言われたら、俺は全力でどんな手段を駆使しても阻止する。あまり自覚はなかったが、俺はかなり独占欲が強いらしい。あいつらが何処の馬の骨か分からん連中相手に、愛想笑いを浮かべてお酌してる光景を想像するだけでショックで泣きそうだ。

 

「つーかさっき言ったろ。明日は用事があんだよ」

「そういえばさっきもそんなことを......」

「毎月恒例、男限定の飲み会、男子会です。カズヤさんと僕と、仕事の仲間との。カズヤさん、毎回楽しみにしてくれてるんですよ」

 

慎次の微笑みを見て何故か照れ臭くなり、誤魔化すようにアイスコーヒーを飲み干す。

 

「......うーん。つまりこういうこと? カズヤくんはその女の子達が怒るだろうからホストクラブで働けないし、飲み会もあるから行けない、兄者も飲み会に参加するから行けない、と」

「そういうこった」

 

返しながら頷く。

 

「ならさ、その飲み会、ウチの店でやらない? カズヤくんの女の子達も呼んでさ」

 

まだ諦め切れないのか、捨犬が妙な提案をしてきた。

 

「はあ?」

「すてくん、説明を」

「ぶっちゃけさ、兄者が一人協力してくれたらなんとかなりそうなんだよね。兄者、影分身の術使えるし」

 

いきなり話があらぬ方向にぶっ飛んだ!

こいつ、兄貴に忍法使わせてでもホストクラブ手伝わせようとしてやがる!!

 

「すてくん、それは──」

「大丈夫だって、客も従業員も皆お酒飲むんだから。最初の自己紹介で忍者です、忙しくなると分身しますとか言っとけば」

「っ!」

 

吹き出しそうになって必死に堪える。

俺の頬がヒクヒクしているのを見て慎次がジト目になって睨んでくるが、捨犬は気にしない。

 

「で、カズヤくんはホストとしてその女の子達をもてなす。ホストとしては働くけど、相手をするのはその子達だけでいいからさ」

 

聞かされた内容に腕を組みながら首を傾げて考え込む。

確かにこれならあいつらから不満が出ない可能性が高く、捨犬(店側)も助かる。

しかし問題は──

 

「弦十郎のおっさんと朔也がどう言うかだよなー」

「どっちにしろ飲み会がなくなるのは同じじゃないですか」

「しかも場所が場所だしな。女共の中には未成年がいて、おっさんは元公安警察、朔也はイケメンだけどインドア派の草食系。全員がGOサイン出すかね?」

「まあ、話すだけ話してみてよ。最悪、兄者だけ借りられればそれでいいから」

「僕が働くのは確定なんですか」

 

眉を顰める慎次と顔を見合せた後、それぞれのスマホを取り出し電話をすることにした。

 

 

 

『ふむ、緒川の弟くんが助けを。しかしホストクラブか。キャバクラなら公安時代に捜査の一環だったり、お偉いさんとの接待で行ったことならあるんだが、ホストクラブは初だな。しかも働く側とは......まあ、緒川の弟くんが働く店なら健全な店なんだろう。分かった、何事も経験だ。何処まで役に立てるか分からんが、俺も一肌脱ごうじゃないか』

 

弦十郎のおっさんは意外にもノリノリで了承してくれた!

 

『ええ? ホストとして働け? ちょっとハードル高くない? うーん、でも女の子と知り合えるチャンスでもあるんだよね?』

 

難色を示すかと思ってた朔也だったが、予想外にも食いついてきた......って、そりゃそうだよな。機密に触れる機会の多いS.O.N.Gで働いてる人って出会いが少ない、つーか、折角知り合っても仕事に関して詳しく言えないから不審に思われてその後上手くいかないらしい。何度やっても合コンで上手くいった試しがないあおいとか見てるとよくそれを痛感するし。

......朔也はその辺りを忘れてないのだろうか。

ま、常に女達に囲まれてる俺こそがS.O.N.Gにおいて異常である訳で。そりゃクズだの女っ誑しだの罵倒されるよな。

 

 

 

 

 

「つーことで、ホストとして一日働くことになったんだが、どう思う?」

 

帰宅後、いつものように奏の部屋でたむろってる女性陣に声を掛ける。

ここで誰か一人でもダメと言うなら潔く諦めよう、捨犬にもすまんと謝ろう、と覚悟していれば「ちょっといい?」と片手を軽く挙げた奏が質問してきた。

 

「アタシ達、半分以上未成年なんだけど、そこんとこ大丈夫なの?」

「さあ?」

「......さあ? じゃないだろこのおバカ」

「ぐえあ」

 

首を傾げる俺の返答に奏が呆れ、彼女はおもむろに俺に近づき、容赦なくヘッドロックをしてくる。

首が苦しいが、奏の大きくて柔らかい胸が頬に当たって幸せなので俺は全く抵抗しない。

 

「全くアンタは! 毎週恒例、緒川さんの声優の仕事に見学しに行ったと思ったら、ホストクラブで働くから客として来てねとか、帰ってきて早々訳分からないことを言うんだから!」

「それ俺じゃなくて慎次の弟の、捨犬に言ってくれ。俺だって訳分からん。頼み込んできたのが慎次の弟じゃなかったら捨て置くぜこんなこと。つーか、慎次が影分身の術使うならあいつ一人で十分だし。けど、あいつ一人に全部押し付けんのも気が引ける。かと言って俺がホストとして初対面の女相手に愛想振り撒くなんてなんかヤダから、俺を助けると思ってご来店よろしくお願いいたします!」

「なんで最後は懇願になってるのさ」

 

苦笑してから俺を解放する奏。

 

「でも、カズヤがホストかー。アンタって死ぬほどスーツ似合わないんだよねー。ぷくく」

 

言うな。俺の外見の元であるカズマもスーツ着てた時あったけど、着られてる感が半端ないの知ってるから。誰よりもそういう服が似合わねーこと知ってるから。だから腹抱えてまで笑うんじゃねー。奏につられて皆も笑い出してんじゃんかよ。

 

「カズヤさんがホストらしい格好が似合うかどうかはともかく、私達に包み隠さず話してくれたことが私は個人的に嬉しいので、今回のはありだと思います。しかもカズヤさんは私達だけしか相手にしないのなら、ノットギルティに一票です。皆さんはいかがですか?」

 

セレナが可憐で優しげな笑みを見せ、人差し指をピンと立てる。

あの、セレナさん? ノットギルティって何スか? これ逆にギルティに票入れられたらどうなんの?

恐ろしいお仕置きでも食らうんだろうか?

 

「そうね。私もセレナ同様、特に反対はしないわ。むしろ今から期待しちゃうもの」

「アタシもー」

 

冗談めかしたように言うマリアと、奏が軽い感じで同意を示す。

 

「カズヤさんがホスト......『お帰りなさいませお嬢様!』とか言いながら迎えてくれるんですか!? なら私的にはあり! 全然あり! ありだよ未来!」

「響、気持ちは分かるけど鼻息荒いから」

 

興奮気味の響が突然立ち上がり、隣の未来が「どうどう」と落ち着かせようとしていた。

 

「つまり一時的とはいえ、カズヤは私にありとあらゆる奉仕をしてくれると」

「いや、近いけど違うと思う......けどまあ、それも悪かねぇなぁ」

 

目を細めてこっちを舐め回すような視線を向けてくる翼に、冷静に突っ込みを入れつつも期待の眼差しを飛ばしてくるクリス。

なんかこの二人、全く別のもの期待してませんかね?

 

「ホストクラブって大人な感じする」

「これは社会勉強のチャンスデス!」

 

背伸びをしたいお年頃の調と切歌は興味津々な様子。

概ね好感触な反応に、俺は明日の予定が決まったと確信。

問題があるとしたら、客として来店予定の面子の半分以上が未成年ということだが、まあ、それはなんとかなるだろ。他の客の目につかないようにVIPルームに連れてけばいいし。

弦十郎のおっさんもそこまで堅苦しいこと言わないし。

こうして俺は明日一日限定ホスト(もてなす相手はこいつらのみ)として働くことになった。

慎次一人で十分なら俺達何しに行くんだろ? と思わなくもないが。

 

 

 

 

 

翌日。

歌舞伎町に店を構えるとあるホストクラブ、絶対隷奴(アブソリュートゼロ)に俺と慎次と弦十郎のおっさんと朔也はいた。

勿論、全員がスーツ姿である。

時刻は開店の三十分前。

で。

 

「カズヤくん、相変わらずスーツ似合わないね」

「どう見ても着られているな」

「最初から分かってましたけどね」

「うるせぇよ!」

 

朔也、おっさん、慎次が好き勝手言ってゲラゲラ笑うので怒鳴っておく。

そこで捨犬が俺の真正面に立ち、上から下までじっくり観察してから一つ頷く。

 

「素材は悪くないのにこれほどスーツが似合わないのは初めてだけど、なんとかできるよ」

「マジか?」

「うん。方向性を変えればいいんだよ。きっかりしっかりした感じじゃなくて、ワイルドな感じに......ちょっと失礼」

 

言いながら彼は俺のシャツのボタンを第三まで外し、ネクタイを外し胸を少し肌蹴させ、シャツの襟を立て、何処からともなく取り出したワックスで髪を全体的に逆立ててくれた。

 

「これでどう? ワイルドじゃない?」

 

最後に手鏡でどんな姿になったのか見せてくる。

そこに映るは、言われた通りワイルドな男が。

 

「おお......!」

「カズヤくんは髪型と表情で凄く印象が変わるんだよ。下ろしてニコニコしてれば『可愛い』って感じがして、逆に逆立てて唇を吊り上げてれば『ちょっとアウトローなイケメン』って感じでさ。よく女の子からギャップが激しいとか言われない?」

 

確かに何度が似たようなことを言われたことがあったな。

鏡を見ながら満足気にコクコク頷く俺に、捨犬も満足気に笑う。

俺はすっかり捨犬のことを感心してしまった。

人のことをよく見ているというか、気配りや気遣いが上手いというか。これがホストクラブでNo.4の実力なのか彼自身の性格なのか不明だが、こいつ気に入ったぞ。

 

「弦十郎さんもカズヤくんと同じようにワイルドさをアピールしましょう。その方が絶対に似合うので」

「う、うむ」

 

続いて捨犬は弦十郎のおっさんに目を向け、同じようにしていく。確かにおっさんは既に見た目が野性味溢れるので、そっち方面に魅力を振った方が一部の女性からの受けは良さそうだ。

 

「これでよし! さっき伝えたけど改めて。当店に来店されるお嬢様方は癒しを求めています。また、自分に共感してくれる男性も。単純に遊びに来たという人もいるけど、基本的には皆話を聞いて欲しいんだ。だから、慣れない内は話を聞いて相槌を打つだけでも十分。そう難しく考えず、話してくれたことをちゃんと聞き、共感することを心掛けて。もし困ったことがあったらヘルプしてくれていいので」

 

捨犬のこの言葉を皮切りに開店前の緊張感が店内を包む。

さて、どうなることやらと半ば達観したようにスタッフルームの壁掛け時計──やたらお洒落な造りで高そう──を見つめていると、横で慎次が影分身の術を使って八人に増えると散っていく。

 

「本当に忍法使った!」

「亜蘭さんのお兄さん、マジもんの忍者だったんだ!」

「すげええ!!」

「これで人手不足も解消だ!」

「助かるぅ~」

 

......捨犬以外の従業員が信じられないものを見る目をした後に大興奮して騒いでいたが、俺達は今更驚かねーぞ。

つーか、何だこのホスト共のノリ。もう既に酔ってんじゃねーの?

そしてその光景に何故かドヤ顔になる捨犬。

慎次、捨犬、お前ら緒川家ってそんなんでいいのか。秘伝の術をホストクラブの人手不足解消に使って。

やがて開店まであと五分となった時。

 

「カズヤさん、カズヤさんをご指名のお嬢様方がご来店です」

 

店の札を『close』から『open』に変えに行った慎次(分身)がスタッフルームに戻ってきて教えてくれる。

 

「早ぇよあいつら。まさか店の前でスタンバってたのかよ」

「いえ、タクシー三台が丁度今店の前に横付けされたのを見まして」

「流石に装者達全員が店の前でスタンバってたら目立ってしょうがないだろう」

「皆美人美少女ですからね」

 

しかも場所が歌舞伎町だしな。

店の出入り口付近に設置された防犯用監視カメラの映像を眺めつつぼやけば、慎次(分身)が目撃した内容を述べて、おっさんが苦笑し、朔也が感慨深げに呟く。

映像内ではOL風な姿をした響が今まさに、緊張した様子でおっかなびっくりドアノブに手を掛け、店内に入ろうとしていた。

 

「さてと、じゃあ行きますかね」

 

先程散々捨犬に叩き込まれたホストとしての接客、というものを思い出しつつ俺は響達を迎えに行く。

 

 

 

視界に映るはお揃いのスーツに身を包んだ女性陣。黒いレディースジャケットに、魅惑的な脚線美を惜し気もなく晒すミニのタイトスカート、セクシーさを際立たせるハイヒールといった感じでいかにも『仕事上がりのOL』な出で立ち。普段からあまり化粧っ気のない女性陣だが、今はこの為になのか皆が皆結構気合いを入れて化粧を施したというのが一目で分かる。しかもそれが行き過ぎた感じがしないので、純粋にいつもよりも綺麗に見えた。

なんだかこれだけでも得した気分だ。

しかしながら、いかんせん現役女子高生である響、未来、クリス、切歌、調の五人はスーツ姿から滲み出る初々しさを隠せていない。逆に大人の仲間入りを果たした残りの奏、翼、マリア、セレナが既に『できる女』の風格を纏わせているのは、シンフォギア装者とは別に社会人として働いたことのある経験の差だろうか。

 

「お待ちしておりましたお嬢様方。今宵、皆様を癒す大役を務めさせていただく『K』と申します。まだ経験の浅い新参ですが、皆様が心から楽しめるよう精一杯頑張りますので、よろしくお願いいたします」

 

彼女達の前まで歩み寄り、主に忠誠を誓う騎士のように片膝を突いて頭を垂れてから、我ながら恥ずかしいと思いつつも『ホスト』として全力の演技をしながら口上を述べ、最後に顔を上げた。

ちなみに源氏名は俺が『K』、弦十郎のおっさんが『ゲンさん』、朔也が『タカ』、慎次が声優としての芸名の小川忍から取って『シノブ』とした。もっと捻ろと言われそうだが一夜限りだし面倒だからテキトーに俺が決めたのだ。

とりあえずどんな反応が返ってくるだろ? と様子を窺えば、まず最初に切歌と調がそれぞれのショルダーバッグからケータイを取り出す。

カシャッというシャッター音と、ピロリンという録画開始の音が鳴る。

 

「おお~、カッチョいいじゃないデスかカズヤ。スーツが死ぬほど似合わないって話は何処行ったデスか?」

「シェルブリットを発動させた時の髪型での少し着崩したスーツ、思ってたよりも似合う」

「お褒めいただきありがとうございます。切歌お嬢様も調お嬢様もそのお姿、普段よりも大人びていてとても素敵で、よく似合っております」

 

素直に褒めてくれたスーツ姿の二人に、俺は顔が自然と笑みになるのを止められないまま言い返せば、二人は照れ臭そうに笑う。

 

「......良い」

「はい......凄く、良いです」

 

その隣で熱に浮かされたような表情にぼんやりとした口調で感想を零すマリアとセレナ。

 

「ああクソ、スーツ似合わないって思い込んでたから油断してた。そっち方面で攻めてくんのかよ」

「正直不意を突かれたわ......反則」

 

頬を赤くし奏は片手で自身の口元を、同じように赤い頬の翼はショルダーバッグで目より下を隠すようにしながら、二人共潤んだ眼差しで見つめてくる。

 

「......なんだよカズヤ、スーツもちゃんと着こなせるじゃねぇか。もっと早く言えっての」

「ヤダ、私興奮してきた......!」

 

瞳を潤ませその顔を朱に染めたクリスと未来の反応には苦笑するしかない。

捨犬のお陰でスーツが似合わない男、ということから脱却できたことに俺は満足した。

そうだよ、よく考えてみればカズマって普通にイケメンなんだよ。ただ、男前ってのが目立つせいで忘れがちなんだよな。あとアウトローなイメージが強いからスーツみたいな服装が彼に合ってないっていう印象がある。そして実際に着てみたシーンでは、それに着慣れてないのが丸分かりで。

だがしかし、女性陣の態度でそんなことは些細な問題だというのが証明された。

成し遂げたぜ!

俺が内心でガッツポーズをしていて、ふと気づく。響が彫像のように固まって動かないことに。

こういう時はいの一番に反応を示してくれるはずの彼女が、全く動かない。まるで彼女の時間だけ止まっているかのように。

まさか響的にはこの格好、あんまり良くなかったのだろうか?

 

「響お嬢様?」

 

一抹の不安を抱えて声を掛けると、漸く彼女は唇を震わせ、絞り出すように声を出す。

 

「......わ......」

「わ?」

 

誰もが訝しんで首を傾げた瞬間、

 

 

「私の王子様ぁぁぁぁ!!!」

 

 

いきなり響が咄嗟に耳を塞ぎたくなるほどの大きな声を上げて飛びかかってきた!!

突然の出来事に加え、跪いていたので俺はろくに抵抗もできないまま押し倒される。

 

「どわっ!?」

「ああもう格好良い! 格好良過ぎですよ! もうこの姿のカズヤさんが見れただけで私満足です! だからもう帰りましょ!? それかすぐそこに休憩できる場所があるから休んでいきましょうよ! ねえカズヤさぁぁぁん!!」

「ああ困ります響お嬢様! 困ります困ります! 当店ではこのようなサービスを提供しておりません!」

 

全然違った。響的にはこの格好、どストライク過ぎて色々とぶっ飛んだ結果になってしまった。

つーか、力超強ぇぇぇぇ!!

素の状態なら俺の方が筋力強いはずなのになんで引き剥がせねぇんだ!? こっちに跨がって覆い被さるように密着しようとする彼女の両肩に手を置いて、全力で押し返しているがむしろ押し負けるぅぅぅ! 勝てる気しねぇぇぇ!!

これはあれか? 理性の箍が外れかけたことで脳が筋肉に掛けてるリミッターも一緒に外れたのか? 完全にトランス状態じゃねぇか!?

このままだとダメだ。せめて第一形態でもいいからアルターを使わないと対抗できない!

家の中とかで押し倒されるなら大歓迎だが、ここは外で今は就業中で、時と場所が悪いっての。

興奮した響の顔が吐息のかかる距離まで接近。普段の人懐っこい大型犬を連想させる笑顔ではなく、餓えた狼のような獲物に襲い掛かる肉食獣の顔だ。

化粧と服装で普段よりも四割増しで綺麗かつ魅力的なのに、なんで狼に食い殺されるウサギの気分になってんだ俺!?

 

「「何してんだゴルァッ!!」」

 

だが、響の蛮行をこのまま見過ごす他の面子ではなかった。

まず奏とクリスが怒髪天になり怒号と共に響の後ろから掴み掛かる。

 

「ズルいぞ立花、抜け駆けなど!!」

「響あなたこんな所で何考えてるのよ!?」

「皆カズヤさんのこと押し倒したいのを我慢してるんですよ!!」

 

非難の声を上げながら翼、マリア、セレナが先の二人に加勢。

いくら響が怪力を発揮しても五人がかりでは流石に引き剥がされる。

 

「フー、フー、フー!!」

 

しかし未だに響の理性は戻らない。やたら呼吸が荒く、野生化したまま本能に従い拘束から抜けようと暴れもがく。

それを怒りの表情で必死に押さえ込む五人。

ここで未来が待ってましたとばかりに拘束されている響の正面に回り込み、肩にかけていたショルダーバッグを高く掲げるように大きく振りかぶり、思いっ切り響の頭をぶっ叩く。

バコンッ!! と盛大な音。

 

「......ハッ! 私は一体何を?」

 

殴られて漸く正気に戻るアホの子。

続いて未来は響の襟首を両手で締め上げ、底冷えするほど低い声音で恫喝するように問い質す。

 

「ねえ響、何やってるの? 何一人で理性飛ばしてるの? どうしてそんなに響の理性はガバガバなの? ここ、奏さん家でもなければ寮でもないんだよ? 分かってる?」

「ひいっ! ごごごごごめんなさい!!」

「謝るなら私じゃなくてカズヤさんにだよね?」

「カズヤさんごめんなさぁぁぁい!」

「いや、まあ、俺は気にしてねーから気にすんな」

 

般若、じゃなくて未来から放たれるプレッシャーに怯え、涙目になって謝る彼女に俺は立ち上がって手をヒラヒラさせた。思わず素に戻っちまったけど、まあいいか。

だが他の面子は次々と言いたい放題言い出す。

 

「カズヤ、アンタ甘いよ。そんなんだからいつも響に所構わず押し倒されるんだよ」

「そうだそうだ! たまには調子に乗ったこいつを叱るとかしたらどうだ!」

 

家だとほぼ毎日俺を押し倒してくる奏とクリスが、自分達を棚の最上段に上げつつブーメランを全力で投げつけて見事に自分にぶっ刺していた。

 

「ところで、いくら払えばそういうサービスを受けられるの!?」

「カードがあるから言い値を出せるわ!」

「一応、現金もあります。六百万ほど銀行で下ろしてきました」

 

翼とマリアがズビシッと、まるで某アニメの決闘者が『俺のターン、ドロー! マジックカード発動!』をするような芝居がかった&無駄に洗練された無駄のない無駄な動きで魔法のカード──しかもブラックなマジックカードだ!──を取り出し構えて、その横でセレナがショルダーバッグの中に仕舞われていた大量の札束を見せつけてくるが、そもそもここそういう店じゃねぇから! そんなサービス提供してねぇっつったろ! さっき響に言った話聞いてた!?

いつもの調子で突っ込みたいのをぐっと堪える。今日は俺がもてなす側でこいつらはお客様なのだ。ここで突っ込んだらいつもと変わらん。

 

「いい響? 忘れちゃダメだよ? 響は私の次、響は私の次、響は私の次、はい、リピートアフターミー」

「私は未来の次、私は未来の次、私は未来の次、私は未来の次、私は未来の次、私は未来の次、私は未来の次......」

 

悪質な洗脳を施す未来に、ぐるぐるお目目で壊れたプレイヤーのように同じことを繰り返す響。

そんないつもの光景と言えばいつもの光景に、決意が挫けて全身から力が抜けていく。

ここ、歌舞伎町にあるホストクラブなんだけどなー。なんで家とかS.O.N.Gの本部内みたいなノリと空気、やり取りになってんだろ。

小さく溜め息を吐けば、今まで黙って大人しくしていた切歌と調の二人と目が合って、

 

「大丈夫、ちゃんと撮ってるデス!」

「いつでも何処でもブレないのが、カズヤと私達」

 

ケータイ片手に何故か良い笑顔で同時にサムズアップ。

最早「そうだな」としか返答できない俺だった。

 

 

 

 

 

「......兄者、カズヤくんとその周囲っていつもこんな感じなの?」

「だいたいこんな感じですよ」

「いつも通りだな」

「ドタバタ騒ぎしてない時の方が珍しいよ」

 

出入り口からそれなりに距離がある廊下の奥にて、カズヤの様子を窺っていた捨犬の質問に、緒川と弦十郎と朔也は平然と答えるので、捨犬は自身の予想以上にカズヤが逸材であったことに戦慄した。

 

 

 

 

 

いつまでも出入り口の廊下にいる訳にはいかないので、ぞろぞろと女性陣を連れて店内の奥へと進む。

 

「ホントにツヴァイウィングが来たぞ!」

「マリアさんもいる!?」

「それだけじゃねぇ、他の女の子達もレベル高ぇぇ!」

「これがKさんの、"シェルブリットのカズヤ"としての実力と人脈......!」

「流石Kさん」

「略して」

「さすKェ」

「忍んでない忍者は里に帰って、どうぞ」

 

おい、最後の奴の発言は今この店で分身してまでせっせこ働いてる慎次にクリティカルヒットだからやめろ。

某掲示板で見た気がするやり取りをして騒ぐ妙にテンション高めのホスト達をひたすら無視して捨犬に声を掛ける。

 

「VIPルーム借りるぜ」

「どうぞ~」

 

了承を得て更に店内奥へと女性陣を案内。

これまたホストクラブらしく金掛けてそうな豪華な内装、及び高価な家具や調度品を揃えた部屋に女性陣を招き入れた。

誰もが室内を見回しながら「おー!」とか「ふぁ...」とか「すっげ」とか「いくらするのこのソファー?」とか「綺麗なシャンデリアデス!」とか口々に漏らす。

 

「......あ、後で莫大な請求されたりしませんよね? チャージ料みたいなので云百万って」

 

高級ソファーに恐る恐る座る震え声のセレナの言葉を聞いて、ピシリと誰もが固まった。

それから縋るような視線が俺に集中したので、安心しろと首を横に振る。

いやいや、いつの時代のぼったくりバーだよ。

さっき現金で六百万以上持ってきていることを見せた癖に、今更ながらに冷静になったというかビビり始めたらしい。

皆こういう贅の限りを尽くした場所に来るのが──トップアーティストの三人はともかく──初めてなんだろうな。俺もこの店で捨犬に「この部屋使っていいよ」って許可されるまではそうだった。

 

「料金に関しては飲食代のみです。また、その飲食代も今回は特別に一割引きとなります」

 

捨犬曰く、男子会を潰してしまったお詫びのつもりらしい。

なお、こいつらの飲食代は後で俺のポケットマネーから全額出すつもりだ。

普段はケチな俺だが、こいつらの為なら湯水のように金を使うことを厭わない。

まあ、それを最初から告げると全力で断られたり気を遣わせてしまうので、お会計時にパパっと払っちまうつもりだが。

ホストを改めて演じる俺の説明に皆がホッと一息つけば、お盆に人数分のお冷やを載せた慎次(本体)が入室してきた。

彼はお冷やをテーブルの上に載せ終えると、真顔で告げる。

 

「お冷や一杯二百万円になります」

「「「「「「「「「え゛?」」」」」」」」」

「冗談です」

 

タイミング悪い冗談やめろ。一部がこの世の終わりみたいな絶望的な顔になっただろうが。

 

「お料理や飲み物はこちらのメニューからどうぞ」

 

クスクス笑いながらそそくさと退室していく慎次の背中に女性陣の恨みがましい視線が刺さる。

......一見華やかな夜の世界だが恐ろしい側面もあると教えたつもりだったのだろうか?

 

「とりあえず慎次の冗談は受け流して遠慮などせずお飲み物をお選びください。お付き合いする以上、多少は私が奢ります」

「じゃあとりあえずこの店で一番高いドンペリ」

「ドン・ペリニヨンを所望するデス!」

「一番高いのは勘弁してください、ここにいる全員の財布が死にます。一番安いやつなら価格は他のお酒より少し高い程度で、お手頃です」

 

多少は奢る、つった瞬間に調と切歌が躊躇なく、容赦なくドンペリ頼みやがった。この二人、いつも遠慮とかしねーのな。お小遣い制だから仕方がないんだが。

それに未成年だから飲むな、とは今更言えない。戸籍上まだ二十歳になってない俺がそもそも普段から飲んでるし、お祝い事があるとどんちゃん騒ぎした時になんだかんだで皆飲むし。やってないのって喫煙くらいか。

よくよく考えるとつくづく不良なんだよな俺達。真面目な性格の翼とか、保護者の立場のマリアとセレナすら止めなくなっちまった。絶対俺の悪影響だわこれ。だって俺と出会う前だったら必ず止めに入るはずだし。そこらへんの倫理観、全部俺のせいで割と皆パッパラパーになりつつある。

マジで今更だけど。

ついでに言えば調に宿る了子さんの魂も何も言わない。きっと「こいつらには何を言っても無駄だ」と思われてるに違いない。

 

「よし、ならアタシもドンペリー! 飲んだことないから前から気になってたんだよねー」

 

にししと笑う奏が続けば、私も私もと残りの面子が挙手をする。結局俺を含めて全員がドンペリを希望。

後は酒の肴になるようなチーズやポテト、サラダや一品料理を注文することに。

 

「テレビでよく見るシャンパンタワーってできないんですか?」

「後で高額な請求をされることになりますが、それでよろしければ」

「......聞かなかったことにしてください」

「ホストクラブってだけで金が掛かるのに、更に金が掛かりそうなもんを頼もうとすんな!」

「ふぇ~ん、だって気になったんだも~ん」

 

ワクワクした感じで響が聞いてきたので即答すれば、すごすごと引き下がり、そんな彼女の頭を横からクリスが引っ叩く。

響に限らず、実は折角一日ホスト体験できるんだから俺もやってみたかったんだが、捨犬にこの店の値段設定を聞いて即諦めた。普段の客でも、余程の金持ちじゃないとあまりやらないとか。

 

「全体的に高いわね」

「高いですねぇ」

 

我らがママリアはメニュー表であるタブレット端末と睨めっこしながらブツブツ言って、隣のセレナが眉根を寄せて同意する。俺と同じで大金を手にしても庶民派から抜け出せないので、ややお高めな料金設定に不満があるらしい。

 

「さっきの言い値で払うという強気な発言は一体何だったのでしょうか」

「カズヤを買うならいいのよ、お金に糸目はつけないわ」

「同じく」

 

小さくぼやけば当然の如くマリアと翼が応じた。飲食代に金を使うのは嫌だが俺を買うならいくらでもいいらしい。

つーか、言い方からしてホストを遊女か何かと勘違いしてないか? 今夜限りの俺に身請けとかねーから。もし分かっててやってるとしたら後でお仕置き......はダメだ、ただの御褒美になる......もうそっとしておこう。

その後もメニュー表を見ながらあーだこーだ言い合う女性陣の相手をしていたら、またしても慎次(分身)が現れグラスを配膳しボトルを開栓し、待ちに待ったドンペリをそれぞれのグラスに注いでいく。

 

「はい! では最初で最後のホストクラブとドンペリに乾杯しましょう!」

 

全員の準備が整ったところで立ち上がり、グラスを掲げる。

かんぱーい! と皆で唱和し揃って杯を乾かし、宴が始まった。

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「キャー♪ ゲンさんの上腕二頭筋とっても素敵!」

「やっぱり男性はこのくらい逞しくないとねー」

「ありがとう。楽しんでくれたなら、俺も嬉しい」

 

弦十郎は筋肉フェチのお姉様方に大人気で、囲まれて無遠慮に筋肉を触られたりしていたが笑顔で応じていた。

 

「私飲み過ぎたのかしら? シノブさんが分身してるように見えるの」

「「「分身してるんですよ」」」

 

慎次は甘いマスクと柔らかい物腰、そして分身の術で客を色んな意味で幻惑していた。

 

ちなみに朔也は──

 

「なんでいるの?」

「私がいたら何かマズイの?」

「......いえ」

 

仕事が終わった後に来店した為、響達よりも僅かに遅れてやって来たあおいに管を巻かれていた。

 

「はあ......どうして私に彼氏ができないの?」

「機密に関わる仕事に就いてて、それに関して何も教えられないから、そのせいで不審に思われるからじゃない?」

「世の中の男って見る目ない奴ばっかりよ」

「ソウデスネ」

「なんでS.O.N.Gっていい男が少ないの? おかしくない?」

「ソウデスネ」

「なんで私の周りの男は私より女子力高いの!? 緒川さんもあなたも料理凄い上手だし、司令なんて中華料理色々作れるし、カズヤくんでさえ家事全般は人並みにできるって話じゃない!」

「たぶん緒川さんと司令は修行の一環で身につけて、カズヤくんはなんとなくこなせるタイプで、俺は料理が半分趣味......」

「私にも寄越しなさいよその女子力!」

「捨犬さーん! ヘルプお願いしまーす!!」

 

あおいの相手を開始して十分も持たずに早々に音を上げる朔也であった。

 

 

 

 

やがて──

 

良い感じに酔いが回ってきたらしい未来が顔を赤くし据わった目で唐突に宣言した。

 

「では当初の予定通り王様ゲームをします」

 

当初の予定通りって何!? なんとなく嫌な予感がしたので全力で拒否したかったが、俺以外の全員が待ってましたとばかりに『イエーイ!!』と叫ぶので拒否権なんてある訳ない。

 

「王様の命令は、絶対です。絶対に絶対なんです。いいですねカズヤさん!?」

「未来お嬢様、なんで俺だけそんなに念押しするんでしょうか?」

「はい、王様ゲームを始めまーす! クジ引いてくださーい!」

 

聞いちゃいねー。

予め用意していたのか、ショルダーバッグから取り出したクジ──割り箸でできたもの──を一人一人に引けと未来が迫った。

 

「あの、場所が場所なんでセクハラの類いは勘弁して欲しいんですけど」

「しませんよ、そのくらい弁えてますよ。さっきの響じゃないんですから」

「ちょっとぉ!!」

 

前科もんから抗議の声が飛んだが未来はスルー。そして誰もがその声に聞く耳持たなかった。

王様だーれだ!? ということで始まる王様ゲーム。

 

「ひゃっほぉぉ! アタシが王様デス!」

 

一番手は切歌。元気良く『王様』と書かれたクジを高く掲げて立ち上がる。

あれ? とここで疑問に思う。引いた外れクジには何も書いてない。普通、王様ゲームのクジって『王様』以外は番号が振られてなかったっけ? そんで、例えば王様が『二番が四番の物真似しろ』とかいう感じで命令を下すゲームじゃなかったっけ?

 

「......う~ん、かと言ってすぐに浮かばないデスね」

 

誰に何をやらせるのか少し考えるように視線を皆に順番に巡らせてから、俺と目が合うと、

 

「よし決めた! 特等席デス! カズヤはアタシの椅子になるのデス!」

 

一瞬、そこに四つん這いになって椅子になれよ豚が、と言われるかと思ったが違った。彼女は内心ビクついてた俺に構わず、有無を言わさない素早さでそのまま俺の膝の上に勝手に座る。

 

「「「「「「「ちっ」」」」」」」

 

その際、いくつもの舌打ちが聞こえたけど聞かなかったことにしよう。

 

「いいな~切ちゃん、カズヤのお膝の上。座り心地良いんだよね」

「ふっふーん、王様は特別な椅子に座るもんデスから」

 

つまみのカマンベールチーズを皿から取りつつ調が口にし、切歌が俺に背と体重を預けながら自慢気に足を組む。

皆の妹ポジション的なこの二人は、響達とはまた別の意味でスキンシップが好きだ。暇な時は肩車を、眠い時は膝枕、疲れた時はおんぶやらお姫様抱っこしろ、褒めるべき時は頭撫でろ、何でもいいからとりあえず構えよと要求してくる。父親や兄弟の存在を知らずに育ったので、そういうのを俺に求めているのは理解していた。おまけに年の近い異性の知人友人が俺以外に皆無。だから可能な限り応えようとは思うのだが、響達の反応を見て面白がっている節がある。

スキンシップ自体は構わんが、これ見よがしにして他の女性陣の反応を楽しむとか、とんだ小悪魔になってきたな。

そして確信する。この王様ゲーム、外れクジに番号が振られてないのは仕様で、完全に王様が名指しで命令するやつなんだ、と。

 

「......次、行こうか」

 

ジロリと、あからさまな嫉妬と羨望が込められた目で切歌を睨んでから奏が静かな声で促す。

二回目。結果はセレナが王様となった。

 

「やった! やりました! 完全勝利!!」

「うるせぇ」

「早く命令しろ」

「セクハラの類いは禁止よ、セレナ」

「響さんじゃないんですからしませんよ!」

「だーかーらー!!」

 

興奮して立ち上がりガッツポーズを取るセレナに、クリスと奏が物凄く不貞腐れたように言い放ち、マリアが注意を促し、それに真っ赤になって憤慨するセレナに対して響が喚く。

 

「ゴホンッ、ではカズヤさんに命令します」

「知ってた」

「簡単なことです。この紙に名前を書いてください」

「?」

 

ショルダーバッグから四つ折りにされた一枚の紙とボールペンを受け取る。

セレナ以外の全員が揃って頭の上に疑問符を浮かべる中、とりあえず広げられた紙に名前を書けばいいのかと酔いが回り始めた頭でぼんやり考えた。

 

「ここです。ここの欄に名前を書いてください」

 

彼女の白魚のような細く綺麗な指が指し示すそこには、『夫になる人』という記載が。その欄の隣には『妻になる人』という記載。更にそこには既に『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』と書かれていた。

ん? これって──

 

「セェェェェレェェェェナァァァァ!!!」

 

まず最初にブチギレて絶叫したのはマリアだ。

 

「あなたどういうつもりよこれぇぇっ!!」

「ただの王様ゲームですよ」

 

姉の詰問に悪びれることなくしれっと答える妹。

そんな彼女の態度に他の面子もこめかみに青筋を立てて怒鳴り散らす。ブーイングの嵐だ。

 

「お前ふざけんなよ!!」

「なんで婚姻届なんて持ってんだ!!」

「何いきなりカズヤさんと結婚しようとしてるんですか!?」

「しかもよく見たら『夫になる人』が書く場所以外全部埋めてある!!」

 

奏、クリス、響、未来が次々と叫び出すが、セレナは何の痛痒も受けていないかの如く表情一つ変えない。

 

「あれ? 王様の命令は絶対じゃありませんでしたか?」

「「「「「っ......!!」」」」」

 

喚いていた連中がこの一言で黙り、フギギギィッ! と歯軋り。

だが小声で「なんとか、なんとかせねば!」やら「酒飲んでるから今のカズヤだとマジで何も考えずにサインするぞ!」やら「こんな古典的な方法でぇ......!!」やら「おのれセレナァァァ」やら呪詛のようなものが鼓膜を叩く。

それに機嫌を良くしたセレナは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、「さあカズヤさん名前を書いてください、早く書いて今書いてすぐに書いて名実共に夫婦となりましょう!」とこちらを急かす。

 

バキャッ!

 

と、その時だった。ガラスが砕けるような音がVIPルームに響き渡り、何事かと音の発生源を探せば、これまで口を閉ざしていた翼の手の中でグラスが握り潰されていた。

中身がまだ入った状態でグラスが握り潰された為、酒が散乱するが彼女は毛ほども意に介さず言葉を紡ぐ。

 

「......カズヤは私の婚約者だ......」

 

低い、唸るような声音にして、怒りが滲んだものだった。

 

「婚約者の私を差し置いて、カズヤと結婚するだと? 認めん、認めんぞこんなもの!!」

 

咆哮する翼がセレナに食ってかかる。

たぶん、この場で今一番キレてんのが彼女というのがなんとなく理解できた。

 

「いいかセレナ、私とカズヤは親公認の正式なものなんだ! なのに酒を飲ませて正常な判断ができなくなったところで書類にサインさせるなど、こんなやり方、詐欺と変わらん!」

 

翼の言い分に「そうだそうだ!」「もっと言ってやれ翼!」「こんなの横暴だよ!」と賛同の声が飛ぶ。

しかし負けじとセレナも言い返す。

 

「はあ!? 筋弛緩剤とアルコールを静脈注射されて全く抵抗できないカズヤさんと半ば強引に関係を持った方々と比べたらまだ人道的ですよ!!」

「「「「っ」」」」

 

旧二課の四名が一斉に硬直し、その隙にセレナは畳み掛ける。

 

「そもそも親公認というならこちらだって公認です~。マムの遺言で私達はカズヤさんに託されました。つまり、そういうことなんですよ!」

 

明らかに自分にとって都合のいい解釈にしか聞こえない、屁理屈と言っても過言ではない発言だったが、切歌と調が互いに酒で赤くした顔を見合わせて暢気に「そうだったんデスかー」「気がつかなかったねー」「でもそれなら納得デスー」「納得だねー」と他人事のように笑い合う。

一人マリアだけ、当然と言わんばかりな顔で足を組み替えグラスを傾け杯を乾かす。

 

「と、通るかそんな屁理屈!」

「屁理屈だろうと何だろうとカズヤさんが名前を書いてくれたら後はこちらのものです!」

「っ! そうはさせん! 要はカズヤの直筆サインがなければいいんだな!? ええい! こんなもの!!」

 

横合いから翼が手を伸ばしてきてボールペンと婚姻届が奪われた。

続いて彼女は『夫になる人』の欄に何を思ったのか『醤油』と書く。

 

「ほあああああああっ!? ちょ、ちょっと何するんですかぁぁぁ!! 醤油? よりによって醤油!? 醤油って何ですか醤油って!? 人どころか生物ですらない調味料と結婚しろって言うんですか!!」

「ぶふぅ! 醤油と結婚とか、セレナあなた、マムじゃないんだから! あははははっ、はははははつ、はははははははっ!!」

 

ムンクの叫びみたいになるセレナを見て、マリアが故人に対してとんでもなく失礼なことを言いながら爆笑している。これは相当酔ってきた証拠だ。

 

「確かにマムは醤油と結婚したのかってくらい何にでも醤油かけてたデース......!!」

「ぷ、ぷぷ、醤油と結婚、ごめんなさいマム、私は無理......」

 

姉貴分のマリアの発言を咎めるどころか必死になって笑いを堪える切歌と調。

どうやらナスターシャの婆さんは娘達から『醤油と結婚した女』と認識されていたらしい。だが確かに、短い間とはいえ共に生活した俺からも言わせてもらえば、あの婆さんの醤油の摂取量は異常だった。しかも肉類しか食わねー。食事の度に醤油のかけ過ぎに眉を顰めるイヴ姉妹の視線を、いつものことだとばかりに受け流していたような。

ん? ってことはあの婆さんの病気の原因ってただの不摂生だったんじゃ?

そう考えると、誰も婆さんのことをフォローをしないのも納得だ。

 

「今日からセレナを醤油女と呼んでやる」

「絶対に嫌ですよそんなの! 私はマムみたいに醤油に溺れて禁断症状起こしてる訳じゃないんですから!」

 

せせら笑う翼にセレナがプンスカ怒る。やはり彼女も婆さんの醤油への異様な執着には思うところがあったようだ。完全に言い分が麻薬中毒患者に対するものと同等だし。

 

「......あぅぅ......折角暇な平日にお役所行ってもらってきた婚姻届が、皆さんを出し抜くアドバンテージが、私の幸せ家族計画が......」

「何が折角だ。大した労力じゃねぇじゃん、クソッタレ」

「セレナって事ある毎に抜け駆けしようとするよな」

「というか、翼さんを蹴落とそうとしてたことに普通にドン引きです」

「何気に腹黒いですよね、セレナさん」

「この馬鹿者が」

 

クリスが吐き捨て、奏が冷たい視線になり、響が自身の口元を手で隠しながら呻き、未来が冷笑し、最後に翼が罵る。

 

「まだ二回しかしてないのに早速波乱の展開デース」

「実は私、乱闘が始まるのを今か今かと期待してるんだ」

 

膝の上でほくそ笑む切歌と、物騒なことを楽しみにしている調。こいつらはこいつらで大分できあがっていた。

 

「ところでカズヤは結婚についてどう考えてるデス?」

 

と、ここでぐりんと顔を巡らせて至近距離からこちらの顔を見上げるように窺ってくる切歌。その問いに暫し「うーん」と考えてから、俺は素に戻りゆっくりと答える。

 

「正直な話、一喜一憂しているお前らには悪いが、俺個人としては書類上の関係をそこまで重要視してねーんだよなぁ。そもそも俺の存在自体がこの世界にしてみれば冗談みたいなもんで、戸籍も免許取る時に適当な感じのをでっち上げたもんだ。『君島』っつー姓も愛着はあるがあくまでも日本人として生活する上で必要だから名乗ってるだけだし」

 

そこで一旦区切ってグラスを傾け喉を潤す。

 

「逆に聞くが、仮に俺がこん中の誰かと籍入れたとして何か変わるのか? 今の生活と関係が変わるのか? 残念ながら俺にはそうは思えねーんだ。結局俺にとって何が一番大切かっつーと、お前らと一緒にいられること。ただそれだけ、それだけなんだ。それさえ叶うなら、もう他に何も要らねーよ」

 

いつの間にか誰もが黙って耳を傾け、真剣な表情になっていたことに気づき、なんだか照れ臭くなってきてそれを誤魔化すように笑う。

酔いのせいか、口を滑らせ過ぎたかもしれない。

 

「まあ、求婚自体は純粋に嬉しいし、欲しいもんは力ずくでも奪うっつー攻めの姿勢は嫌いじゃないぜ」

「その最後の一言がさっきのセレナみたいなのを生むんだよなー」

「クリス、他人事みたいに言ってるけど自分のこと忘れてるよ。私達の中で一番最初にカズヤさんをぶっ倒して自分のものにするって言って実行しようとしたの、クリスでしょ」

「そう言う未来も人のこと言えないよ」

「すぐ野生化する響は黙ってな」

「立花は少し自制というものを覚えてだな」

「そういう奏と翼だって家の中だとすぐに野獣になるじゃない」

「マリア姉さんもですね」

「自分だけは違うと言わんばかりの態度はやめなさい、セレナ。あなたが一番えげつないんだから」

 

んだよ? 何? 喧嘩売ってます? あ゛? 何ですって? はあ? やんのかこら! 聞き捨てならん! という感じに、まさに調が期待した通りこれから乱闘が始まりそうな険悪な空気になってきた。

 

「酒が美味いデース」

「ドンペリおかわりー」

 

そんな一触即発な連中を止めるどころか酒の肴にして愉悦に浸る切歌と調の二人は、それぞれのグラスにドンペリをお酌し合い、グラスとグラスを軽くぶつけ合って乾杯。

キャットファイトを眺めながら飲む酒も確かに美味いが、それじゃいつものどんちゃん騒ぎとあまり変わらん気がする。

ここはホストクラブで今の俺はこいつらをもてなすホスト、源氏名は『K』。ならばここでしかできないことをして、少しでもこいつらが楽しめるようにするべきだ。

......仕方がない。値は張るが、さっき響が興味あるみたいなこと言ってたし、折角なんだから金なんてパーッと使っちまうか。

 

「慎次ぃー、慎次ぃー、カムヒアー」

 

1㎞先に落ちた針の音も聞き逃さない忍者を呼ぶ。

 

 

 

分身と本体で合わせて三人の慎次が、シャンパンタワー設立を完了させる。

グラスの段数は五段。あんまり段数を高くすると飲み切れない、酒が勿体ない、という非常にシビアで現実的な全会一致の意見により段数は低めにされた(この場にいる全員が贅沢をよしとしない倹約家だったとも言う)。だが、グラスそのものがそれなりの大きさなのでタワーは相応に高い。

後は天辺のグラスからシャンパンを注ぐだけ、という段階で皆の顔を窺う。

テレビとかでしか見たことないことをこれから行うことに、個人差はあれど期待を膨らませているようだ。

俺は手にしたボトルを軽く掲げて問う。

 

「誰かやりたい人いる?」

「はいはい! 私やりたいです!」

 

元気良くテンション高くピンと腕を高々と掲げてアピールする響に、開栓したばかりのボトルを手渡す。

彼女はボトルを受け取ると靴──黒いハイヒールを脱いでソファーの上に立つ。

 

「それじゃあ、行きますよ~」

 

チョロチョロと注がれるシャンパン。

それを見てクリスがこれじゃないとばかりに呻く。

 

「なんかショボいな」

 

ま、チョロチョロとゆっくり注いでるからな。たぶん、響は金額面を気にしてシャンパンが無駄に零れないようにしてるんだろう。

 

「響、もっとこう勢いよくドワーっとやれ、ドワーっと!」

「えええ!?」

 

しかし、見かねた奏が両手にボトルを持ちハイヒールを脱ぎ、響同様ソファーに立つと、ドボドボジョバジョバ豪快に、一気に注ぐ。

溢れて零れまくるシャンパン。でもそのお陰でなんかそれらしくなってきた。

 

「注げ注げ!」

「どんどん注ぐデス!」

 

調と切歌が手にしたグラスを振り回しながら囃し立てる。いや、囃し立てるのはいいがグラスは下ろせ。事故が起きるだろ!

グラスを振り回す二人からグラスを取り上げ、注ぐ係となった二人から空のボトルを受け取り、新しいのを手渡すというのを何度か繰り返す。

何本ものボトルを消費して、やがて完成するシャンパンタワー。

 

「うむ。なかなか荘厳だな」

「でもやっぱりちょっとお酒が勿体ないですよね」

「その分綺麗ですよ......値段については、今は考えないようにしましょう」

「写真撮りましょ、写真。タワーを背景にして皆で」

 

タワーを前にして翼が満足気に腕を組み、未来がこの場の誰もが思ってることを改めて口にして苦笑いし、セレナがやや現実から目を背け、マリアがケータイ片手に皆を促す。

 

 

 

「......結局いつものどんちゃん騒ぎと何一つ変わらなかったな」

 

それから、VIPルームに備え付けのカラオケを使って騒いでいたら、暫くして電池が切れたオモチャのように切歌と調がコテンと倒れて夢の中に突入。

ならこれでお開きにしようということになり、俺は眠ってしまった二人を脇に抱えてVIPルームを後にした。

その後を残りの面子がほろ酔いと泥酔の中間みたいな状態でついてくる。

そんな俺の前に捨犬がにこやかな笑みで歩み寄ってきた。

 

「捨犬、俺達帰るわ」

「了解。楽しんでもらえた?」

「皆さん楽しめましたか? 楽しめた人は手ぇ挙げて!」

「「「「「「「はーい!!」」」」」」」

 

背後を振り返り促せば、上機嫌な七人の酔っ払いはそれぞれがアホみたいに元気な声を出し手を高々と掲げてブンブン腕を振る。

まるで小学生みたいなノリに、嫌な顔一つせず、むしろノリノリで応えてくれる。何だこいつら、超可愛いし超愛しいんですけど。

......やっぱこいつら以外の女に愛想振り撒くなんて俺には無理だな。

 

「だそうだ」

「それは良かった。タクシー呼ぶから少しだけ待ってて」

「おう。三台頼むわ」

 

深夜料金高いんだよなー。人数は多いが目的地は一ヶ所なのが唯一の救いか。

タクシーを待ってる間にお会計を済ませておこう。脇に抱えた切歌を響に、調を未来に預けた。

 

「慎次、いくら?」

「お会計はこちらになります」

「......ゼロ一個多くね?」

「そんな訳ありませんよ」

「いやだってこれ、ちょっと安いバイク新車で買えるやん」

「皆さんがドンペリ何十本頼んだのか忘れました? シャンパンタワーも建てたでしょう。これでも飲食代のみで更に一割引きなんですよ」

「......」

 

金額を見て目ん玉が飛び出そうになったが、レジを打つ慎次は「こんなの余裕で払えるくらい貰ってるじゃないですか」と笑う。

クソッ、もう二度と歌舞伎町には来ねぇ。一晩で素寒貧になるとか夜の街怖過ぎだろ。

たとえこの料金が十人分の総合計で、均等な割り勘にすればゼロを一個取った値段になるとしても、高い。

外で飲むなら、やっぱ大衆居酒屋一択だな。

 

「どうせ俺は高給取りの癖して庶民派の貧乏性のケチ野郎だよ。なんせコンビニのチキンで幸せになれるからな! ファ○チキください!」

「その台詞は直接脳内に届けてくださいね」

 

慎次と軽いやり取りをしつつ財布から魔法のカードを取り出せば、突然背後からマリアが俺に圧し掛かるように、覆い被さるように抱きつきながら慎次に向かって自分のカードを差し出す。

 

「マリア?」

「私が払うわ」

「何企んでる?」

「これでカズヤに貸し一つ! 後で私のお願い、何でも聞いて!」

「そんなこったろうと思っ──」

「カズヤさんに貸しを作ってお願いを何でも聞いてもらえるなら私が払います!」

 

突如としてセレナがショルダーバッグから札束を取り出し慎次に突きつける。

こうなると他の面子が黙ってない。

 

「そういうことなら私が払おう」

「しょうがないね、皆下がりな。特別にアタシが全額払ってやるって」

「お前ら全員すっ込んでろ。パパとママの仏壇買って以来、大きな買い物してねぇあたしが払う」

 

翼が待ってましたとカードを取り出し、それを押し退けた奏がショルダーバッグに手を突っ込んで財布を取り出そうとして、横からクリスに押し退けられた。

そして始まる押し合いへし合い。

 

「ここは私が払うって言ってるでしょ!?」

「さっきメニュー見て高いって文句言ってたのはマリア姉さんじゃないですか!」

「セレナも言ってたじゃないの!」

「うるせぇ! アタシが払っておくから姉妹喧嘩なら外でやれ庶民派ウクライナ人姉妹め!!」

「何ですって!? 奏だって庶民派じゃないの!!」

「そもそも庶民派の何処が悪いんですか! カズヤさんと一緒にコンビニのチキンで幸せになれるなんて最高じゃないですか!!」

「奏も一緒に外で待ってて、私が出すから!」

「あ、こら押すなよ翼!!」

「唸れあたしのデビットカードォォォ!!」

「雪音ぇぇぇ! 唸らせるのは私のクレジットカードだぁぁぁぁ!!」

「......」

 

いくつものカードやら札束を眼前に突きつけられ無言で困惑するレジ打ちの慎次。

切歌を抱えた響と調を抱えた未来がいかにも『出遅れた!』と臍を噛んでいたが、響はともかく未来はそんな金持ってないだろ。(※時系列はキャロル一派襲来前)

 

「......とりあえずこのままだと収拾つかないんで、後日カズヤさんに請求書渡しますね」

「おう」

「「「「「くっ!」」」」」

 

面倒臭くなって後日請求書払いにされたが、現時点ではこれが最適解だろうな、きっと。

そんでお前ら、何が『くっ!』だよ。どんだけお前らは俺に貸し作ってお願い聞かせたいんだ? いつも二つ返事で聞いてるだろうが!?

そんなこんなで、最初から最後までギャーギャー騒ぎながら俺達のホストクラブ体験は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《マリア・カデンツァヴナ・イヴ(公式)SNSアカウント》

『昨日、カズヤが知り合いに頼まれて一日限定でホストクラブでホストとして働くことになったの。

でも彼は私以外の女に愛想を振り撒くのは死んでも嫌だから、私に開店と同時に店に来て俺を指名してくれって頼み込んできたのよ。

当然私の答えはOK以外にあり得ないわ。

ホストとしての彼は、普段とは違う姿と雰囲気で、筆舌し難い魅力に溢れていて(勿論普段の姿も格好良くて大好きだけど)、とっっっっても素敵だったわ!!』

 

【シャンパンタワーの前でカズヤとマリアが腕を組んで笑っているツーショット画像】

(総<いいね>数、数十万超え)

 

 

 

>《天羽奏(公式)》さんからのリプライ

『お前ふざけんな! アタシと翼も一緒だったろうが!!』

 

【シャンパンタワーの前で奏と翼がカズヤを挟んで笑っているスリーショット画像】

 

 

>《風鳴翼(公式)》さんからのリプライ

『事実を捻じ曲げて公表するな馬鹿者!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

俺は再び一人で歌舞伎町へと足を運び、喫茶店にて捨犬と一対一で向かい合っていた。

 

「いやー、わざわざ来てもらって悪いね」

「別に。暇だから気にすんな。それに前の支払いも済ませたかったしな」

 

アイスコーヒーを啜りながら応じると、捨犬は目を細めて苦笑。

 

「......ありがとう」

 

続いて何故かやけに神妙な態度で礼を述べてくる彼に違和感を覚え、首を傾げた。

 

「んだよ? 急に畏まって。それは俺じゃなくて慎次に言えよ。結局俺なんていてもいなくても一緒だったじゃねーか」

 

やったことと言えば身内の女複数名を連れて酒飲んで騒いだだけで、人手不足に困っていた店を助けたのは主に慎次だ。売り上げに貢献できたかもしれないが、そもそも料金の内訳は飲食代のみで更に一割引。通常と比べて、人数が多い割には得られる利益が少なかった連中だったのは違いない。

 

「そっちじゃなくて、兄者のこと」

「慎次のこと? どういうことだよ」

「なんだかね、久しぶりに見た兄者が凄く楽しそうだったんだ」

 

黙って続きを促す。

 

「きっと兄者は、今が一番楽しいんだと思う。ご存知の通り緒川家の仕事は忍としてのものばかりだから、一族の皆は時に自分の気持ちを押し殺して職務を遂行することになる。けど、昨日久しぶりに見た兄者は素のままだった。前々から忍者よりも他のことの方が向いてるかもとか言ってて、昨日の姿を見て当時の言葉は本当だったんだなぁ、って実感してさ」

 

感慨に耽るような言に俺は何も言えない。

緒川家に三男は不要と聞いた。だとしたら次男は?

恐らく次男はスペアだ。長男に何かあった時の代わり。

胸糞悪くなる話ではあるが、そういう形で何百年も連綿と続いてきたのが忍というものなのだろう。

 

「俺は忍として育てられなかったからこそ、兄者のことを心配してた。兄者は忍としては高い実力を持ってたけど、性格は里内で誰よりも優しかったから......」

 

俺は素直に頷く。慎次は捨犬にとって良いお兄ちゃんだったのだ。それは想像に難くない。

 

「己を偽ることなく、毎日良い友人や仲間に囲まれてやり甲斐のある仕事に打ち込む。そんな生活を送れてる兄者を見て、安心したんだ」

「......そうか」

「だから、カズヤくんはこれからも兄者の友達でいてあげてくれると、俺としては凄く嬉しい」

「言われるまでもねーよ」

 

即答してから更に続ける。

 

「自慢じゃないが、俺はダチが少ねーんだ」

 

男友達より嫁さん候補の方が多いという、悲しいんだか嬉しいんだかよく分からん状況だが。

 

「その少ねーダチを失うつもりはねーから安心しろ」

「うん」

 

捨犬は嬉しさと安堵を滲ませて相槌を打つ。

 

「それに」

「それに?」

「あいつは俺のダチであり、仕事仲間であると同時に目標でもあるからな」

「目標?」

 

これは慎次以外の者達も含まれているが。

 

「ああ。いつかあいつみてーな格好良い大人になるっつー目標だ」

 

きょとんとしている目の前の彼に向かって、俺は唇を吊り上げて笑みを作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

「ついでみてーな形になっちまったが、お前も俺のダチだぞ」

「あの"シェルブリットのカズヤ"から友達認定受けるとか、これほど光栄なことは生まれて初めてだよ」

「困ったことがあったらすぐ言えよ。ホストクラブがヤクザに難癖つけられたとかなら任せろ。その日の内にヤクザの事務所にシェルブリットバーストでカチコミかけて地上から消してやる」

(あ、この人って普段はそうでもないけど、荒事になると想像以上にやべー人だわ......)

 

 

 

 

 

更なるオマケ

 

 

爆睡している切歌と調を元F.I.Sの四人が暮らす部屋に叩き込み、残りはそのままぞろぞろ奏の部屋へと雪崩れ込む。

 

「とりあえず上着をハンガーに掛けたらお茶でも飲んで一息つきましょう」

 

という未来の提案に異を唱える者などおらず、それぞれがハンガーに自身の上着を掛けると、冷蔵庫から2リットルの麦茶のペットボトルを取り出し皆で飲む。

冷たい麦茶が酒で火照った体に染みる。

誰もが大きくふう、と吐息を漏らす中、カズヤが皆を見渡しながら質問。

 

「そういや、なんでOL風?」

「ホストクラブに行くんならOLっぽい格好が良いんじゃないかなと思って。流石に普段着だとさ、なんか場違い感出るだろ」

 

麦茶を飲み干し空のグラスをテーブルに置き、代表して答える奏。

なんとなく言いたいことが分かったカズヤはとりあえず納得した。

 

「......それにしても随分ミニだな」

「ミニスカート好きって前に言ってたじゃないですか」

 

クスクス笑いながら妖しい色香を放ち応答する未来の発言に彼はうんうん頷く。

 

「ああ、ミニスカート好きだぞ。しかもお前ら、リクルートスーツにミニのタイトスカートとか狙ってるとしか思えねー、最高かよ。あまりにもセクシーで、かなり目のやり場に困ったぜ」

 

豪快に笑い飛ばしてから麦茶を飲んだその時──

 

 

ガラガラガッシャン!!

(※理性が崩壊する音)

 

 

ついに響が限界を迎えた。

 

「■■■■■■■■■■■■■!!!」

「何が切っ掛けだぁぁ!?」

「今のだろ。つーか、あたしももう我慢できねぇ」

 

獣の咆哮を上げていきなり飛び掛かってきた響に抱き着かれてそのまま押し倒された状態のカズヤに声を掛けつつ、クリスは妖艶に舌舐めずりをしてから自身のブラウスのボタンを外し始めた。

これを皮切りに場の空気が一気に変わる。

それは夜のプロレス大会開催の合図。

誰かがこう言った気がした。

 

 

七人に勝てる訳ないだろ? というようなニュアンスの言葉を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体いつから七人なら勝てると錯覚していた?

 

 

 

 

 




はい、ごめんなさい。育児に引っ越しに転職にで毎日てんてこ舞いで、ちょっと時間がある時にチマチマ書いてたらよく分からん話になってました。

文字数的には本編を二話くらい更新できる量なのですが......何やってんだ私!

実は前々からカズヤが緒川さんの弟である捨犬くんと出会う話を書きたいなと思ってまして。
エルフナインは外見年齢的に完全アウトなので仲間外れになることは確定していたので、時系列は彼女がS.O.N.Gに合流する直前としてます。
また多少のネタバレ及びメタ的な話になりますが、原作アニメと同様にGX編終盤はラストバトルが新宿となり都庁から数キロ圏内が消し飛ぶ予定なんで、時系列的にGX編終了後の崩壊した新宿にできなかったのもあります。(つまり捨犬が勤めるホストクラブは当然とばっちりを食らう)

ちなみに私のホストやホストクラブに関する知識は銀魂を読んだ程度のものです。なので、ホストと聞くと死んだ魚みたいな目をした薄汚い天パとかメガネが本体のメガネ掛け機とか救いようのないドSとかレッツパーリィしてるトッシーみたいなのが「オッケー我が命に代えても!」って言ってるくらいしか知りません(偏見)。

次こそは本編を更新したいと思ってます。
ホントですよ!
.........................................................奏と翼が婦警のコスプレしてバイクツーリング中のカズヤを交通違反(言いがかり)で捕まえて切符切られたくないなら股間のマグナム出せよと脅してミニパトに無理矢理押し込むR-18版とか、奏単体でお墓参りの後に実家でいちゃこらファックスなR-18版のことなんて考えてませんことよ、ホホホ。





・カズヤ
全ての元凶。こいつが普段から自身の欲望に忠実でマジで好き勝手にやりたい放題するせいで、感化された響達が暴走する。そして暴走する響達の言動を何一つ否定しないし拒絶もしないし、むしろ喜び勇んで受け入れちゃうから拍車が掛かる。
周囲を振り回すのが好きだが、嬉しそう&幸せそうな響達に振り回されるのはもっと好き。気がついたらセクハラする側からされる側に。
とはいえ、最低限、時間と場所は弁える模様。
自他共に認める庶民派及びケチなのでお金をあまり使いたがらないが、身内にクソ甘いので響達が喜んでくれるなら宵越しの銭は持たないと金に糸目をつけずに使い込む時が多々ある。ケチなのか太っ腹なのかどっちかはっきりしろ。
なお、給料を貯金したがる理由は、もし子どもができた場合の養育費だったり、家を買う資金だったり、老後の為だったりとかなりまともだが誰にも言ってないので響達は誰一人として知らず、貯金が趣味と思われてる。


・響
カズヤの影響で本能と欲望に最も忠実な乙女になってしまったある意味犠牲者。
最早手遅れ。普段食欲を抑えられない彼女が性欲を抑えられる訳がなかった......!
今のところ一番理性がガバい。


・奏、翼、クリス
一応外では自制が利く反面、人の目を気にする必要がなくなると依存気質な面や元来の甘えたがりな顔が出てきてしまう。
そして前述のようにカズヤが全く拒否らない、甘えられると喜ぶのでズブズブズブズブ沼に沈んでいく。今後も沼に急速潜航! もう助からないぞ!


・マリア&セレナの姉妹
切歌と調に隠れて自分達はいちゃこらファックスしまくってる負い目があるので、二人に『未成年(ウクライナは18歳からOK)なんだからお酒はダメ』とは言えない。
元々愛情深い姉妹だが、家族と死に別れた経験が何度もあった為、『家族』というものに特別な思いがある。
そんな重い思いもカズヤは以下略。
特にセレナはネフィリム暴走時のカズヤを見てパラダイムシフトを起こしており、『戦うこと自体はあまり好きではない』というのは変わらないが『戦って勝つことは必要であり当たり前』という考えが無意識的にあるので攻めの姿勢は崩さない。
マリアは世間的にカズヤと恋人と見られていることを利用しSNSで色々と自慢気に語るが、その度に奏と翼から突っ込みが入る。


・未来
フロンティア事変以降、色んな意味で自重しないし遠慮しないし我慢もしない。
王様ゲームで王様になったらカズヤに婚約指輪を買わせるつもりだったのでセレナに文句を言えないはずだがそんなことなど気にしないのである。何故なら周囲に構わず我を通すようになったから。
しかし抜け駆けは許さん。自分は抜け駆けするけど。
なお、もし彼女が王様になっていたら数ヶ月後にはマジで左手の薬指にダイヤの指輪が填まることになっていた。(私が妻に贈ったものはオーダーメイドだったので手元に届くまで数ヶ月かかりました)


・切歌&調
未成年だけど飲酒するよ、だって周りの連中が皆してるもん。と、すっかり悪い子に。
カズヤとスキンシップをしてると他の面子が面白いリアクションをしてくれるので楽しい。
暴走しまくる響達とそれに振り回されるカズヤを見ているのも楽しい。


・あおい
現実世界でも国家機密に関わる人(CIAとか)って離婚率スゲー高かったり恋人できてもすぐ別れたりするみたい(仕事について常に嘘を言い続けなければならない為)なので、彼女は暫く彼氏できません。女性としては魅力あるのに環境のせいで恋人できない典型例。
......なんかごめんね。


・フィーネ
「切歌と調が寝たらあなた達どうせいちゃこらファックスするんだろ、私は詳しいんだ....................................うらやまけしからん、私もあの御方とブツブツ」


・弦十郎
様々なことに寛容な理想の上司。
何気にお客のお嬢様方に筋肉についてチヤホヤされて満更でもない。


・朔也
あおいの相手を捨犬にパスした後は普通にホストとして働いてみたが、連絡先を交換し合えるような女性とは残念ながら出会えなかった模様。
でもホスト一日体験はそれなりに楽しかったとは本人談。


・慎次
忍んでない忍者。弟の捨犬からは忍者ではないからこそ仕事について心配されていた。しかし、カズヤ達が兄にとって心許せる人物だと理解され、心配は安心へと変わる。
以前の彼だったらいくら弟の頼みでも影分身の術を使ってまで店を手伝ったりしない。これもカズヤがやりたい放題していた光景を間近で見続けた影響。
本人曰く「楽しそうだったので、つい」とのこと。
実は捨犬の『影分身の術で手伝ってくれ』発言は半ば冗談であり、本気でやってくれるとは思っていなかった。だからこそ捨犬は、慎次が分身したのを目の当たりにして、カズヤ達が兄にとって大切な友人なのだと察し、嬉しくて笑ったのだがカズヤの目からはドヤ顔に見えた。
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